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10142鏡。(小説)&物語(詩)シェイラ3/6 22:47:422202cfh78.tJUifDw
更新大変遅くなってすいませんでした。しかも、長いです;それでも、大丈夫な方はどうぞ見て下さい〜。

シェイラ3/6 22:48:42202cfh78.tJUifDw||668
広がる

 眠る前に思う事は
  いい思い出。
 あたたかい日々
  ばかり
 現実は
  一輪の花さえ
 見えなくて
  飛び立った鳥ばかりに
 目が吸い寄せられる。
  解ってる。
 隣に戻って来ないコト位
  青い空はまた明日
 残酷に広がるのだろう
  星達よ
 ならばせめて
  夢だけでも幸せ見せて

シェイラ3/6 22:48:562202cfh78.tJUifDw||470
握手

 何もかも失って
 手に入れたものが
 とてもあたたかい物だったら
 当然しがみついてしまうだろう
 依存してしまうだろう
 手に入れていいのか
 不安になって
 離してしまうかもしれない
 ねぇ、そしたら
 あんたはボクの手に
 そっと戻してくれる?
 答えの代わりにと
 笑んだあんたは
 ボクの頭を
 ぐしゃぐしゃなでる
 大きな大きな手で
 そして、ボクもその大きな手を
 自分の
 小さな小さな手で
 “ぎゅっ”と握ったんだ

シェイラ3/6 22:49:242202cfh78.tJUifDw||44
鏡。

 漂流し続ける自分が
 最悪で
 でも、見守ってくれる
 “太陽”があって
 それで充分だった
 なのに―

シェイラ3/6 22:50:172202cfh78.tJUifDw||288
 まさに、絶景と評するにふさわしい。
 遥か彼方に雲海を抱く山脈があり、その鋭く尖っているであろう頂を覆い隠していた。山脈はなだらかにカーブを描きながら、地肌を隠す物を雪、岩石、土、緑へと転変させる。新緑は広がりながら、ある所でぷつりと切れた。キラキラと輝く水面が静かに波打ち、円状に多き緩やかに広がる。

シェイラ3/6 22:51:262202cfh78.tJUifDw||17
 先には小島―と、言っても非常に大きい―が湖の中心に構えていて、農場が広がり塀一つを越えて都が始まった。
 白を基調とした家々が続き、都の道と言う道に人々が行き交う。低空には、極彩色豊かな鳥がひらりひらりと飛ぶ。
 やがて、道は勾配を登り、堅牢且つ荘厳な塀の前で役目を終える。家々以上にそれよりも白く輝く城は青の尖塔を抱きながら凛と佇む。
 その美しさは溜め息さえ、喉元で止まってしまう程だ。

シェイラ3/6 22:52:142202cfh78.tJUifDw||48
「うおぉ!すっげぇ!!」
 それが、この城の『止水城』と呼ばれる由縁でもあるのだが、この青年には効かないらしい。
「きーめた!おれ、ここに永住して豪遊する!」
 決めポーズをここぞとばかりに付け加えた。待機室であろうか?
 ちょっとしたサロンのような造りの部屋には六人と一匹の動物が寛いでいる。
「あんた、バカだねぇ!無理にきまってるよ〜ん!」
 鼻のかかった甲高い、ちょうど少女のような声を動物は発す。彼女(?)はさも可笑しそうに自らの長い尾を揺らした。

シェイラ3/6 22:54:32202cfh78.tJUifDw||455
「なんだよ!根拠言えよ!根拠!」
「根拠も何も、あんたみたいに平民の鼻たれこぞーが、逆立ちしたっていい立場で雇って貰えるわけないね。せいぜい、下男か掃除人。外見てるヒマなんてないよ」
 きゃっきゃっと笑った。それでも、青年は希望を述べようとする。
「いやー。ちょー、働いてだなぁ、働いて働いて働けば、この城の近くにめちゃでけー家、おっ建てて夢の姐さんとのラブラブ新婚生活に突入できるって寸法だぜ!」
 喜色ばんだ顔をグラスを片手の女性に向ける。

シェイラ3/6 22:54:242202cfh78.tJUifDw||484
「じゃあ、自分の設計した豪華客船のオーナーにしてくれるって言ってくれたのは嘘?」
「それは老後ですよ〜。一緒に良い家庭作りましょうね〜☆」
 完全に夢想ペースに入った青年に鋭い一言。
「でも、ここら辺で大きな家建てちゃいけないって、法令出ているハズだけど」
 先程から、過程を冷静に眺めていた少年がついに一言。
 めくるめく夢の世界が止まる。
「え?」

