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10330セイクリッド・ブルー第四部(8)istint4/3 11:35:282182cfs/puTGdHfcg
前回までの話   http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10231.html

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彼はゆっくりとした足取りで牢の前まで歩いてきた。
「君のその力は聖獣のものだね。
 非常に珍しいものを見せてもらったよ。」

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スネイクが牢の間から手を伸ばして掴みかかろうとした。
「てめえ!この野郎!
 ここから出しやがれ!」

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ファディルはスネイクの挑発には乗らずにそのまま続けた。
彼は目の前にいるのにも関わらず生物の気配がその体からは感じられなかった。
まるで、人の形をしたオブジェが話しているような不気味さがあった。
「…君たちも色々と嗅ぎ回っていたようだからもうご存知かと思うが、今は大切なお客様をお迎えしていてね。
 そう、聖蒼教団のお歴々だ。
 彼らはお得意さまでね。
 私にはここのマーケットを仕切る娯楽商業ビジネスの他に、もうひとつの仕事があるんだよ。
 この町の更に北に行くと何があるかご存知かな?」

istint4/3 11:37:372182cfs/puTGdHfcg||150
ニナが何かに気付いたようだった。
ファディルはニナの表情の変化を見逃さなかった。
「そう、封印の地、だ。
 流石エルフの王女だけあって聡明な方だ。
 私はその地への鍵も独占的に管理していてね。
 十神老は欲深くてね、教団はその鍵を欲しがっているのだよ。
 今君達を彼らに引き渡せば済むのだが、古い友人との約束でそういうわけにはいかない。
 これはどうしたものか…。」

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ファディルは少し考えるような仕草を見せて、続けた。
「そこで、今夜君達をここから出す事に決めた。
 私としては教団と戦争をする気は無いし、君たちの首に掛かっているはした金には興味ないのでね。
 武器も返してあげよう。
 それから…」

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言いかけた所に、あの美女が急ぎ足で駈けてきた。
そしてファディルの耳元で何か囁いた。
彼の表情は一瞬こわばったが、すぐに元の落ち着きを取り戻し、美女に向かって何やら指示を出した。
美女はペコッとお辞儀をすると、また走っていってしまった。
ファディルは大儀そうにルヴィンたちに向き直ると、再び口を開いた。

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「…ふう、どうやら教団の方々はお急ぎのようでね、悠長な事を言っている場合ではなくなった。
 ミュウリに時間を稼がせるから君達は今すぐ裏口から出るんだ。
 武器はすぐに届けさせるから安心したまえ。」

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そういうと、彼は牢を開け放った。

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スネイクが飛び出して殴りかかろうとしたが、ニナとルヴィンに止められた。
「君との決着はついたはずだが?
 早くここを立ち去りたまえ、時間の無駄だ。
 私は忙しいのでね、失敬する。
 ルヴィン君、また会おう。」
ファディルは優雅に身を翻すと、その場を立ち去った

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スネイクはその後姿を睨んでいたが、やがて大人しくなった。
「どうしたんだよ、スネイク。
 らしくないじゃないか。」

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ルヴィンに尋ねられたがスネイクは答えずに一言「行くぞ。」といっただけだった。
ファディルに言われたとおりの狭い通路を進んでいくと、小さな部屋に出た。
そこには先ほどの美人が、それぞれの武器を持って待っていた。

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「こちらがあなた方の持ち物です。
 ご健闘をお祈りしております。
 我が主、ファディルの為にも。」

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各々、自分の武器を装備すると、扉の向こうへ進んでいく。
通路は館の裏側へと続いていて、少しだけ外からの音が聞こえた。
ガチャガチャと鎧姿の男たちが走り回る音、大声で命令が飛び交う声がする。
どうやら、既に館は包囲されているらしかった。

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ミュウリがファディルの元へ戻ると、思ったより彼は落ち着いていた。
いつものように椅子に腰掛け、グラスを傾けている。
そこへ、ドンドン扉を叩く音がした。

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「ファディル、ここを開けろ!
 お前に反逆容疑、及び聖域の独占容疑が掛かっている。
 ここを開けなければ言い逃れが出来なくなるぞ!」

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ファディルは真っ白なハンカチで口の周りを拭うと、立ち上がった。
「せっかちな奴らだ。
 見え透いた事を…開けたところで私を拘束するつもりだろうが。」

