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10975ひずみのくにのありすアリカ9/12 15:40:461241cfFGnEWa96mOM

逃れられると思うな

真実はすぐ側に


「・・・さあ、始めるとしようか。
 愉快な悲劇の第一幕、はじまりはじまり――」

アリカ9/12 15:41:351241cfFGnEWa96mOM||24
「いっ・・・」
その声が響いたのは、丁度時計塔の鐘が時を告げたときだった。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
街の人々の集まる、広場の中心。
しかし、それに気付いた者はいなかった。
ただひとりを、除いて。
「・・・アリス?」
まだ15、6歳であろう少年だ。このあたりには珍しい、燃えるような真紅の髪。悪戯好きな子供の面影を残した同色の大きな瞳。
その瞳が、笑う形に歪む。
「派手な登場だね、アリス」
「・・・、アリス・・・?」
空には橙色の太陽が浮かんでいた。

                   +

アリカ9/12 15:42:381241cfFGnEWa96mOM||246
まだ15、6歳であろう少女だ。陽光を反射して煌めく長い金髪、意志の強そうな蒼色の瞳。
・・・ふと気付くと、落下中だった。
「いっ・・・」
そして、思わず力の限り叫ぶ。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
どん、と地面に叩きつけられて、彼女は薄れる意識の中で少年の声を聞いた。
「派手な登場だね、アリス」
「・・・、アリス・・・?」
聞き覚えのない名前は、しかし彼女の耳によく馴染む。
空では橙色の太陽が眩しい光を放っていた。

                   +

アリカ9/12 15:46:171241cfFGnEWa96mOM||492
「ああ、起きた?」
目を覚ましたのは、木で作られた小屋の様な所だった。
「・・・、へ?」
「へ?って・・・なに?」
「あなただれ?ここはどこ?」
少女は不思議そうに辺りを見回した。
 少年は不思議そうに彼女を見遣った。
「は?」
「見たことのないものがたくさんあるわ。・・・ここはどこ?わたしは・・・」
少女は首を傾げた。わたしは・・・
「わたしは、だあれ?」
 少年も首を傾げた。
「・・・もしかして、何も覚えてない?」
「なにも覚えてない?違うわ。元々知らないもの。あなたも、この場所も。覚えてないのは自分のことだけよ」
少女はきっぱりと言い切る。

アリカ9/12 15:47:231241cfFGnEWa96mOM||275
「そう・・・、」
 少年は少しだけ哀しそうに言って、手に持っていた盆を台に置いた。
「なら教えてあげる。君はアリスさ。それ以上でも、それ以下でもない。それ以外でも、ない」
「アリス・・・?」
 少女・・・いや、アリスの耳に、その名前はとてもよく馴染む。
「そう、アリス」
「・・・じゃあ、あなたは?」
「僕に名前はない。多くの人は、僕をChesham Catと呼ぶけれど」
「チェシャ・・・猫」
「そう」
 チェシャ猫はうれしそうに笑った。

アリカ9/12 15:49:341241cfFGnEWa96mOM||691
「聞き覚えのある名前だわ」
 それでも、目の前の少年に見覚えは無い。
 いや、見覚えが無いというか・・・
 何かが、歪(ゆが)んでいるような。
 何かが、歪(ひず)んでいるような。
 何かが、歪(いびつ)な・・・ような。
 そんな感じ。
 そんな、なんだか、不自然な、ような・・・
「そりゃそうさ。君は一時期ここで暮らしていた」
「そうなの?覚えていないわ、本当にそうだった?」
「そうだよ」
「そうなの?」

アリカ9/12 15:51:251241cfFGnEWa96mOM||572
「そうさ。本当になにも覚えていないんだね」
そこで突然彼は振り向いて、背後のドアに向かって声をかけた。
「いつまでそこに立っているんだい?」
「・・・・・・」
「え?」
 アリスは慌てて背後のドアをあける。人が居たなんて気付かなかった。
 しかし、そこには誰も見えない。
「逃げられたよ。ああ見えて恥ずかしがり屋なんだ。今度また紹介するよ、アリス」
 チェシャ猫は一つ溜息をついた。
「誰なの?」

アリカ9/12 15:51:581241cfFGnEWa96mOM||370
「愚かな灯台守さ。下らないものを巡って争う」
 その時、蒼い空に鐘の音が響く。
 美しい音色は、澄み渡った空に流れて行った。
「おや、鐘が鳴ったね。そろそろお昼にしようか」
 チェシャ猫は笑う。
 世界はそして、もっとも明るい時間へ向かう。

                   +

アリカ9/12 15:56:121241cfFGnEWa96mOM||133
女王様、女王様
それは国を統一する気高き人の名前
ああ、女王様。完璧な存在は歌になれど変わらず・・・

少女は物語を大げさに語るように、歌を紡ぐ。それを見たアリスは、隣で歩いていたチェシャ猫に声をかけた。
「ねぇ、」
「なんだい?」
「じょうおうさま・・・って、だあれ?」
 彼はそれを聞いて一瞬眼を見張ったが、直ぐに表情を元に戻して笑う。
 よく笑うひとだ、とアリスは思った。
「この国の統治者さ。とても美しいひとだよ」