シェイラ3/6 22:54:452202cfh78.tJUifDw||651
「え?じゃなくて、だから、この島に大きな屋敷とかないでしょ?」
「貴族の家は、他の島に建てられているみたいね」
 確かに、女性がのぞく窓からは遥か下方の湖面には大小幾つかの島が点在し、屋敷とおぼしき建物が微かに確認出来た。
「来る時、気付かなかったの?」
 明らかに呆れた目で見つめてくる。
「うるせっ!でも、でもよ。おれの計画水の泡かよ〜。姐さんごめん〜」
 相当、ショックだったらしくがっくりとうなだれた。
「だーかーらー、言ったんだよ!あんた、バカだねぇ!って」
 ケラケラと口に前足をあてる。皆も同調したように頷く。

シェイラ3/6 22:55:12202cfh78.tJUifDw||157
「だ〜もー!バカバカバカ言うな!姐さんおれ違いますよね?ね?」
「そうね、あなたは本当に―」
 口元に笑みを浮かべた。
「生粋の馬鹿ね」
 これが、クリティカルヒットとなる。青年の表情が崩れ落ちる。
「そんなぁ〜」
 どすんと、その場に倒れこむ。くすくすと女性は笑ってばかりだ。
 そこへ救いの主が現れる。

シェイラ3/6 22:55:502202cfh78.tJUifDw||730
「お前ら、そこまで言うなよ〜。俺だってここの絶景毎日楽しみたいと思うぜ」
 大きな手がぽんぽんと肩を叩く。
「とっつあん……」
 見上げると、豪快でいて包容力のある笑顔。
「こんな所に来て、デカイ式典に出るし、慣れねー服だし。みんな、緊張しまくってんだろうと思っていってくれたんだよな?」
 彼は1%も思っていなかったのだが。
「ありがとな」
 途端、青年の中に何かが込み上げてくる。
「とっつあん!」

シェイラ3/6 22:56:322202cfh78.tJUifDw||527
「ん?」
「今日から、とっつあんの事、師匠と呼ばせてくれ!いや、呼ばせてください!」
 思わぬ申し出に大男は戸惑う。
「?オレはそんなご大層な呼び名似合わねぇよ。なんか、偉そうだしよ」
 むずがゆそうに断ろうとする。
「そんなことない!おれにとってとっつあんは永遠の師で、最強のお方だ!」
 言葉にとっつあんもとい師匠は目を潤ませた。

シェイラ3/6 22:56:432202cfh78.tJUifDw||8
「師匠!」
 青年は大きく手を広げ、
「弟子よ!」
 大男はしかと抱きとめた。ここに真なる師弟愛が生まれた。
 バックには夕陽が似合っているだろうか?

シェイラ3/6 22:57:132202cfh78.tJUifDw||117
「うっげー。キッショ」
「あんな風になりたくない……」
 仲間たちには不評のようだ。
「まぁまぁ、いいんじゃない?こんなのも」
 青春活劇を眺めながら、グラスを揺らす。
「でも、あんたは全く輪の中に入っていかないわよね。冷血って言うか鉄面皮って言うか」
 外を眺める男に問いかける。
「悪かったな」

シェイラ3/6 22:57:522202cfh78.tJUifDw||235
 普段は低めの所で、結わえてある黒髪が奔放に流れる。長い髪の隙間からは程よい赤みの差した肌と蒼い瞳が覗いていた。
「ひ、ひどいですよ!そんな言い方!あの人達の中に彼が入れって言うんですか!本っ当に嫌ですよね?」
 女性の言葉がカンに障ったらしく、口数の少ない少女が口火を切る。

シェイラ3/6 22:58:562202cfh78.tJUifDw||678
 同意を求める少女に男は少しの間、未だ固い抱擁を交わす2人をちらりと見る。そして、無言のまま頷く。
「ですよね!暑苦しいのなんてダメダメですよね!」
 しかし、彼の中ではほんの少しだけ仲間と触れ合いたい気持ちもあった。
(言うまでもないが、目の前で展開されているような事はしたくはなかった)
 元来から、あまり周りの人間と言葉を交わす事もましてや、仲良くなろうとはしなかった。彼自身の思いでは、感情の起伏があまりないせいもあるが、一時期人間を避け続けた過去の影響も大きいと感じている。だから、感情の赴くまま笑ったりおどけられる彼らに対して憧れを軽く抱いているのも事実で。

