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10605悪の三匹珍道中〜出張編〜(小説)シェイラ5/20 23:50:582182cfdG1WuKZW4pg
今までの作品は……。

鏡。(小説)&物語(詩)
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愚か者のフリ(小説)
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今回は悪役にスポットを当ててみました。
もし良ければ、どうぞ〜。

シェイラ5/20 23:53:62182cfdG1WuKZW4pg||475
悪の三匹珍道中〜出張編〜

シェイラ5/20 23:53:372182cfdG1WuKZW4pg||244
「くそっ!あのじじぃ!取って返ってぶっ殺す!」
 またです。
 コレが何度目の咆哮でしょうか。
「だ・か・ら!大量虐殺は禁止だって言われてないか?」
 彼女の制止の言葉もこれで何回目でしょうか?
 思い出しました。
 今ので五十二回目です。
「あいつだけ殺る!あいつだけ!あんのひげのじじぃ……ひげ、ひげだけ!」
 あ〜また興奮してます。血が上るといつもああなんです。
 全く危なっかしい。
 ギラギラした鉄の爪(アイアンクロウって言いましたっけ)ぶんぶん振り回して空に叫んでるんです。

シェイラ5/20 23:54:32182cfdG1WuKZW4pg||613
「お前の脳は蚤か!ダニか!それとも、アメーバか?上司から言われた事さえ覚えてないのか?」
「てめぇこそ、脳すっからかんじゃねぇか?アメーバには脳はねぇよ!つーか、俺様が全部捻り潰すけどなぁ」
 うけけけけけと笑ってます。幸せそうです。
 え〜と、紹介申し送れました。
 ボクの名前はスノーラです。良くぼっ〜としているって言われています。
 で、そっちの我が道独走中なのはハデス。顔やけどの痕だらけでおっかないです。
 カリカリ怒ってるのはメルボレさん。
綺麗な人なんですけど、この人も暴走すると止められないんです。
 一応、一番年上なのはボクなんですけどね。まとめきれなくて困ってるんですよ。

シェイラ5/20 23:54:462182cfdG1WuKZW4pg||904
 そんなボクらはある人の誘拐を任にしています。
 それがもう、がっちりガードされちゃってるわけですよ。
 ごついおじさんとか、訳わかんない生き物とか、ハデスがぶっ殺したい宣言してた剣士の女の子とか。 後、色黒でテンション高青年とか、ハデスがぶっ壊した町の少年とか、露出度が高い女の人とか。
 はっきり言って、もう少し下っ端の兵士でもいいので五、六人位付けて欲しいです。三人ですよ?三人!人手不足でもないのに。
 ま〜、ハデスが気に入らない人を片っ端から切り捨てていくんでみんな、怖がって志願しないのも事実なんですけどね。

シェイラ5/20 23:55:472182cfdG1WuKZW4pg||482
 でも、心配はご無用ですよ。彼らの中にはボクらの仲間が潜入しています。
なので、彼女達が、なんとかやってくれると思います。
 何故、ならボクらがと思うかもしれませんが、彼女達の存在をこちら側の人間だと気付かせない為に外側から揺さぶる役なんです。
 その方が隙が出来やすいかなと思っているんです。
 まあ、上司さんの提案なんですけどね。
 ボクらより年下みたいなのに、はっきり言って偉そうです。
「それにしても、カロイってなんなんだろうな。あんな可愛い顔して頭良くてさ」
 メルボレさん上司をあの子扱いはちょっと。
「さあ、ボクにもよく」

シェイラ5/20 23:58:452182cfdG1WuKZW4pg||562
 はっきり言って、解らないだらけなんです。彼。
 喋るのは任務の事ばかりで、カロイ君(ってボクも言ってますけど)は女王陛下の代弁をしているだけとか言ってますけど。
 ボクらも女王陛下の御尊顔を直接拝見してはいないんですけど、御簾の先から微かに見えるあの赤い瞳と整った顔にははっきり言って少しぞっとしています。
 何だか、人間味がなくて。
「可愛かろうが頭良かろうがいいさ。あんな気にいらんガキ、俺様があいつ以上の位に就けば、真っ先にぶっ殺してやれんのによ!」
 彼が話に加わると見事なくらい脱線していきます。

シェイラ5/20 23:59:262182cfdG1WuKZW4pg||29
「ああ、殺してやりてぇ。この世の生き物って言う生き物片っ端から殺してやりてぇ。特に、あのじじぃ。次、あの女!」
 この人ホントにやりかねないから怖いんですよね。
 勿論、彼の『生き物』のカテゴリーにはちゃんとボクらも入ってます。
「まだ言うのか?この場でお前の命をこの場で絶ってやってもいいんだぞ?」
 彼女も武器である鞭を手に構えます。この人もかなりなもんです。
「あぁ?やるか?」
 二人はじりじりと距離を詰めていきます。 
「もう!やめてくださいよ!ここから脱出するのが先決です!」

シェイラ5/20 23:59:432182cfdG1WuKZW4pg||976
 ボクは意を決して彼らの前に立ちました。
 そうなんですよ。ボクらは現在進行形で迷ってるんです。
 周りに広がるのはいかにも何か出てきそうな暗い森。時たま気味の悪い鳥の声が耳に響きます。
 道は人の通る道からかけ離れて、高い木々と足元に生える丈の長い草しか見当たりません。
「そうだった!今すぐ道を見つけてあのひげぶっ殺す!」
 彼は真の目的を思い出して、咆哮します。
 馬鹿の良い所は、動かしやすい所でよね。
「あの村の村長は確かに悪いかもしれない!しかし、かと言って殺すべきではないだろう!」
 また、喧嘩が始まります。

シェイラ5/21 0:0:82182cfdG1WuKZW4pg||330
確かに、村長さんの言葉を真に受けていなかったらボクらはまだ楽に道を進めていたかもしれません。
 とある村に立ち寄ったボクらは、次の大都市と彼らに追い着く為にこの村長さんに地図を貸して貰ったのですが、
『そうそう。近道がこちらにありますぞ』
 彼は胸辺りまで伸ばした髭をしごきながら言ってきました。
 丁寧に説明しつつ線のない山の中をなぞっていきます。
 子指には不釣合いな赤い―多分、布を染色して作った―指輪がはめられています。
『村の者しか使わない特別な道なんですがのう』  
 先を急ぐ身であるボクらは、村長さんの薦める道へ進む事にしたんです。
 それが、こんな最悪の結果を招くとは知らずに。

