11133 | 砂羅洒 | 武 | 11/18 20:42:38 | 2191cfsii56/wLob6 |
ある晴れた早朝 墨を磨り 筆を濡らし 半紙に確りと書き連ねられた二文字 羅光 螺旋状に連なりし、途切れることの無い光 何度裂こうとも、千切れることの無い羅紗 儚く散った我妻の 夢であり 希望であり 絶望の我娘 永遠に消えることの無いように 心からの愛情と ――永遠の憎しみ |
武 | 11/18 20:43:2 | 2191cfsii56/wLob6||229 | ||
砂羅洒〜神と光 |
武 | 11/18 20:56:4 | 2191cfsii56/wLob6||801 | ||
「薬南! 生まれたのだな!」 王妃―薬南―様と王の間に娘が生まれたという吉報は 一日にして国を支配し、民を沸かせた 「ええ、玉石洒様……っ……可愛らしい、女の子……です、わ」 陶器のように白い顔を更に青ざましながらも 震える手で胸に抱いた稚児を王へと差し出す薬南 「ああ、我らの子だ。瞳なんぞも薬南、お主に良く似て……薬南?」 手中の小さき命の温もりを感じながら ふと問いかけに反応しない妻へ向き直る 「玉石洒、様に……良く…お似になら、れっ……!」 「! どうしたのだ……おい!薬南!」 |
武 | 11/18 21:2:18 | 2191cfsii56/wLob6||378 | ||
難産ゆえの疲労からか 髪は乱れ首にはりつき 汗が額を伝い細く白い首に流れ行く それはぞっとするほど 美しい妻の姿 「玉石洒様! お退きください!」 乳母の声に王は畳の間と廊下を仕切る 襖の前に座り込んだ 眼に焼きついたあの妻の姿に 再度背中を震わせ 襖越しに背後で行われている祈りの儀式に ただじっと祈りを捧げていた 王の手中に居る姫は 大きな目で彼を不思議そうに眺めていた |
武 | 11/19 22:13:2 | 2191cfsii56/wLob6||324 | ||
王が王妃、薬南を娶ったのは随分昔のことである 王が19の時に小姓として使えていた薬南は、とても美しかったが 城下町から少し離れた土地を担う一人の農夫と親しかった 農夫は人情に厚い良い人間だった 否、善人のように振舞っていた者だった 薬南の体が思うように動かなくなったのは 農夫が毎日薬南に届けるお茶に一滴ずつ垂らした毒が 五年もの長い年月を経て効き目を見せた時である 動けぬ薬南に対し猿轡をはめ、人買いに売り飛ばそうとした農夫を 王はたった一振りで処罰した たった一本の木材を振り、農夫の鳩尾を貫いた王は どくどくと流れ出る血液を薬南に見せぬように 目隠しを取らずにその場を去らせた |
武 | 11/19 22:28:6 | 2191cfsii56/wLob6||910 | ||
薬南は武士の生まれであり 大変義を重んじる性格であったが それにもまして、強く麗しい王に惹かれていった また王も、微かに香を匂わせる薬南の美しさに魅せられていた 農夫を処罰した五年後に二人の婚姻が発表されたが 民衆は大いに喜び、二人の祝祭をあげた また、毒の後遺症から床に伏せがちな薬南は 王の憂いを掬い取るため子が欲しいと切に願い 二年間の祈りを終え待望の第一子を産み落とし 幸せの絶頂を迎え――……お亡くなりになられたのである |
武 | 11/19 22:32:22 | 2191cfsii56/wLob6||953 | ||
美しい王妃様 清らかな王妃様 何故逝かれてしまうのですか 何故旅立たれるのですか 追悼の儀の日王と共に、たった二歳の姫は壇上に上がった ……姫は 民衆のすすり泣く声と父様の微かに震える手を見 王妃様を天へと送る 真っ赤に燃え盛る炎を目に焼き付けるかのように じっと、じっと一点だけを 王妃様の手に握られた 自分の名前の書かれた半紙を ただ、ただ 見つめられていたという 我娘は我妻の希望 我娘は我妻の絶望 永遠に命が閉じぬように 我全霊の愛情を込めて 永遠に命が尽きぬように 我全霊の憎悪を込めて |
武 | 11/19 22:36:33 | 2191cfsii56/wLob6||478 | ||
+++(・・l壁 砂羅洒(詩)→http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10874.html 砂羅洒(小説版・光と影) →http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10938.html 砂羅洒(小説版・神と影) →http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-10980.html 最愛のものを手に入れると同時に最愛のものを失くしたら 貴方は何を思うでしょうか? お目汚し失礼しました |
シェイラ | 11/26 19:34:8 | 2191cf/e1/TCdOgl.||37 | ||
お久しぶりです〜。 返信できず、すいませんでした; お目汚しなんかじゃないですよ〜。 武さんの詩的な物語の運び方に感動しっぱなしになりながら、読ませていただきました。 また、覗きにきます♪ |
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