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10998兎の陰謀に巻き込まれる鼠が狼と協力する話バルトーク9/19 20:12:262212cfBcsmysAsVME

最近、太宰治を読み始めました。
太宰治といえば教科書の走れメロスくらいしか読んだことが無かったのですが、試しにと図書室から分厚い全集を借りてきて読んでます。まだ、十分の一も読んでないですが……内容を理解しきれているのかは、難しいところですね。

内容は、前回の十五夜物語の続編と言うか完結編です。
タイトルのセンスが無いのはお約束ですけど。


バルトーク9/19 20:13:02212cfBcsmysAsVME||950

 冷気に研ぎ澄まされた月光が、社の裏手にある竹林を照らしていた。
 竹林の中を、光に照らされた二つの影が飛び交う。

 一匹は、青い羽織袴の下に帷子を着込んだネズミ。
 もう一匹は、紺の忍び装束を着込んだ狼。
 二匹は、忍びだった。

 背の高い竹葉の先端を揺らしながら、二匹は跳躍する。
 影が、月に照らされて踊った。
 

バルトーク9/19 20:13:232212cfBcsmysAsVME||386
 
 狼は懐に手をやると、クナイと呼ばれるような刃物を取り出した。狙いをつけ、水平に投げつける。
 クナイは、夜の寒気を切り裂きながら、青いネズミに迫った。

「―――ッ」
 青いネズミは、寸前で姿勢を変えた。しかし、足場を失い、重力にしたがって地面へと吸い寄せられていく。


バルトーク9/19 20:13:442212cfBcsmysAsVME||241

「クソ……」
 ネズミが、苦々しく呟いた。
 その細い糸眼には戸惑いが浮んでいる。
 相手の実力は、明らかに自分よりも上だった。
 無駄な戦いを忍びはしないものだ。様々な打算が、波のように押し寄せる。ここは、一旦引くべきか。
 否ッ!
 青いネズミはそれを振り払った。
 自分は、誇り高きうさぎの英雄から、ここの守りを任された身。
 うさぎ族の命運を、奴は自分に預けた。
 そこに打算は無く、信頼があった。ならば、自分も信頼で応えるのが当然というものだ。


バルトーク9/19 20:14:242212cfBcsmysAsVME||162

「いい加減、諦めたらどうだ。ネズミを殺す気はない」
 天上から、冷徹な声が降り注ぐ。
 幾多の枝葉に遮られて、ネズミは敵の姿を見た。
 
 紅い襟巻きが、風にはためいている。
 こちらを射抜くその眼は、隻眼。

「俺は、引くわけには行かない」
「うさぎに義理立てするとは、らしくないな」
 狼が、何を言わんとしているのかは分かっていた。
 ネズミとは、打算の生き物だ。
 力がないゆえに、打算という生きる術を手に入れた。しかし、ネズミにも誇りは存在する。


バルトーク9/19 20:14:522212cfBcsmysAsVME||36

「……愚かな」
 狼の姿が、消えた。
 ネズミの周囲から、一切の気配が消失する。
 先程まで響いていた虫の鳴き声も、今は何も聞こえない。
 感じられるのは、殺気だけ。
 五感の全てを、その二文字が支配している。
「冗談……きついぜ」
 膝が笑い、闇が普段の数倍も濃く感じる。
 ふと、闇の中で一筋の光が煌めいた。


バルトーク9/19 20:15:212212cfBcsmysAsVME||384

 死が、近づいてくるのは感覚で理解している。
 だが、体が動いてくれない。マジかよ、こんな所で死んじまうのか?
 