シェイラ5/21 0:0:472182cfdG1WuKZW4pg||494
「駄目ですよ。メルボレさん!ここで殺し合いなんかしたら血の匂いに誘われてオオカミとかモンスターとか普通に来ますよ?」
「う、困るな……。仕方ない、ここはお互いの為身を引ないか?」
「お前、馬鹿か?出て来るんだったらよっぽど好都合じゃねぇか!ストレス発散になるし、肉切り刻めるし♪」
 ぶんぶんと得物を振り回します。       
「早く道見付けませんか?夜になっちゃいますよ。そしたら、もっと迷って一生ここから出られなくなるかもしれませんよ」
 問い掛けに暫し考え込むと、彼はさっさっと先に進んでいきます。
「それは嫌だ。誰もぶっ殺せなくなるじゃねぇか」
 進んでくれるのは非常にありがたいです。

シェイラ5/21 0:1:192182cfdG1WuKZW4pg||403
 しかし―、
「ハデス、逆方向です。ボクら来たのそっちですよ?」
「…………う、うるせぇ!これ以上だらだら言ってみろ!てめぇぶっ殺す!」  
 いや〜。馬鹿は扱いやすい。
「でも、前へ進んでいいのか?私達は迷っているのだぞ?」
 メルボレさんがそっと囁きます。
「大丈夫です。真っ直ぐに来ているのは確かですし。変な事さえしなければ、今日中にボクらの足があれば着けますよ」
「でも、お前は大丈夫か?私達の中では悪く言ってすまないが一番体力がない。無理していざと言う時に役立たずでは困るしな」
 心配そうに腕を組みます。
 確かにボクは三人の中で一番、体力は劣ります。

シェイラ5/21 0:2:52182cfdG1WuKZW4pg||413
「平気ですよ。体が弱いって訳でもないんですから」
 彼女は直情型なんですけど、ちゃんと心配してくれるんですよね。あいつにも見習わせたいです。
「おい!お前ら、行くぞ!」
 ハデスの濁声がボクらを呼びました。
「は〜い!今、行きますよ!」
 ボクらはさっさっと歩いて行くハデスの後を付いて行きました。
 この森を昼頃には出て行けるだろうと確信して。
 しかし、この読みは外れるのです。
 かなり悪い方向で。

シェイラ5/21 0:3:212182cfdG1WuKZW4pg||938
 日もとっぷりと暮れた頃、宿で一息いれていましたって言うのが理想だったんですけどね。
 理想と現実は程遠く。
 ボクらは泉の近くで、焚き火を三人仲良く囲んでいます。
 泉の中には水中花の一種でしょうか?淡い青色の花が群生していて、満月は空で白く輝きながら僕らを照らしています。
 風景としてはとても綺麗なんですけど、外野がうるさくてそれ所じゃありません。
「あの時、お前が先頭に立って歩いていなかったらこんな事にはならなかったんだぞ!」
 その上、美味しいスープをすする訳ではなくハデスが狩ってきた何かの“肉”を火で炙っています。

シェイラ5/21 0:5:372182cfdG1WuKZW4pg||852
「うっせぇ!お前らだって何も言わなかったじゃねぇか!文句あるならこの場でぶっ殺すからな!」
 悪びれもなくお得意の文句を呟いています。    
「ああ、そうだな。文句なら降り積もる程あるぞ。なんなら、書簡に書きまとめてやってもいいぐらいだ」
 お願いですから、逆なでしあいはやめて下さい。
 本気でやりあったら、この辺一体何もなくなります。
「お願いします!喧嘩なんてしたら、ボクら果たせる使命も果たせなくなりますよ!」
 さすがに稼ぎ口がなくなるのだけは痛いんでしょうね。
 二人とも少し考えて、出しかけた得物をしまい、座り込みます。

シェイラ5/21 0:6:512182cfdG1WuKZW4pg||471
「今日はここで野宿しますよ。動いたら危険ですし、それに―」
「「それに?」」
 はたとボクは考え込んでいました。何か大切な事を忘れているような気がしたんです。
 非常に大切な、それこそ命に係わるんじゃないかって位の大切な事。
 でも、記憶と言う曖昧な枠からはみ出したそれは消えてしまってもう何も無いんです。
「いや、何でもないです。先に休んでて下さい。ボクが最初の見張りやりますんで」
 『それに?』を打ち消す為にボクは自分から火の番に名乗りを上げました。

シェイラ5/21 0:7:432182cfdG1WuKZW4pg||943
「あ?馬鹿か?まだ飯食ってねぇし。ま、でも頼むわ」
 もぐもぐと調達した肉を食べながら、言ってきます。
「ならいいさ。それにしても、疲れはないか?」
 不安げな表情でボクを見てきます。
 温度差が激しいこの二人の行動に、彼らは彼らであると再確認します。
「平気ですよ。確かに彼の所為でむちゃくちゃ迷いましたけど」
 思いっきり嫌味を込めて言ってやります。
「言うんじゃねーよ!俺様だって解ってるってぇの!」
 肉銜えて案の定切れてます。

シェイラ5/21 0:8:92182cfdG1WuKZW4pg||582
「あいつらに早く追いつかなくちゃいけないのによ〜。あの女、殺れねぇじゃねぇかよ!」
 彼の脳にはやはり殺人衝動しか搭載されてないらしいです。
 それにしても、何であの子が嫌いなんでしょうね。
 いや、物々しい剣を担いでいるんですけど、明るくて明朗快活なんですよ。
 一度、身分隠して近づいたんですけどはきはきしてて感じのいい子でした。
 みんなを守る為に無理し過ぎる傾向がありましたけど。

シェイラ5/21 0:8:362182cfdG1WuKZW4pg||91
 けれど、多分それが彼の勘に障ったんだと思うんです。
 嫌いなんですよね。彼。自己犠牲とか殺す殺さないに関しての考えの甘い人。
 彼女、口では『モンスター殲滅!』、『一匹残らず斬る』みたいな発言してるんですよ。
 でも、基本的に殺さないんです。
 ゴーレムとか限界まで壊さないと機能を停止する物とかは壊す位で、後は基本的に気絶させてるみたいなんです。
 それが、ハデスのお気に召さない所らしくて。
「ああ、やっぱり殺してぇ。あのひげと女。血ばーっとばらまかせて」
 うつうつと溜めてるみたいです。

