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10620散る夢見草Kozue5/29 17:11:242182cf.WVhb78b176
あの夢見草咲くころの続編が登場です。
あたなぽちゃんがスランプ気味だからです…。
お許しください。

夢見草咲くころ最終話 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-9239.html
シェリトリンド最終回 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-9565.html

では、散ってゆく夢見草をご堪能ください。

Kozue5/29 17:11:592182cf.WVhb78b176||298
 いつの間にか風が吹いてきたらしい。菜々は部屋の中でひらひらと舞うピンク色のカーテンをそっとどかし、その下にあった窓から夜空に浮かぶ月をを眺めた。
 
 
 
 
 そういえば、以前もこんな月を見なかったっけ。今見ているのと同じ、どこか悲しげで、綺麗な月。それを菜々は一人で見ていた。あれは何時のことだったのだろう。桜田達也と付き合い始め、天野沙姫の恋愛模様を見守っていた、あの時。どこにいってしまったのか、何時なくしてしまったのか。あの日々はもう、菜々にとっては遠い過去となり始めていた。戻りたい、あの日々に。心が何処か遠くへ行ってしまった、あのときに戻りたい。

Kozue5/29 17:13:92182cf.WVhb78b176||775
☆+゜。−−−−−−−−−−−−−−

――どうしたことだろう?
 中学3年生の春、とうに桜は散ったころ。3時間目の数学の時間、桜田達也は首を傾げていた。
 ――俺、もしかして授業についていってない?
 中高一貫校の柳葉学園中等部第3学年では、すでに高校の教科書を使った授業が始まった。それまでは何とかついていっていた達也は、ここで大きな壁を乗り越えなければならなくなった。
 彼の彼女である前野菜々は相変らずこつこつと課題をこなし、さほど辛そうには見えない。菜々の友達・沙姫も当然のようにその秀才ぶりを余すことなく発揮している。
 ――つまり俺だけか、落ちこぼれそうなのは……。
 

Kozue5/29 17:13:362182cf.WVhb78b176||652
 言いようもない挫折感と疲労感に襲われた達也は、そのまま机の上で体制を崩した。途端に後ろの町田智久からのつつきが彼の背中に炸裂する。彼は跳ね上がり、そして後ろにすばやく向き直った。
「痛てぇぇぇー!何すんだよ智久!」
「授業中に寝ようとする君が悪い。それに僕は君のすうぃーとはにーから君が寝そうになったら即起こすように指示されているのでね。」
 智久はすうぃーとはにーを思い切り下手な英語で発音し、達也を見下すような目つきをしながら囁いた。
 

Kozue5/29 17:14:12182cf.WVhb78b176||135
 智久はすうぃーとはにーを思い切り下手な英語で発音し、達也を見下すような目つきをしながら囁いた。
 彼の言うすうぃーとはにーとは、この場合菜々を指す。彼女は、達也の成績がお世辞にも良いとはいえないのを大変憂い、そしてこのままでは柳葉学園高等部への進学も危うい事を知っていた。その為、彼の後ろの席の智久に救済を求めたわけである。
 そうとは知る由もない達也は、智久が嘘をついているものを思い込んだ。
「嘘コケ智久ー!菜々はそんなことお前になんかたのみゃしねーよ!」

Kozue5/29 17:14:222182cf.WVhb78b176||507
「残念だね達也君。哀れにも君の憶測は間違っているよ。僕は実際に菜々ちゃんに頼まれたのさ。」
 智久の顔には達也に対する優越感が見て取れた。
 それは誰の目にも明らかで、いくら達也でも気づいた。途端に彼は顔を真っ赤にしてがなった。
「へッ!お前になんか見下されてたまるかってんだ!」
 言い切った後、彼は言いようもない快感に心酔していたが、智久が何も反応しないのでつまらなく感じられた。と同時に首をひねった。
「おい智久……。いきなりどうしたんだよ?」
 なおも智久は応えない。愈愈達也は面白くなく、仕方なく前に向いた。

Kozue5/29 17:14:412182cf.WVhb78b176||800
 それと時を違えず、彼の頭の上に出席簿が振ってきた。
「……ッ!」
「桜田君、授業ちゃんと聞かないと、本当に置いていかれちゃうわよ。高校進学も危なくなるかもしれないわねぇ〜。」
 数学の教師・小高佐都子は“おいていかれちゃうわよ”の後に音符マークを散らせて彼を挑発的に見つめた。彼女は笑ってはいるものの目には笑いの要素は全くなく、見るからに顔は不自然に強ばっている。
 彼女は学園内で1,2を競うほどの厳格さをもつ若い先生である。彼女は1年前に新任教師としてここ柳葉学園に赴任してきたのだが、その授業の分かりやすさと厳格さではベテラン陣を軽く凌駕し、生徒からも教師からも一目置かれる存在となっている。

Kozue5/29 17:15:152182cf.WVhb78b176||597
 そんな彼女は指導も勿論的確で、授業中に寝たり、話している生徒には容赦ない。
「桜田君、とりあえず前向いてね。」
「はい……。」
 達也には、蛇に睨まれたかえるの気持ちが今ならよく分かるような気がした。
 その後の授業中、達也はずっと心ここにあらずの状態だった。堪らなく不安なのだ。果たして自分が高校でやっていけるのか。そして高校で菜々と共に楽しい時を過ごせるのか。誰かに教えてもらいたいが、その答えはタイムマシーンでもないと不可能だ。不愉快な不安は少しずつ達也の中で繁殖し、そして出口を求めている。