シェイラ3/6 22:59:222202cfh78.tJUifDw||511
「でも、あんたならさびしい男の抱き付き合いなんかしなくても、色んな女の子が相手してくれるでしょうね」
 女性は明らかににやりと笑ってみせる。
「まー、病弱な所とっぱらぇばぁ、あんた完璧だもんねー。ルックスもいい方だし。こないだだってさぁ?」
 二人を観察するのも飽きたらしく、二対の長い耳を揺らしながら生き物はとてとてやってきて上から下までまじまじと見る。

シェイラ3/6 23:0:312202cfh78.tJUifDw||637
 確かに、彼はモテた。何処かの町に行けば必ずと言っていいほど若い娘、妙齢の女性達、果ては小さな女の子、老婆の視線を釘付けにしていた。
 更に、この城に来てからも、メイドや下女がさっきまで特に用もないのにやたらとっかえひっかえ部屋に入ってくるのだ。そして、決まって男に『何か用はございませんか?』とうんざりするほど尋ねて来た。
 彼にとっては、単なるストレスにしかならなかったようだが。
「……こないだ?」
 無愛想に返す。内心、少しイライラが溜まり始めていた。はっきり言ってそんな事した覚えは毛頭もない。……はずだった。

シェイラ3/6 23:1:02202cfh78.tJUifDw||493
「なんですか!彼は絶対そんな事しません!ほら、困ってるじゃありませんか!」
 怒りながら、少女は男の弁明をする。
「あ〜れ〜?またまた嘘言っちゃってぇ!この間、覚えてないのぉ?」
 問い掛けられて、腹立たしさを覚えつつもしばし考える。すると、ある光景が思い浮かぶ。
 瞬間、イライラは遥か遠くに飛ばされて、かっと頬が赤くなる。
「!!あ、あれか!」
 飛び出した言葉は考えられない程上ずってる。
「何それ?私にも教えてくれない?」
 女性は話を聞こうと生き物に問う。

シェイラ3/6 23:1:232202cfh78.tJUifDw||113
「な、な、何言ってるんですか?そんな、いやらしい事しませんよね?ね!」
 沈黙するしかない。
「じゃあ、教えちゃうよ〜ん。なんとなんと、この美男子はこの前の町でちょー可愛い女の子から手紙もらったばかりか手ぇまで握っちゃったりしたんですよぉぉ!」
「あら!」
 女性は口元に手を当て、
「……」
 少女は絶句し、
「大人って変だ」
 少年は未来へ軽く希望を失い、
「「本当か!」」
 二人の抱擁は終わった。

シェイラ3/6 23:1:542202cfh78.tJUifDw||379
「マジ!マジかよ!や〜ようやっとお前に春が来たんだな!やったぁやったぁ、らんらんら〜んと」
 青年は男の周りをクルクル回る。
「お〜お〜。良かったじゃねぇか!相手は?」 
「それがぁ、壁が死角で見えなくてぇ」
 ちょー可愛い女の子もでまかせと解る。
「なんだぁ!って本人ここに居るんだしここでカミングアウトしてもらおうぜ!」
 顔を覗き込む。しかし、男の表情はまるで違っていた。紅潮していた頬からは赤みが引き、今度は感情すら伴っていない顔が黒髪から見え隠れしている。
 何か、気づいてしまったような表情をして。

シェイラ3/6 23:3:152202cfh78.tJUifDw||108
「?どうしたんですか?あいつが言ったこと嘘だったんですね!全く―」
「違う。嘘なんかじゃないんだ。うん。本当になんでもない。大丈夫だ」
 さえぎるようにつなげた答えは、引き裂くようでもあり誰かに救いを求めているようだった。
 怒らせてしまったのだろうか?声は静かながらも、相手を沈黙させてしまうような術の色を持っていた。
「いや、実はな、少し昔の知人が居て、二、三ヶ月前も寄っただろ?手紙用意してくれててさ、久しぶりって握手してくれたんだ。ちなみに男だぞ?」

シェイラ3/6 23:4:62202cfh78.tJUifDw||526
 誤解を消すように続けた弁明は、彼の性格の割には非常に多弁で明るくて空虚なもので。
「悪かったな」 
 にらむ表情は何かを隠しているようにも見えた。
 その表情に仲間は謝る事さえ出来ない。
 実際、彼がこれ程怒りを示した事がないのだ。
 けれど、青年はある一つの確信に行き着いてしまう。これが怒りではなく、何かを隠す為の。表情の奥底に隠された訳を―。
 トントントン。
 規則正しいノック音が響いた。