シェイラ5/21 0:9:142182cfdG1WuKZW4pg||983
 一応、ボクも殺しはキライです。
 この仕事に就く前は、ボクが所属するこの結社と言うか国が村一つを全滅させるような虐殺を犯したりしています。
 何でも、最終兵器に係わる情報を伝承として残していただけでその情報を搾り取られて、村人殆どが殺されたそうです。
 確か、彼らの中にはその生き残りの子が居ました。
 ボクらに向けてくる瞳は、暗い憎しみの色がぐるぐると渦巻いていました。
 もし、また虐殺を命じてくるようだったどうすれば良いのだろうと考えてしまいます。
 多分、ボクは加担してしまうと思います。
 それが仕事ですから。

シェイラ5/21 0:10:502182cfdG1WuKZW4pg||25
「あいつ、またほざいているな。問題起こす前に息の根を止めておきたいものだ」
 さらりと彼女は言いやがります。
 お願いです。お互いストップして下さい。
 ストレスで白髪が生えてきそうです。
「ま、それは置いておいてだ。今は暖を囲もう。どうせ、動けないのだしな」
 彼女は火に炙られたままの肉に目をちらりとは向けましたが、自分の携帯食料の紐を解いて食べ始めました。
「お前も食べるか?」
 見るときのこを干した様な物を差し出してきます。

シェイラ5/21 0:12:582182cfdG1WuKZW4pg||22
「ありがとうございます」
 受け取ろうとした瞬間。
「おい!お前ら!可哀想だなぁ。肉食えねぇなんて」
 うへらうへらと奴は笑っています。
「だからよ、あんまりにも見てて虚しいからよぉ。余った肉、払い下げてやらぁ」
 クロウの先をそれに向けます。
「施しを受ける位なら死んだ方がマシだ」
「そーかい。なら、牛みたいな面してずっと食ってろ!マジ死んじまえ!」
 思いっきり機嫌悪くしてます。
 ほら、草むしってるじゃないですか。気持ち、汲み取って下さいよ。

シェイラ5/21 0:15:152182cfdG1WuKZW4pg||944
「食べてあげましょうよ。ほら、狩りに行くにも遅いですし」
 火から肉を取るとボクは食べて見せます。
「だ、だが」
 しかし、彼女の手はもう肉にかかっています。
「食うんだろ?」
 にやにやしているハデス。
「し、仕方なくだからな!」
 さっさっと食べ始めました。
「ほらほら、食ってるじゃねぇか!俺様に感謝しろよ〜」
「う、うるさい!それ以上言ったら息の根を止めるからな!」
「スノーラ!お前もだからな」
「ありがとうございます♪」

シェイラ5/21 0:15:522182cfdG1WuKZW4pg||363
 はふはふと食べつつお礼を言います。
 お腹が空いている所為でしょうか?
 血抜きが充分されていない割にはとても美味しいです。
 この人ってまだこんな所があるから、三人で行動できているんですよね。
 じゃなかったら、ボクらは十中八九、別行動とってます。
「ふん。礼などくれてやるか。それに……」
 途端、彼女は顔を曇らせます。
「ゆっくり愚痴を言う暇すら与えてくれないようだな」

シェイラ5/21 0:16:32182cfdG1WuKZW4pg||449
 泉を見ます。
 見た所、変化はありません。
 いえ、変化が一つ。水面が大きく波立ちました。
 今日は無風です。
 そして、もう一回。
 映り込んだ満月と星が歪みました。
 水底から何かが上がってきます。
 ぷつぷつと音。
 やがて、それは全貌を現しました。
 得体の知れない照って光る醜い巨大な塊。
 鼻につく何か腐ったような匂いが流れてきます。
 辛うじて人のような形をしているのが解ります。

シェイラ5/21 0:16:222182cfdG1WuKZW4pg||725
 刹那、ボクは村長さんから言われた重要な事を思い出していました。
『もし、道に迷ってしまわれたら絶対に泉の前では休憩なさらないで下さい』
 他の二人はもう先に行っていました。
『どうしてですか?』
 老人はボクにこう言ってきたんです。
『いやですねぇ。近頃、この泉に変な魔物が出ると噂になっておるんですわ。非常に凶暴な奴らしくて』
 地図を指し示して言います。
『夜に姿を現すらしいんですが、もう大きな巨人らしいんです。今まで村人が何人も行方不明に。お気をつけ下され』
『絶対に近づかないで下されよ』
『お願いしますよ』

シェイラ5/21 0:16:382182cfdG1WuKZW4pg||753
 念を押すご老人の瞳に少し、ボクは気圧されながらも、
『はい』
 と答えていました。
 しかし、それこそもう行こうとしている時でした。
『……つかぬ事をお聞きしますが』
 意を決したような声が飛んできました。
『何ですか?』
 振り返った時、一瞬瞳がかち合いました。
『……いえ。何でもないんですわ。些細な事でして。忘れてくだされ』
『?解りました……』
 頭を一つ下げ、歩いていきました。

シェイラ5/21 0:17:12182cfdG1WuKZW4pg||524
 こんな風に、会話は終わりました。
 けれど、ボクは同じ位忘れてはいけない事実を忘れていたんです。
 とある図書館で読んだ辞典。記載されていたのは魔物と人間の戦いの歴史。
「一見、巨人のように見えるが、近くに寄ると肉の寄せ集めと解る。更に、激烈な腐臭がするのも特徴である。水の中を好み、湖や泉に生息している。滅多に出現しないが一度現れると、近づく者を捕らえ己の肉と化してしまう。昔これが暴走し、千人体勢の討伐隊が組織されたが非常に困難を極めた」
 ボクはそれをまるで昨日読んだかのように暗唱しました。
「名をアクバディア。“悪魔の巨人”と呼ぶ」
 ぽつりと呟いていました。

