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10956決意〜前編〜(小説)シェイラ9/3 23:41:102184cfEWCEKuzUjoY
今までの作品です。

鏡。(小説)&物語(詩)
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愚か者のフリ(小説)
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悪の三匹珍道中〜出張編〜(小説)
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今回は諸事情により、前後編にしました;
更新むちゃくちゃ遅くてすいません。

シェイラ9/3 23:41:542184cfEWCEKuzUjoY||76
 
決意(前編)

 同じだと思った。
 今まで、アタシを利用した奴らと
 力を欲するだけで
 同じ物だと
 同じ人間なんだと
 勘違いしていたんだ。

シェイラ9/3 23:42:202184cfEWCEKuzUjoY||403


「あのさ。どうして、アタシを入れないの?」
 零れ落ちそうな程大きな瞳をこれでもかと言う位、開いて彼女は聞いてくる。
 もっとも彼女は人ではなかった。
 子牛位の体躯と豹のようなしなやかな体つき。
 空のような青色の体毛。二対の長い耳にはアクセサリーがじゃらじゃらとつけられている。
 中空で長い尾がゆらりと揺れた。

シェイラ9/3 23:42:402184cfEWCEKuzUjoY||21
「?」
 問い掛けられた言葉に黒髪の男は本から顔を上げた。
「あ〜。やっぱり、そうなんだ〜。アタシが“災”だから?」
 答えを待たずに珍獣は続ける。
 この世界には沢山の力の“源”が存在している。
 なんであれ、生き物に近い形をとり、自分の力をこの世に具現化出来る才のある者を待ち続けている。
 力の源は多岐に渡って存在しているが、彼女はその内の一つであるW災”なのだ。
 彼女の力の源は災厄。災厄が起きる時に目覚め、その力を発揮する。
 そして、彼は才のある者つまり召喚師だ。

シェイラ9/3 23:42:582184cfEWCEKuzUjoY||920
「意味が解らない」
 男はそれだけ言った。
「だから、小うるさいアタシを他の奴らと同じく、手っ取り早く召喚出来る存在に何でしないかって事!」
 男は本を閉じるとぼそりと言葉を吐く。
「どうしてだろうな」
 問うような声に、明らかに生き物は嫌そうな顔をする。
「あんた、ものっそい天才?つーか神?」
 皮肉をぶつける。
「その方が楽じゃん?」
 ぴくりと男は微かに反応する。

シェイラ9/3 23:43:152184cfEWCEKuzUjoY||122
 ゆらりと浮上した瞳は真っ直ぐに貫くように、見る。
「なら、お前はそうなりたいのか?」
 勿論と出てかかった言葉は止まった。
「こいつらはお前に託したんだ」
 掌を左胸に当てる。
「何?何をさ?」 
「解らないのか?」
 問う瞳は何処となく、驚愕の色を含んで、
「仕方ないか。そうだよな」

シェイラ9/3 23:43:302184cfEWCEKuzUjoY||119
 離した視線は空へ。
「どうしてさ?ねぇ?」
「いや、解らないならいい。お前自身が気付かなければいけないから」
 意味深な言葉を残す。
 珍獣にとってはただの他愛もない話し合いだった。
 後に、重要な意味を持つと知らずに。

シェイラ9/3 23:43:592184cfEWCEKuzUjoY||667


 揺らがないと思った。
 どんなに気持ちが
 何かに動いたって
 決意は変わらない
 必ずやり通そうと思った
 なのに―

シェイラ9/3 23:44:182184cfEWCEKuzUjoY||851
 
「私にそんな事聞かないでよ」 
 問い掛けた相手と瓜二つな少女は首を傾げた。
 それもそのはず、双子なのだ。
 ぱっちりとした青い瞳に結わえた黒髪も片方の少女が二つもう片方が一つの所を除けば全く同じ。
「ごめん。姉さんなら知ってると思って」
 性格は違うようで、妹には終始何かに怯えた様な雰囲気が漂っている。
「別に人なんて好きになった経験なんてないし」
 ツインテールが揺れる。
「あんたと四六時中生活してるんだし、そんな兆候あったら真っ先に気付いてるはずでしょ?」
「うん」
 視線を足元に落とした。

