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2029共通世界「Doll」loveless7/28 10:52:356119cfAMeXe/H//dQ
祥大さん企画の共通世界(http://chibifantasy.com/bbs/t12-1731.html)参加作品。
貴方さえ宜しければ、どうぞお付き合いくださいませ(ぺこり)

過去ログ
http://chibifantasy.com/bbs/t12-1782.html

loveless7/28 10:52:576119cfAMeXe/H//dQ||764
 恐い恐い恐い恐い。

 小さな手が必死に風船に縋る。
 迫る足音。 襲い来る恐怖感。
 全力で走ることは酷く体力を消耗する。
 それが小さな子供で在れば、直きつく。
 狭い裏路地に入り込み、木箱の裏に身を隠す。
 荒い息で口を開く。

「お母さん……ッ!」

loveless7/28 10:53:276119cfAMeXe/H//dQ||131
 小さく零した悲鳴。嗚咽。
 恐怖がありありと滲んだ声。
 買い物している途中、こっそり抜け出して隣の店になんて行かなきゃよかった。
 風船1つをもらった代価は、少女には重すぎた。
 母親とはぐれた。 探している途中に見つかった。
 中央公園から動き出した、ブロンズ像に。

loveless7/28 10:53:376119cfAMeXe/H//dQ||569
 動き始めたばかりのブロンズ像は、さして早くない。
 体中に魔力が堪りきっていないために。
 少女の足でもすぐに逃げ出せた。
 だが、それも時間の問題で。
 あと数分で、ブロンズ像は人より俊敏な動きで人を襲う。
 その拳に籠められた威力は、人間の比じゃない。
 速さも重さも申し分なく備えた一撃は、人の頭を破壊するには十分だ。

loveless7/28 10:54:66119cfAMeXe/H//dQ||269
「おかあさあん……」

 だから少女は嗚咽する。
 木箱に隠れた少しばかりの安心と、襲い来る恐怖と不安によって。
 目を擦ると、右手に握った風船がふわりと揺れた。
 それが目印となった。

 スパァン!

「ッ!?」

 破裂音と共に、少女は嗚咽を止められた。
 頭上の風船が勢いよく割れた。
 くたりと地に落ちたゴムを、影が隠す。

「誰」

loveless7/28 10:54:456119cfAMeXe/H//dQ||187
 少女が振り返るとそこには。
 青銅色した女神が居た。
 無慈悲の微笑む彼女の右拳は、高々と掲げられて、次の瞬間振り下ろされる。
 狙いは少女の頭だ。

「きゃああぁああぁあぁぁぁあァッ!!」

 少女があげた悲鳴は長く響く。
 がつりと鈍い音がして、ゴトンと何かが地面に落ちた。
 少女の手が力を失って地面に触れる。
 目の前の光景が信じられなかったように、少女は目を瞬かせた。

loveless7/28 10:55:36119cfAMeXe/H//dQ||360
 落ちたのは、ブロンズの腕だった。

loveless7/28 10:55:256119cfAMeXe/H//dQ||461
「あー、間にあってよかった」
「そうだな。
 でも、椿があそこでタリスマンばらまかなければもっと早かったよ」
「うっさいリュークっ!」

 拳銃を握るその手は、リュークと呼ばれた男の手にあった。
 椿と呼ばれた女は、ひゅんと手に持った身長ほどの銀色の棒を回して言う。

「そこの女の子ー、生きてるー?」
「生きてるだろ。 まばたきしてる」
「あっホントだー」

 微妙な漫才を繰り広げて、椿は少女に笑みを送る。
 吹っ飛んだ腕を見つめていたブロンズの女神は、ゆらりと立ち上がって2人と対峙した。

loveless7/28 10:55:486119cfAMeXe/H//dQ||78
「起きたよ、リューク」
「まだ動けるんだから、当たり前だろ。
 来るぞ」

 言葉に合わせるように、ブロンズ像は左の拳を高々と掲げた。

「ワンパターンだね」
「そりゃな。 こいつら操られてるだけだし」
「人間様たあ違いますね」

 人間様たあね。
 何故か自嘲気味にフッと寂しい笑みを零し、椿は前に出た。
 構えた瞬間、笑みの質ががらりと変わる。
 振り下ろされた拳を迎える椿の顔には、会心の笑み。
 拳を右にしゃがんで避け、頭目がけて棒を突く。

「伸びろ如意棒ッ!」

loveless7/28 10:56:116119cfAMeXe/H//dQ||557
 ガラァン!