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やがて、扉は鍵を壊されてドカドカと騎士達がなだれ込んできた。
騎士達は既に剣を抜いていてファディルはあっという間に囲まれてしまった。
じりじりと剣を構えたまま包囲の円を狭めていく。
ファディルはその中心で両手を広げて笑っていた。

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「どうした?騎士諸君。
 君たちが欲しがっているファディルの命はすぐそこだぞ。
 この通り、私は丸腰、絶好の機会だ。
 それとも此処まで来て怖気づいたかな?ハハハ。」

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騎士達はファディルの得体の知れない威圧感に押されて中々踏み込めずにいた。
この男は何を考えているか判らない。
そして何か隠しているに違いなかった。
騎士の一人が重圧に耐えかねてファディルに斬りかかった。
それに続いて他の騎士も剣を振り下ろす。
剣はファディルの腕を斬りおとし、胸を貫いた。

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ファディルは顔をうつ伏せて前屈みの姿勢になり、ヨロヨロと二、三歩後退した。
騎士達が拘束しようと近付いたその時、ファディルはその姿勢のまま肩を震わせた。
そして、可笑しくてたまらないという風に笑い出したのだ。
騎士達は驚いて後ずさりする。

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「クークック、ハハハ!
 少し君達をからかってみたかったのだよ。
 こんなナマクラじゃ私を殺すのは無理だなあ。」
ファディルは仰け反って残っている方の手で額を押さえて笑った。

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彼の胸には剣が刺さったままで、腕も斬りおとされたままだったがなぜか出血していない。
笑っていたかと思うと突然、青ざめて後ずさりする騎士の首を掴んだ。
それも斬りおとされた方の腕で。
騎士はジタバタする間もなく一瞬にして全身の体液が抜けてしまったかのように干からびてしまった。

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他の騎士達は恐怖のあまり我先にと扉のほうへと走り出した。
「おやおや、もうお帰りかな?
 来た時同様せっかちなお客様だ。
 もう少しゆっくりして行き給え。」

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ファディルがスッと掌を振るとドアが自動的に閉じてしまった。
騎士達がどんなに押しても叩いても扉は開きそうに無い。
「このファディル伯からは逃げられない…」
ファディルはゆっくり騎士達に近付きながら胸に突き刺さった剣を抜いた。

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「俺が飛び出して奴らの注意を引くよ。
 スネイク達はその間に切り抜けてくれ!
 俺の青龍なら目立つから囮にはぴったりだし奇襲を掛ければあれくらいの数…。」

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ルヴィンの声をスネイクが遮ろうとした時、後ろからファディルの声がした。
「それは止めておいた方がいいだろうな。」
ルヴィンたちは驚いて振り返った。

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ファディルは新しいスーツに身を包んで何事も無かったかのように振舞う。
「話し合いには応じてくれそうに無いのでね、私もしばらく身を隠すことにしたんだ。
 陽動は結構だが、それ以上に敵が来たらどうする?
 君は敵の戦力の全てを把握しているのかな?
 随分腕に自身があるようだが、君以上の実力者がいないとも限らない。
 そんな敵を相手にしている君を見捨てて仲間は逃げられるかな?
 助けに来ても捕まれば全滅だ。
 スネイク君だってそうだっただろ?
 陽動は静かに、しかも確実にやれるものがやった方がいい。
 まあ、パーティにレンティーニクラスの者がいればそれもありだが…」

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スネイクがファディルに突っかかった。
「じゃあ、その確実にやれる奴がいるってのかよ!
 高説ご立派だがな、今は悠長な事を言ってる時じゃねえだろうが。」

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ファディルは言った。
「私がやるのが確実だろう。
 このパーティで一番実力があるのは私だろうから。」

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さらっと言い放つとファディルは丸腰のままツカツカと敵に向かって歩いていった。
スネイクはファディルの自身過剰とも取れる態度に腹を立てていたが、その行動には驚いたようだった。
武器も持たずに一体どうする気なのだろうか。
しかも彼の体からは通常戦闘に臨む者の核力が全く感じられない。
騎士達は彼に気付いて次第に集まってきた。

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「あの野郎…どうするつもりだ。
 一人でバックレる気じゃねえだろうな?」