シェイラ9/3 23:44:492184cfEWCEKuzUjoY||471
 同年代の少女達がしているような体験を自分はしてはいけない位、解ってはいる。
 責務があるし、何より身寄りのない自分達をここまで育て上げ、世渡りを教えてくれた養い親にも申し訳がたたない。
「それとも、好きな奴でも出来た?」
「違うよ。もしも、もしもの時の話」
「て言うか、あんたってどんな奴タイプ?」
 暫く、考え込む。
「明るくて、優しい人。後、何気に料理がうまい人かな」
「何で?あんた料理うまいのに?」
 それはと続ける。

シェイラ9/3 23:46:222184cfEWCEKuzUjoY||556
「私がね、料理してたら『お前、手つき危ない』とか言ってぱっぱって一人であっと言う間に作ってくれたらいいなって思って」
「うん。まぁ、いいんじゃない?でも、自分で食べた手料理『美味しい』とか言ってくれたりする男の方がぐっとこない?」
「姉さんは解ってないよ〜。普通じゃ解らない意外な部分を見せられる方がぐっときちゃわない?」
 力説する妹に言葉を詰まらせ、姉は急に噴き出して笑った。

シェイラ9/3 23:46:402184cfEWCEKuzUjoY||361
「何?わ、私変な事言った?ご、ごめんさい……」
 急速にしおれた妹に姉は笑いを続けながら、話す。
「ち、違うの!あんたが、し、真剣にこんな事話すとは思ってなくて!だ、だってすっごく、熱っぽく話してくるから」
 後半は笑いすぎの咳き込む声で消滅していく。
「やっぱり、変かな?私が言うなんて、可笑しい?」
 ちょっと意地悪そうに姉は頷く。

シェイラ9/3 23:46:542184cfEWCEKuzUjoY||354
「も〜!そんな事言わないでよ!」
 背中を甘く叩く。
 暫く、じゃれあった後、ふと姉は言う。
「でも、忘れないで。私達には、そんな事より大切な仕事があるって事」
 急に冷めた声。その瞳は真剣そのもので。
 迷い無く妹は頷く。
「解ってる。私は揺らがないよ。例え、好きな人を傷つけてしまうとしても」
 言葉には真の思いがこもっていて、不動の響きを持っていた。
 とある男と出会う少し前の少女達の他愛もない会話。

シェイラ9/3 23:49:112184cfEWCEKuzUjoY||906
 船はとうの昔に岸を離れていた。
 大事な物を捕らえたまま。
「さぁて、面白くなってきたわね」
 すらりとした美しい指を口元に当て、女性は妖しく笑う。
「今日も美しくておれ的にぐっとなんですけど、やばくないっすか?あいつら乗ったまんまじゃないっすか!」
 青年は突っ込む。
「確かに冷静にしてられる状況じゃあねぇよな」 
 大男は仲間に呼びかけた。
「泳いで追っかけるってぇのもなんかだしよ」
「どうすんのよ!何かいい案無い?」

シェイラ9/3 23:49:282184cfEWCEKuzUjoY||896
 朝の心地よさを残した柔らかい風が流れる中、珍しく冷静さを欠いた声は辺りの人々を攻め立てる。
「仕方ない。あの哨戒船に乗っけてもらいますかぁ」
 もう一人の少女が指差す方向には、未だ先の混乱の為出発出来ずにいる船が一隻。
 碇が下ろされ、出港する気配はまだない。
「あれじゃ、間に合わないよ!」
 一番年少の少年も不安げに見つめてくる。
「え〜あれ乗んの?レイン、まじねぇと思うけど本気?」 
 レインと呼ばれた少女はにっと笑う。
「本気も本気、マジマジ!」
 けれど、本心からの笑顔ではない。

シェイラ9/3 23:49:572184cfEWCEKuzUjoY||147
 証拠に、顔を引き締めた。
「早くって気持ちは解るぜ。でもよ。あんなデカイ帆船操舵出来るんだ。海について詳しいはずじゃねぇか。なら、何にも知らない自分達が闇雲に借りた船で突っ込んで行ったて返り討ちに遭うのが関の山って奴だろ?」
 そう言いたかったんだろと大男は付け加える。
「じゃあ、今の時間をどうするの?」
 焦燥に蝕まれるのを隠すように答えを求める少女。

シェイラ9/3 23:50:182184cfEWCEKuzUjoY||730
「そうね。船長に許可を貰ってから、武器、防具の修理、新調。後は、回復薬の購入継ぎ足しの続きって所かしら?」
 女性はさらさらと述べた。
「じゃあ、それが済んだら?」
「船の近くで待ってよう。釣りでもする?落ち着かないし」
 少年にレインは呼びかけた。
「おれもする〜♪めちゃくちゃでかい魚釣りますからね!姐さん!」
「ありがとう。楽しみに待ってるわ」
「よっし!俺も混ぜろな!勝負と行こうじゃねぇか!」
「私、パス!魚嫌いだし」
 六人は雑談を交わしながら、町の方へ歩いて行く。

