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11090それいけ僕らのパイゼルガー!!バルトーク11/3 23:15:412212cfBcsmysAsVME
 
 男が戦場を彷徨っていた。
 ビルに囲まれた交差点には砲弾が雨のように降り注ぎ、男の目の前では砲台が射手もろとも吹き飛んだ。
 数メートル横では直撃を受けた戦車が火球へと変貌し、何倍もの体積へと膨れ上がる。その爆風はアスファルトの地面を抉りながら男を直撃した。
 到底人間が原型を保っていられないような熱波をモロに浴びながらも、男は平然としている。
 

バルトーク11/3 23:16:512212cfBcsmysAsVME||156
 
 そもそも男の服装はマトモでは無い。
 ぼさぼさの、無造作に伸ばされた長髪。顔の大部分は大きなサングラスが覆い隠しているので細かな人相は知れないが、年齢は二十代〜三十代といったところか。
 服装は飾り気も何も無い灰色のスウェット姿。靴は量販店で安売りしてそうなスニーカーだった。
 戦場にとって明らかな異分子。
 しかしこの男の横を、鉄帽をかぶって突撃銃を手にした兵士たちが駆けて行くが、彼らは男を全く気にとめる様子は無かった。


バルトーク11/3 23:17:362212cfBcsmysAsVME||341

 ここ数十年、人類は正体不明の天敵。アンノウンと呼ばれる生命体と生存競争を繰り広げていた。
 全てが謎に包まれているそれは、圧倒的な物量と戦闘能力によって徐々に人類を追い詰めつつある。
 舐めやがって。男が憤然と空を見上げる。
 空は、まるでカーテンのように弾幕が覆っていた。しかし弾幕のカーテンをもろともせずに飛来するアンノウンの砲撃で、また一つ砲台が吹き飛ぶ。
 俺が愛する人類がこうも簡単に追い詰められるなんてな……ふざけんな。
 

バルトーク11/3 23:19:62212cfBcsmysAsVME||800
 
 男は人類を愛していた。なぜなら全ての人類は彼と兄弟だからである。
「テメェは口惜しいか?」
 アンノウンの砲撃で吹き飛んだ砲台。
 ひしゃげた鉄の塊からはみ出ている、その炭化した腕へと男は語り掛ける。
「―――そうか」
 納得したように頷いた男は、空を再び見上げた。
 感じたものは敵意。


バルトーク11/3 23:19:272212cfBcsmysAsVME||200

「テメェのカタキは俺が取ってやるよ」
 はるか頭上から狙いを定めているのは、ガルーダと呼ばれる鳥の親分のようなアンノウンだった。
 非常に正確な爆撃が可能であり、地上部隊にとってはかなりの脅威となる。
「俺を殺そうとすんのか、セニョール?」
 ガルーダが、その巨大な嘴を大きく開いた。大気がまるで貧乏強請りでもしてるかのように忙しなく振動している。  
 バゴンと、突如男が立っていたアスファルトが陥没するが、既に男の姿は確認できない。


バルトーク11/3 23:20:162212cfBcsmysAsVME||452

 地上数百メートル。そこでは気流が大きく渦を巻き、人類の天敵である怪鳥と、それより幾分か不安定な飛行を見せる航空機が戦闘を繰り広げていた。
 単純な速さや攻撃能力では戦闘機の方が上だった。
 だが、旋回性能などの自由度では遥かに劣る。アンノウン側の被害は甚大であるが、決して人類側の犠牲も少なくは無かった。
 そんな空域に、上下スウェット姿の男が突如姿を現す。
   

バルトーク11/3 23:21:82212cfBcsmysAsVME||591
   
 明らかな異質。怪鳥は不信がるものの、人類は気にも止めない。
 男はまるで、地上数百メートルのそこに足場があるかのような、地上と変わらない動きで空を蹴った。怪鳥は驚きながらも、必殺の熱線によって迎撃を行う。
 しかしそれは無意味。
 男を飲み込む程の赤光の奔流が、まるで男を避けるかのように湾曲した。何故―――?
 そんな疑問を抱く暇も無く、怪鳥の存在は掻き消えた。
 男の拳が一撃が怪鳥の顔面へと叩き込まれる。それだけで、風船が割れるようにぱちんと怪鳥が砕け散った。
 あまりにも呆気ない。


