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11064*歪曲世界*李亞10/21 8:18:282182cfX1jgjTYluO2

李亞10/21 8:18:522182cfX1jgjTYluO2||1000

 蝋燭をつけないこの部屋の中の薄暗さは、雨の日独特の物だ。太陽の光は分厚い雲に遮られて地上に届くことはないのに、どうしてか人工的に光を生み出さなくても、ある程度の光は確保できている。かちかちかち、と時計の針が走る音、ざあざあざあと雨が地に打ちつける音が耳を埋める中、視線を下に移せばアルくんの寝顔。ときめくとかそんなんじゃなくて、今感じたのは多分母性愛だと思う。


李亞10/21 8:19:122182cfX1jgjTYluO2||455

 蝋燭をつけないこの部屋の中の薄暗さは、雨の日独特の物だ。太陽の光は分厚い雲に遮られて地上に届くことはないのに、どうしてか人工的に光を生み出さなくても、ある程度の光は確保できている。かちかちかち、と時計の針が走る音、ざあざあざあと雨が地に打ちつける音が耳を埋める中、頬に当たるのはリオットの柔らかい太ももの感触で。その、ああいう感情を抑え込むのがとても難しい。


李亞10/21 8:23:82182cfX1jgjTYluO2||637

「あれジェーさん、何鍵穴覗い――」
「ば、莫迦者! 陛下がお休み中です! 静かになさい!」

「(――ジェンツァうっさい……)」
「ジェンツァさん? もうアルくんの休憩終わりですか?」
「い、いいえ奥方様、たまには休息も必要でしょうから、まだ起こさないであげて下さい」
「あ、はい。了解しましたー。よかったねアルくん。最近寝ないで地図と睨めっこしてたから、私ずっと心配してたんだ」
「(……これは折角の膝枕とか思わないで寝とこう)」

 本日午後の二人ぼっち時間。未だ累計不明。


李亞10/21 8:23:442182cfX1jgjTYluO2||538

  
   

*歪曲世界*

   

   

李亞10/21 8:24:542182cfX1jgjTYluO2||179

「リオッ、ト……」

 ざあざあざあざあ――、ずっと途切れることのない雨音。もう聞き飽きたなあって思ったとき、アルくんが私の名前をぽつりと零した。お、起き、た……? そっとアルくんを覗き込んだけど、依然として規則正しい呼吸を続けたままだ。ね、ねえアルくん、今のもしかして、寝言、とか……? 地味に恥ずかしいのに、なんか無性に嬉しくて、凄い複雑だよ。


李亞10/21 8:25:182182cfX1jgjTYluO2||100

 私ね、アルくんの前では可愛い女の子で居たいんだ。他の人の目に私がどう映るかなとか、そりゃ、ちょっとは気になるけど、でもね、他の人の前では平均以下の女の子でも、アルくんの前ではどの子より可愛い子で居たいし、いつもアルくんの中の一番で居たい。だから、例えアルくんの夢の中にいる私でも、可愛い子であってほしいんだよ。


李亞10/21 8:25:422182cfX1jgjTYluO2||668

 ――うぉあああっ! 私恥ずかしいっ。口には出さなかったけどこんなこと思っちゃうなんて思い上がりもはなはなっ……うわ頭の中で噛んじゃった! えっと、思い上がりも甚だしいよ!だって、世の中には私より胸大きくて、腰も細くて、お尻も小さくて、余計なお肉とかついてなくて、背が高くて、顔小さくて、ニキビとかない滑らかお肌の、おめめパッチリの美人さんなんて、沢山いる。そういう人たちより私を可愛く見て欲しいなんて、私なに思ってるんだろう。しっかりしろよ数十秒前の私っ。


李亞10/21 8:26:252182cfX1jgjTYluO2||417

 私なんか、胸小さくて、他は全部平均並で、余計なお肉とかたぷたぷで、顔も大きくて、肌とかすぐ荒れるし、目も小さくて、緊張するとすぐどもるしすぐ噛むし、唯一自慢できるのなんかアルくんの隣に居られることと、お料理の腕前だよ! 私の外見に関することで自慢なんて全く出来ないし、唯一私に関することで自慢できるお料理も、隣にアルくんが立ってたりすると、緊張して凄い焦がす時もままあるし、私って一体なんなんだろう。


