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10852STRAY−6×バツ×8/2 9:46:412191cf/QMmfygwFG2

久々スレですが、前回の作り直しです。

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   *前回のあらすじ*
 俗に言うストリートチルドレンのミラヴィアスは、ある日不思議な青年と出会う。その青年に連れられて行ったのはブランド店の一角で、そこで青年の弟だというツバサと世話係のスイと出会う。果たして、バラッドの目的とは。

×バツ×8/2 9:47:92191cf/QMmfygwFG2||621

「わかってるけどさ…」
 スイの機嫌が悪いから、とぶつくさ言っているツバサをため息一つで見なかったことにしたスイはミッラに向き直る。
「バラッド様のお知り合いの方ですか?」
「……えぇ、たぶん。ここにはバラッドさんに連れられて来たんです」
 はっきりと断定できるわけがない。ミッラ自身でも、連れてこられた理由や今後の展開なんてわからないのだから。
「お洋服のためにですか?」
「それが…目的の一つだとは思います」


×バツ×8/2 9:47:302191cf/QMmfygwFG2||37

見られる格好、というのがきっと、こういうのを指すことくらいミッラにだってわかる。先程まで着ていた服は、お世辞にもいいとは言えない代物で、確かフリマか何かで安かったから買ったというだけのものだ。更に薄汚れていたのだから、反論の余地がない。
「…そうなのですか。では、バラッド様の元へご案内しますね」
 ひとつ頷いたスイは、疑問に思うことも多かろうに、それ以上は何も聞いてこなかった。こういうのを、教育が行き届いているとでも言うのだろうか。
「こちらです」


×バツ×8/2 9:47:542191cf/QMmfygwFG2||495

 スイの横をすっと先に出て前を行くツバサを見ていると、やっぱり主と執事という主従があるのかと妙に納得してしまう。テレビドラマや映画の中の世界が、過去の出来事を忠実かつ完璧に再現しているなんて思っていなかったけれど、現実にこういうものを目の当たりにすると、部分的にノンフィクションだと思い知らされる。
「…スイさんは、どうしてツバサの世話係に?」
「ぇ…」
 こんなこと聞かれると思っていなかったのだろう。目を丸くしてから、少し考え込んでしまう。唇に指の背を当てて、目を伏せている様でさえ綺麗だなぁっと思ってしまう。
「そう、ですね……見ての通り、不器用な方ですから、放っておけなかったんです」


×バツ×8/2 9:48:192191cf/QMmfygwFG2||83

「そうなんですか」
 あぁ、何か隠しているなと思ったけれど、当たり障りのない答えに納得したふりをする。他人の事情に首を突っ込みすぎて自滅していった奴らなんてたくさん見てきたからこそ、ミッラは世渡りが上手いと自負している。あまり首を突っ込みすぎないで、相手が不快に思わない程度のところで引いていく。情が生まれる前に距離を置いて、深い関係なんて作らない。
 そんなことを考えているうちに、店の方にたどり着く。先程は一階部分しか見ていなかったのだが、二階はカフェになっているのだ。照明はぼんやりしたオレンジ色で、少し薄暗いけれど黒を基調としたセンスのいい店内だ。


×バツ×8/2 9:48:402191cf/QMmfygwFG2||601

「兄貴、お待たせ」
 ツバサが、カウンターでバーテンダーと話していたバラッドに声をかけると、身体ごとこちらを振り向いてくる。優雅なそれに、マナーをきっちり学んだ人なのだと知れるから、一緒にいるのがちょっと嫌だ。ミッラはマナーなんて欠片も知らないのだから。
「あぁ……なんだ、ちゃんと年相応に見えるな。ツバサの服、似合ってる」
 目を細めてそんなことを言うから、別に後ろめたいわけでもないのに、目を逸らしてしまう。
「だろ? ミッラのやつ、着やせするタイプなんだよ。結構、筋肉質なの。俺、惚れちゃうね」
 からからと笑いながら、ツバサはミッラのことをバラッドに報告する。