バルトーク11/3 23:21:342212cfBcsmysAsVME||926

「雑魚いよなぁ」
 空中に静止しながら男は呟いた。
 しかし……人類がこれに押されているということは、これに輪をかけて人類が貧弱ってことになるのか。
 なんてこった!!―――しっかりしろよ、人類。
 男は内心で毒づくと、兄弟である人類を更に助けるべく奮戦する。


バルトーク11/3 23:22:182212cfBcsmysAsVME||370

 男が拳を振るうたびに、アンノウンは砕けていった。
 それは空中、地上を問わない。際限の無い破壊……否、救済。
 人類は未だに男の存在へと気がついていない。それは、男が影ながら助けることを望むから。
「キリがねぇぞ、クソッタレ!!」
 しかし男も人間かそれに近いものだ。
 動き回れば疲労が溜まる。
 男の活躍によって相当数のアンノウンが砕けたものの、未だに戦況は人類が劣勢。
 さすがに生身。しかも一人の力では限界があった。
 だから男は更なる力を求める。


バルトーク11/3 23:22:442212cfBcsmysAsVME||181

『カモン―――!! パイゼルガー!!』
 男は今にも倒壊しそうなビルの上に降り立ち、虚空へと手を伸ばした。
 そして、求めたのは最強の力。
 “パイゼルガー” それは無限の力を持つ最強の兵器。


バルトーク11/3 23:23:342212cfBcsmysAsVME||140

 男の叫びに応じ、時間が止まった。
 次元の境い目が砕け散り、空が怒り、地が慟哭する。
 異変に気がついたアンノウンがビルへと迫るが、それは瞬時に蒸発した。一体の、人型に近い二足歩行のアンノウン。ノウマンが目を見開いた。
 ビルを背に、今ゆっくりと大地を踏んだのは巨大な勇者。
 悪を断ち、人類に救いをもたらす絶対の力。
「来たか」
 男が跳躍した。男の体が勇者に触れた瞬間、世界が色を取り戻す。
 

バルトーク11/3 23:23:582212cfBcsmysAsVME||610
 
 それは鋭角的で曲線的。優雅で壮麗。
 赤と黄色で配色された装甲は、日の光を受けて輝いている。
 最も特徴的なのは、胸に抱く逆さ星。


バルトーク11/3 23:24:392212cfBcsmysAsVME||696

「うっし、いくぜぇ!! システムの調子はどうだ?」
 男は咆哮し、同乗者へと声をかける。
 コックピットらしき六畳ほどの空間。そこには、なんとも似つかわしくない布団が敷かれていた。
「………………」
 非常識を具現化したかのような男も、さすがに押し黙る。
 しばらくすると、もそもそと布団から何かが這い出してきた。その何かは、うぅぅぅーと呻き声を上げると、とろんとした双眸に男を捉えた。


バルトーク11/3 23:26:112212cfBcsmysAsVME||346

「あ―――なんでアンタがこんな所にいるわけ?」
 意外そうな声。現状を理解出来てないような、頭上で?マークが盆踊りを踊っているような表情。
 それってどんな表情だよクソッタレ。俺のこと舐めてんのかこのクソアマ。
「いいからさっさとコレ動かせよ、ボケ」
「はぁっ!? なにそれ。一回殺されろよ」
「一度死んだら人間お終いだろ」
 険悪な空気がコックピットに充満する。
 男とへと敵意を向けながらも、布団から体をかったるそうに起こしたのは、これまた男と同じスウェット姿の女。


