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10072セイクリッド・ブルー第四部(5)istint2/19 2:7:352182cfbgNboWTlgVY
前回までのお話 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10012.html

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アスモデが空に向かって吼える。
すると、空に直径三百メートルほどの巨大な立体魔方陣が浮かび上がった。
そこで初めてシェリフェルは自分のミスに気付いた。
アスモデが飛び回っていたのはこの魔方陣を描く為だったのだ。
しかもこの規模の魔方陣を必要とする魔法はシェリフェルが使った禁呪よりも遥かに破壊力が大きい。
下手をすれば大陸が消し飛ぶほどの魔法かもしれない。
彼は観測者としての知識を総動員してこの魔方陣を分析した。
しかし、分析したとて、これを止める術はもう彼には無かったのだが。

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アスモデは過去これを一度だけ使用したことがある。
魔界制圧時に、魔王の城を破壊した魔法だった。
地上で使用した事は無いので、シェリフェルのデータにも無かった。
が、彼は冷静に分析する。

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「フフフ、参ったね。
 僕とあろうものがこんな巨大な魔方陣に気付かないなんて…。
 でもこんな魔法があるなら、サリエナの国など必要ないんじゃないか。
 フフ、この魔法を今まで使わなかったのは何か理由があるのかな?」

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「グフフ、その通りだぞ。
 まこと、人間にしておくには惜しい男よ。
 コレを使えばゲヘナが遠くなるのでな。
 だが、そうも言っておられんわ。
 これ以上…」

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その言葉をシェリフェルがさえぎった。
「これ以上…戦いを長引かせる事を恐れたんだろ?
 僕は聖蒼教団の五聖将軍シェリフェルだ。
 援軍に同じ五聖将軍クラスの人間が現れ、サリエナ、ルナグディ両軍の主力が貴様に注ぎ込まれるのが怖かったか?
 フフフ…アハハ」

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シェリフェルは満身創痍にも関わらず、アスモデを挑発するように笑い出した。
しかし、シェリフェルの指摘は的確だった。
アスモデはシェリフェルを危険な存在だと察知し、即座に殺す事に決めた。
そして一際大きく咆哮を上げると、巨大魔方陣から魔力が放たれ出した。

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「オ ル ク ス !!」
アスモデが唱えると、辺りの地精がざわめき出し、地面がグラグラ揺れ始めた。
振動が激しくなると、地割れが起こり、亀裂から土砂の塊が次々と噴きあがる。

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シェリフェルはチッと舌を鳴らすと、ヨロヨロと岩にもたれかかりながら右腕を高々と掲げた。
すると、上空にまだ残っていた雷雲がまるで生き物のように脈動し、その中心に巨大な矛が出現した。
矛は差し渡し50メートル程の長さで、バチバチと電撃を迸らせている。
更に、雲の形が巨大な三面の魔神の姿を象り、遂には雷の魔王「インドラ」が召喚された。

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インドラは巨大な矛を両手で掴むと上体を仰け反らせ、アスモデ目掛けて叩き付けた。
アスモデは逃れようとしたが、身体に刺さったままの魔候の爪から電流が檻のように発せられ、身動きがとれず、その矛の直撃を受けてしまった。
太陽がもう一つ現れたかと思うほどの閃光とともに爆音が鳴り響き、熱で地面はドロドロのマグマに変化し、熱せられた空気が爆発を起こした。
シェリフェルが最初に放った雷撃はこの禁呪のほんのさわりに過ぎなかったのだ。
インドラの矛を召喚する魔法だったのだが、闇の使徒の魔術師でもインドラそのものを具現化できる術者はそうはいなかった。

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しかも、アスモデ並びに他の闇ソーサラー達も「時流を観測するもの」が使用することなく守り通してきた禁呪なのでインドラに関する知識に乏しかった。
それに、人間がこれほどの魔力を操れまいとたかをくくっていたのだ。
シェリフェルはぺっと血の塊を吐き出すと、ズルズル岩にもたれかかりながらその場所かアスモデが放った魔法の効果はまだ続いていたからだ。
術者が死ぬと自ずと魔法の効果も弱まる。
それまで少し離れたところに避難するつもりだった。ら離れようとする。

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しかし、魔法の効果は一向に衰えようとしない。
シェリフェルが訝って、弱々しい魔力探知の糸をアスモデのいた方向に向けると、なんと巨大な龍はまだ倒れていなかった。
砂埃が晴れるとその中心には赤黒いドラゴンが、傷付いてはいたがまだ立っていた。
金色の眼を光らせ、魔力を集中している。
彼の鱗は焼け落ち、全身から血を流していたが、それでも倒れずにいた。