 カキンと鋭い金属音。
 死が、弾かれた。

 
「たく、助けに来るんだったらもっと早く来いよ」
「すまん」
「馬鹿正直に謝るなよ、軽いジョークだっての」
  
 
 助けたのは、うさぎ族の英雄。


バルトーク9/19 20:15:492212cfBcsmysAsVME||299

「貴様から出向いてくれるとは好都合。俺は貴様に殺された狼侍の遺志を継ぐ男。ウサギよ、貴様には死んでもらう」
「それが……狼侍の意思ではあるまい」
「はっ、何を馬鹿な」
「それが、貴様の意思なのか?」
「知れたこと!!」

 気配が明確になり、紺の忍び装束がうさぎの紅いコートに肉薄する。
 刀とクナイの火花が散った。


バルトーク9/19 20:16:132212cfBcsmysAsVME||866

「だがなぁ!!」
 忍狼が袖に隠していた小太刀の流星群を放つ。
 しかし、うさぎ族の英雄は、一太刀で全てを叩き落した。
「なッ!」
 忍狼の首筋には、刀の切っ先が突き付けられている。
「今、我ら地神族同士で争っている場合ではあるまい。剣を納めよ、狼の英雄よ」
「何を言っている?」
「月神族の介入が始まっている。侍は、他族の侵略を許すような男ではなかったはずだ」
   
 こやつは何を言っている?狼侍は、貴様が殺したのではないのか。
 忍狼は当惑の中、自分たちへ向けられた殺気に気がついた。
 誰が?
「お前ら、ゆっくりもしてらんねぇぞ」
 正気を取り戻したネズミが、周囲を警戒しながら叫ぶ。


バルトーク9/19 20:16:372212cfBcsmysAsVME||158

「仲が良いようで、何よりじゃな」
 竹林の中から現れたのは、翁。
 竹を切りに来たのだろう。手には鉈を握っている。
 しかし、ならば先程の殺気は何者のものなのだろうか?それに、ウサギとネズミはなぜこれ程までに警戒している?

「翁殿、久しいですな」
「おお、ウサギか。元気でやっとるかね?」
「おかげ様で」
 ウサギが、殊勝に頭を下げる。
「それはそれは……」
 なんだ、この感じは。
 尋常ではない殺気が、翁を中心として膨れ上がる。
 

バルトーク9/19 20:17:492212cfBcsmysAsVME||509
 
「なんだと!」
「これが、奴らのやり方だ」
 翁は眼をぎらつかせ、口からはよだれと共に荒い息を吐き出している。
「…・……………………」
 翁が、鉈を手に飛び掛る。
 忍狼は、翁を殺すことに躊躇した。それは、死に直結する行為だ。
「なに余裕こいてんだよ」
「ネズミッ!」
 翁をネズミが弾き飛ばした。
 まったく、余計なことを。

「カグヤ様の為に、貴様らの首を!!」
「翁殿!」
「無駄だ、狼。既に、翁殿の意思はない」
 うさぎが、刀を滑らせた。一筋の剣閃が、真横に描かれる。
 翁が血を吹きあげる様子を、忍狼は複雑な思いで見詰めるしかなかった。


バルトーク9/19 20:18:472212cfBcsmysAsVME||234

「狼、俺たちは地神族をまとめて月神族に戦いを挑む。お前は……どうするんだ」
 忍狼は考え込むように、俯いた。
 そのまま数秒。
「貴様らの言っていることが本当だとしたら、協力しないわけにはいくまい。しかしだ、うさぎ族はいいのか? 貴様らは元々、月神族だろう」
「……今は地神族だ」
「そうか。では、出立までに有志をまとめておこう。我ら狼族の雄姿、期待していてもらおうか」
 忍狼は、そう言い残し姿を消した。


バルトーク9/19 20:19:292212cfBcsmysAsVME||20

「なぁウサギよ……今回の狼族を味方に引き込む話は強引すぎやしないか」
 狼族は、忍狼と侍狼によって統治されていた。
 指導者が多ければ多いほど、派閥が多い。それは、こちら側に取り込むのも難しく、内部に軋轢を生じる可能性も示唆している。
 だから、狼族を一本化するために狼侍を殺した。それを、さも月神族の仕業に見せかける。