バルトーク11/3 23:26:572212cfBcsmysAsVME||29

 女はぴりぴりとした空気を全身から発散しているが、全体のパーツが無難にまとまっている。特徴的な男と比べれば、やはり普通と言えるような女だ。
 それを言うと本人は怒るのだが。


バルトーク11/3 23:27:342212cfBcsmysAsVME||693

 女はやっと事態が飲み込めてきたのか、まじまじと男を確認した後、ふむ―――と不思議な計器類を眺めた。
「んーーー、んーーーーー」
 何か考えるように俯く女。
 なんか重大なことが起きてるような気がするんだよなー。こう、私の喉元まで出かかってるんだ。
「あっ、アンタ……もしかしてパイゼルガーを召喚したのぉっ!?」
「そうじゃなきゃ俺がここにいるわけねぇだろ」
 当たり前の男の突っ込み。
 なんてこった。


バルトーク11/3 23:28:412212cfBcsmysAsVME||281

「また面度臭いことを……最近出番が多くて昼寝が出来ないんだけど。 自分でどうにかしろよ、甲斐性なし」
「テメェの存在意義ってこれ動かすことだろ。さっさと動かせ」
「うわっ、面倒くさっ」
 女は唾でも吐くようにそう言うと、計器類の上に手を置いた。
「まぁ……こっちもこれで食ってるわけだし。さっさと片付けろよ。できれば三秒くらいで」
「黙れよ、テメェ」
 地上に存在するどんな機械類とも違う操縦桿の上へと、男は手を乗せた。
 俺がこの巨人、パイゼルガーと同一になる感覚。
 世界の矛盾を取り込む力。


バルトーク11/3 23:29:192212cfBcsmysAsVME||275

『いくぜ、パイゼルガー!!』
 コックピットでの争いは、外の時に直すと一秒にも満たない時間だった。
 何というご都合主義……嘆息しながらも、パイゼルガーと同体となった男はアンノウンを蹴散らす。
 

バルトーク11/3 23:29:592212cfBcsmysAsVME||2
 
「なんだ…・・あれは」
 塹壕で必死にライフルのトリガーを引いていた兵士が、空を見上げた。
 そこには敵を砕く巨大な機動兵器。希望に輝く装甲が、日の光を反射して眩しい。
 心に去来する違和感。
 しかし違和感を感じるより早く、兵士は涙していた。それは畏敬の念でも畏怖の念でも違う。
「あ……れ?」
 自分が泣いていることに驚く。
 それは、安心したことによって流れる安堵の涙だった。
 意識では知らなくとも、根底の所で知っている。あの兵器は、自分たちを救ってくれる存在だと。


バルトーク11/3 23:31:102212cfBcsmysAsVME||171

『うぉぉぉぉぉ!! ゼルガースラッシュ!!』
『馬鹿、それ疲れるんだよ!!』      
 パイゼルガーが胸の逆さ星から光り輝く剣を取り出す。破壊力の高そうな、バスタードソードと呼ばれる両刃剣に酷似しているそれは、勇猛な光を放っていた。
 それを手に、パイゼルガーはアンノウンへと切りかかる。
 一刀両断、我に敵は存在せず。まさに無双。
 
 だからこういう馬鹿が付け上がるんだ。
 女の呟きはアンノウンの断末魔にかき消される。


バルトーク11/3 23:31:292212cfBcsmysAsVME||283

『ま、こんなとこか』
『あぁー、無駄な労働。サービス残業』
 日が沈む。
 一つの都市を埋め尽くす程のアンノウンは、全てが地にひれ伏していた。
 その中心に佇むのは、胸に星を掲げる正義の巨人。


