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11112この道の先には_*3.思いとそれからキーア11/13 20:38:12191cf/cZWdmfTKcw
 たった一度の出会いで、これまで人を気にしたことはあるだろうか。

 たった一度、顔を合わせただけなのに、これ程まで気にするだろうか?

 篠崎廉 そう名乗った女子生徒は、今までに見てきた女子とは何処か違ったものを感じた。

 見た目じゃない。性格でもない。何故か自分をひきつける、不思議なものだ。

 心にもやもやした霧のようなものが現れる。

 一体、これはなんなのだろう

キーア11/13 20:42:232191cf/cZWdmfTKcw||459
この道の先には *3.思いとそれから

 眩い日差しが差込、カーテンが風で揺れる中、男子生徒は机に頬杖をつき、
白い雲が漂う空をじっと見つめていた。
授業の最中、ずっとその様子だった。

彼の名は柳瀬準。
女子生徒から人気が高い男だった。
そんな彼を気にした2人の男子生徒が、放課後の部室に駆け込んだ。

『じゅーん!何さーさっきの授業中の態度。上の空じゃん!』

二つの声が重なった。

キーア11/13 20:44:382191cf/cZWdmfTKcw||500
双子の兄弟、水無月 啓と椿だった。
彼らはどう見分けていいのか分からないほどそっくりだった。

「んー・・・いや、なんとなく・・・」
「なんとなくじゃないでしょっ!!先生可哀想だったよ」
「何回も聞いてるのに、準がシカトしちゃってさ」

全く気がつかなかった。
その授業、何をしていたのかも、今になって分からない。
何を考えていたんだろうか。

頭に浮かんでくるのは、少女の微笑みだった。

キーア11/13 20:46:572191cf/cZWdmfTKcw||747
「準さー何思ってた訳?」
「超レアだよねー。こんな準ってさぁ」

レア・・・か。
何故か分からない。何故あの微笑ばかり気にしているのだろうか・・・。
もやもやした霧のようなものが現れる。
気持ち悪い。なんなんだろうか・・・。

「なぁ・・・。何かさぁ・・・なんかポケーっとしてたら、微笑が出て来るんだよ」
『・・・微笑って・・・誰の?』
「いや・・・ちょっとした・・・生徒の・・・」

キーア11/13 20:50:162191cf/cZWdmfTKcw||90
啓と椿はお互いに顔を見合わせると、ニカっと笑って、
身を乗り出すように準に近寄る。

「それって、女子生徒だったりする?」
「もしかして、さっき会ったとか??」
「・・・関係ねぇだろ・・・お前らには・・・」

だが、コイツら二人の性格はよく知っていた。
長年の付き合いだからこそ、分かる。
自分達が興味を持った事は、全て納得いくまでやりつくす。
勿論、こういう話もどうやってでも聞きだす。

キーア11/13 20:53:292191cf/cZWdmfTKcw||812
「教えろよ!!俺ら友達だろ〜」
「教えろよ!!友達以上恋人未満だろ」
「誰がだよ」

軽くつっこむ。だが、もうこいつらは勝気になった笑みを見せている。
勝ったと言わんばかりの笑みだった。
俺は何故だかいつもこの笑みに負ける。

「ハァ・・・1−A篠崎 廉・・・」
「篠崎?...あぁ、知ってるよ」
「確か、唯一準に興味持たない子だよねー。そっかぁ・・・その子の事が・・・」

キーア11/13 20:55:32191cf/cZWdmfTKcw||911
そして何より、こいつらは人をもてあそぶのが大好きだ。
何回もこの遊びにつき合わされている。
いや、ひっかかっている。

「何だよ」

二人はまた顔を見合わせると、今度は不信な笑みを見せた。

『準はその子に恋をしてるんだよ』

簡単に言った。
思ってもいない言葉だった。だが、心の中のもやが、次第に消えていくのが分かった

キーア11/13 20:59:122191cf/cZWdmfTKcw||654
恋―・・・。
いや、まさかな・・・。でも・・・アレ・・・ん・・・。

「図星みたいだねー椿」
「そうだねー啓」

何故だか返事ができない。
黙り込んでしまう。どうしてだろうか。もやがいっきに消えてなくなり、
とても気分が軽くなった。
コイツらが言っている事は分かる。
コレが本当なのかどうかは分からない。