李亞10/21 8:26:352182cfX1jgjTYluO2||489

 天は二物を与えず、なんて言葉、本で読んだことあるなあ……まだ村にいた頃、「にぶつ」じゃなくて「にもの」って読んで弟に笑われた気がするんだけど、もしかして私、神様から一物も貰えなかったのかなあ……神様が恨めしい。


李亞10/21 8:26:552182cfX1jgjTYluO2||736

 ――でも、ね。

 まだ私の膝の上で寝息を立てるアルくんをみて思った。私にないものは殆どアルくんが持ってるから、私はアルくんが持ってないもの探してくれば丁度いいんじゃないかなあ。きっと男の人が女の人の胸が大好きなのも、女の人が男の人の筋肉とかに憧れるのも、自分にはそれがないからだと思うんだ。


李亞10/21 8:27:132182cfX1jgjTYluO2||242

 とは思うものの。アルくんはホントに、すっごい色々なものを持ってるし(綺麗な顔とか綺麗な肌とか明晰な頭脳とか常人離れした体力とか運動神経とか!)、私は何を探せば丁度良くなるんだろう。胸の谷間なんて、肉をどれだけ寄せてもできないし、お尻だって、ぷるんってえっちな曲線を描いてるわけでもない。そのくせお腹はぽっこりだ(あ、脂肪ならアルくんは持ってないけど私は…………あー……うん、これは却下だね!)。ねえアルくん、私どうしたらいいのかな。
 

李亞10/21 8:27:282182cfX1jgjTYluO2||791

 無意識のうちにアルくんの柔らかい髪に指を通すと、絡まることもなく指をすりぬけ、またもとの場所に還っていった。私の髪は、アルくんみたいにサラサラじゃないなあ。アルくんのは、夜の空と同じ真っ黒の髪。私のは、金になり損ねたみたいな、中途半端に明るい茶色。ほら、ここでもアルくんの方が勝ってるんだ。
 

李亞10/21 8:27:442182cfX1jgjTYluO2||505

 睫毛も長くて、くるんってカールしてる。目を閉じてるからあんまり分からないけど、アルくんはぱっちり二重だ。私なんて逆さ睫毛の上に一重で、余計に目が小さく見えるから、もう私の目なんか嫌い。
 唇だって、私のはカサカサなのに、アルくんのは女の子みたいにふっくらしてて瑞々しくて、私今、凄く、あ、あのっ、き……キス、したい……。薄暗くて蝋燭の明かりが際立つ中、寝てるからちょっと半開き気味のアルくんの唇が妖艶に濡れてるのが目立って、そこからちらって見える、真っ赤な舌もえっち。
 

李亞10/21 8:28:42182cfX1jgjTYluO2||509

 私が寝てたってただ涎が垂れるだけなのに、どうしてアルくんはこうも絵になるんだろう。美人は何をしても美人っていう法則はホントみたいだ。

「……ねえ……なんで、私だったのかな……」

 選んでくれたことに何の不満もないんだけど、でもやっぱり、私がどんなに足掻いたって、アルくんが今まで付き合ってきたどんな女の人にだって及ばないと思うんだ。だから、不安。遊びなのかなとか、気の迷いなのかなとか、考えたらきりがないの。だから――


李亞10/21 8:28:252182cfX1jgjTYluO2||730

 

「リオット」


 

李亞10/21 8:28:462182cfX1jgjTYluO2||900

「へっ……う、うわっ、あ、あるくんっ、お、おおおおきてたの!?」
「ん。少し前からね」
「へ、へえー……」

 どうしよう。アルくんがずっとこっちをみてる。勿論、「あるかでると が なかま に なりたそうに こっち を みている!」なんて友好的なものじゃない。いつもと変わらない無表情の筈なのに、アルくんの雰囲気はいつもと180度違うんだ。どうしようどうしよう。凄く居心地悪い。
 

李亞10/21 8:29:82182cfX1jgjTYluO2||85

 私は莫迦だけど、そこまで鈍いわけじゃない。アルくんが言いたいことくらい分かるんだ。でも、過去の女の子が気になってました、なんて死んでも言えない。墓場まで持って行く覚悟だよ私は!

