戻る
10308僕らがいた満月の夜__第一話sIs4/1 17:26:421219cftA2V1/6Xj76


「あ、綺麗な満月」



sIs4/1 17:26:561219cftA2V1/6Xj76||166

 それは、とても見事な満月だった。友達の千佳ちゃんと、公園で日没まで遊んでいた日の、帰りのことである。

「月っていうか、もう一つのお日様みたい」


sIs4/1 17:27:41219cftA2V1/6Xj76||892

 千佳ちゃんは、何かを別のものに例えるのが好きな子だ。
 雨が降ると、空の涙という。地面に残った足跡は、自分で作った道。
 その点、私はというと、

「大きなお饅頭みたい」

 ……例えたところでこんなものばかり。何よりも食欲が旺盛なのだ、それも昔から。


sIs4/1 17:27:131219cftA2V1/6Xj76||780

「……」

 最初は私の例えに対して「変なの」と言っていた千佳ちゃんも、今は軽く無言で流してしまう。そして何となく雰囲気が気まずくなる。

「……」

 私も黙り込んでしまう。喋りづらい空気がしばらく流れる。最近では、ほとんどお約束な流れだから、慣れてきてはいるけれど。
 やっぱり、この時間は何か辛いものがある。


sIs4/1 17:27:271219cftA2V1/6Xj76||148

「……月って」

 そんな中、千佳ちゃんから話を切り出してきた。
 私はちょっと驚いた。大抵、こういうときは私から話し出すから。

「どうして満月だったり、三日月だったりするんだろうね?」
「え? うーん、そうだね、そういえば何でだろう?」


sIs4/1 17:27:401219cftA2V1/6Xj76||637

 千佳ちゃんは立ち止まって、空を仰いだ。私も立ち止まって、月を見上げた。
 本当に、今日はとても綺麗な満月だ。それが、日にちが経つと三日月になったりするのだ。どうしてだろう。

「……空が、食べているんじゃない?」
「は?」

 私が何となく呟くと、千佳ちゃんは気の抜けた声を出した。


sIs4/1 17:27:481219cftA2V1/6Xj76||48

「いや、だからさ、その……あんなに美味しそうなんだもん、空もおなかが減って月を食べちゃうんだよ」

 言ってから私は、自分で言った言葉の意味がちっとも分からなくなった。多分、私のおなかが減っていたから、空も同じように満月を食べたいんだろうな、とか考えていたのだ。こんなところで食い意地を張っても、仕方ないだろうに。

「……あんたって、本当に食べることしか考えていないのね」

 千佳ちゃんは珍しく、無言で流さなかった。でも、言っている言葉の意味に、私はむっとした。


sIs4/1 17:28:11219cftA2V1/6Xj76||560

「じゃ、じゃあ、千佳ちゃんは? 千佳ちゃんはどうしてだと思う?」

 負け惜しみもいいところだ。
 そういえば、周りからは強情だともよく言われる。どうもお母さん譲りのもののようだ。

「あたし? あたしはねぇ……」

 千佳ちゃんは、うーん、と少し唸って考えた。


sIs4/1 17:28:161219cftA2V1/6Xj76||969

「月が光りたい、って思うときに光っているんじゃない?」
「光りたい、って思うとき?」
「ずっと光っていたら、凄く疲れるんだと思うよ。だから、三日月になったりして休んでいるの」
「……それも、変だと思う」

 本当は、変だと思ったのではない。ただ単に私にとって難しい意見だったから、理解できなかったのだ。しかしきっぱり「難しい」というのもどうかと思った。

「じゃあ、あんたのその『空が食べている』ってのが正しいの?」
「え? それは……どうだろう」
「じゃあ……」

 千佳ちゃんはそれ以上返す言葉が見つからなくなったらしく、黙り込んでしまった。私は、もとより黙っている。


sIs4/1 17:28:361219cftA2V1/6Xj76||116

 ―――結局、どうして月の形が変わるのか、分からなかった。そこで私は、家に帰ってからお兄ちゃんに訊くことにした。

「ただいま、ねぇ、お母さん、お兄ちゃん帰ってる?」

 家に入って靴を脱ぐなり、私は大声で訊ねた。

「えー? まだ帰っていないけど」

 ちょうど夕飯の支度をしていたところらしく、台所から魚を焼くいい匂いが漂っている。お母さんの答えより、むしろそっちの方に気を取られた。

「お母さん、今日のご飯何?」
「秋刀魚よー、もうすぐ焼けるところ」

というお母さんの返答とともに、玄関のドアが軽く音を立てて開いた。


sIs4/1 17:28:441219cftA2V1/6Xj76||104

「あ、お兄ちゃん、お帰り! あのさ……」


sIs4/1 17:29:01219cftA2V1/6Xj76||442

 後書き

久々の小説。
バッタライダー以来、3ヶ月ほど経っています。
全三話構成予定です。

とりあえず、和恵ちゃんはその食い意地をどうにかしろよ、と思います(爆)
未だに僕自身は、満月を「お饅頭」と喩える人を見たことがありません。
秋刀魚が出てきているので、多分季節は秋だと思います。十五夜かなー?


2週間に1度のペースで更新したいと思っていますが、果たして大丈夫だろうか、不安。


バルトーク4/2 21:32:482212cfBcsmysAsVME||346
こんばんわー!!
お久しぶりです、そして読後に想像を膨らませられる展開がとても面白いなと思いました。
最初ははぁ?とも思いましたが、考えてみるといや、なるほどこいつはいいなぁと思い、数パターンの妄想が脳内を駆け巡った次第です。
いや、お見事!!

和恵ちゃんのセンスもあれですが、千佳ちゃんのセンスも、人からは一線を外れているような……このふたり、変わり者同士、馬が合ったりしているのでしょうかね^^

ペースを守るなんて、不定期連載の師と仰ぐsIsさんが……
期待させていただきます。
是非頑張って下さいv

sIs4/3 13:13:171219cftA2V1/6Xj76||111

 バルトークさん

|△・)ノシ お久し振りです〜。

この終わり方は、いつまで経っても相変わらず中途半端です(爆)
二話もこんな終わり方かも。成長しろよお前。
一見わけのわからない話ですが、要するにお月様がどうのこうの、って話です。
幼いのにも関わらず、和恵ちゃんと千佳ちゃんのこのセンスは、多分将来大物になってくれそうな気がします。ある意味。

不定期連載ばかりでさすがにマズいかな? と思い、考えを改めました。
今作は出来る限りペースを守っていきたいと思います。


シェイラ4/3 21:25:262202cfBDi0GiBlnFE||451
こんばんわ〜。
とても、可愛い小説ですね。
小さな子どものあどけない視点と千佳ちゃんの物の例え方がとても素敵だなぁと思いました。
小説に漂う物静かな空気が心に染み渡ってくるようでした。

これらからも、応援してます♪



sIs4/3 22:37:321219cftA2V1/6Xj76||367

 シェイラさん

二話ではまったく可愛げのない高校生が出てきます(爆)
子供たちは本当に面白い物事の考え方をしていて、中々聞いていて飽きないものです。
事実よりずっと信じやすいものもちらほら。
二人は小学生なのですが(月の満ち欠けを知らない辺り)、千佳ちゃんは本当に小学生なのか、ちょっと疑いたくなります(笑)



本文(<>," shift+7使用不可)
 ※メルアドや電話番号を公表してはいけません、荒らしを批判するのは「俺が神掲示板」以外は禁止!
 
特殊文字 by.チビファンタジー 過去ログ
無料ゲーム総合サイト: おもしろフラッシュ総合サイト: PS2:GBA:PSP:NDS:GC:XBOX