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しかし、皆の予想に反して彼は騎士達を相手に戦闘を開始した。
いや、それは戦闘と呼ぶよりも一方的な殺戮。
まるで、あのシェリフェルのように…。
彼と違う点は声が、音が無い事だった。
そう、彼は相手が声を出す前に殺しているのだ。
もしくは何らかの魔力を用いて声を奪っているのだろう。

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彼は振り返るとルヴィンたちに合図を出した。
ルヴィンたちはその合図と同時に街の出口へ向かって駆け出した。
無事町を出て、マシュル森へと出た。
四人は茂みに隠れてファディルを待つ。

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ファディルはその特殊な能力もさることながら、体術に長けていた。
緩急自在の体さばきであらゆる角度から攻撃できる。
しかも彼の身体はどういう事か、剣で斬られようが、魔法の炎を浴びようが全くダメージを受けないのだ。

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「そろそろ、私もお暇したいんだが…そう簡単には行かせてくれそうにないな。
 司令殿のお出ましか。」

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騎士達は一斉に整列してマークス司令を迎える。
司令は白い鉄仮面を身につけていたため、表情は伺い知れなかったが、堂々としていてその貫禄は流石だった。
「…忌々しい吸血鬼め…。
 ここで我が剣の錆にしてくれるわ!」

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「おやおや、吸血鬼とは心外ですな。
 しかし、司令殿に私の呪われた肉体を滅するに足りる技量があればよろしいが。」

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「笑止!」
マークスが剣を振り上げるとファディルの右腕が一瞬にして宙を舞った。

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そして、間髪いれずに物凄い速さで彼の身体を突きまくり、とどめと言わんばかりに火薬を仕込んだ手甲で顔面を殴りつけた。
ファディルはその勢いで数メートル吹っ飛ばされた。
顔面は炎に包まれている。

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「まだだ…むん!」
マークスが剣に魔力を込めて槍投げのように身体を弓なりに仰け反らせると、ファディル目掛けて思い切り投げつけた。
剣はファディルの腹に突き刺さって更に彼の身体は大きく宙に浮いた。
辺りは静まり返る。
騎士達もルヴィンたちも固唾を呑んでその戦いに見入っていた。

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普通の人間ならあの攻撃でとっくに絶命しているだろう。
ルヴィンはかつて一度だけ司令クラスと戦った事があったからその強さを良く知っていた。
あの時もニナとムスティンがいなければ勝ち目は無かった。
助けなければ、と思ったその時。

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ファディルの指がピクっと動いた。
彼は仰向けに寝転がったまま腹に刺さっている剣を抜くと、ゆっくり立ち上がった。
顔は少し煤けていたが相変わらず一滴の血も流してはいない。

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「さすが司令官閣下。
 一瞬で私の腕を斬りおとし、顔面を焼き、全身を穴だらけにするとはお見事です。
 …が、この程度では私はまだ死なないようですな。」
ファディルは剣を無造作に地面に転がした。

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マークスは別段驚いた様子も見せず、新しい剣を構えていた。
「フン…貴様がその程度で倒せるとは思っておらん。
 さあ、いつまで俺の攻撃を受けて立っていられるかな?」

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ファディルは斬りおとされた腕を一瞬にして再生させ、少し腰を落として拳法家のように構えた。
マークスは何のためらいも無くファディルに斬りかかる。
今度も腕を跳ね飛ばそうと考えていたが、ファディルにその剣を素手で受け流された。
剣の腹を手の甲で払うとそのまま兜の上からマークスの顔面に肘を入れた。
そして、クルっと後方宙返りをしながら、顎を蹴り上げる。
着地し、ファディルがよろよろと態勢を崩しかけたマークスの腹に掌を当てると、何か衝撃を受けたようにマークスは大きく後方へと仰け反った。
マークスは鎧を着ていたが、衝撃は内臓にまで達しており、思わず地面に膝を付いてしまった。

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「がはっ…貴様のその技は…まさか…」

istint4/3 11:49:352182cfs/puTGdHfcg||575
その時、爆音を立てながら一機の小型飛空艇がこちらへ向けて飛んできた。
ファディルは服に付いた埃を払うと、飛空艇へと合図を送った。
すると船体から梯子が下ろされて、ファディルは飛び上がるとそれにしっかり掴まった。
ファディルはニコニコ笑いながらマークスたちに向かって手を振る。