シェイラ3/6 23:4:482202cfh78.tJUifDw||239
「……どうぞ」
 女性が声を投げる。
「失礼します」
 メイドとおぼしき女性が恭しく入ってくる。
「準備が出来ましたので、控えの間までご案内させていただきます。あの―」
 彼女は聞くのだ。
「何かご用はございませんか?」
 男に向かって。

シェイラ3/6 23:5:182202cfh78.tJUifDw||821

シェイラ3/6 23:6:62202cfh78.tJUifDw||344
 10分と少しと彼らに与えられた時間は非常に少なかった。彼女もそれ程、準備に忙しいのだろう。本当なら、会えるのが嬉しくてわいわいがやがやと煩くなるのが常なのだ。
 が、彼らの中には重苦しいわだかまりがぐるぐるぐると濃い靄となって取り付いてぎこちない。新しいメンバーが加わったぎこちなさとも違う。

シェイラ3/6 23:6:322202cfh78.tJUifDw||396
 バカ騒ぎをしていたムードメーカーな青年でさえ、そうなのだ。移動中もずっと窓の外を眺めて何も言わない。
 普通なら『珍獣だよ』とヒソヒソ言われるのを『うるさい奴ら!アタシの後足キックで振っとばす!』とぶつぶつ呟くのを忘れない生き物でさえ、黙り込んでいた。
 他の面子も重苦しい空気に押しつぶされそうで終始無言だ。
 会った所で、何も変わらないように思えた。扉の開くその瞬間まで。

シェイラ3/6 23:7:92202cfh78.tJUifDw||913
 部屋はいたって簡素な造りで据えつけ鏡台と大きな窓があるのみだ。
 その部屋が今回の目的ではない。中に立つ彼女にこそ用はあった。
 ちょうど、腰掛けから立ち上がる。床まで届くヴェールが優雅に踊る。頭を上げる。耳元に付けた飾りも額のティカも窓からの光に七色にも輝く。
 少し恥らった表情が現れる。いつもと違い、ほんのりと紅を差し何処か艶っぽい。
「ど、どうかな?」
 幾分、緊張した声音で。

シェイラ3/6 23:8:82202cfh78.tJUifDw||979
 自らの衣装をほんの少し広げてみせる。いつもは仲間を守る為に担がれている剣は背になくヴェールがふんわりと覆っている。衣装も違い、長い袖の付いた美しい縫い取りの施された衣装を身に着けていた。彼女にしては珍しく絨毯にたっぷりとつくほどのスカートが床に広がっている。
「やっぱり似合ってないよね?」
 表情が心許なそうになる
「……ううん。そんな事ないわ」 
 振り切るように女性は言う。先刻までの暗さは見当たらない。
「やべ〜。お前、きれいになりすぎだっつーの!」
 青年も調子を取り戻したようだ。仲間も口々に彼女を褒めた。

シェイラ3/6 23:8:402202cfh78.tJUifDw||669
 さっきまでのグズグズ天気は回復したようだ。実際、チームメンバー1の暴走娘がここまで激変するとは思ってなかったのだ。通常なら、華美な格好は好まない方だし、化粧だってあまりする方ではない。それがここまで変わってしまって、驚いてしまい声も出なかった訳で。
「いや〜。嬢ちゃんがここまで変わるなんてなあ!信じられねぇな。つい、二日前まで『一匹残らずたった斬る!』なんて叫んで、モンスター吹っ飛ばしてたん!!!」
 ひげ面大男は黙り込む。それもそのはず、腹には拳が深々とめり込んでいる。
「『嬢ちゃん』って呼ぶな」
 どうやら、内面は変わりがないようだ。

シェイラ3/6 23:9:502202cfh78.tJUifDw||368
「本当にきれいです。いいなぁ私も」
「馬子にも衣装でなかなかだよ〜♪」
 瀕死の大男をはみにして会話が続く。
「なんか、いつもと全然違うね。すごく、う〜ん。なんて言うんだろう?」
「いいよ。きれいとか変わったとか。すぐいつもの“自分”に戻っちゃうし」
 でも、幸せだよと付け加える。解っている。彼女にとってはこれはただの通過点でまた先には長い旅が待っている事を。
「おう!若旦那も何か言ってやれよ!」
 いつの間にか復活した大男が一歩引いた場所の男に声をかけた。
「さっきから、いつものだんまりじゃねぇかよ」