シェイラ9/3 23:51:32184cfEWCEKuzUjoY||851
 一見不安は微塵も見当たらない。
 けれど、会話は何処か空虚な部分を持ち合わせていて、誰の声の端々にも不安がありありと滲みこむ。
 足取りは重かった。
 背後に激しい飛沫の音が上がった。
 巨大な影と海水がゆっくりと彼らの背中にかかる。
 そこには―

シェイラ9/3 23:51:542184cfEWCEKuzUjoY||512


 船は異常な盛り上がりを見せていた。
 無理もないだろう。
 彼らにとっては、脱獄してから始めての獲物だった訳だし、自警団の目の前から掻っ攫えたのも愉快痛快であったのだ。
「あ〜も〜。どうすんの。この状況」
 マストの上からそれを珍獣は睥睨していた。
 自分は目立つこの姿が疎ましくて、船に残っていた訳だが、船がシージャックされてしまったので外に出ていれば良かったと後悔を覚えた。

シェイラ9/3 23:52:222184cfEWCEKuzUjoY||677
つと、思い立ったかのようにマストを慎重且つ器用に降りると、船室の一番奥の貨物室を目指す。
 中に残っていた乗客は殺されて海に投げられたか、何処かの船室に閉じ込められている。
 助ける義理も無ければ、情もない。
 自分自身で精一杯。
 油断無く辺りを見渡しながら、進む。
 貨物室の僅かに開いた扉をするり、奥の奥へ。
「お〜い元気?」
 小声が響く。
 薄曇の丸窓からの光が二つの影の正体を照らす。

シェイラ9/3 23:57:232184cfEWCEKuzUjoY||843
「はい。大丈夫です」
 返ってくる声音は大丈夫だとは明らかに思えない。
 ぼんやりとした光の中で、少女の白い肌は何時にも増して白く青ざめていた。
「熱がまだひかない」
 男は隣に腰掛けている。
「ごめんなさい。私の所為で……こんな事になって」
 甲板でごたごたが起こっている隙に逃げれば良かったのだが、彼女の看病に気を取られ、珍獣が異変を伝えに来た頃には、すでに船は港を出発していた。
「むっちゃ迷惑!しかも、あんたがとろいからこんな場所にしか隠れられなかったんだよ〜どうしてくれんの!」
「本当にすいません。私……私」

シェイラ9/3 23:57:502184cfEWCEKuzUjoY||767
 潤んだ瞳は今にも涙が零れ落ちそうな程だ。
「起こった事はもう仕方ない。今は脱出する手段を考えるのが先だ」
 男は手にした即席の氷嚢を証拠を消す為、窓へ投げ入れる。
 ついでに少女に飲ませた回復薬の瓶も海へ。
「氷持って来る。冷やさなきゃいけないだろ?」
 男の召喚に氷を源とする力が加わっていればいいのだが、生憎まだ加わっていない。
 徐にゆるりと立ち上がり杖を手に取る。
 しかし、自分から氷を取りに行く様子はない。
 しゅるると布の封を取るとそこからは、鳥をイメージしたと思われる綿密な装飾が施された杖が姿を現す。

シェイラ9/3 23:58:182184cfEWCEKuzUjoY||758
 男は座ったまま杖を振る。光の中に鈍く光る杖の銀の軌跡が舞う。
 と、目を閉じ、空いている手を床につける。
『カデア』
 船の床にいきなり穴が開く。
 大人一人は有に入れそうなその穴からは、ぽんとハリネズミが飛び出してきた。
 が、ただのハリネズミではない。
 大きく発達した前足には鋭い金色の爪がつき、剣山の如く鋭い針山からは磨きぬかれた宝石たちが銀鎖と共に引きずられていた。
 つぶらな瞳の上には複雑な文様を施した額あてをつけている。
 男はカデアの毛並み(針並み?)を確かめるように、頭から一撫ぜずる。