シェイラ5/21 0:17:182182cfdG1WuKZW4pg||106
「あ?何か言ったか?」
 ハデスが聞いてきます。
「思い出したんですよ。こいつが村長さんの言ってた魔物だって」
「彼はそんな事言っていたのか?」
 油断なく鞭を構えながら、問い掛けてきます。
 みんな、本当にすいません。
 ボクの思考が曖昧で。
「いえ。ボクしか聞いてません。皆さんが言った後、お話してくれました。変な魔物が出るって」
「何で早く言ってくれなかったんだ!それを!」
 メルボレさんが物凄い勢いで睨んできます。

シェイラ5/21 0:18:182182cfdG1WuKZW4pg||854
「す、すいません。今の今まで忘れちゃってて。アハ、アハハハハ」
 乾いた笑い声の先に彼女の大声が響きます。
「あほ!それは早く思い出すべきだろう?じゃないと―」
 すごい勢いで何かが魔物に向かって吹っ飛んでいきました。
「速攻ぶち殺したらぁ!」
 泉にざぶりと入り、腐臭もなんのその巨体に斬りつけます。
「ハデスが暴走する」
 頭を抱えています。
 本当にごめんさない。
 そして、彼の暴走は止まらない。
 多分止まりません。相手が死ぬまで斬り続けるでしょう。

シェイラ5/21 0:20:132182cfdG1WuKZW4pg||46
「逝ね!逝ね!逝ね!逝ね!塵になりやがれぇ!」
 ずっと斬り続けてますが相手はびくともしません。
 肉片が水面落ちてぼちゃぼちゃと派手な音は立てていますが。
 そうやられて、奴はやっと行動を起こしました。
 白い塊が彼の体を打ち上げます。
 大きく飛ばされ空中に浮くハデス。
 アクバディアはぬらぬらと両手を動かし、手の形状を可変させ槍のようにし突き刺そうとします。
 寸前、長い紐が彼の腰へと巻き付き後ろへぐいと引っ張られ、槍はむなしく空を突きました。

シェイラ5/21 0:20:322182cfdG1WuKZW4pg||557
「礼は要らないぞ。虫唾が走る」
 ハデスに声を掛けます。
「はっ。誰が言うかよ。怪力女」
 飛沫を上げて水に落ちた彼はよろよろと立ち上がりました。
 ぽとりぽとりと雫が落ちます。
 どうやら怪我はないようです。
 銀の笛を取り出したボクは安堵の息を吐きました。
「でも、あんたの所為で相手も本気になったようだ」
 ゆらゆらと巨体を揺らして近づいています。。

シェイラ5/21 0:21:132182cfdG1WuKZW4pg||783
 肉の塊でしかない顔には当然、目も無く、口も鼻も無くただ見下げてきます。
 激烈な腐臭にくらくらそうな自分が腹立たしいです。
 でも、悪臭に耐え逆にのっぺらぼうの顔を見上げてやりました。
「浄化の曲を吹きます。この匂いと空気だったら、戦いづらいでしょ?」
「やっぱり、戦うのか?千人の人間がやっとで倒した奴だぞ?」
 疑問を口にしつつも足を開き、戦い易い体勢を取っています。
 それもそのはず、顔には暗い中でも確認出来る位の笑みがあったんですから。
「なら、俺ら一人ずつ333,333人位の働きすりゃあ何とかなるじゃねぇか。ま、俺様が千人分であいつぶっ殺すけどよぉ」

シェイラ5/21 0:21:232182cfdG1WuKZW4pg||48
 ハデスはまた吹っ飛んでいて行きました。
「じゃ、お願いします♪」
 ボクは二人に任せ、細身の笛を少し斜めに構えます。
 そっと息を吹き込みました。
 星空に柔らかな高い音が響き渡ります。
 音色は渡り、渦を巻いて辺りに響きました。
 気付いた奴は此方に一閃。
 ひらりとかわし、続けます。
 そして、全ての音を奏で終わった途端。
 アクバディアの動きがかちりと止まりました。
 清浄化された空気と嗅覚。
 それだけじゃ何か物足りないですよね?

シェイラ5/21 0:21:432182cfdG1WuKZW4pg||56
「清き音。彼の物に裁きを」
 光るそれを向けました。
 渡る音が風となって舞い散り、切り刻ざみます。
「ばぁか!こっちも巻き込むんじゃねぇよ!」
「メルボレさん!大丈夫ですか?」
「平気だ」
 取り敢えず、無視の方向で行きます。
 ものの見事な位、奴は肉片へと回帰していきました。
 ハデスが負けじとクロウを思い切り全体重を乗せて振り下ろし、足の一部分を切断します。
「お前はその程度か」
 鼻で笑って、彼女は長い鞭で腹を深々と抉ります。

シェイラ5/21 0:24:492182cfdG1WuKZW4pg||483
 二人ともすごいですよ。水の中で動きづらいはずなのに何でもないように動いて、相手を確実にばらばらにしていきます。
 最後には、哀れアクバディアは大きな音を立てて水中に没していきました。
「はん。この程度か」
「あっけない物だな」
 水に立つ彼らは、いつもより様になってます。
「俺様が仕留めたんだからな?メルボレさんよ?」
「馬鹿か?私が仕留めたんだ。どうやら、それすらも忘れるようになったか鳥頭」
 むちゃくちゃいがみ合ってます。
 台無しです。何もかも。
 はぁと一つ大きな溜め息を吐きます。

シェイラ5/21 0:25:42182cfdG1WuKZW4pg||926
 でも、ボクの思考にまた一つ疑問が湧き上がります。
 討伐隊千人がかかっても倒すのがやっとだったと言う古い古い魔物。
 その割にはあまりにも呆気なく崩れ去った肉塊達。
 何か可笑しいですよね?
 瞬間、何かぞくりとした気分になりました。
「早く、離れた方がいいですよ。焚き火を消してここから居なくなりませんか?」
 ボクは彼らを急かしました。何か何か恐ろしくて。
「何故だ?あいつは倒したぞ?」
「別にここで一夜明かしたっていいじゃねぇか?もうこいつ殺したんだし」
 肉片をぷにぷにと突きます。
「そうじゃないんですよ!可笑しいんで―」