シェイラ3/6 23:10:72202cfh78.tJUifDw||219
「……ああ」
 返事はするが身が入らない。見ていられない。気持ちがぐらつく。さっきまでの失態が目の前を走る。一縷の希望に柄にもなくしがみつこうとしている自分が最悪。本当は希望とかそんな物ない事位、気づいてる。
 資格なんてナイ。
「おーい!若旦那からお言葉だってよ!」
 業を煮やしたのか、楽しそうに喋り合う彼女をこっちに引っ張ってくる。
「俺はそんな事、一こ―」
 否定はする。けれど、あっという間に目の前で見上げてくる。

シェイラ3/6 23:10:392202cfh78.tJUifDw||77
「どうした?あたしに言いたい事って?」
 同じはずなのに違う姿で彼女は問う。解っている。言ってはいけない。そんな事言ったら、全てが終わる。
 が、それさえ振りほどいて、飛び越えて、何かをつかもうとする。ポロポロ零れて、今にもほら―
『オ前ノ隣ニハ誰モ居ナイ』
 グジャリ、胸の深奥のソレが蠢いた。途端、鋭い痛みが走る。ゆっくりと濁りが流れ出す。
 グジャラ、ジュル。

シェイラ3/6 23:11:452202cfh78.tJUifDw||821
「お幸せに」
 結局、それしか言わなかった。口元にぎこちない笑みを浮かべて手は下げたまま。
 彼女はその行動に少し、ひっかかる物を覚えた気がした。完璧の中に転がる奇妙なズレ。彼の中の彼でない部分。それが微かに姿を現した気がした。ふと、不安になって問おうとする。
 刹那、
 バーン!
 勢いよく扉が開かれ、明るい声が響いた。
「レ〜イ〜ン♪」
 戸口の所には、体格の良い人物が見える。
「ザ、ザクス!」

シェイラ3/6 23:12:182202cfh78.tJUifDw||231
 そのまま、彼女の手を掴んで千切れろとでも言わんばかりに振り回す。
 勿論、置いてけぼりを喰らって周りはポカンだ。
「な、なんでここに?」
「母君がレインと一緒に式場の準備を査察してくれって。だから、来たんだ」
 ニコニコと笑う。
 そして、仲間に振り返り頭を下げる。
「お話中の折、真に申し訳ありません。レイン連れて行っていいですか?」
「今行かなきゃいけない?まだ、色々と話したい事あったんだけど」
 手を握ったまま伝える。男の様子がやっぱり気がかりだった。
「言ってこいよ。俺達なら大丈夫だ」
 ふっと気付いたように声をかける。

シェイラ3/6 23:12:542202cfh78.tJUifDw||379
「そうね。式の前にあんたの晴れ姿見れてワタシは充分。後はお二人で」
「ま〜。そーだな。これから、時間も腐る位あるし、城ん中見て回るわ。ザクス、案内人一人つけてくれ」
「あんたさいて〜。一国の王子に呼び捨てプラス、タメ口?」
 生き物が一言。
「バッカ!最初会った時『呼び捨てにして下さい』って言ってくれたじゃんか!おれは親しみを込めて言ったんだぜ?なぁザクス?」
「うん。そうしてくれた方が嬉しいよ」
「ほら、な?なー?」
「うっさいなぁ!もう!」

シェイラ3/6 23:13:152202cfh78.tJUifDw||437
 自信たっぷりの青年に憎まれ口を叩く。そのやたらうるさい光景を眺めて大男はまとめを述べる。
「こっちはこっちで暇はどうやら 潰せそうだしよ。言ってこい」
 彼女はちらりと男を見る。微かにうなずくその表情は穏やかだ。
「うん。行くよ」
 ザクスへ向ける。
「ありがとうございます!行こう。案内は、君に任せたよ」
 戸口に控えていたメイドに声をかける。

シェイラ3/6 23:15:92202cfh78.tJUifDw||787
「みんな、ごめんね。また後で」
 ザクスとレインは控えの間から笑い合いながら出て行く。仲良く手をつないで。
「行っちゃったね」
 少年は幾分、寂しいらしく扉を見つめる。
「仕方ねーよ。おれ等は“主役”じゃなくて“脇役”だからさ。脇役は脇役なりに楽しもーぜ」
「そうですね!楽しまないと!結婚式、楽しみです。でも、姉さんにも見せたかった」
 最後の言葉は仲間の談笑の間に消えていく。
「ご案内します」
 メイドは恭しく頭を下げると先頭に立ち、扉を開ける。