シェイラ9/3 23:59:272184cfEWCEKuzUjoY||992
「さっきと同じく、食料庫から氷と病人でも食べられそうな物持ってきてくれ。それと、捕まってる人間が何処に居るか把握したい」
 うんうんと、ハリネズミは頷くと男を一瞬、じっと見つめた。
 それから、仕事を言いつけられたのがよほど嬉しかったらしくカデアは何度もジャンプした。
 その拍子に床に針がばらばらと散る。
 瞬間、針がむくむくと動き出すと姿を本来の大きさのハリネズミに変え、戸口に駆けて行った。
 カデアも後ろからついていく。

シェイラ9/3 23:59:392184cfEWCEKuzUjoY||544
 しかし、珍獣の目の前で足を止めるとじっと彼女を見上げる。
「あ?何?」
 機嫌が悪い珍獣にとっては、いらいらの蓄積率を高めるだけだ。
 何でもないよと首を振ると大きな爪とは裏腹に、全く音を立てずに部屋の外へ出て行った。
「何だ〜さっきの。感じ悪いし」
 ぶつぶつ、悪態をつく。
「言いたい事でも……あったんでしょうか?」
「あ〜。それないね。基本だんまりだし」
「彼らは喋れるんですか?」
「喋れるよ。あんたの解る言葉じゃないけど」
 さっきまで、険悪な空気はいつのまにやら消失していた。

シェイラ9/3 23:59:542184cfEWCEKuzUjoY||444
「あんたは解るにきまってるでしょ?」
 問い掛けは男に飛ぶ。
「まぁ、な」
 曖昧に頷いた男は座り込むと、少女の顔を覗きこんだ。
「?どうしました?」
 熱では確実にない色味を帯びて、頬が朱に益々染まる。
 掌での体温確認も最初の頃は気恥ずかしくて仕方なかったが、今では少し慣れ、当てられても心臓のバクバクは収まり始めていた。
 しかし、顔がもっと近くなりこっつんと額と額がぶつかる。

シェイラ9/4 0:1:352184cfEWCEKuzUjoY||279
「きゃぁ!な、何?何ですか!」
 顔を離す。多分、体温はさっきのでまた上昇した。
 明らかに男は驚いた表情をしていた。
「す、すまない」
 滅多に見せない慌てた姿を見せた。
 己が何をやったか解らない顔をしているが。
「も、もう心臓止まるかと思ったんですから!」
「わ、悪かった。こっちで計った方が熱の下がり具合が解りやすいと思って、つい……」
 しどろもどろに話す、戸惑った表情と仕草が普段の冷静沈着な姿とのギャップを伴って、可愛らしく見える。

シェイラ9/4 0:1:552184cfEWCEKuzUjoY||170
 その姿に、どくりと何処か心臓が不自然に動く。
 はたと、冷静になる自分が居た。
 やっぱり私はそうなんだ。
 この思いはきっと……。
 駄目な事は解っている。
 だって、この人は。
 だけど、
「そりゃあ、困るに決まってんじゃん?だって、ねぇ?」
 いきなり、確信に迫られたような珍獣の発言に少女は手早く言葉を作った。
「はいそうです!いきなり、顔が近くにあってびっくりしちゃったんです!すいません!」

シェイラ9/4 0:2:132184cfEWCEKuzUjoY||784
 途端にぐらりぐらりとする視界。
 勢いで立ち上がったものの、膝はかくりと床につく。
 慌てて男が近寄って来るものの、先刻のあの失態が焼き付いて触れられない。
「ほら!そんな大きな声出すからだよ〜。つかまりんしゃい」
 珍獣は自らの背を差し出し、少女を助ける。
「ごめんなさい」
 弱々しい腕には力が入っておらず、毛足の長い彼女の体毛からでさえ手から滑り抜ける。
「つーか。あんまり大きな声出さない!出したら、それこそ大変な……」
「あ」

シェイラ9/4 0:2:432184cfEWCEKuzUjoY||345
 唐突に野太い声が、聞こえる。
 振り返ると、そこには酒が程よく入った赤ら顔を男が立っていて。
「「あ」」
「なんだぁ?閉じ込めたはずなのに、こんな所に?変な動物も居るしなぁ。まぁいいか。ほら立てよ!可愛いお姉さんよ!」
 ぐいっと乱暴に手を引かれる。杖の持っていない方の手を。
 珍獣は動き出そうと、体勢を低くする。と、男は急に杖を振り上げた。
 数分後、脱獄囚は床に見事に転ばされていた。
 縄でぐるぐる巻きにされ、体のあちこちに様々な傷が残る。
「ここに長くはいれないようだな。いつ何時、敵が入ってくるか解らない」