シェイラ5/21 0:25:292182cfdG1WuKZW4pg||625
 バシュッ
 ブシュッ
 目の前の光景が信じられないってこんな時に言うんですね。
 メルボレさんとハデスが各々、鋭い物に肩、足を貫かれ水中にドボンと沈み込んでいきました。
 ベシャリ
 そして、姿を現したのは、人間でした。もう、死んでいましたけど。
 いいえ、注目すべきはそこではないのです。
 息絶えた村娘の胸の上に咲く白い花。
 それは動いていました。ひらひらと風も無いのに。
 蕾はゆったりと花弁を解きました。
 途端、芳しい芳香が辺りを包みました。

シェイラ5/21 0:26:422182cfdG1WuKZW4pg||620
 ぐらりと視界が傾きます。
 やばいです。これは。どうやら睡眠導入の作用が含まれているようです。
 揺らぐ思考の中に、とある水中花の記録が呼び覚まされました。
『ルエリア〜夜行性の水中花。薄い藍色の花を咲かせるが、ごくごく一部の地域の泉にしか咲かず、数も少ない為、希少種となっている。また、この花は別名W傀儡花”とも呼ばれている。この花は死んだ生物に寄生し、その体で他の生き物を襲い種を増やしていくのである。尚、稀に奇生体の上に肉を鎧の様に重ねていったり、蔓を放出、睡眠効果のある毒粉を噴霧する例も報告されている』

シェイラ5/21 0:27:152182cfdG1WuKZW4pg||698
 アクバディアは多分、これの本当の正体でしょう。きっと、この娘さんも討伐隊の方もこれに―。
 体がふらつきます。意識が保てません。
 歪み続ける視界の中に例の触手。いいえ、きっと蔓の類でしょう。
 しゅるしゅると岸辺まで辿り着こうとしています。
 ボクは焚き火の所まで這い、枝を掴むと触手を火で炙ります。
 慌てて水に引っ込みましたが、まだ本体の方からは沢山の蔓がてらてらと光りながらゆっくりとしかし、着実に伸びて最後の一人のボクを絡め獲ろうと来ます。

シェイラ5/21 0:27:362182cfdG1WuKZW4pg||21
 浮かんでくる気持ちは、恐怖が大半でした。
 ボクはよろよろと逃げようとしました。しかし、足が動こうとしません。
 恐怖のあまりにではありません。何故か、唐突に二人の顔が浮かんできたのです。
 彼らははっきり言って、疲れる事ばかりしかしません。助ける義理もないでしょう。
 でも、彼らを思い出すと、ボクの心には恐怖よりも勝る物が現れたのです。
 激しく燃え上がるような怒りと深い井戸の底から湧き出る水のような悲しみ。
 行動は正直です。眠気飛ばしの為に片足を火の中へ一瞬投じさせ、意識を覚醒させると水の中に進んで入り、低いフレーズを吹きました。

シェイラ5/21 0:28:12182cfdG1WuKZW4pg||961
 逃がしません。絶対に。
「愚者へ告ぐ。果てよ」
 蔓が負傷した足に巻きつき、腕へ腰へ首へ絡む寸前、最後一つを吹きました。
 途端、蔓は枯れしおれ水面に、はたりと横たわりました。
 ジクジクとした痛みが足を走ります。
 毒粉の効果がまだ残り、膝をつきそうになります。
 でも、怨嗟の旋律が笛を掻き鳴らし続けるのです。
 蔓は襲って来る度、来る度、白い屍となって横たわります。
 ボクはゆっくりと花に近づいていきました。
 眠るように目を閉じた村娘の白い顔も悲しみと怒りをより一層助長させていきます。
 水が撓み、月を揺らめかせます。獲物を得ていないルエリアの花がさらさらと視界の端で揺れていました。

シェイラ5/21 0:28:362182cfdG1WuKZW4pg||889
「お前を倒します。絶対に」
 花に近づくにつれて、眠気が体を波の様に襲います。
 ぎりぎり足がつく程度まで泳ぐと、本体まで枯れさせようと最大限の力で笛を吹かんとしました。
 が、彼女まで被害を及ぼすのをためらい、笛を吹くのを一呼吸遅らせたのです。
 それが命取りでした。
 ぎゅっと、首に白い手が巻きつきました。
 目の前には息絶えたはずの娘の白濁した蒼い瞳がありました。
 しまった。声が出ません。
 力は増し爪が首の皮膚を破る感覚がありました。
 しかし、抵抗すら出来ません。
 二重三重にも蔓が体を束縛しています。

シェイラ5/21 0:28:482182cfdG1WuKZW4pg||23
 ついに銀の笛も軌跡を描いて水の中に落ちました。
波紋がゆらゆらと広がります。
 ああ、もう限界ですね。
 目を閉じました。
 薄れる意識の中でボクは人生の内で五回目位の限界宣言をしました。
 何も考える事が出来ません。
 残された僅かな思考は謝罪の言葉ばかりです。
 ハデス、メルボレさん。ごめんなさい。
 こんな、愚か者で。カッコイイ事言って何も出来なくて。弱くて。守れなくて。
 後悔が溢れて、意識も急速に食い尽くされていきます。
 でも、ありがとうございました。

シェイラ5/21 0:29:112182cfdG1WuKZW4pg||536
 あなた方と出会えたお陰で、幸せでした。
 意外と幸せだったんです。ボク。
 今まで、こんな風に人と親密に付き合った事がなかったんで。
 ばたばたを楽しんでいたんです。
 そこで、力がより一層強くなります。
 意識がなくなっていきます。
 ごめんなさ―
「うらぁ!」
 何処からか声が上がりました。
 手がばっと離れていきます。

シェイラ5/21 0:29:282182cfdG1WuKZW4pg||739
「離れろ!」
 ボクの足元にある蔓が薙ぎ払われました。
 倒れこむ寸前に誰かが支えてくれます。
 突如入ってきた空気に激しく咽込む、ボクの背をさすってくれています。
 視界が晴れてきます。
 瞳に移るのは真っ白な月と心配そうなメルボレさんの顔。
「……大丈夫ですか?」
 自分の声はびっくりするほど擦れていました。
「スノーラ。それはお前に私がかけるはずの言葉だろう?」
 呆れたように、それでも安堵の色を声は滲ませています。
「ど、どうして?ですか?だって、あなた方……水の中に引きずり込まれたはずじゃあ……?」
「引き込まれたさ。なあに、大した傷じゃないよ。急所は外したしな」