シェイラ3/6 23:15:502202cfh78.tJUifDw||764
 先には明るい廊下が遥か先まで続く。そして、視線を転ずれば彼女の居た場所。日の当たる場所。彼にとっては眩し過ぎた。
 次々と仲間が出て行く中で最後に残った男は振り返らずに部屋から出て行く。視線は少し後ろを眺めて。

シェイラ3/6 23:16:132202cfh78.tJUifDw||623

シェイラ3/6 23:16:462202cfh78.tJUifDw||876
 二つの大神の像が見守る中、式は厳かに行われていた。
 見上げれなければいけない程高い天窓には神々の世界創造を編んだと思われるステンドグラスが華やかに光を投げかけて、当たる光は七色にも輝いた。
 聖堂には巨大な白く磨き抜かれた柱がどっしりと林立する。その下に広がる床には屋外であるかのように小さな白い花が咲き乱れている。
 やさしい香りがほのかに立ち上る。そこを長いヴェールと白のすそがするりとなでていく。花々の隣には石床が広がり、群集の足と足とで埋め尽くされていた。
 軽い咳払い。衣擦れ。貴婦人の扇子の内での内緒話。
 ひそひそひそひそ

シェイラ3/6 23:17:132202cfh78.tJUifDw||804
「一年ほど前から婚約を?」
「北の大商人の娘」
「お仲間にあの……」
「第五王子が相手とは」
 良くも悪くもひそらひそら。
 今、新郎、新婦とな二人は各々の親が見守る中、祭壇へと辿り着いた。
 その様子を仲間達はじっと見つめていた。
 ほふっと、青年は隣の珍獣に手を預ける。
「何?」
 じろりと紫の瞳を上げる。
「一つ聞いていいか?」

シェイラ3/6 23:17:342202cfh78.tJUifDw||788
 教皇の奉げる祈りが聖堂の壁に当たって至る所に響く。
「何さ?」
 やや苛立った声が返ってくる。
「幸せだよな?」
 瞳はレインの背に注がれた。
「あんたの目節穴?てか、小石?あれが嫌で嫌でたまんなくて、結婚しにいく悲劇のヒロインに見える?」
 見えたらあんた最高のバカと付け加える。
「なんとなくだけど、解ってたよーな気がしてたんだよね。ほら、レインって浮いた話一つもしなかったし、男に眼中ナシだったから」
「ふーん。そうか」
 祈祷は続く。

シェイラ3/6 23:17:542202cfh78.tJUifDw||486
「あんたのそっけなさ、蹴り百発にあたるんですけど?」
「え、いや、なんかさ」
 言葉足らずの子どもの様に感情が先んじて言いたい事も言えない。
「気持ちは解るけどさ、もうどうにもならないよ?気付いてしまったとしても〜さぁ」
 多分他のには照れ隠しと少々の怒りが彼にそんな行動を取らせたのだと思っているのだろう。
 どいつもこいつもその点鈍いのが多い事だし、あいつもそんな素振りを見せた事ないからと青年は考える。
「多分、最初にさ、おれらん中で結婚すんの最初に知ったんだろうな」

シェイラ3/6 23:18:232202cfh78.tJUifDw||545
 彼女は“誓い”だと言う。故郷、そして、一番大切な人の元へ帰る為の。
 “帰る”事を決めている限り、最後まで責務を諦めないのは当然の事。
(勿論、自分達も諦めようとは露とも思っていないが)
 レインはレインなりに自分自身に前へ進む為の重い重い楔を打ち込んだろうと考えている。これから先についてはザクスも了承してくれているようだし。親もなんとか承諾させたようだ。
 けれど、腑に落ちない。
 確かに、ザクスもいい奴だ。のほほんとしていはいるが、やさしい物腰や王族とは思えない程の気さくさ屈曲してない性格も好感が持てた。
 でも―

シェイラ3/6 23:19:92202cfh78.tJUifDw||759
「おれは嫌なんだ。とにかく、嫌」
 ガキの我がまましか言えない自分が、そんな考えしか浮かばない自分が情けない。
「なら、止めてきなよー。あの、ムッツリ引きずって『その結婚待った!』って」
「止められるわけないだろ?幸せなんだし」
 祈祷は終わりに差し掛かる。
「にしても、意外と鈍くないんだ。自分の恋しか見えない直情バカだと思ってた。『おれは姐さんだけだ!アイラブユー!』とか言ってるくせに。後、あんたの師匠とか?」
「愛してる人に、自分の気持ち伝えなくてどうするんだよ?アイラブユー!ってさあ。師匠は今日もイブシ銀だし、ああ、姐さん、すっげぇ色っぽいぜ」
 熱い視線を送り始める。

