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10455僕らがいた満月の夜__第二話sIs4/15 17:32:181219cftA2V1/6Xj76


僕らがいた満月の夜
                  第二話



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 秋の日は釣瓶落とし、とはよく言ったもんだ。
 さっきまで高いところで照っていたのに、気がつけばもう、太陽は山の向こう側に隠れている。東の空には、ぱっとしない秋の星座がいくつか見える。今日は満月らしく、そのせいか、いつも以上に星が暗く見える。
 僕は、補習でずっと学校に居残っていた友人の春樹と一緒に、秋風の吹く中を歩いていた。


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「数学と縁のない生活がしたい」

 すっかり元気をなくした春樹(はるき)が、うなだれながらぼそっと言った。

「足し算や引き算とも縁のない生活?」

 苦笑しながら、やんわりと返した。どんなものだろう、足し算や引き算とも縁のない生活って、と密かに考えながら。確かに、ベクトルなんて勉強したところで、普段の生活のどこで使うのか分からないけれど。


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「そうそう、計算なんかしなくてもいいような、気楽な世界。だってさぁ、数字って堅苦しいじゃん」
「どの辺が堅苦しいんだか、ちょっと分かんないんだけど」
「そりゃあ、お前は頭いいもん。賢いですねー、甲川(こうがわ)鴫宏(しぎひろ)君は」

 思ったことを正直に言ったら、春樹がへそを曲げてしまった。いつもそうだ、僕が正直に思ったことを言うと、皆ひねくれてしまうのだ。何が悪いのか、いまだに分からない。言い方に問題があるのだろうか。


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「そんなに気を悪くするなって、僕は春樹のようにサッカーは上手くないよ?」

 このままずっと気を悪くされるのも嫌なので、一応フォローをしてあげる。春樹は典型的なスポーツ少年だ。いつも本気になりすぎて、爽やかとはいえないが。

「そうか? そうだよな、お前は短距離走ですら遅いもんなぁ?」

 褒めるとすぐに調子に乗る。乗りすぎて他人の悪口まで言い始める。扱いが難しいからか、春樹と仲良くする人をあまり見たことがない。


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「それじゃあ、また明日」
「おう、またな」

 しばらく数学のことであれこれ無駄話を展開してから、国道の交差点のところで、僕と春樹は別れた。春樹の姿が遠くなって見えなくなるのを待ってから、ふう、とため息をつく。

「さて、今日も登るか」

 ガソリンスタンドの眩しい照明のそばで、星が沢山出始めた空を見上げてから、家とは違う方向に歩き出した。


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 ―――僕が暮らす町は、わりと大きい。
 そのことで何が苛立たしいのかというと、星をまともに見られる場所がないことだ。自宅は住宅街のど真ん中にあるために、街灯やら雑居ビルやらが邪魔で、眺めるどころの話ではない。肉眼で見えるかどうか、というところから始まる。
 僕は、山裾にある高校に進学した。その高校の近くにある、山の中腹にある展望台からなら、綺麗に星を見ることができると思ったからだ。
 当然、山を登る必要は出てくるが、それでも星を見る価値はあると僕は思う。


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「……あれ?」

 展望台に登ると、普段は絶対にいないはずの先客が、今日はいた。
 後姿からして、どうやら少女のようだ。長い黒髪を静かに吹く風になびかせて、東の方をじっと見上げている。足元に鞄を置いて、微動だにせず眺めている。よく見ると、服装はうちの学校の制服だった。
 僕はどうしていいか分からず、しばらく突っ立っていた。声をかけるべきなのか、それともこのままじっと彼女が見終わるのを待つべきなのか。

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 葛藤していると、ふっと少女が振り返った。真っ白な肌に、整った顔立ち。綺麗だが、しかし、どこか哀しそうな、悔しそうな、そんな表情をしている。

「あなたも、そんなところでいつまでも立っていないで、こっちに来たら?」

 それだけ言って、また東の空を眺め始めた。僕はおずおずと歩きながら、彼女の横に行き、同じように足元に鞄を下ろして、星を眺め始めた。

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 春樹と一緒に帰っているときは気づかなかったが、今日はアンドロメダ銀河がしっかり見える。暗い星ばかりの秋の星空だが、これほどしっかりと見えるのは珍しい。普段は目を細めないと、はっきりと見えることはないのに。やはり冬が近づいているのだろう。


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「星が、一杯……」

 十分だか、二十分だか、しばらくの沈黙を破って、少女がふっと呟いた。何を考えているのかが、まるで感じ取れない声色だった。しかし、無感情、無感動というわけでもなさそうだった。
 突然呟いたので、僕は少し驚いた。
 できればこのまま、一言たりとも言葉を交わさずに、ずっと見ていたいと思ったのだが。願いというのは案外叶わないものだと思う。