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「私は忙しい身でね、残念ですがこれ以上あなた方のお相手をしている暇が無いのです。
 そちらの基地は親愛なる教団諸君に進呈しますよ、私にはもう必要の無いものですから。
 それでは、ごきげんよう!」

istint4/3 11:50:12182cfs/puTGdHfcg||40
マークスが船を指差して何やら叫び、その後雨のように矢玉が飛んできたが、ファディルは悠然とその場を後にした。
彼が船のコックピットへ行くと、操縦席でミュウリが出迎えた。

istint4/3 11:50:162182cfs/puTGdHfcg||823
「随分、はしゃぎまわっておられたようですね、お洋服がボロボロですわ。」
「そんなことより、アレは持ち出せたのか?」
「相変わらずせっかちですこと。」

istint4/3 11:50:282182cfs/puTGdHfcg||72
そういうと、ミュウリは隣の席の上に置いてあった袋から一つの石を取り出した。
石は拳ほどの大きさで表面はゴツゴツしており、鈍く青い光を放っていた。

istint4/3 11:50:442182cfs/puTGdHfcg||740
「…ご苦労。見事な手並みだった。
 あ、それからあと一つ頼まれて欲しいんだが、あの四人も拾ってくれ。
 彼らはレンティーニの知り合いらしい。
 あの森のどこかに身を隠しているはずだ。」
「まあ、レンティーニ様の?
 でも、この狭い船に六人も乗ると窮屈で仕方ありませんわ。」
「まあ、そう言うな。
 ああ、あそこだ。あの辺りに生命反応を感じる。」

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「一体あんた何者なんだ?」
ルヴィンが尋ねた。

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ファディルにはまだまだ謎が多い。
「安心したまえ、君たちの敵ではないことは確かだ。
 それにその質問は漠然としすぎている。
 もう少し答えやすく聞いてもらえると有難いのだが。」

istint4/3 11:51:482182cfs/puTGdHfcg||901
ファディルはルヴィンたちが乗り込んで来る前に新しい服に着替えており、先程まで戦っていたとは思えないほどの気品を湛えていた。
その柔らかい物腰と、仕草の一つ一つが洗練されており、貴族のようだ。

istint4/3 11:51:592182cfs/puTGdHfcg||130
突然、ずっと黙っていたニナが口を開いた。
「…こんな言い方をすれば失礼に当たるかも知れませんが、あなたは人間なのですか。
 私には、もっと別の何か…」

istint4/3 11:52:202182cfs/puTGdHfcg||711
「無理も無い。私の戦いを見ていたのならばな。
 結論から申し上げましょう。
 私は人間です…が、この肉体が呪われているのです。
 かつて私は闇ソーサラーと対峙し、その力に魅入られた。
 私は彼女を殺すつもりだったが、あっけなく返り討ちにあい、死を覚悟した。
 しかし、彼女は私の命を取る代わりに私の肉体にその力の一部を植えつけた。
 ですから、私の身体には核力も存在しないし、血液も流れてはいない。
 まあ、ジスティのようなものですよ。」

istint4/3 11:52:342182cfs/puTGdHfcg||744
彼は驚くほどあっさりと事実を受け入れていた。
更にニナが質問する。
「驚きました。
 しかし、なぜあなたは正気を保っていられるの?
 他のジスティは闇に魂を繋がれ、生への渇望のみが精神を支配していると聞きます。
 それなのにあなたは…」

istint4/3 11:52:492182cfs/puTGdHfcg||968
「左様、私は普通のジスティとは根本的に違うのです。
 汚染されたのはこの肉体のみ。
 彼女はこう言った。『あなたをザファの玩具にするのは勿体無い』とね。
 私にはザファという言葉が一体何を表しているのかは判りかねますが、恐らく私の中に彼女にとって有益な何かがあったのだろう。
 いや、何も無い、ただの気まぐれかもしれないが…。
 まあ、色々なものを失ったがこの身体のおかげで得たものもある。
 私は生き続ける事を強いられているのですよ。」

istint4/3 11:53:02182cfs/puTGdHfcg||955
そう言った彼の目はどこか哀しげだった。
黙って聞いていたスネイクが会話に割って入った。