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龍は特に生命力、防御力が高い生物だが、闇ソーサラーであるアスモデはその龍の頂点に立つ者だった。
彼は一声吼えると、地面を踏み鳴らした。
すると、更に地震の揺れは激しくなり、サリエナ軍の兵もルナグディの兵も立っていられなくなった。
辛うじて生き残っている艦隊は逃走を試みたが、地脈より吹き上がる炎のようなエネルギーに阻まれて動きが取れなくなっていた。
次第に、数キロにも渡って大地に影響をもたらしていた魔力はアスモデを中心に収縮を始めた。

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シェリフェルは諦めたようにその場に座り込むと、笑みを浮かべながらため息をゆっくり吐いた。
やはり闇ソーサラーには手を出すべきではなかった。
彼自身、互角以上の戦いをする自信があっただけにショックも大きかったに違いない。
この世に生を受けて初めて絶望というものを感じていた。
しかし、恐怖はない。
彼は自らの死を受け入れたのだ。

istint2/19 2:12:242182cfbgNboWTlgVY||36
「フフフ…戦場の死神とまで言われた悪鬼の最期か…。
 この規模の魔力がここで解き放たれればこの半島は地図から消滅する。
 出来るならもう少し暴れたかったんだけどねえ、完敗さ。
 心残りはあるが、これも時流を統べる者の定めか…フフフ」

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シェリフェルの言うとおり、アスモデの周囲には半島一つを吹き飛ばしてなお有り余る程の魔力が集束していた。
サリエナ軍も、ルナグディも、教団騎士団も全滅するだろう。
もはや、アスモデを止められる者はここにはいない。
終焉へ向けての秒読みが始まっていた。

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耳が痛くなるほどの静けさの中に、コポコポと水の中にポンプが空気を送り込む音のみが部屋に響いていた。
「悪竜アスモデが禁呪をこの地に解き放とうとしておるな。」
声ではない。
精神波のみで会話している。
いや、会話というよりも意思の統合と言うべきだろうか。

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「我等の器足り得なかったというわけか。」

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「否、アスモデが現れたのは予想外の事。」

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「サリエナの艦隊ならばシェリフェルで殲滅できたであろう。」

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「我等があの男を読み切れぬとはな。」

istint2/19 2:13:482182cfbgNboWTlgVY||37
「いずれにせよ、このままアスモデが禁呪を放てばムラサメとマジェリッドも無駄足となろうな。」

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「それよりも瘴気による汚染が最優先課題であろう。」

istint2/19 2:14:42182cfbgNboWTlgVY||167
「サリエナ、ルナグディ共にまだ滅ぼされては…。」

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「ならばアレを使うしかあるまい。」

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「では…」

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「神の雷を以って悪龍を滅するのだ。」

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「しかし今アレを使う時なのか、我等の永い蓄えを使うべきときか熟考せねば。」

istint2/19 2:14:492182cfbgNboWTlgVY||333
「然り、アレを発動するにはまだ早いのではあるまいか。」

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しばらく沈黙が続く。
十神老たちは何かの使用について珍しく決を採りかねていた。
やがて一人が口を開いた。

istint2/19 2:15:52182cfbgNboWTlgVY||470
「我等は神に等しき存在。
 彼らを導いてやらねば。」

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「では各々解呪コードを…」

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やがて彼らの意思は統合され、巨大なコンピューター内部のディスクが低い音を立てて回転を始めた。
そして、誰も見ることの無いディスプレイに次々とコマンドが表示され、実行されていく。
すると、巨大な聖蒼教団の要塞の内部に隠されたアンテナから、空高く電波が発信された。

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「では、神の雷を発動する」

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彼らの会話は誰も聞くことは無い。
無論、基地にいる誰もが内部のアンテナの事も、巨大なコンピューターの事さえも知らない。
辛うじて気付きつつあるのはシェリフェル、セルレイスの二人だけだ。
こうして永い間、彼らは何層もの厚い隔壁の中で神の意思を決定しているのだった。

istint2/19 2:17:542182cfbgNboWTlgVY||159
短いですが、今回はここまでです。
シェイラさん、バルトークさん、いつもの気まぐれ更新にもかかわらず、感想を書いてくださってありがとうございます。
えっと、次回はこの戦争のクライマックスになるかと思いますので、良かったらまた読んでくださいまし。
ではでは。

バルトーク2/20 18:40:182212cfBcsmysAsVME||217
istintさんこんばんわー。今回も読みました!
アスモデとシェリフェル、どちらも人知を超えた強さにほれぼれです(オイ
お互いに発動する超ド級魔法の描写に圧巻です。そして消え行く大陸と消え行く命……しかし、なにやら別の意思が介入してきそうな感じですな。老人たちが発動しようとしている神の雷とは!?いや〜、次回もクライマックスから目が離せません^^

シェイラ2/22 0:7:92182cfESbjKcoiV3w||512
返信遅くてすいません汗istintさんの作品はいつも先の見えない展開でどーなるかどーなるかと掲示板を覗く時は、更新があるかどうかで一喜一憂してます(笑)しかし、シェリフェルの強さにルヴィン君達なすすべなしですね〜。がんばれ、主人公!と草葉の陰から応援させていただきます♪


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