シェイラ5/21 0:29:542182cfdG1WuKZW4pg||399
 肩からは確かに血が流れ出しています。
「あ、癒しますね」
 水を蹴散らしながら、笛を探します。
 その間も、ハデスが蔓を切ってくれているので安心です。
「お前こそ痛くないか?」
「平気!平気ですよ〜」
 無理はしてるんですけどね。メルボレさんに迷惑をかけてはいけませんし。
 苦も無く見つかった笛を構え、軽快な旋律を奏でます。
 笛の音は幻を作り出します。
 命を生み出る巨木。
「生命の源よ。我らに癒しを」
 木は花を咲かせ、一瞬で散らします。
 花びらが散り、彼らやボクの傷口に当たると淡く散って瞬く間に傷を癒します。

シェイラ5/21 0:32:272182cfdG1WuKZW4pg||320
「月並みな言葉だが、ありがとう」
 向かってきた蔓に一閃して答えてくれます。
「うっせぇよ!こんなん、要らねぇって!」
 の割には動きよくなってますよね?沢山さっきよりずばずば切ってますよね?ね?
 怒りを押さえ込みながら、笛を吹きます。
「魔笛の音。流れを盾へ」
 しゅるしゅると、ボクらの周りに水が纏わりつき薄いヴェールのようになります。
 多分、直撃を受けても五度ほどなら耐える事ができます。
「どうやって皆さんは助かったんですか?」
 あの時、ボクはこんな風に大逆転な状況になるとは考えてもいませんでした。絶望にも似た感情を持っていたはずなんです。

シェイラ5/21 0:33:92182cfdG1WuKZW4pg||8
 けれど、負の感情は一つ残らずなくなっていたんです。
 不思議な位に。
「ああ、最初に水に引き込まれた時は“ここまでか”って思ったよ」
 本体を攻撃しようと、鞭を振るう。
「そしたら、俺様がこれをぶん回してこいつ助けてやったんだよ!」
 敵は危なげなくかわして、蔓で本体を隠します。
「……それで、息が続くだけ下の蔓を切り裂けるだけ切り裂いて戦闘能力を削ぐ事にしたんだ」
「勿論、相手も本気でかかってきやがったけどよぉ!全部、ぶっ潰してやったぜ!」
 なるほど、だから花は成長して縦横無尽に伸ばせるようになった蔓ではなく、本体にボクを攻撃させたんですね。
 援護の音を奏でつつ、頷きます。

シェイラ5/21 0:33:262182cfdG1WuKZW4pg||750
「で、どうする?」
 ちょうど、攻撃力を上げる音を吹き終えた所でした。
「なんとか、彼女だけ引き剥がせませませんか?」
「は?どうしてだよ?どうせ、死んでるだろ?」
 斬撃の力が強くなっているようで、残り少なくなった蔓もばりばりと切り裂かれていきます。
 本体自身も重さに耐え切れなくなっているらしく、ずぶずぶと水の中へ沈んでいこうとしていました。
「でも、彼女は……」
「お前、馬鹿か!寄生してるんだから、引っぺがそうなんて無理なんだよ!さっさっと切り刻むぞ」

シェイラ5/21 0:33:462182cfdG1WuKZW4pg||668
 相反する感情がせめぎあいます。
 確かに守りの術をかけてはいますが、長期戦とあっては分は悪いです。
 ボク自身もかなり、術の行使に時間がかかるようになってきています。
 理屈は解ってます。理想論を並べて偽善者ぶっていると思います。
 それでも、命を奪われ傀儡となったとしても、彼女はやっぱり人なんです。
 命の通っている人だったんです。だから、諦めたくないんです。最善の方法を。

シェイラ5/21 0:34:142182cfdG1WuKZW4pg||630
「早く止めをさしてやらないと彼女の為にもならない。余計な考えは捨てろ。さぁ早く、瘴気の音を―」
「そんな事、解っていますよ!何だっていい!彼女を救う方法を最善の方法を見付けませんか!じゃなかったら、彼女が」
「本当にぶっ殺されたいらしいな」
 ふっとハデスが耳元で何かを呟きました。
「え?」
 水面を走る一陣の風。

シェイラ5/21 0:34:542182cfdG1WuKZW4pg||561
 ザンッ!
 視界の隅で影が真っ二つに裂けました。
 ルエリアの花がパサリと二つに分かれました。
 寄生していた胴も。
「花はどうでもいいのかよ?このエセ博愛主義者」
 赤が満月へ飛びました。
 空色の花は血で穢れながら、ゆっくりと落ちていきます。
 花弁はふわりと羽の様に水へ着地しました。
 綺麗でした。苦しくて、辛くて、美しくて。
 血の香がひらり。

シェイラ5/21 0:35:192182cfdG1WuKZW4pg||258
「お前の援護は良く効くわ。あ〜。久しぶりだ。上物の肉を切った時の感触。マジ、気持ちいぃぃ」
 アイアンクロウにより相手を離れながらにして空気ごと絶つ。
 彼の最高の技です。
「先を越されたな」
 忌々しそうに呟きました。
 鞭には微弱な光が舞い、彼女もまた奥義を使おうとしていたのが解りました。
 むせ返る花の香りとゆらゆらと水面を動く血溜まりときらきらと満月。

シェイラ5/21 0:35:562182cfdG1WuKZW4pg||123
 繰り返される無常と偽善の塊でしかない自分。
 後悔を捨てきりたい。甘さを何処かに葬りたい。
 けれど、確実にそれらを欲する自分が居て、年甲斐も無く奥歯を噛み締める自分が確かに立っていました。
 水の中にゆらゆらと揺れる自分の足を見つめて。
 と、流れてきた中に赤い靄の中に何か違う物を見付けます。
 すくい上げて見ると、赤い布切れ。
 この赤さは血で染まった赤ではありませんでした。
 布にはには見覚えがありました。確か、彼女が着ていた物。
 そして、あの村長さんがはめていた物。
 心臓が奇妙に脈打つのを感じました。

