| 10512 | 僕らがいた満月の夜__第三話 | sIs | 4/29 16:7:57 | 1219cftA2V1/6Xj76 |
僕らがいた満月の夜 第三話 | ||||
| sIs | 4/29 16:8:2 | 1219cftA2V1/6Xj76||465 | ||
一分が、二分が、どんどん経っていくような、変な感覚に襲われた。実際には秒単位の時間しか流れていないはずなのだが、この少女が目の前にいると、時間の流れが何倍も遅くなるような気がした。 眼の色の判別がつかない夜空の下で、いつまでも見つめられ続けるのは、少し気味が悪かった。それでも眼を逸らさなかったのは、自分でも何故だかよく分からない。理由なんてなかったのかもしれない。義務のような気がしたから、逸らさなかったのかもしれない。 | ||||
| sIs | 4/29 16:8:11 | 1219cftA2V1/6Xj76||672 | ||
「……星って、何だと思う?」 「はっ?」 「星って、私達が見ている数よりもっと沢山あって、それはもう本当に、数値では表せないくらい。それでも一つ一つ違っていて……。要するに、星って人間なのよ。命を終えた人間が、星になって生き返ったの。欲望と悪意で動く人間が、綺麗だと思う?」 『思う?』と言われても、「さあ?」としか答えられない。 星は人間? それは一体どういうことだ。 | ||||
| sIs | 4/29 16:8:20 | 1219cftA2V1/6Xj76||854 | ||
「……分からないよ」 言ってはみたものの、この『分からない』が何に対してのものなのか、それすらはっきりしない。 「輪廻転生の考えよね。死んだら別の生命になって生き返ってくる、という考え。星は、生命とは違うけど」 そう言われても、僕は輪廻転生の考えを肯定しているわけでも、理解しているわけでもないから、ぴんと来ない。 | ||||
| sIs | 4/29 16:8:32 | 1219cftA2V1/6Xj76||462 | ||
「人間は欲望と悪意に満ちている。だから、綺麗ではない。綺麗ではないものに名前をつけられたものは、綺麗とは言えない。『星』だって同じで」 「……それじゃあ、星を見にここに来たわけではないんだ」 「そうね、違うわ」 「じゃあ何で? ここに来た理由は? 空を眺めて、何をしていた?」 | ||||
| sIs | 4/29 16:8:40 | 1219cftA2V1/6Xj76||325 | ||
そのときの僕の視界は、凄く主観的で、凄く狭かった。思い込みにすぐ走るほどだった。 夜空には星しかないと思い込んでいた。この世で一番綺麗なものは星だと思っていた。だけど、今自分の目の前にいる少女は、それをきっぱり全否定した。それならば、他に何があるというのか。 人間が名づけたものに綺麗という言葉は合わない、と言った彼女。それならば、さっきまで空を眺めていたのはどうしてか。何を見るためなのか。何も見ていなかったのか。いや、そんなことはない。下校時間も過ぎていて、尚且つ学校より更に山奥にあるこの場所へ、何も理由がないのに来るはずはない、と。 | ||||
| sIs | 4/29 16:8:51 | 1219cftA2V1/6Xj76||924 | ||
「……あなた、星以外に何も見えていないの」 そのことに気づいたきっかけは、彼女の言ったその言葉だった。でもまだ認めていなくて、星以外に夜空に何があるんだ、と心の底から反論した。 「『月』があるじゃない、星よりも綺麗に見えるものが」 「……月だって、人間に名づけられたものだよ」 それを綺麗だと言うのなら、さっきの言葉と矛盾する。段々わけがわからなくなってきた。反論というより、八つ当たりと言ったほうが近い。 | ||||
| sIs | 4/29 16:9:1 | 1219cftA2V1/6Xj76||405 | ||
「そうね、だけど、月は星と違って、一つしかないから、人間の生まれ変わりではないもの。 宇宙という視点からすれば、確かに『月』も結局は『星』の一つでしかないわね。でも、地球から見れば、月は星とは違った扱いになっている。『星』とは別の、独立した一つのものとして。その分、月は星より綺麗よ。それに……」 一度、彼女は言葉を切った。僕から視線を外し、ちっとも統一性のない街の光を眺めた。眼を少し瞑り、また東の空を見上げる。今日は、満月だ。 | ||||
| sIs | 4/29 16:9:8 | 1219cftA2V1/6Xj76||936 | ||
「私は、綺麗だとは言っていない。綺麗に『見える』と言ったわ」 「……どう違う?」 「本当に綺麗なわけじゃなくて、あくまで私たちから見れば、綺麗に見えるだけ、ということ。この世で本当に綺麗なものがあるとすれば、私たちがまだ見つけていないものでしょうね」 彼女は口を閉じて、ふう、とため息をついた。足元に置いていた鞄を持ち上げ、風で多少乱れた髪を整えて、こちらに向き直る。 | ||||
| sIs | 4/29 16:9:20 | 1219cftA2V1/6Xj76||196 | ||