バルトーク9/19 20:19:392212cfBcsmysAsVME||509

「俺は、お前のやってることが正しいと思ってる。だけどな、たまに分からなくなるんだ」
「だが、既に俺たちは戻れない場所まで来ている」
「そりゃぁ、そうだな」
「立ち止まらない。月神族を全て滅ぼすまでは」
 ウサギの過去に何があったのかは、ネズミは知らない。
 ただ、月神族に大きな恨みを持っているということ。そして、地神族を使って月神族を滅ぼそうとしていることは知っている。
 
 お前なぁ、月神族を滅ぼすって、お前も月神族じゃなかったのかよ。
 ネズミの思いは、ウサギに届くことは無かった。


バルトーク9/19 20:20:282212cfBcsmysAsVME||430

 その後
 青いネズミの手記

 結果から言おう。俺たち地神族は、月神族の侵攻を断念させることに成功した。
 その要因は、月強硬派のカグヤを、月穏健派と協力して殺害したことにあるだろう。
 それを成功させたのは、ウサギ。お前の力に他ならない。
 
 決戦前、お前は俺に言った。
 自分が死んだ時、後は頼むと。何を頼まれたのか、その時の俺は分からないままに頷いた。
 そして決戦後。敵本陣へと突入したお前の行方は、必死の捜索にもかかわらず分かっていない。


バルトーク9/19 20:20:572212cfBcsmysAsVME||34

 お前がなぜ、月神族を恨んだのか俺は知らない。
 今は、俺たち地神族と月神族は非常にいい関係でいる。この状況が、一時の安寧であることは理解しているつもりだ。
 だがな、俺は結局、お前の意思を最後まで理解することは出来ない。なぜなら俺は、月神族との和平を勧めていこうと思っている。
 なぁに、住む場所は違えども同じ神族だ。なんとかやっていけるさ。


 fin


バルトーク9/19 20:22:82212cfBcsmysAsVME||700

過去物
ねずみとうさぎ http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-9101.html
十五夜物語   http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10967.html


バルトーク9/19 20:28:452212cfBcsmysAsVME||298
後書き
なんか、上手にまとまったと思ってます。だけど、全然うまくまとまってねーよ。
無理やり終結な感じがひしひしと。
それと、どうでもいいことですが作中のウサギの表記にはカタカナかひらがなかと気を使いました。ウサギといきなり読むと、美少女戦士が思い浮かぶのは俺だけではないはず!

冒頭の変な日記みたいなのは、本編となんの関係もないです。
一時の気の迷いと言うか、軽く流してください。

ウサギの英雄設定は、なんというコードギアス。な設定でした。さすがにこれはなぁ……と書くのを断念。後日談という形でおしまい。
次に彼らと会うのは来年かぁ……来年、会えるよな?

りゅ9/21 17:29:472184cfAU0jy/xyg/w||933
こんにちわー。
前の作品も見たんすけど何書こうか考えているうちに忘れちゃって・・・
今回の作品もおもしろいです。動きの表現がカッコよくて最高です。
今回は作品がフルでシリアスだったのでツッコミの余地無し。残念。
けどウサギと聞いて瞬間的に思いつかなかったですよ。数分後に解読できましたけど。
自分はいうなら世間的に名作と言われている作品が嫌いだったり。これは俺自身よくわかりません。
とりあえず親の殺気を背中に感じつつ退散します。ではでは。

バルトーク9/29 8:30:92212cfBcsmysAsVME||250
りゅさん、こんにちわー!
感想ありがとう!!返信遅くなって申し訳ないです^^;;
たまにはシリアスな作品も書いてみたくなるんだい。というか、書く作品の方向性は、今読んでる本に結構な割合で影響されてるんだけどw
世間的に名作。と言われる作品はやっぱり面白い要素があると思うから、見て損は無いと思う。人気作品で、どうも、EVAとかひぐらしは俺も肌に合わないと感じるけど。
今期のアニメではグレンラガンが一番かね。

