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2161共通世界「Doll」loveless7/31 20:49:116119cfyDOGXfpG5uc
祥大さん企画の共通世界（http://chibifantasy.com/bbs/t12-1971.html）参加作品。
貴方さえ宜しければ、どうぞお付き合いくださいませ（ぺこり）

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loveless7/31 20:49:286119cfyDOGXfpG5uc||816
　破壊は絶えない。
　悲鳴は絶えない。
　凶荒は絶えない。
　震えは絶えない。
　嗚咽は絶えない。
　恐怖は絶えない。

　銃声は、絶えない。

　ガウン！

「ああちくしょうッ！」
loveless7/31 20:49:456119cfyDOGXfpG5uc||15
　街の中心部に近づくにつれ、的の数は増えるばかり。
　動く速さもだいぶ上がっている。
　人と同じ速さで走りくるソレを、連続で何回も撃ち抜くのは、流石にきつく。
　さらに、いつも一緒に闘う椿が、今回は守りに入っている。
　いや、守りではなく、既に守られる側だ。
　捌ききれずに何体かが椿の元に向かう度、彼女は

「リューク！」

　叫んで飛んで、ソレの腕をかわす。
　彼女が棒術を使わずに、攻撃をするのは緊急事態以外では封じている。
　今の時点でも充分緊急と呼べるが、2人にはまだ足りない。
　ふり返ったリュークは、

「チッ……！」

　舌打ち1つ。
loveless7/31 20:50:406119cfyDOGXfpG5uc||193
　左のホルスターからリボルバーを取り出す。
　2丁の銃を用いて、彼女達に当たらないよう標的だけを撃ち抜いた。
　がらがらとくずおれるブロンズ像。
　背を向けたリュークのその背に、背後にいたブロンズ像が高々と腕を上げる。
　右の銃のグリップでそれの頭を殴りつけ、ふり返った瞬間、

　ガウンガンガンガンガンガンガンガウン！

　バランスを崩したブロンズ像に、何発も銃弾を埋め込んだ。
　後ろに傾いだそれの後ろにも、青銅色のナイトが2人いた。

「アーメン」

　迷うことなく撃ち抜いた。
　倒れた。
　銃声が辺りに尾を引く。
　遠くの悲鳴にかき消される。
　遠くの破壊にかき消される。
loveless7/31 20:51:166119cfyDOGXfpG5uc||394
　緊張した面もちで銃は下げず、リュークは目だけを動かして辺りを窺う。
　大丈夫だ、それらしいモノは見当たらない。
　はう、と溜息を1つ吐いて、リュークは、

「椿」

　と少女をふり返る。
　それに気付いた椿は、一瞬だけ彼に視線を送り、少女に言う。

「大丈夫だよ」

　おまじないのように、呪文のように、それを唱える椿の口調は飽くまで穏やか。
　それを聞く少女の顔は、飽くまで怯えを映して。
loveless7/31 20:51:236119cfyDOGXfpG5uc||807
　既に嗚咽は枯れたらしい。
　泣き疲れたらしく、気を失ったかのように眠っていた。
　ただ、涙が後から後から、頬を滑り落ちて止まない。
　椿の手が少女の髪を撫でる。
　それすら拒むように、僅かに彼女は身じろいだ。
　怯えて、怯えて、怯えきって。
　腕の中でも安らぐことは無い。
　眠りの中でも、それは同じで。
loveless7/31 20:51:406119cfyDOGXfpG5uc||677
　少女を安全になった場所に降ろす。
　その頭を少しだけ撫でて、椿は立ち上がる。
　泣きそうな顔で訴えた。

「あたしも、戦いたい。」

　その表情を見ないように、リュークは目を瞑って、額を椿のそれと付き合わせて。
　あやすように頭をぽんぽんと叩いて、
　甘い声で囁いた。

「良いよ、ただし、もう少しだけこのままで」
「うん」

　泣きそうだ。
　泣きそうだ。
　泣け、ない。
　涙は出ない。
　泣きたいのに泣けないことは、それはすごく切ないことだと、最近2人は知ったばかりだ。
loveless7/31 20:52:86119cfyDOGXfpG5uc||198
　そうして数秒、じゃれ合って。
　ぴたりと動きを止めたリュークが、椿の目を手で覆って、瞑るよう促す。
　甘い声で、どこか静謐なその声で。
　ゆったりとした、その響きで。
　リュークは言った。

「唯一無二の対、我が師の最高傑作である只1つのうちの1つ、リュート＝ブラッティーノが望む。
　絶対無二の対、我が師の最終傑作である只1つのうちの1つ、トゥラヴィアート＝ブラッティナイオに与えられし、美しき魅の言霊を解放せよ」
loveless7/31 20:52:336119cfyDOGXfpG5uc||686
　ほう、と暖かな光が輪となって2人を包む。
　椿は言った。