 ふざけた調子で叫んだ瞬間、女神の頭が吹っ飛んだ。
 残った体は、ギギギといびつに動いて、傾いで倒れる。
 椿は身を起こして、やったあ、と笑みを浮かべた。

「如意棒じゃないから伸びないよ、椿」
「雰囲気付け!
 気にしないの!」

 などと言いつつ、互いの額をくっつけてじゃれ合ってみたり。
 数秒そうして過ごした後、

「そこの女の子、ケガ無い? だいじょぶ?」

 椿が駆け寄る。
 少女はややあってから、

「だいじょうぶだよ、どこも痛くないよ」

 とまだ少し震える声で返した。

loveless7/28 10:56:516119cfAMeXe/H//dQ||387
 ほっとした顔の椿に続き、リュークは少女の頭をぽんぽんと叩く。

「危なかったな。
 でももう、何ともないからな。
 母さんとはぐれたのか?」
「……うん、ッ」

 その手に、その言葉につられて、少女はまた泣き出す。

「ほらほら、泣かないの。
 今、お兄さんとお姉さんが、お母さん見つけてあげるからね」
「、でもっ、ふッ……うわあぁ……」
「泣かないの、大丈夫だから」

 そう言って、椿は女の子を抱き上げる。
 腕の中で、少女は思った。思ってしまった。
 お母さんのだっこより冷たい。

loveless7/28 10:57:216119cfAMeXe/H//dQ||887
 引きつるようにしゃくり上げるその子を見て、リュークは少し困ったような顔をして、小さな声で椿に言った。

「探すったって、この混乱の中だ。
 最悪の場合を常に考えて。 周りに注意を払って」
「解ってるよ、あたしはこの子の命も預かっちゃったからね。
 リュークは壊す係。 あたしは守る係」

 言って、棒を空中に放る。
 椿は唄うように何かを唱えた。
 きらりと銀色が一瞬光って、小さな銀のロザリオに変じた。
 それを手首に巻き付けて、少女に微笑みかけて。

loveless7/28 10:57:586119cfAMeXe/H//dQ||285
「行くぞ」

 リュークが呟いて路地から出る。
 商店街は荒らされていた。
 無惨に引き裂かれ、壊され、潰され、放られ。
 完膚なまでに破壊を尽くされ。
 向こうではまだ悲鳴が聞こえる。
 破壊が聞こえる。
 所々に散らばったブロンズ像の欠片や、赤いモノが散った石畳を見て、少女はさらに恐怖をおぼえる。
 びくりと震えたその体を、椿がぎゅっと抱きかかえる。
 頭を抱え込んで、肩の辺りに押し付ける。

「大丈夫だよ。」

 リュークはふり返ってその様子を見ると、ふいと再び前を向いた。

loveless7/28 10:58:306119cfAMeXe/H//dQ||464
「この辺にはもう人がいない。
 もう少し街の中心まで行こう。
 ――目をつぶって居た方がいいよ」

 彼の言葉に、少女はかたく目を閉じる。
 それを見て、椿は優しげな声音で言った。

「もし悲鳴が聞こえても、それは何ともないよ。
 もし何か壊れる音が聞こえても。
 あたしたちが全部助けるからね。
 大丈夫」

 言って、2人は歩き出す。
 中心部に向かうほど、被害は酷くなっているようだ。

「悲惨だな」
「悲惨だね」

 ぽつりと呟く。

loveless7/28 10:59:306119cfAMeXe/H//dQ||35
 2つほど路地を横目に行ったところで、1つの影が現れる。
 ブロンズ像の目が、無表情にこちらを捉えた。
 リュークはソレに向けて銃を構えた。
 瞬間。
 手にした拳銃が淡く光る。
 銃身に付いた、エメラルドのタリスマンが光る。

「安らかな眠りを」

 呟いた言葉は呪となる。
 引き金を引いた瞬間、

 ガウン!

 淡い翠の軌跡を描いて、魔力を帯びた弾丸が飛び出した。
 ブロンズ像の頭を容易く砕く。

loveless7/28 10:59:456119cfAMeXe/H//dQ||465
「次」

 震えた少女に聞こえないように、リュークは小さく呟いた。
 椿が頷いて彼の後ろを歩く。
 先で聞こえる悲鳴は、遠く長く響く。
 小さな嗚咽を堪えた少女に、椿は優しい顔で呟いた。

「大丈夫だよ」

loveless7/28 11:0:96119cfAMeXe/H//dQ||224
《続きはまた次回》

loveless7/28 11:5:56119cfAMeXe/H//dQ||802
スレの流れが速い気がするのは気のせいですか?
夏休みだからですか? 夏休み効果ですか?
と、自分の遅筆を棚に上げて言ってみる(何)
少しの間、この話を優先的に書いていこうと思ってます。
設定が色々思いついちゃったので、忘れないうちに書かないと><;
それでは、読んでいただきましてありがとでした!