×バツ×8/2 9:52:292191cf/QMmfygwFG2||194

「っ……ミッラ?」
「ん…名前長かったから。呼びやすくなっただろ?」
 バラッドの知らない間に決まったミッラという呼び方に、眉を少しだけ顰めながら聞き返すと、ツバサが笑顔で返す。その笑顔に、バラッドの表情がふっと和らいでいくから、家族という深い関係があるのだとわかってしまう。


×バツ×8/2 9:52:562191cf/QMmfygwFG2||969

 記憶を失くす前がどうだったかなんてわからないが、失くなってからは家族の情というものと無縁で育ってしまったミッラだ。たまにそういうことが気になってしまって、考えることがある。家族というのが無償で愛してくれるものなら、それはどういうことなのかと。どんなに悪いことをしてしまっても責任を問われず、真綿でくるむような優しさで許してくれるだろうかと。想像してしまってから、そんなことを思い描いた自分こそを軽蔑したくなる。世の中には、どんなに欲しくても手に入れられない物があることを知っている。全ての人が望む物を手に入れられるわけではないことを知ったのは、今ある記憶が始まってすぐだった。


×バツ×8/2 9:58:582191cf/QMmfygwFG2||171

 ツバサの店から車で十五分くらいの場所にあるレストランは、ドレスコードこそなかったものの、先程まで着ていた服ではどんなに厚顔無恥な人間でも踵を返したくなるようなところだった。ツバサとはもう少し話していたかったけれど、そんなことを言う資格がミッラにはないのだ。
 店内の中でも奥まった場所に案内されていくバラッドについていきながら、本当に場違いだと改めて思う。高い天井や磨き上げられた床、八割方埋まっているテーブル席にいる人たちは、見ただけでもわかるほど上質な服で身を包んでいる。バラッドとミッラが案内された先は個室で、少しだけほっとする。
「随分、雰囲気が明るくなるんだな…」


×バツ×8/2 10:35:272191cf/QMmfygwFG2||144

「はい?」
 聞き取れないものではないけれど、独り言のようなそれはミッラへの賛辞のようだ。でも、人形のように綺麗な顔をしているバラッドにそんなことを言われても、曖昧に笑うしかない。
「その笑顔……物事を円滑に進めるための手段と、空虚な仮面、どちらだ?」
「ぇ…」
 ぴしり、と表情が固まったのがわかる。次の瞬間には、どうして今日会ったばかりの人にそんなことを言われなければならないのかという、反発が生まれる。


×バツ×8/2 10:39:242191cf/QMmfygwFG2||559

 どちらか、なんてそんなことミッラが聞きたい。ただ流れていく時間の中で、生きているだけだ。生きる目標も理由もない。そう考えると、空虚、なのかもしれないけれど、ミッラがへらへらしているように振る舞っている理由は、前者だ。視線を泳がせながら答えられずにいると、バラッドは詐欺師に向いているんじゃないかというくらい、感情を読ませないにも関わらず極上の笑みを浮かべる。
「で、ミッラ…は、どこで生まれたんだ? イギリスじゃないだろう」
「っ……あの、俺本当に、聞いてて面白い生き方してませんよ」


×バツ×8/2 10:57:52191cf/QMmfygwFG2||147

 バラッドは、過去を売れ、と言った。でも、自分の過去話に価値があるとは思えない。出来れば話たくなんかないと、遠回しに言ってみるが、バラッドはそれに気づきながらも流してしまった。
「質問の答えになってない」
 一刀両断。どうにも過去を話さないと、解放してくれそうもない。印象だけを言えば、バラッドの雰囲気は鋭利な刃物のようで、その実ガラスのように壊れやすそうだ。なのに口を開けば、硬質さはそのままに、壊れやすそうなんてものじゃなく、絶対に壊れないし、揺るがないようだ。
「俺、十歳より前の記憶がないんです。だから、出身地とか知りません」


×バツ×8/2 11:0:32191cf/QMmfygwFG2||573

ちょっと長めになってしまったので、ここらへんで^^



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