アリカ9/12 15:59:291241cfFGnEWa96mOM||256
先ほどの少女を思いだしてアリスはつぶやく。
「そうだね。この国の人々はみぃーんな彼女を崇拝している・・・」
「・・・・・・、あなたは?」
「え?」
「あなたはその「女王様」をどう思ってるの?」
少しだけ驚いたような顔をして、チェシャ猫は困ったように首を傾げた。
「僕は・・・どうかな」
「?」
「そろそろ行かないと。店が混んでしまうよ」
 そう言って彼はアリスの手を引いて歩き出した。
「この先に美味しい店があるんだ。〔兎月堂〕というんだけどね・・・」


アリカ9/12 16:0:11241cfFGnEWa96mOM||890
 不自然なほど元気に話し続けるチェシャ猫を見てアリスは、
・・・なんかあやしいわ、いつか聞き出してやるんだから。
なんてことを思っていた。

                   +

 この国には、アリスが見たことのないものが沢山あった。
 例えば、空に浮かぶ紅や黒の無数のトランプ。
 例えば、広場の隅の小さなカフェテリア。
 例えば、大きなチェス盤をかたどった屋敷。
 茂みで決闘をしている双子(多分)、金色の看板の掛かった帽子屋、天まで届くような大きな木。

アリカ9/12 16:0:401241cfFGnEWa96mOM||717
「すごいわね・・・」
「え?」
 しげしげと辺りを見回すアリスに、チェシャ猫は首を傾げた。
 それから、ああ、と頷く。
「そういえば何も覚えていないんだね」
「・・・でも、言葉は通じるわ。どういうことかしら?」
「さあ?」
 アリスの疑問に、チェシャ猫は曖昧に笑って答えた。
「・・・本当に何も知らないの」
 チェシャ猫の態度に少し違和感を覚えたアリスが訊ねる。
 すると、チェシャ猫が意地悪く笑った。
「どうしてそう思うのかな?」
「べっつに・・・」
「僕のことを疑っている?」

アリカ9/12 16:1:521241cfFGnEWa96mOM||527
 彼はアリスの顔をのぞきこむ。
「別に、そういう訳じゃないわ」
「じゃあ、どういう訳?」
「わたしについて何か知っているのなら教えてほしいだけよ」
アリスの言葉に、チェシャ猫は笑った。
「僕は何も知らないよ?僕は何も知らない」
 歌うように、
 唄うように、
 彼は言う。
「僕は何も知らない。でも僕はすべてを知っている。アリス、君が心からそれを知ることを望むのなら教えてあげる。本当に君が、それを望むのなら」
「・・・どういうこと?」
「さあ?」

アリカ9/12 16:2:401241cfFGnEWa96mOM||370
チェシャ猫は首を傾げた。それから、赤い屋根の建物の前で立ち止まる。
「ああ、ここだよ」
 見ると、そこには〔兎月堂〕とかかれた看板が掛けられていた。
「ここなの?」
「うん。・・・でも、随分混んでいるみたいだね」
 ガラスのドアから中をのぞくと、中には沢山の人が入っている。・・・いや、人ばかりではなく、長い耳の兎や、蜥蜴の様なものもいた。
「どうしようかな・・・」
 どうやら、中で待っている者もいるようだ。チェシャ猫はアリスに訊ねる。
「アリス、待つのは嫌い?」
「別に、それほどでもないわ」
「そう?じゃあ、」

アリカ9/12 16:3:281241cfFGnEWa96mOM||613
 少しくらい待とうか、と言いかけたチェシャ猫だったが、不意に後ろからかけられた声にその台詞を遮られた。
「・・・〔紅〕」
「え?」
 反応して振り向くと、そこに少年が立っていた。
 歳はチェシャ猫とあまり変わらないように見えるが、漆黒の瞳は彼とは正反対の大人びた雰囲気を醸している。
(綺麗なひと)
アリスは思わず見とれてしまった。男なのが勿体ない。
(でも・・・)
 どこかで見たような気がする。記憶を失う前ではなく、もっと最近に。

アリカ9/12 16:4:221241cfFGnEWa96mOM||589
「ディーダム!」
チェシャ猫の声でアリスは我に返った。どうやら、〔紅〕と呼ばれたのは彼だったらしい。
「久し振りだね、元気だった?」
「・・・君が〔アリス〕か」
 チェシャ猫の問いは黙殺して、ディーダムと呼ばれた少年は瞳だけを動かしてアリスを見た。
「え?わ、わたし?」
「君以外にも〔アリス〕がいるのか」
冷たく、突き放す様な声音で、ディーダムは言う。
 チェシャ猫がアリスをかばうように一歩前に進む。
「そうだよ、彼女がアリスだ。それがどうかしたかい?」
「・・・、べつに」
 ふい、とディーダムはそっぽを向いて、そのまま歩き出してしまった。