シェイラ5/21 0:36:182182cfdG1WuKZW4pg||48
「あの村長がしていた物と同じだな。聞いたことあるぞ。小指に指輪をするのは居なくなった大切な人と再会出来るようにと願う気持ちの現われらしい。居なくなった者の身に着けていた服の共布のを指輪にするそうだ」
 メルボレさんがボクの手の中を覗き込んでいました。
「この地方の独特の風習のはずだ」
 自然と彼女の居た方へと顔を向けていました。
 彼女はどうしてここへ入ってしまったんでしょうか。
 市場へ物を売りに行った帰りにここへ来て水を飲もうとしたのでしょうか?
 それとも、それとも…………。

シェイラ5/21 0:36:482182cfdG1WuKZW4pg||918
 考えがうまくまとまってくれません。
 やっぱり、自分がとても情けないです。
 やりたい事をやれなくて、両方とも守れない自分が存在していて。
 覚悟となると実際と理想はまるで違って、今はっきりと揺らぐ自分を確認する事が出来ました。
「じゃあ、あいつひげの孫だったんだな〜。あ、あいつまだぶっ殺してねぇ!今すぐ、殺ってきてやるぜ!」
 即断即決。彼は何処かにすっ飛んで行きました。
 大方、迷って結局戻ってくるのは目に見えています。

シェイラ5/21 0:37:72182cfdG1WuKZW4pg||358
「お前はいいな」
 ぽそりとメルボレさんは言いました。
「?どうしてですか?」
「私がとうに捨ててしまった感情を持っているから、かな?それで、うらやましくて仕方ない」
 意味が解らないです。こんな中途半端な感情を疎ましく思っているのに逆に欲している人が居るとは。
「私達は任務の為なら殺人を厭わないし、覚悟はしている。だから、お前が私達と行動を共にし始めた頃、随分陛下も腑抜けを入れたものだと正直思った」
「でも、私の考えは間違いだったんだ。お前は働きを充分するし、暴発しそうな私達を抑える鞘の役割を果たしてくれている。さっきも、逃げずに戦ってくれていたじゃないか」

シェイラ5/21 0:37:342182cfdG1WuKZW4pg||476
 勇気付けるかのようにメルボレさんは言います。
「だ、だからだ」
 急にこみ上げてきたように、声を震わせます。
「お前は、その、悩んでいると思う。感情をどうすれば良いか。この先、あの子達と対峙する時になっていざと言う時に本気が出せないかもしれないとか悩んでいるかも、しれない」
 そうです。いつかは戦うことになるかもしれないんです。やっぱり覚悟を決めないと。
「けれど、えーと、自分はお前の感情は持ってて欲しいと思っている。寧ろ、必要だ。ずっと、持っていて欲しい」
 見当違いな言葉でした。

シェイラ5/21 0:39:352182cfdG1WuKZW4pg||175
「私達は、過去に過ちを犯した。人々を殺し、家々を焼き払った。多分、感情を拒絶した為に起ったんだ。私、私だって人殺しはしたくない。過ちを繰り返したくない」
 殺すのをためらわない人達。彼らに対してのボクの第一印象です。
 彼らに出会った場所も場所でしたけど。それは罪人の処刑場でした。
 各々の得物を血脂で汚しながら、次々に刑を“執行”していく様は次々上がる断末魔の声と合わさって狂気を濃密に垂れ込ませていました。
 血の真ん中に居た彼女からそんな発言が聞けるとは思っていなかったんです。

シェイラ5/21 0:40:232182cfdG1WuKZW4pg||939
 俯き加減で語るメルボレさんの長い睫はふっと伏せられ、腰まではゆうある髪は雫を落としながら水へすっと落ちていました。
 急に何か見てはいけない物を見た気がして、顔を反射的に逸らしました。
「スノーラ!お前は私達の鞘になって欲しい。優しさを煩わしく感じるな!無ければ、お前も私達と同じく殺戮を繰り返す陛下の玩具に過ぎなくなるんだぞ?」
「そ、そんな事、出来るわけないじゃないですか!だって、ボクらは人殺しの集団なんですよ!今の任務はたまたま誘拐なだけで、結局、邪魔になる者は殺さなければいけなくなるんですよ!」

シェイラ5/21 0:41:62182cfdG1WuKZW4pg||718
「じゃあ、私達が殺す!お前はいいんだ。血で濡れた道を進むよりよっぽどましだ!戻れなくなる前に、友として言う。感情だけは捨てて欲しくないんだ!」
「ならボクも友として言います。あなたは何故、一人で全部背負い込もうとするんですか?」 
 はっとメルボレさんが顔を上げました。
「あなただって辛いんじゃないですか?人を殺すの嫌だって言ってましたよね?仲間なら戦友なら、どうしてボクに背負わせてくれないんですか!あなたはボクは殺すなと言った。なのに、一番傷ついているはずのあなたはこれからも殺し続けると言った。何か、矛盾してませんか?」

シェイラ5/21 0:41:402182cfdG1WuKZW4pg||151
 ボクは向き直るとメルボレさんの微かに震える肩にそっとそっと、片手を添えました。
「一緒に辛い事は半分ずつにしませんか?あなただけでは荷が重過ぎます」
「そんな事ない!私は大丈夫だ!心配ない!」
「……ボクはずるいです。綺麗な事ばかり並べ立てて、結局何も守れなかった。ねぇメルボレさん?自分はそうありたくないんです」
 ボクの揺らぎ続けた考えはやっと一つの方向へ落ち着こうとしていました。
「許してくれませんか?先に進む為に相手の命を取る、それを決断する事を。一人で苦しまないで下さい。今度はボクもあなたと同じ道を歩むんですから」

シェイラ5/21 0:42:72182cfdG1WuKZW4pg||690
 目を見張ったままの彼女は何も言えないようでした。
 長い時間がゆっくりゆっくり過ぎた気がしました。
「すまない」
 やがて、声が聞こえます。
「お前に心配されるようじゃ、私も落ちたな」
 照れたような笑いを浮かべました。
「どう言う意味ですか?」
 先程までの空気は幾分か和らいで、茶化すように続けます。
「覚悟は出来ているんだな?この道を歩くのを」
 穏やかに尋ねてきます。
「はい」
 頷きます。