シェイラ3/6 23:19:212202cfh78.tJUifDw||652
「あんた、やっぱり生粋のバカだ」
 呆れた声を上げる。
「ま、そんな風に伝えられたら楽だったんだろうけど」
 男の居た方を見るがちょうど大男が壁になって見えない。

シェイラ3/6 23:20:42202cfh78.tJUifDw||616
 二人は教皇に会釈をすると今度は双方の親へと頭を下げる。
 続いて、教皇の代わりに祭壇へとザクスの父親である王が立つ。二人が夫婦として神から認められたと述べた。王は、飾り気はなくとも圧倒的な存在感を秘めた―今後、彼女の武器となる事は間違いない― 一振りの大剣を二人へゆっくりと渡す。
 それを受け取ると参列者へ向き直り、大きく掲げた。
 磨き上げられた刀身は光を乱反射させる。
 眩い光景に人々は一様に声を上げ、神は二人を認めたのだと疑わない。
 本当に幸せそうだった。心から満たされた表情をしている。

シェイラ3/6 23:20:252202cfh78.tJUifDw||99
 その場に居合わせた人々は口々に二人の幸せを願い、明るい未来を展望していた。
 唯一、彼を除いては。
 仲間が笑い合い手を振る中でふっつりと姿を消していた。

シェイラ3/6 23:20:352202cfh78.tJUifDw||309

シェイラ3/6 23:21:192202cfh78.tJUifDw||826
 喧騒がだんだんと遠のいていく。額には脂汗一筋。息が荒くなり、時たま目の前が真っ暗になる。
 男は聖堂を出ると小さな中庭にある噴水までよろよろと歩いた。片手は自らの心臓を鷲掴むように左胸にきつくあてられている。もう、一方は地へつけられていた。
 持病のせいではない。“アレ”だ。
『オ前ノ隣ニハ誰モ居ナイ』
 ジュル
 体を蝕むようにゆっくりと痛みは広がる。
 わしゃわしゃわしゃ。何か解らない。しかし、何かを食む音がする。
「や、やめろ」
 声を上げるが、それを止めることは出来ない。

シェイラ3/6 23:21:592202cfh78.tJUifDw||624
『オ前ノ隣ニハ誰モ居ナイ』
 グチュリ
 抑揚のない乾いた声はそれしか繰り返さない。否、それしか言わない。
「解ってる」
 感情はある。記憶もある。忘れようとした思いもここに。
 しかし、自分の奥にある何かが確実に侵食されてなくなっていく。
『オ前ノ隣ニハ誰モ居ナイ』
 グチャリ

シェイラ3/6 23:22:532202cfh78.tJUifDw||435
「うるさい!」
 耐え切れなくなり、噴水へ体ごと突っ込む。派手に飛沫が上がり、水があっという間に染み渡っていく。
 黒髪が隣でゆらゆら揺らめいている。ひたひたと冷たさと明るい太陽。浮かぶ蓮の葉。
 思ったより深くない水深に彼はすんなりと迎え入れられていた。
 いつの間に痛みは徐々に引き、声は聞こえなくなっていた。あらかた食うものを食い尽くして。あれからだ。敵に連行され、最終兵器の動力源へと自分の命が転換されようとしたまさにその瞬間。
 アレがずるりと入ってきた。
 その後、仲間達の活躍もありこうやって生きてはいる。

シェイラ3/6 23:23:322202cfh78.tJUifDw||306
 けれど、侵食は始まりここまで広がっている。
 食い尽されたらどうなるか。それは、彼の知らぬ事だ。
 確信と言えば一つ。
(俺が俺じゃなくなる)
 みんなに言おうか言うまいか迷った時期もあった。
 きっと、相談すれば嘘だろうと笑いもせずに話を聞いてくれて、策を考えてくれただろう。何故、相談しなかったか。
 彼自身どうにもならないと知っていたからだ。
 感覚がそう告げてくる。
 遅かれ早かれ俺はアレに食われる。
 ならせめて、最後まで仲間と居たい。それがたった一つの願いで理由。

シェイラ3/6 23:24:302202cfh78.tJUifDw||730
 俺を完全に消したらアレは必ず俺の抜け殻を使い、仲間達を苦しめるだろう。
 それだけが、心残りで小瓶を一つ内ポケットに忍ばせてある。
 自らの最後を決める為に。
 彼は手を出し陽光へ上げる。輝くそれはあまりに自分と違いすぎて決して手に入らない物。何かと重ね合わせた気がして、瞳を腕で塞ぐ。
 真っ暗な中に浮かぶのは大切な人の笑顔。
 渡された手紙の励まし言葉と婚約の事実。
 勇気付けの優しい手。