istint4/3 11:53:122182cfs/puTGdHfcg||741
「そりゃあそうと何か大事な事、忘れてねえか?
 こいつはレンティーニの知り合いのジェイドって男を殺したんだぞ。
 一体何がてめえの目的なんだ?」

istint4/3 11:53:222182cfs/puTGdHfcg||957
「その質問には私がお答えしましょう。」
操縦席からミュウリの声がした。

istint4/3 11:53:542182cfs/puTGdHfcg||382
「あなたは何か勘違いをなさっています。
 ファディル様はジェイドという男を殺してはいません。
 無闇に命を奪うような事はなさらないお方です。
 それから、ファディル様は表向きはマシュルの裏社会のボスですが、目的はそんなことではございません。
 お金は単に目的を成就する為の手段です。
 あなたもそれほど巨大な組織を運営する為に、敵対勢力等からの略奪を已む無しとされているのではございませんか?
 私たちもあなた同様、大きな事業を行おうとしているのですよ。」

istint4/3 11:54:72182cfs/puTGdHfcg||762
その後も問答が繰り返されたが、結局ファディルとミュウリは最終的な目的をはっきりと話すことはなかった。
ただ、彼らは彼らの目的の為にルヴィンたちが必要だといった。
スネイクは反発していたが、ニナの諜報活動で得られた情報から、彼らが聖域への鍵を握っている事は確かだったのでしばらく同行する事にしたのだった。

istint4/3 11:54:222182cfs/puTGdHfcg||62
「この船、どこに向かってるんだ?」
ルヴィンが尋ねた。

istint4/3 11:54:442182cfs/puTGdHfcg||70
ファディルは地図を広げると、指をさしながら説明する。
「今、我々がいるのはこのルナグディ領の端のこの山脈の辺りだ。
 航路は東を向いているから、山脈を越えてサリエナ領へ入る。
 この両国が戦争中なのは知っているかな?
 戦時の混乱に乗じればサリエナのレーダーを誤魔化して領土へ侵入する事が出来るだろう。
 この船はサリエナを横断し、さらに北上する。」

istint4/3 11:55:22182cfs/puTGdHfcg||805
そう言いながら、彼は指を地図の外へとなぞっていった。
ルヴィンが訝しげに地図を見つめる。
「ってことはつまり…」

istint4/3 11:55:222182cfs/puTGdHfcg||82
「まだ地図に記されていない場所がある。
 そこに禁断の地、聖域への鍵があるのだ。」

istint4/3 11:55:402182cfs/puTGdHfcg||592
ルヴィンは目を輝かせた。
地図にも載っていない場所へ行けるなんて!
ファディルはそんなルヴィンを見て微笑んだ。
そして地図を片付けると、船外の月をじっと見つめる。

istint4/3 11:55:542182cfs/puTGdHfcg||693
(この子が、私の元へ現れるとは…偶然なのか…?
 それとも、始まろうとしているのか。)

istint4/3 11:56:202182cfs/puTGdHfcg||495
船はそれぞれの思いを乗せて飛んでいく。

istint4/3 11:56:432182cfs/puTGdHfcg||96
第四部(完)

istint4/3 12:0:482182cfs/puTGdHfcg||315
こんにちわ。
長かった第四部もようやく完結です。
シェイラさん、遅くなりましたが感想を寄せさせていただいてますので、良かったらご覧下さい。
今回の小説も素晴らしい出来栄えでしたね。
えっと、次回からは第五部なのですが、良かったらまた読んでください。
ではでは。

シェイラ4/3 22:13:422202cfBDi0GiBlnFE||581
こんばんわ〜。
第四部お疲れ様です。
一言で言わせて頂くと……すごい面白いです!
特にファディルが仲間になったり、ファディルの戦闘能力が明かされたりとか。
ミュウリ何気にカッコイイですねv
船を軽々と操作したり、博識そうな所がツボです。
自分はカッコイイお姉さんキャラが好きなので、応援してます☆
第五部も楽しみにしています♪

istint4/3 23:49:512182cfhKsno/MMNVg||887
早くに感想どうもです〜。
ミュウリかっこいいですか!自分もそう思って書いたのでその感想はすごく嬉しいですよ!
なーんか話にテンポが出ないから心配しているのですが、シェイラさんのような実力派に感想を頂けて光栄でっす。
五部もだらだら展開にならないように気をつけます^^;


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