「雲が出てきたから、私は帰るわね。あなたも遅くならないように、気をつけて」 あとは振り返らず、すたすたと歩いていく。確かに普通に歩いているだけなのに、凄く足取りは軽くて優雅で、実際の距離よりももっともっと遠く感じた。 「……あ、あのさ」 声を張り上げて、呼び止めた。 彼女は足を止めて、また僕の方に向き直った。表情に、変化はまったくない。 | ||||
| sIs | 4/29 16:9:29 | 1219cftA2V1/6Xj76||145 | ||
「あのさ、名前、教えてくれる?」 別段深い意味も理由もなかった。やっぱり表情は変わらなかったが、でも答えてくれた。その名前は、とても深いところまで突き進んでいくような、澄んだ声で響いた。 「……深島(みしま)月葉(つきは)」 それ以上言葉もなく、彼女は展望台を去っていった。 | ||||
| sIs | 4/29 16:9:36 | 1219cftA2V1/6Xj76||367 | ||
| sIs | 4/29 16:9:46 | 1219cftA2V1/6Xj76||200 | ||
今まで、星を見ていた。一番綺麗なものは、星だと信じてやまなかった。 今日、それを初対面の人に全否定された。でも、気分は悪くなかった。彼女は、僕の視界の狭さを教えてくれた。そして今日、僕はそれを知った。 今までの考えを捨てたわけではない。今でも星は綺麗に見えるものだと思っている。ただ、一番綺麗だとは思わなくなった。彼女が言った『綺麗なものは、人間がまだ見つけていないもの』という言葉が、妙に脳裏に残っていた。 彼女の名前は、深島月葉といった。 | ||||
| sIs | 4/29 16:9:55 | 1219cftA2V1/6Xj76||7 | ||
「……人が見つけたものは、綺麗じゃない、か」 意固地だった自分には理解できなかった。少し成長した僕には理解できるものだった。 街の中で、ほとんど星が見えない空を見上げた。姿が変わっている、と確信した。それは、僕が変わったという証拠になるものだった。 嬉しくなって、僕は早足で家に帰った。 | ||||
| sIs | 4/29 16:10:7 | 1219cftA2V1/6Xj76||45 | ||
「あ、お兄ちゃん、お帰り!」 家に帰ると、妹の和恵が明るく言った。ただいま、と返事する。 「あのさ、お兄ちゃん、何で月って満月だったり、三日月だったりするの?」 突然だったが、驚かなかった。いつものことだから、慣れている。 僕は少し考えて、小さく呟いた。 | ||||
| sIs | 4/29 16:10:13 | 1219cftA2V1/6Xj76||641 | ||
「月にも、人間を見たくないときがあるんだよ」 | ||||
| sIs | 4/29 16:10:24 | 1219cftA2V1/6Xj76||164 | ||
■ 後書き 終わったー! 何とか2週間1話更新ペースを守れた。凄いぞsIs(そんなことはない) ということでお付き合い有難うございました(o_ _)o 結構好評だったようで嬉しい限りです。 第二話では人気だった謎の少女、月葉さんですが、今回で思考回路が暴露されました。 どんな風に印象が変わっているのか、少し期待(笑) | ||||
| sIs | 4/29 16:10:33 | 1219cftA2V1/6Xj76||249 | ||
■ 無駄話 書いている途中で気づきました。 「そうかぁ、甲川君の性格は僕に似ているのか」 (正しくは似てしまった?) だから台詞があんなに簡単に浮かんだのか。そうか。……。 とても凹んだ土曜日の夕方。 | ||||
| sIs | 4/29 16:10:43 | 1219cftA2V1/6Xj76||645 | ||
■ バックナンバー 僕らがいた満月の夜 第一話 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10308.html 第二話 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10455.html | ||||
| きよの | 4/29 18:22:33 | 6125cf26Wa9Fx21C6||720 | ||
| ある日、僕らはきれいな満月を見ていた。すると、不思議なものが、目に入った。狼だ!僕らはあせって逃げようとした。だが、よく見ると、犬だった。僕らは、プッと笑った。 | ||||
| 武 | 4/29 19:21:16 | 2221cfOm88ZLhvKqs||317 | ||
| ∀`)こんにちは ふむ。綺麗ではないですか。 綺麗という言葉すらどちらかというと 汚れている(綺麗ではない)ということになり 汚れた(綺麗ではない)言葉で表されなければいけないものは 全て綺麗では無くなるのでは…… その点では確かに『綺麗なもの』は人に見つけられていないもの しかしこの考え方は輪廻転生に基づいての…… | ||||
| 武 | 4/29 19:21:35 | 2221cfOm88ZLhvKqs||540 | ||