シェイラ3/6 23:25:182202cfh78.tJUifDw||117
 大切だからこそ、言えない。言いたくなかった。幸せな表情を壊したくなかった。
(だから―忘れよう。この気持ちも全て、最後の時まで)
 今度は、あの空を見る事が出来るだろうか。恐る恐る腕をはずし、眼を開けた。
 相も変わらず、ひたひたとあたる爽やかな感触と空へ飛ぶ水音。いつもの青い空の真ん中に太陽が一つ。
 男は胸を抑えた手をはずし、ゆっくりと手を伸ばす。頬に水滴が当たる。眼をすがめながら、太陽の輪郭をそっとなぜた。
 永久に叶わない思いを殺して。

シェイラ3/6 23:26:102202cfh78.tJUifDw||884
○後書き崩れの釈明○
 最初に本当にすいませんでした。かなり甘甘になってしまって。しかも、某有名ゲームみたいな話の展開です。前の作品との関連も解りづらいですし。男性陣いじられまくりで読みづらかったりしたらごめんなさい。後、口調が違うキャラが居るかもしれないです。前のデータが飛んでしまって。
 感想、批評ありましたら返信して下さると嬉しいです。

シェイラ3/6 23:30:312202cfh78.tJUifDw||97
 ★名前について☆
 名前の出てない人にも一応付けているんですが、区別をつける為に敢えて伏せています。今回はあの二人だけ名前を明かしました。これから、ぽつぽつと明かしていくかもしれないので今回気に入ったキャラがいましたら気長に待っていただけるとありがたいです。(リクエストがあれば、プロフィールも添えて出そうかなとも思っていますが)

istint3/7 0:15:135870cfm1s8PmQx/Wo||842
こんばんわ!
シェイラさんの小説は短編ながら流石に世界観がうまくまとめられていて、一つの叙事詩のような表現が美しいですね。
人物の描き方も参考になります。
いつも感想書いていただいているのに返信できなくて申し訳ないです。
また作品楽しみにしてます。
ちなみに前回の分もまとめて拝見しました。
詩を書くのが本当に苦手なので尊敬です!

バルトーク3/8 21:43:542212cfBcsmysAsVME||586
こんばんわー
仲間の結婚式―――でしょうか。
いつもは剣を背負ってる女性が結婚―――はーーー。
そういうギャップっていいですよねv(本気

幸せなんだよな?もう気がついてもどうにもならないのよ〜のくだりが好きです。てヵツボヒットです。
くそぉ、姐さん、すっげぇ色っぽいぜ!

そして、謎多き色男も気になりますねー。いや、恐ろしく単純なだけかもしれませんが。
秘める恋の切なさや、アレの侵食やらを背負った色男。
うん、とてもいい人でございます。

バルトーク3/8 21:44:462212cfBcsmysAsVME||201

いやー楽しませていただきました^^
とてもとても、ボクには書けないような、素晴らしい物語でした。
物語、時間かかってもよいので、是非ともじっくりと書かれてくださいなv

シェイラ3/8 23:12:162184cf8jpSW45xCkA||657
istintさんへ
返信いつもありがとうございます♪自分は詩みたいな表現が小説の中で描けたらなぁと思い書いているのですが伝わっていて嬉しいです。時間軸的には、後ろへ後ろへと行くように書いていこうと思っています。解りづらかったりしたら本当にすいません。参考とは恐れ多すぎるお言葉です。
そんな事ないですよ。自分はistintさんの作品が読めるだけで幸せです。
この間の作品も読んでいただき、ありがとうございます。
詩も小説も精進を重ねていきたいです。

シェイラ3/8 23:56:82184cf8jpSW45xCkA||549
バルトークさんへ
そうです。結婚式ですよ。彼女はギャップが命です(笑)
『幸せなんだよな?』は自分としても結構気に入っているので気にいっていただけて嬉しいです。彼もいい奴なんですけど。何だか、薄幸です。これから、幸せな彼も書けたらいいなと思っています。自分も本当にまだまだ沢山至らない所があってこれから、もっと頑張らなければとバルトークさんの感想を読んで思いました。ありがとうございます☆

シェイラ3/9 0:1:402184cf8jpSW45xCkA||673
バルトークさんお菓子ありがとうございました。
お菓子かじりつつバリバリ戦闘も出来るし小説も書けそうです(違)


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