親の殺気って、いったいどうしたんだい。
親が息子を殺す世知辛い世の中だから、殺されないように気を付けてくださいねb

りゅ9/29 10:29:122184cfAU0jy/xyg/w||633
またまたこんちわー。
やることがなくて悶絶しているりゅです。
あー・・・そういう風にとったか〜・・と。
個人的には教科書に乗るような作品を言ったつもりだったんすけどね。ちと食い違い発生。
基本的にはひぐらしとかハルヒは好き。ただエヴァはどうもニガテ。
でもマイナーな作品が好きなのは本音。
特にディスガイアとか。あれは現在俺のクラスでは9割、学年全体で9割が知らなかった。
ちなみにアニメ作品は見てない。土日は部活とクラブがあるから午前は見れない。

親の殺気=さっさと勉強して成績あげろやビーム。これ結構キツいんすよ。
ではでは。

バルトーク9/29 19:47:582212cfBcsmysAsVME||241
こんちわー
マイナーなアニメ。ってなると、どうもNHKのアニメを連想してしまいます。学園戦記ムリョウとかふたつのスピカとか……。けっこう面白いと思うんだけど知名度がorz
ディスガイアのアニメは、俺も見たことはないっすね^^;確かに周りを探しても、ディスガイアのアニメを見たことある奴ってのはいないかも。
部活がある時代でも、動画サイトで見てました。というか最近リアルタイムでアニメを見る時間がめっきり減った。いいことか悪いことかは分からんけどw

そんな親には、勉強よりも大切なことがあるってこと教えてやるんだ。決してそれはネットでは無いけれど。

9/30 12:44:142221cfUU6JEqu4Kn6||679
今日は

お久しぶりです
鼠のひょうきんでちょっとドライなところが
ツボにはまりました

無理矢理終結でも
終らないよりいいじゃないか、なーんて
不自然の欠片もないように思えたのは
自身の感覚の鈍さなのか
バルトークさんの技術ゆえか

失礼しました

バルトーク9/30 19:27:42212cfBcsmysAsVME||548
武さん、お久しぶりです。
鼠は、兎の対極に位置するキャラとして書いてみました。これといった思想を持たない故のフリーさ。みたいな。ここにきて予想外の活躍をみせた鼠だったのですが、すんげぇ喜んでると思います。いや、ありがとう。

不自然に見えなかったのは、やっぱり俺の腕のおかげ―――ウソです、はい。
だけど、自分の中には消化不良があるというかまだやりたいことをやってねぇ!というような魂の叫びが木霊してるんです。
それに終わるといえばグレンラガンですよ。あれはいい最終回だった。
ぐは、こんな返信書く奴ですが、これからも覗いてくれたら嬉しいっす。

シェイラ10/1 23:54:512202cfAU.g9SUcrnE||761
お久しぶりです♪
竹取物語のキャラをこんなにバイオレンスに書けるのはバルトークさんだけだとしみじみ思いつつ読ませていただきました。
いかれっぷりがナイスですよ!
また、キャラの書き方がしっかり書き分けされていて、さすがです。
寂しい空気を残しつつ幕を引く方法。風流ですね(←違)
詩のリクエスト遅くなってすいません;
もう少しでアップする予定なので、ご迷惑おかけします。
これからも、バルトークさんの物語、楽しみにしています。

バルトーク10/4 19:32:242212cfBcsmysAsVME||103
シェイラさん、お久しぶりです!
元々が二次創作書きだったので、ちょこっと手を加えて好き勝手にやるってのは大好きだったりします。
日本最古のSFだろーが好きにいじってやりませう。
と、調子に乗ってます。だけどこれは照れ隠しなんです。
ナイスとか言われるとテレテレですよ。

シェイラさんも、自分のペースでゆっくりとやっちゃってください。
自分もシェイラさんの作品を楽しみにしてます!


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