「いや・・・でも・・・」

キーア11/13 21:2:532191cf/cZWdmfTKcw||77
何か言葉を見つけようとうろたえていた時、ドアが開いた。

「スイマセン。手紙を配布に来ました・・・」

その女子生徒は、先ほどの話の生徒、篠崎廉だった。

「おっ、グッドタイミングって奴じゃん」
「凄いねー。こーゆータイミングってあるんだ」
「?」

意味の分からない二人に、思わず首をかしげる篠崎。

キーア11/17 10:22:202191cf/cZWdmfTKcw||794
かしげた首を元に戻すと、机の上に持っていた手紙を置いた。

「失礼します」

軽く頭を下げると、教室を出ていった。
準には何の興味も示さず、ほぼ無表情でいた。

「あらまー・・・ホント準には興味なしだねー」
「ホントだねー。マジで?って感じだよねー」

二人で閉まったドアを見ながら会話していた。
準は、頬杖をしていた手を机につき、顔をあげて同じドアを呆然と見ていた。

キーア11/17 10:25:372191cf/cZWdmfTKcw||938
「こりゃ重症じゃない??」
「うん、かなりの重症」
「・・・何が重症なんだよ」

呆然としていながらも、双子の声はちゃんと届いてはいた。
しかし、何故かドアの方から目が離せなかった。
さっきの生徒が、何故だか気になって仕方が無かったのだ。

『だーかーらー・・・ねぇ?』
「だからなんだよ」

もったいぶらせるような口調で、声を揃えて言う。

キーア11/18 6:38:252191cf/cZWdmfTKcw||526
準は篠崎の事が好きなんだよ

さっきの「恋」という言葉より、更に分かりやすく二人は言い切った。

「恋」と言われたときといい、今といい、もやもやしたものは綺麗に無くなった。
スッキリしている。二人が言っていることが本当なのだろうか?

「ま、鈍感な準だからさ、気がつかないのも分かるけどさー」
「そーそー。俺らみたいに神経鋭くないし」

考え込むうちに、訳が分からなくなり、混乱していく。
思い出すのは、さっきの生徒の微笑みだった。

キーア11/19 17:5:462191cf/cZWdmfTKcw||953

  *

 外は冷たい風が吹いていた。鋭い刃のような風が頬を突き刺すように襲う。
空は曇り空だった。黒くにごった雲は、青い空をかき消していく。

「ハァ・・・」

一度溜め息をついてみる。息は白く、上へと消えていく。
そっと空を見上げる。空は完全に、雲でおおわれていた。
今にも一降りしそうだった。

キーア11/19 17:8:192191cf/cZWdmfTKcw||567
“『準は篠崎の事が好きなんだよ』”

その言葉が頭の中を何回巡っただろうか。
おかげで一日中、その言葉に悩まされてしまった。
だけど・・・。
その言葉が嘘ではないと、思うことがある。
気になるのだ。今まで抱いた事のない感情が、何故かその生徒にはある。

「どうしちまったんだろな・・・俺・・・」

大きな溜め息をつきながら、準は家へと帰っていった。


*3.思いとそれから 完

キーア11/19 17:10:152191cf/cZWdmfTKcw||964
**前回の作品

・この道の先には*1.出会い
    【 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-11013.html 】
*2.再び【 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-11063.html 】


キーア11/19 17:12:282191cf/cZWdmfTKcw||43
**あとがき**
 やはり今回も長期に渡って書かせて頂きました。
途中から、何故か文が変わってるところがあります。
その辺りは、気にしないでください。私の気紛れですから。
最近、半引退を決意しました。あまりINしない事から始まり・・・。
魅力を感じなくなったのです。でも、せっかく小説を書いているのですから、
完全引退ではなく、半引退になりました。
芸術掲示板には投稿していきたいと思っております。
更新不定期ですが、宜しくお願いします。

*キーア


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