バルトーク11/3 23:32:242212cfBcsmysAsVME||114

「って、潮時だな」
 不可思議な介入者へと、人類は砲を向けていた。
 セニョール、それは無いだろう。
 男は呟くが、まぁそれも仕方ないかと思いなおす。
「今度何か奢れよ、クソ男」
 女はいつの間に取り出したのか、一枚のせんべい布団に潜り込みながらそんなことを言う。
「けっ、嫌なこった」
「うわっ恩知らず。一生ゼルガーとか動かさないし」
「黙れ。今は金が無いんだよ」
「ぁー、じゃぁこれは貸しですねぇ旦那。よろしくー」
 パイゼルガーが徐々に体を異次元へと滑り込ませていく。既に人類はパイゼルガーを視認したり触れることはできないだろう。
 

バルトーク11/3 23:33:82212cfBcsmysAsVME||1

 男はビルの屋上、フェンスの上に立っている。直径数センチのその空間でも、男には十分過ぎた。
 周囲で一番高いその場所から、男は夕日によって赤銅色に染まった町並みを見下ろす。
「パイルの巫女が……なんでいちいち金を取るんだよ、畜生」
 しかし、男は後悔などしていなかった。
 なぜなら俺は人間を愛しているから。
「故に、この世界は美しい」
 愛すべきものが住む世界は美しい。
 さぁ、人間たちよ。俺に愛されるべき存在よ。
「このゲーム。頑張って生き残ってくれよ」
 最大限の慈しみが込められたその言葉は、夕焼けへと吸い込まれていった。


fin  


バルトーク11/3 23:34:142212cfBcsmysAsVME||770

一応共通の世界観の話

http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10843.html サカサボシの降り立つ日


バルトーク11/3 23:38:172212cfBcsmysAsVME||131

後書き
勇者ロボって小さい頃大好きでした!! そりゃぁ今も好きですけど。
なんつーか、仮面ライダーとか戦隊ものとかよりも断然、勇者ロボが好きだったんです。
なぜかって―――やっぱりロボって部分が自分は大きかったんですよ!!

そんなわけで勇者ロボを書こうとしたんですが……どこで間違えたのかなぁww
いや、初っ端って言えばそれまでですが。もっと明るい話にする予定が、ボーイミーツガールがorz

とにかく、こんな勢いだけの作品を読んでくださった方、ありがとうございました。


11/4 1:50:412201cfXZYx./hjmag||678
今晩はー

今も戦隊ロボ系大好きな変人が通りますよ、っと。
パイゼルガー恐るべし。
アンノウン発生の意味とか考えるまもなく
全てをなぎ倒してしまいましたね。

話がずれますが
個人的に今まで一番すきだった『デ○レンジャー』と
パイゼルガーはイメージが重なります。
なんでですかね。

失礼しました。

バルトーク11/4 18:51:582212cfBcsmysAsVME||811
こんばんわー。別に戦隊ロボが好きだって決して変じゃないっすよ!!周りにはそういう人間がうじゃうじゃと案外いるもんすよ。
自分は朝が苦手になってから見てませんが……最後に見たのがギンガマンだった記憶があります。
パイゼルガーは細かい描写してありませんし、大部分が想像にお任せしてるんで、やっぱ一番印象に残ってる奴になるのかもしれませんよね。
それに無敵ですし。
主人公強えーだと書くのがすんげー楽なんですよね、故に無敵!!とかww
もしも気が向いたらライバルとか登場させたいなーなんて思ってたりもします。

感想ありがとうございましたー。

シェイラ11/11 21:59:52184cfI0aW2PS2YQg||791
お久しぶりです〜。

全くコメント出来ずにすいません。
バルトークさんの物語はギャグの部分のテンポが良くて、とてもツボです♪
特に機体の中に布団が敷いてある所が最強に笑えました。
かっこつけな主人公も大好きです☆

いつ、来ることが出来るか解りませんが、出来るだけ書き込むようにしますので、よろしくお願いします♪

バルトーク11/16 23:27:92212cfBcsmysAsVME||810
シェイラさんお久しぶりです!!
うわっ。久しぶりにシェイラさんからコメントもらえて嬉しいですよぅ。
そして相変わらずの褒め殺し。いやー照れます。

来た時は是非覗いてくれると嬉しいっす。
こちらこそよろしくです!


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