Kozue5/29 17:15:392182cf.WVhb78b176||72
 一方菜々も、それは同じ事だった。中学3年生の1年間を、無事に終えることが出来るのか。授業内容も格段に難しくなったのに、相変らず自分は同じような勉強方を続けている。このままでついていけるのだろうか?それまでの成績はどちらかというとよい菜々は、高校進学は安全圏なので問題ない。だが、その先にある待ち受けている大学受験はどうなるのか。彼女には兄弟がいない。尚更不安感は強まる。
 小高の授業が終わった後、彼女は珍しく一人で考え事をしていた。それを不審に思った沙姫は、勢いよく菜々の肩を揺さぶった。
「おーい菜々、どうしたんだよ?何か元気ないぞー?」
 

Kozue5/29 17:15:552182cf.WVhb78b176||552
 揺さぶられた反動で首が前後に揺れながらも、菜々は沙姫をじっと見つめた。彼女の視線は、見つめた、というよりは睨んだ、に近いもので、いつになく真剣な菜々の素行に沙姫は多少動揺した。
 だが持ち前の彼女の強気で、すぐにその動揺を隠し、逆に菜々を問い詰めた。
「何だよ、本当におかしいよ、菜々。どうしたの?」
「何でもないって!ほっといてー。」
 なんでもないにしては様子がおかしい。沙姫は尚も突っかかる。

Kozue5/29 17:16:222182cf.WVhb78b176||762
「何だよ水臭い。何か悩みがあるなら言え!友達だろ?!」
 今にも殴りかかりそうな沙姫の様子を廊下から人知れず見ていた驫木龍太は、途端に顔色を変えた。
 だがそんなことは知る由もない沙姫は、尚更必死で菜々に話しかける。
「ねぇ、本当にどうしたの?何かあたししたっけ?だとしたらごめん!」
 珍しく腰の低い様子の沙姫を見て、菜々は少し噴出しそうになった。彼女の表情に明るさがほんの僅かではあるが灯った。
 沙姫はその様子を見逃さなかった。

Kozue5/29 17:16:452182cf.WVhb78b176||162
「菜々、どう?ちょっとは元気になったでしょ?ついでにオマケつけちゃうと、今日あたしんちに遊びに来ない?母さんきっとおいしいチーズケーキ焼いてると思うんだけどー。菜々チーズケーキ好きだよね?」
 沙姫の明らかな挑発に、菜々は乗せられまいと必死に口内に溢れだす唾液を抑えては見たものの、やはりチーズケーキの誘惑にはどんな憂いでも吹き飛ばされる。
 彼女はにっこりと笑って沙姫を見た。
「ぜひとも行かせてほしいな、沙姫。」

Kozue5/29 17:17:42182cf.WVhb78b176||499
 いつもと変わらず愛くるしい笑みを浮かべる菜々を見て、沙姫はほっと胸を撫で下ろした。それに倣い、廊下の驫木も沙姫が暴れなかった事に安心し、肩の力を抜いた。そして彼は黒光りする携帯を手に取り、彼のワイフに電話をかける。
 彼女はワンコールで電話に出た。
「龍太さん?どうしたの?」
 神埜麗子は嬉しそうに夫に問いかける。
 普段、常に強張った顔をしている驫木は、新妻と話すときだけはその顔を緩ませる。
「奥様に伝えてほしんだ。今日お屋敷に菜々さまと……恐らく達也さまもいらっしゃる、と。」

Kozue5/29 17:17:192182cf.WVhb78b176||422
「分かった、伝えておくね。それで龍太さん、今日のお夕飯はハンバーグを用意しておいたから。早めに帰ってきてね。」
「ああ。麗子の料理楽しみにしてるよ。じゃあな。」
 にやけた顔のまま、驫木は携帯の電話を切った。
「幸せってこういうことかぁ……。」
 早くに両親をなくした彼にとって、家庭を持ち幸せな生活を送ることは、絶対に叶えなければならない悲願だった。それを叶える事ができ、今驫木は幸せの絶頂にあった。

Kozue5/29 17:17:342182cf.WVhb78b176||397
 ただ、心配なのは沙姫だ。彼女はいずれ誰かのもとへ嫁ぐことになる。その時に、果たしてあの沙姫が上手く姑とやっていけるのか。そしていつもの暴れ癖は出ないのか。この不安要素を解消するには、後数年間で沙姫をお淑やかなお嬢様に劇的に変えなければならない。彼は、今まで彼女を自由にさせていたことを後悔していた。
 ――もっと幼少期から沙姫お嬢さまをしっかり教育しておけば……。

Kozue5/29 17:17:472182cf.WVhb78b176||667
 だが、恐らく彼女は、驫木がほっておいても結局は同じように成長していただろう。沙姫は、彼女の兄・和吉と驚くほど似ている。そんな沙姫を和吉は妹たちのなかでも特に可愛がり、幼少期から遊び相手として教育していた。そのせいで沙姫が暴力化したのは否めない事実だが、やはり血のつながりというものは侮れない。彼女の体内には元暴力団の血が脈々と流れているのだろう。
「……あと4年か。」

Kozue5/29 17:18:152182cf.WVhb78b176||735
 
 
 
 
 
 
 
 
 
      彼は一言そう呟いて、柳葉学園の校舎を後にした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Kozue5/29 17:20:182182cf.WVhb78b176||501
□■休憩time■□

皆様こんにちは、作者です♪

中間テストが終わりましたーw
長かった…。
そしてあたなぽも長い…。
この先どう話をつなげていけばいいものか…。
少し時間をください。(ぉぃ。

感想等御座いましたらお書きくださいませm(__*)m


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