「……一杯で、綺麗だ」

 悩んだ末に、これ以上会話が成立しないよう、当たり障りのないことだけ言った。

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 しかし、やっぱり願いは叶わないものだ。

「そんなことはないわ」

 抗弁するような声が聞こえた。と同時に、あぁ、と肩を落とした。ただでさえ人と喋るのは苦手だから、会話をしなくて済むように考えたのに。浅い思考力では所詮こんなものか。


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「……というと?」

 会話が続くなら、せめて自分の発言回数を減らそうと思った。相手に長々と説明させたら、こっちは何も喋らずに済む。
 そう考えて返事を待ったが、返ってこない。あれ、と思って少女の方を向くと、彼女は眺める対象を星から僕に移していた。視線が向いているとは、気がつかなかった。
 少女は、しばらく何も言わず、僕を見つめ続けた。


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 後書き

人物が小学生から高校生へ、実に奇妙なシフトをしました。
ちっとも繋がりがないですが、第三話で繋がります(予定)

鴫宏の嫌味とか、春樹の調子乗りとか、自分で書きながら思いました。
「こんな思考を思いつく僕って、一体……」
ちょっと凹んだ春の夜。

「甲川鴫宏」は「こうがわ しぎひろ」と読みます。
両親のネーミングセンスに万々歳。


sIs4/15 17:34:421219cftA2V1/6Xj76||186

 バックナンバー

第一話 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10308.html


4/15 21:45:366038cfv.gMe/gzNiY||881
こんばんはm(__*)m

星を綺麗と表現するのに微妙な心境の自分が
ちょっと少女に惹かれ気味なのは置いといて……。

一話目はおいしそう発言。
二話目にはどんなビックリがでるのかと思いきや……

自分てきには山登りがツボに来ました(何故;

不思議な少女と主人公の絡ませ方にsIs様独特の雰囲気があって
流石とため息が出ました。

次回も頑張ってください。

新黒4/16 20:15:152032cfUJ2s6etciEU||681
 こ……こんばんは(#・ω・`)

 ぶ……文章作法が完璧で、とても素晴らしい作品だな、と率直に思いました。
 んー雰囲気が透明な感じの表現の仕方ですねー透明って言うと意味不明なので綺麗で読みやすい作品だなと思いました。
 
 ファンになってしまったらしいです。次回も期待しますねー(#・ω・`)
 

sIs4/16 21:19:261219cftA2V1/6Xj76||972

今本文を見返したら、「甲川鴫宏」にしっかり振り仮名が打たれていました。
ルビのタグはこんな風に反映されるんですねー(・△・;)


 武さん

しかも制服で、Uターンして山登りです(笑)
鴫宏君の星に対する執着はなかなかのものだと思います。
「少女」に惹かれ気味のようですが、重症にならないよう気をつけてください(爆)
彼女を気に入った人は大抵変な人のようで orz
武さんは大丈夫ですよねっ!(切実)


sIs4/16 21:19:321219cftA2V1/6Xj76||712

 新黒さん

こんばんは(o_ _)o

綺麗だとよく言われますが、内容は実はスカスカだったりして(爆)
自分の作品には、どうしても自信を持てないのが人間なんでしょうか。
「素晴らしい」とはっきり言ってもらえると嬉しいです。

期待に応えられるよう、しっかり頑張ります。


シェイラ4/19 23:27:132184cf/BXuJCmai6s||877
こんばんわ〜。
前々から思っていたのですが心象的な作風がすごい好きです。
会話や言葉の流れが自然で、読んでいて自分も物語に引き込まれててしまいそうなそんな印象を受けました。
甲川君自身も春樹君も謎の美少女も一筋縄じゃいかないような味のある性格のキャラで面白いです!
自分は解り易い性格しか書けないんで憧れます☆
次も素晴らしい作品期待してます♪

sIs4/21 1:47:311219cftA2V1/6Xj76||117
こんな遅くまで起きている悪い子シス君。
返信したら寝ますヨ。

 シェイラさん

何とか思い通りの結末に持っていきたい、と思って、甲川君には脈絡のない発言をさせてみました(爆)
しかしどうも第三話の方が曲者のようです。現在難航中。
基本的に僕が書く人は(僕自身が変だから)変なのばっかりです。
なのでかなり難しい小説になってしまうようですが、ゆっくりとお付き合い下されば…|△・)ゞ



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