「――……あ、私おやつ食べてくるね」
「リオット」


李亞10/21 8:29:292182cfX1jgjTYluO2||31

 きた。
 アルくんの口が、何か言いたそうに小さく、本当に小さく開閉してる。なんだろう。なんて言われるんだろう。『今のなんなの?』、それとも『別れようか?』、それとも『帰りたいなら帰ってもいいけど?』、それとも――。


李亞10/21 8:29:472182cfX1jgjTYluO2||182

「…………――……ケーキは、1日ひとつまでだから」
「え……? ――あ、ああ、うんっ、分かってるよ! それ先週も聞いたよ!」
「そうだっけ? 昨日、セレネのケーキも貰ってたみたいだけど」
「(ぎくぅっ)し、しらないよわたしっ、幻覚だよきっと!」

 この流れに乗って立ち上がると、私はばたばたと足音を立てて階段を駆け下り、セレネくんが踏み台に乗ってお鍋の中を掻き回してる横を通り過ぎて、冷蔵庫の中のケーキにありついた。
 

李亞10/21 8:30:52182cfX1jgjTYluO2||548

 大好きな苺のケーキはあんまり美味しくなかった。


李亞10/21 8:30:252182cfX1jgjTYluO2||876

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脳内を過ぎった擦れ違いネタにktkr、と思わず1人でうほうほしてました。
身分の違いやら美形と平凡のカップルやら、萌えを凝縮しすぎた気がしますが。

今後はリオットちゃんが無情にも捨ててきた村のお話とか、アルくんの故郷のお話も書いてみたい。

 

完成日 H19/10/21(日)

李亞10/21 8:30:492182cfX1jgjTYluO2||683

■本日のBGM■

 「アンインストール」
  http://www.youtube.com/watch?v=B0JrX-OsvNo

 石川さんのアルバム買いました。
 なんていうかもう……houseで泣きました。
 マジ泣きしたのはサンホラの「ハジマリのクロニクル」以来です。
 あーにーそーん!


李亞10/21 8:31:92182cfX1jgjTYluO2||612

▼過去

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*短編*

思い出、観せます - ある体験者の記録 -
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Claudia
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insania
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李亞10/21 8:31:292182cfX1jgjTYluO2||247

*歌姫のお話*

calamitaの歌_viventeの剣
   http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10817.html

思えば、残酷な永遠を歩み続けるより他にはなかった。
   http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10859.html

物事を定めるのが、人形ではなく創造主だっただけの話。
   http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10893.html


バルトーク10/21 17:43:392212cfBcsmysAsVME||919
リオットに萌えt(ry

―――あ、いや、どうもお久しぶりです。
身分違いとかに悩むっていう王道はいつの時代もいいものですね!
それに何だかんだいってあるかでると閣下がリオットの尻にしかれる気がびしばしとするんですが……
 
石川智晶さんとか歌唱力はガチ。SEEDの頃初めて知ったんですがアルバムは買って正解!!
アルバム曲とかもいいやつが多いですしv

李亞10/23 21:29:292182cfX1jgjTYluO2||618
バルトークさんへ▼

リオットちゃんは私の趣味を投げ込んだ愛娘です。
書きながらハァハァしてました(´・ω・`)

身分の違いで云々は、ホント王道過ぎるくらい王道ですが、これがないと上×下のカップルは成立しないと思いますね。
尻に敷かれるのはアルくんがヘタれ属性だからです。
それを表に出さないのが魔王の意地。

石川さんは寝る時にかけてます。
何度聞いても飽きないっていうか、あの声どこから出てるんでしょう。
あの曲全部作ってるっていうのも尊敬です(・∀・`*)


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