| あれ?感想じゃなくなってましたorz 内容が濃く、一話と二話の繋げかたもスムーズでよかったです。 ただ主人公の考えの移り変わりの描写がもうちょっとあったら 更に良いものになるような感じがしましたm(__*)m 二週間に一話更新ペース保持、おめでとうございますヾ(*´∀`)ノ 無駄に長い文面、失礼します* | ||||
| sIs | 4/29 22:23:42 | 1219cftA2V1/6Xj76||189 | ||
■ きよのさん 満月の夜に犬を見れば、確かに狼だと錯覚してもおかしくなさそうですね。 | ||||
| sIs | 4/29 22:23:46 | 1219cftA2V1/6Xj76||337 | ||
■ 武さん 綺麗、汚いの定義とか、輪廻転生については、僕もあまり分かっていないし、個々人によって考えは様々なはずなので、あえて言及はしません。 話の中ではああやって語らせましたが、僕自身の考えではないです。 深島さんであればああだろうなぁ、と(話を書く上でその考えはどうなの) 鴫宏の考えの移り変わりの描写は、確かに足りないと思っていました。 しかしあれ以上書くには、思考回路がちょっと足りなかったようです。すみません。 もっともっと精進しなければなりませんねo(´^`o) 今度は1週間ペースにも挑戦したいと思っています。 | ||||
| きよの | 4/30 17:5:5 | 6125cf26Wa9Fx21C6||726 | ||
| sisさん、かってにかいて、ホントにごめんなさい。私どこに書けばいいかとか、よく知らないもので・・・。今度から気をつけます。 | ||||
| sIs | 4/30 17:47:5 | 1219cftA2V1/6Xj76||129 | ||
■ きよのさん いえいえ、気にしていませんよー。 自分の作品を投稿したいときは、掲示板の一番上にある「新規スレッド」のボタンから書き込めばOKです。 | ||||
| バルトーク | 4/30 17:59:29 | 2212cfBcsmysAsVME||751 | ||
| こんばんわー!! ペース完守での完成、おめでとう御座います♪ おいらも是非見習いたいっす。 綺麗な物といえば、僕は星でも月でもなく、地上の星。 そう、人なんでないかなーと考えている派です。 ですけど、作品に共感できないとかそういう訳じゃないっすよ。 地上の星の歌詞の一部に『人は空ばかり見ている』という言葉があって、その言葉が頭の中にループしてました。 それがこの現実をストイック?に見ているような二人に凄く当てはまる気がして。 そういうインスピレーションが来たわけであります。 正直、鴨川君はそれに気が付いているけど、分かりやすい星にすがっているのではないのか?何ていう深読みまでしてしまいました(;^_^A | ||||
| バルトーク | 4/30 18:5:42 | 2212cfBcsmysAsVME||856 | ||
| うえっ、長い上に意味わからないっすね。 勘弁です; 月葉さんは、更にぶっ飛んでいるような気がしてきました。 もう、変わった子から、電波にランクアップしそうです。 正直、難しいキャラな雰囲気もしますが、妹さんとの絡みとかうまく動くと、とても魅力的なキャラだと思うので、是非シスさんの腕前に期待でっす。 電波っ子も嫌いじゃないですけど、てかむしろ好きv 今度は一週間ペースに挑戦されるようで、頑張ってくださいっす!! | ||||
| sIs | 4/30 19:24:42 | 1219cftA2V1/6Xj76||475 | ||
■ バルトークさん 人が一番綺麗説も、勿論ありだと思います。 ちなみに僕は星空は綺麗だと思います。 この作品を書いているのにこの考え、矛盾しているけれど(爆) 地上の星の存在を感付きながらも、それを見ようとしない鴫宏に、きっかけを作ってくれたのは月葉、そんな解釈も楽しいです。 月葉は電波とはちょっと違うかも。現代の感覚でいけばそうかもしれませんが。 大時代な物言いをする人、を目指してみたんですが、微妙に食い違った。悔しい。 和恵ちゃんとの絡みはあるでしょうか。千佳ちゃんと組ませると楽しそうです。 | ||||
| シェイラ | 4/30 23:11:50 | 2191cfklMON/dq.v.||579 | ||
| こんばんわw この話を読んですごい面白い考えだなと感じました。 人間が生まれ変わった姿なら『星』は“綺麗”じゃなくて、月は“綺麗”。 自分は深い考えを持って、星や月を見た事がないので、そんな考えが出来る月葉はすごい大人だなと思いました。(勿論、 彼女を生み出したsIs さんも素晴らしいです!) 続きが楽しみです♪ | ||||
| sIs | 5/4 21:22:32 | 1219cftA2V1/6Xj76||840 | ||
■ シェイラさん お返事遅くなりました。 僕も、星や月を見るときに深く考えることはあまりないです。 幼かった頃は(この頃から既に嫌味ったらしい性格だった気が)子供なりに色々考えながら見ていたりもしたものですが、忙しくなるとそんな余裕もなくなってくるようで。 月葉を気に入ってくれて有難うございます。大人というよりは変人ですが(爆) | ||||
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