アリカ9/12 16:4:571241cfFGnEWa96mOM||458
アリスは、反射的に声を掛ける。
「あ、ちょっとまって!」
「ひとつ言っておこう」
 アリスの言葉を無視して、ゆっくりと歩きながらディーダムは言った。
「どうして、なんて思わなければいい。アリス、これは忠告だ」
「・・・え」
 それ以上は何も言わず、彼は人混みの向こうへ消えてしまう。
「どういうこと、かしら・・・?」
「さあ?」
 チェシャ猫は曖昧に笑った。
「ついでだから言っておくと、君が目を覚ました時に外にいたのは彼だよ」
「そうなの?」
 『いつまでそこに立っているんだい?』

アリカ9/12 16:5:261241cfFGnEWa96mOM||305
出かける前に、あの家の前にいたのが彼だったらしい。『誰なの?』と訊いたアリスにチェシャ猫が言った言葉を思い出す。
 『愚かな灯台守さ。下らない物を巡って争う』
「灯台守って・・・どういうことかしら?」
 アリスの呟きは、誰にも届かずに消えていった。

                   +

アリカ9/12 16:10:101241cfFGnEWa96mOM||663
「おいしかったわ!」
「それはよかった」
 〔兎月堂〕の料理は絶品だった。といっても、アリスの記憶に別の料理が無いので比較は出来ないが。
「じゃ、帰ろうか」 
「ええ」
 アリスがそう言うと、チェシャ猫はきょとんと首を傾げた。
「アリスはどこに帰るの?」
「え?」
「僕は家に帰るけれど・・・、アリスはどこに帰るの?」
 そう言えば、当然のように彼と一緒に帰ろうとしていたけれど、あそこはアリスの家ではないのだ。
「わたし・・・、どこに住んでいたのかしら」

アリカ9/12 16:10:411241cfFGnEWa96mOM||329
「さあ?」
「あなたがわたしを見つけたとき、わたしはどこにいたの?」
「噴水の真ん中」
「へ?」
 予想外の答えに、アリスは思わず素っ頓狂な声をあげた。
「落ちてきたんだよ、君は。空から」
「落ちてきた・・・?」
 信じられない様なことだが、なんとなくその辺りは記憶にある。
「じゃあ、わたしはどこから来たのかしら?」
「どこか、別の世界からかもしれないよ?」
「そんなまさか」
 くすり、とチェシャ猫は楽しそうに笑った。

アリカ9/12 16:11:161241cfFGnEWa96mOM||267
「そう考えるとおもしろくは無い?とおいとおい不思議の国から、月ウサギの鐘の音に導かれて。君はここへやってきた」
「でも、一時期はあなたの家にいたんでしょう?」
「まあ、だからこの仮説は却下かな」
 チェシャ猫は笑った。
 チェシャ猫は笑って、アリスに手を差し延べた。
「理由はどうあれ、家がわからないんでしょう?もう少し、僕の家にいる?」
「・・・お言葉に甘えて」
 アリスは、その手をとった。
「そうすることにするわ」

                       +

アリカ9/12 16:13:331241cfFGnEWa96mOM||225

To be continued・・・?

第一幕の第一場が、ここで終了です。なんだか結局何が言いたいのかわかりませんが、まあ生温い目で見守ってやってくださいませ。

アリカ9/12 22:16:551241cfFGnEWa96mOM||923
感想など、いただければうれしいですw(遅

アリカ9/13 17:27:101241cfFGnEWa96mOM||707

すいません、133と256の間に

「ふうん・・・、人気があるのね」

という台詞を入れて読んでください・・・

「この国の統治者さ。とても美しいひとだよ」
「ふうん・・・、人気があるのね」
先ほどの少女を思いだしてアリスはつぶやく。

 となります。

バルトーク9/13 22:4:322212cfBcsmysAsVME||943
こんばんわ。初めまして。
拝読させて頂いて、とても丁寧な話だなー。と感じました。
文章もしかりですが、設定も丁寧に考えられている気がします。

文章の間に挿入されている誌的な文章も、いい雰囲気を出してるなと思いました。
それに、その中のに様々な伏線が張り巡らされてるような気がしてなりません。決闘している双子とかが怪しいと邪推してますw
こんな感想ですが、これからも頑張ってください。
こっそりと応援させていただきます^^

アリカ9/14 19:34:261241cfFGnEWa96mOM||972

バルトークさま、こんばんはandはじめまして^^
ありがとうございます、とっても嬉しいですw

「決闘している双子」のあたりは「鏡の国のアリス」を読んでいれば少しわかる・・・かな?
 でもまあ、原作との関係は無いに等しいので「アリス」シリーズを知らなくても全然平気ですよー(宣伝。

 これからもちょくちょく書きに来ると思うので、そのときはどうぞよろしくおねがいしますw

ホルト9/29 17:20:191118cfDbFdY61tbkQ||598
https://50.gigafile.nu/1004-c7bfa3a2dc1610c42a3c6a0faf6146d1f

ホルト9/29 17:20:271118cfDbFdY61tbkQ||997
wef


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