シェイラ5/21 0:43:02182cfdG1WuKZW4pg||819
 覚悟と言うには、まだ程遠いですけどボクの中には少しの決心が固まっていました。
 きっと、彼女と一緒と言う面が大きくてきっと甘えが大半なんでしょう。
 でも、その場面がもし来てしまったらボクはしっかりと実行するつもりです。
 例え、あの子達であったとしても。
「解った。ならさっさっと馬鹿を追い掛けるぞ。全く、火の始末さえしないで行くとは」
 すっと離れて岸辺に行くと、ぶつぶつ呟きながら、土をかけています。
 火はぽっと消えていきました。
 ボクらは泉を去ります。一度だけ、振り返りました。。

シェイラ5/21 0:44:52182cfdG1WuKZW4pg||146
 養分が無ければ、この花達もあのようにはならないでしょう。
 ルエリアが揺られています。
 奥には青色の花弁がぱっと散り、銀色の光の中で白く輝いていました。
「ごめんなさい」
 口に出さずにはいられませんでした。
 助けられなかった人。あなたは今安らかに眠れていますか?
 ごめんなさい。
 今度は、あなたの友達や家族を殺してしまうかもしれません。
 ボクはそれでも、進んでいきます。
 ありがとうございます。
 決意をボクに与えてくれて。 
 一礼します。

シェイラ5/21 0:44:252182cfdG1WuKZW4pg||361
 ボクは握り続けた布を腰元の袋へ入れると、歩き出しました。
 とぼとぼと歩いていくと、突如目の前の林が途切れました。
 眼下に広がるのは、光の集合体。暖かな広がり。
 僕らの目指す町が銀河の様に広がっていました。
「おう。やっとお前らも来たのかよ。町が見えら」
 ハデスが座り込んでいました。
「ほう。さては、道が解らなくなって立ち往生していたんだな?」
「うるせっ!疲れて休んでただけだよ!ぶっ殺されてぇのか!」
 憎まれ口の叩き合いがまたまたまた始まりました。
 何だか、とても懐かしい気がしてふっと笑みが零れました。
 町の光と二人の姿が重なって、温かくて。

シェイラ5/21 0:46:242182cfdG1WuKZW4pg||74
 もう、振り返らないと決めました。
 揺らぐかもしれません。折れるかもしれません。
 でも、この命が尽きるまで、覚悟は突き通していきたいです。
 いえ、突き通します。
 袋を一瞬見て、視線を上げました。
 ハデス、メルボレさん。
 これからはボクも同じ場所に立てます。

シェイラ5/21 0:47:132182cfdG1WuKZW4pg||190
 

 共に幾つもの屍をまたぎ、血で各々の武器を妖しく染め上げましょう。
 陛下に贄を奉げ、忠実な手足となりましょう。
 命を刈り取る貪欲な死神となり、人々を睥睨ましょう。

シェイラ5/21 0:47:312182cfdG1WuKZW4pg||531

 
 さぁ、共に血塗られた道を進んでいきましょうか。

        何処までも。


シェイラ5/21 0:48:232182cfdG1WuKZW4pg||996
 ■○後書きくずれ○■
 まず、最初に遅れてすいませんでした;
 一人称で書くの慣れていなかったので、がたがた文章です。
 読み辛くてごめんなさい;
 感想などあれば、書き込んでいただけるとありがたや〜です。
 今回、多分この方達は出てこない(ヒド)のでちょっとずつ語ってます。
 スル〜しても結構です。ハイ

シェイラ5/21 0:48:522182cfdG1WuKZW4pg||595
スノーラ〜
 いい人キャラです。最後、黒くなってますが。
 彼が年上なのに他のメンバーより入っているのが遅いのは、宮廷音楽師として働いていたからです。
 女王が彼の笛の音の特殊能力に気付き、人員不足の今の任務に組み入れました。
 最近、白髪(ハゲではないのがミソ)が気になっている苦労人さんです。

シェイラ5/21 0:51:482182cfdG1WuKZW4pg||908
メルボレ〜
 かわかっこいい(可愛い+かっこいい)を目指しました。
 蓋を開けると、可愛さは五%程しか見当たらず……。
 ハデスはかなりの天敵でスノーラが止めなかったら、普通に戦います。
 実は、裏設定で子どもがいたりします。

シェイラ5/21 0:52:122182cfdG1WuKZW4pg||479
ハデス〜
 殺物(者)衝動の塊。
 彼はある意味、命を平等に見ています。
 花も人も動物も同じ対象(=殺したい)なので。
 町では周りが抑えるのに必死です。
 一応、仲間に対しての友愛とかはあるんですが、時たま本気で殺したいと考えちゃったりしています。
 舌をスネークタン(蛇みたいに舌を二股にしています。間違っていたらごめんなさい)にしピアスをつけています。

シェイラ5/21 0:59:252182cfdG1WuKZW4pg||466
武さんへ
作品への返信遅れて申し訳ありません;
遅ればせながら、返信させていただきました。
ご迷惑をおかけしました。

バルトーク5/21 22:25:272212cfBcsmysAsVME||421
こんばんわっ!!
これだけ書いておいて一人称ががたがたってあんた……(´・ω・`)
もっと自信を持っていいと思います!!

ストーリーも、ファンタジーちっくなノリに加えて、前作と共通な世界観であることを臭わせる用語も所々に出てくるのがb
そして博愛主義とかそういうものを内包して、仲間と共に歩もうとする決意。
自分勝手な理屈なんだろうけど、頑張れと応援したくなっちゃいました。

それとハデスはイロモノ好きのオイラには相当はまりました。
メルボレとの犬猿っぷりがまたヨスv
村長と行方不明娘のギミック?におぉっと感心しましたとも。えぇ。

シェイラ5/25 23:13:152184cfREe6DgHc.Lk||469
バルトークさんへ
遅れてすみません;
いつも、感想ありがとうございますw
激励の言葉に、顔面の筋肉が弛緩しております。←キモイ
一番年上の設定の割にはスノーラ、子どもすぎたかなぁと反省しております。
悩みまくる所が彼なんだとおもったりするんですけどね。
ハデスは自分のキャラの中で今までにないタイプを!と目指して生み出したので、気に入っていただけて嬉しいです。
返信、すごい力になっています!
これからも、一緒により良い小説を書いていけるよう頑張りましょう♪

シェイラ5/25 23:40:292184cfREe6DgHc.Lk||881
後、訂正です。
後書き崩れの所なんですが、
『今回、多分この方達は出てこない』ではなく『多分、これからこの方達は出てこない』でした。混乱させるような発言をすいませんでした;


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