シェイラ9/4 0:3:32184cfEWCEKuzUjoY||741
 男はさっきの侵入者を完全に無視して話を始める。
 先程の男の冷静さを欠いた行動を一人と一匹は目の当たりにしていた。
 それが、仲間に決して口外してはいけないものだと言う事も暗黙の了解となっている。
「腹立つのは解るけどさぁ。あれはちょっとね」
「沢山、出してましたね」
 まだ、盟約を結んでいるものが少ないとはいえ、彼はほぼ全ての力を行使し脱獄囚を轟沈させたのだ。
「行くぞ。カデア達は俺達が場所を移動しても追ってくれる」
 少女に手を貸す。
「は、はい」
 珍獣も後に続く。

シェイラ9/4 0:3:322184cfEWCEKuzUjoY||69
 外を男は用心深く見渡すと、少女と珍獣を伴い、ことりと久しぶりに部屋を出る。
 船室がぼんやりと続く、廊下は見張りも居なく、妙にがらんどうだった。
「はいはい!質問〜!場所、どうすんのさぁ?移動するにも、長い距離は無理でしょ?」
 ちらと、彼女を見る。
「あ、私なら大丈夫です!だから、へ平気…」
 体がぐらりと傾いで、倒れこみそうになる。
 こんな自分が恨めしい。
 体が虚弱なのは理解はしている。

シェイラ9/4 0:3:482184cfEWCEKuzUjoY||208
 それでも、剣を持ち、戦うと決めたのは自分なのだ。
 居場所はここにはなくて、この自分を支える男は、標的なのだ。
 そう、甘えてなんかいられるものか。
 例え、ほのかな想いにぐらついていたとしても。
 ぐっと手に力をこめた。
「無理するな」
 しかし、暖かい手が肩へぽんっとかかる。
「ありがとうございます。平気ですから……本当に」
 すると、男は何を思ったか、その場で少ししゃがみこむと少女の華奢な体をひょいと抱き上げた。
「!」
 驚きすぎて声が出てこない。 

シェイラ9/4 0:5:12184cfEWCEKuzUjoY||210
「あ〜。いいの?さっきあんなに拒否られたのに?」
「う……。悪い。嫌だよな」
 言葉足らずで、伝えようとしている事が伝えられないそんな風に見える。
 が、少女はそれどころではない。
 顔が先程までではないが、近い。
 体を支える一対の―逞しいとまではいかないが―男性らしいすっとした腕。
 困惑していながらも整った表情が黒髪の間からちらちらと見える。
 心臓が、これこそもう長い距離を猛獣にでも追い駆けられたかのように脈動している。
 自分の体が、目の前のその男の腕に抱かれていると思うと頭がぐるぐるしてしまって何も考えられない。

シェイラ9/4 0:5:182184cfEWCEKuzUjoY||951
「そ、そんな事な、ないです。はい」
 やっと、絞りだされた言葉はたどたどしく、ぶつりぶつり途切れる。
 言葉に少し、安心したようで気遣わしげに浮かんでいた謝罪もほんの少し消える。
 それでも男は少し我慢していてくれと、すまなそうに呟くと可能な限りゆっくりとかつ警戒を怠らず歩く。
 途中、ハリネズミの小さいのがとととやって来て、道案内を始める。
 後方には珍獣がつき後ろの守りを固める。 
 やがて、最下層の船倉への暗い階段が姿を現す。
「わ、私もう大丈夫です!平気です!ですから、降ろしていただけませんか?」

シェイラ9/4 0:5:412184cfEWCEKuzUjoY||528
 先程の薬が少しずつ効いてきたらしく、調子は確実に良くはなってきていた。
 何度繰り返したか解らない説明を告げる。
「でも、まだ、熱い」
 キャッチボールのようにぽんと跳ね返ってくる言葉の意味を勘ぐりすぎて、またドギマギしてしまう。
「え〜。ねぇねぇ、あんた本当に大丈夫なの?」
 珍獣は男に聞くが、平気と頷く。
 かれこれ、彼女を抱き上げて軽く三十分は越えるであろう。
 そろそろ、限界のはずなのだ。
 証拠に男の腕は細かい震えが見える。
「お前じゃ、無理だろ?支えて歩いてもらうならまだしも」
 上がった息を少し整えながら、伝える。