《あれも書きたいこれも書きたいと欲望のまま言ったところ、何だか自分が追いつかなくなっちゃったりした、愛無》

marinoe7/28 12:37:102181cfI8pDiqSSOyU||777
loveless様、こんにちは^^
またまた、引き込まれるような出だし、さすがです。
手に汗握り、あのコンビはいったい、何をしていると考えた瞬間の登場、
まるでバラをしょって、花吹雪に乗ったかのように息もきらせず、展開していく物語。
かっこいい。。。
面白かったです、次回楽しみだな〜

祥大7/28 17:10:42192cfjwWTQQyXEQ.||789
こんにちは^^祥大です
しかしまぁ、すごいなぁ・・・やっぱり
出だしはすごいし展開はすごいし・・・
もう、俺は顔負けです
ではでは、次回も楽しみにしてます^^

追伸 夏休み効果に違いない^^

マジュニア7/28 17:31:322031cfPkRgr2C3mOI||734
展開がスラスラ描けていて面白かったです。
頑張ってください

loveless7/28 18:58:342209cfbDDg029Y6YQ||441
このレベルで無謀にもパーケット海まで意気揚々と勇者の如くいざ往かんと勇猛果敢に突き進んでいった愛無で御座います(ぺこり)
ええ、やはりレベル上げに飽きますとこれに限りますね。
死地に飛び込んでスリルを味わう
納涼、納涼(何)
どこぞのカメさんにブッ殺されて帰ってきました。
いきなり必殺で57って何!?
いや回復忘れた自分も自分ですがね!
ていうかそれ以前の問題だって事に気付こうね自分!

というわけで、レスポンス返し候(何)

loveless7/28 19:6:102209cfbDDg029Y6YQ||393
>marinoeさま。
こんばんわですw
出だしはいつも、死ぬほど気を遣うのです。
何てったって物語の扉を開く言葉なのですからね。
あの2人に似合うのは、バラなどでなくもっと地味臭い花でしょう(ぇぇ)
それでは、次回も宜しければお付き合いくださいませw

loveless7/28 19:6:452209cfbDDg029Y6YQ||973
それにしても零式は痛かったな、また金貯めて買わないと
などと思考しつつ飯ROM

loveless7/28 19:45:182209cfbDDg029Y6YQ||996
>祥大さま。
こんばんわですw
いやいや、祥大さんのが上手いですよ><
うちもまだまだ精進せねば……
やはし、夏休み効果ですかw
それでは、ありがとうございました(ぺこり)

loveless7/28 19:46:522209cfbDDg029Y6YQ||173
>マジュニアさま。
こんばんわw
お褒めの言葉ありがとうございます!
描くように言葉を書き綴ることというのは、とても難しいですね><
未だに上手く出来ないのです。
そちらの小説も頑張ってくださいませw
それでは!

ラピ7/28 20:42:412191cfF121C.tPYdM||357
レス遅れて申し訳ございません^^;
この緊迫感というかゾクゾクする・・・様な感じが出せるのがすごいですね!
私の作品は・・・それに比べりゃへぼいものです・・・はい。
次も頑張ってください^^

ベベル7/29 0:20:322191cf3bcKi03Zx1E||760
▽・w・▽こんばんわんこ

ぬぁっ!!カッコいい(* ̄。 ̄*)ウットリ
この二人は文句なしにカッコいい(●´ω`●)ゞエヘヘ
漫才のような掛け合いをして緩やかな雰囲気になったかと思ったら
息をもつかせぬ戦闘シーン!!
今小説にチャレンジしているベベルには loveless ちゃんから
盗んでしまいたい技法がたくさんあったりしてw
椿の優しい言葉とは裏腹に何とも無残な状態の街中・・・
次回からまたどう展開していくのか非常に楽しみです^^

loveless7/29 10:14:522209cfnpNLfq.egr2||717
>ラピさま。
いえいえ、レスをくださるだけでも十二分なのですよ><
感謝感激雨嵐です(ちょっと懐かしい)
緊迫感を出せたと思うのでしたら、やはりそれはパーケット海まで突き進んだ自分の経験を如実に表せたと言うことですね(待テ。)
ラピさんの小説は、設定がとても素敵でお気にですよ!
それでは、ありがとうございました(ぺこり)

loveless7/29 10:19:272209cfnpNLfq.egr2||904
>ベベルさま。
もっとこのふたりをくろうさせて、
せんとうシーンをいっぱいかきたいです まる
一方的に倒してるだけで、戦闘における危機的状況が無くて、嗚呼つまらない!
(ファンタジーを得意分野とする人間の叫び)
逆にベベルさんから盗んでしまいたい表現が、愛無は沢山あるのですよ><
あの緊迫感、その後に訪れる破裂感には病み付きですw
それでは、ありがとうございました!


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