シェイラ9/4 0:6:52184cfEWCEKuzUjoY||823
「ねぇ、それってあんたもんのすごく失礼発言じゃないっすかぁ?」
 ずばりとつく。
「重いって事?」
 重い=少女と言うわけで、
「ち、違う!そ、そんな訳じゃなくてだな……」
 一段目に足を落とす。
「非道いですよ〜!そんな事、言ってません!」
「そうだ。ない」
 二段目へ。
 ハリネズミは軽やかに階段を降りていく。
「ならどうしてさ?」
 もう一つ下の段へ。
「それは―」

シェイラ9/4 0:6:222184cfEWCEKuzUjoY||55
 糸がぶつり切れた。
「ごめん。後、頼む」
 男は、突然階段に膝をつく。
「どうしたんですか!」
 熱で重くなった体がぴょんと跳ねる。
 腕はだらりと下がり、力がこもらない。
 階段の中間地点。
 男は倒れこむ。
 間一髪、階段に頭部を強打する前に珍獣が支えた。
 息遣いも荒く、その瞳はきつく閉じられている。
「ちょっちょっと!あんた、大丈夫?」
「大丈夫ですか?」
 呼びかけにも応じない。
「ヤバイ状況だね〜。こりゃ」

シェイラ9/4 0:6:382184cfEWCEKuzUjoY||897
 先導をしていたハリネズミはゆらゆら溶けて行く。
 つまり、術者の力の送る力が切れたのだ。
 少女が男の額を触るも、あまりの熱さに思わず、固まる。
「私より、熱出てます!」
 殆ど叫び声に近い言葉に珍獣は冷静に返す。
「あれだけのハリネズミ動かしてたんだから、負荷が来る決まってるよ。あんた持って運んだんだから尚更さ」
(でも、おかしい。こいつ位、力のあるならこれ位なら平気なはず―)
 ぴくんと敏感な耳は何かを聞きつけた。
 沢山の足音。がやがやと口の悪さが耳につく。

シェイラ9/4 0:7:322184cfEWCEKuzUjoY||337
 そして、それはこの薄暗い船倉へ続く階段の光を大きく遮る。
 逃げ道は無い。
 後ろにも前にも。
 珍獣は呟く。
「う〜わ〜。益々ヤバイ状況だ〜」
 今度こそ、本当の危機感をはらんで。

                  決意(後編)へ……

シェイラ9/4 0:24:142184cfEWCEKuzUjoY||86
☆後書きの言い訳でして★

すいません;かなり、長い時間置いてしまいました。
前後編にしたのは、今回の作品が最後の方でこのままで行くと全く趣が変わってしまう予定だったのとそろそろ更新しないとと言う筆不精の為です。
ご迷惑おかけしてすいませんでした。

感想、質問ありましたらお気軽にどうぞ。

シェイラ9/4 0:46:202184cfEWCEKuzUjoY||436
■◇お礼◇■

お中元、バルトークさん、ピマさん、sIsさんありがとうございます♪
同等の物をお送りできなくすいません;
まだまだ、暑い季節が続きますが、皆様お体に気をつけて下さい。

バルトーク9/4 20:33:12212cfBcsmysAsVME||918
こんばんわー。
シェイラさんのスレ、(小説)の文字を見た途端、思わずニヤっとなりましたぜ。
召喚師の男のキャラが素適です。ムリはするなと言いながら、自分が一番ムリして結局倒れちまうという、自爆型なところとか。軽い感じの珍獣ですが、言葉の節々から召喚師の男を信頼しているような言動が見て取れて。
この二人の関係……非常に気になります。

筆不精ってのは、リアルの忙しさとかいろいろありますしねー。だけど、いいんです。だって、間が空かないとありがたみがないじゃないですか。ほら、志村けんのバカ殿みたいな。
―――いや、シェイラさんがバカ殿っていうわけじゃないですよ。
てなわけで、後半もワクワクしながら待ってます。

シェイラ9/9 23:22:342182cfFYar3SmljHU||267
バルトークさんへ
いつも、感想ありがとうございます♪
やっぱり、お気に入りのキャラは良い所狙って書きたくなってしまうんですよね;
なので、今回も彼の出現率が高いと言うか、なんと言うか;
他のキャラオンリーの話も書きたいなと思いつつ、
時間の無さに泣きが入ります(涙)

いや、オフではよくバカ殿紛いなんでマジ当たってます(笑)

返信遅れてしまい、申し訳ありません;
真に解りづらい作品ではありますが、今後も気長に待っていただけると嬉しいです。


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