「絶対無二の対、我が師の最終傑作である只1つのうちの1つ、トゥラヴィアート＝ブラッティナイオに与えられし、美しき魅の言霊の解放を望む」

　互いの望みの言霊が、光に吸い込まれる。
　ゆうらりと一瞬、光が揺らいでまた戻る。
　声が聞こえた。

『―― La Traviata?』

　椿姫？
　その意味を持った言霊が、椿の眼帯に隠された右目から聞こえる。
loveless7/31 20:53:46119cfyDOGXfpG5uc||415
　額を合わせたまま、しゅるりと、リュークが手を伸ばしそれを解く。
　現れたのは、深い青をした瞳だった。
　その目が映すのは、只の虚空。
　目としての役割を、持っていないようだ。
　その右目が、空気を振るわせ声を発する。

『ああ、術式を解放するのかい？　椿姫に美しき樹木。
　でも、アレは君たち自身の消耗が酷く激しいと言ったはずだよ』
「この右目に喋らせるのも、けっこー負担だっての」

　椿姫と言う、何とも素敵な名で呼ばれた彼女は、そうぼやく。
　本来、目は音を出す器官では無い。当たり前だ。
loveless7/31 20:53:466119cfyDOGXfpG5uc||593
「目蓋とか何か振動すんだってば何か不快です何でこんなもん付けたのさ、クレアトーレ」
『その他にも色々便利だろう？』
「だからって、スピーカーの役割やオレ達のヴィータぶっこんどく事はないでしょう、クレアトーレ」

　クレアトーレ――創造主という偉大な名で呼ばれたその人は、それに見合わずにぐちぐちという2人を、楽しそうに笑った。

『ああ、こんな時でも君たちはやっぱり僕の作った君たちだ。
　変わらないでいてくれて嬉しいよ』
「「クレアトーレ」」
『はいはい、わかった。　わかりました。
　それじゃあ健闘を祈るよ。
　僕はここから出られないからね』
loveless7/31 20:54:116119cfyDOGXfpG5uc||16
　急いでくれと非難めいた二重奏を、彼はただ笑って。
　そして厳かに取り繕うこともなく、ただただ同じ口調で言った。
　右目が震える。

『我が最終最高傑作である只1つのうちの1つ、絶対唯一無二の対、Liuto=burattino、Traviato=burattinaioの望みを聞き入れた。
　美しき魅の言霊を解放することを、承認する』
「「感謝します、Creatore」」

　光の輪が、霧散する。
　ふわりと風が集まり、髪が舞う。
　目を見開いて動かなくなった椿から、リュートはゆっくりと離れた。
　世界中の全ての色を持った風が椿に注ぐ。
　ふっと目を閉じた椿が、くずおれてがくりと地に伏す。
　リュートは椿を抱き起こした。
loveless7/31 20:54:206119cfyDOGXfpG5uc||304

　

loveless7/31 20:55:216119cfyDOGXfpG5uc||984
　ヴィータは、イタリア語で「命」を表す。
　クレアトーレはイタリアという国が好きで、好んでその言語を用いた。
　リュート＝ブラッティーノ然り、トゥラヴィアート＝ブラッティナイオ然り。

『リュークは綺麗な響きだけど意味のない名前になっちゃうからね、1文字変えて意味を持たせた。
　だからリュート。
　椿はオペラから取っんだよ、椿姫はラ・トゥラヴィアータって言うらしいね。
　だからトゥラヴィアート。
　そして、2人のファミリー・ネームはね、』
loveless7/31 20:55:376119cfyDOGXfpG5uc||82
　今思えば、あれはクレアトーレの気遣いなんだろうと思った。
　リュークと椿はイタリアの言葉は解らない。
　だからイタリアへは行かない。
　だからこその、気遣い。
　名は体を表す。
　名は体を表さなければいけない。
　これは、魔術の掟だ。
loveless7/31 20:56:376119cfyDOGXfpG5uc||163
『人形を意味する言霊を付けたんだよ。
　君たちはとても美しい生き物で、だからこそこの名が相応しい。
　リュート＝ブラッティーノ、トゥラヴィアート＝ブラッティナイオ。
　それが君たちの魂をこの世に縛りつける、あの世へ逃さないようにするための、最も重要な意味を持つ2つ目の名だ
loveless7/31 20:57:36119cfyDOGXfpG5uc||566
　椿の右目には、その名が入ったタリスマンが2人分入っている。
　魔術で人形に生命を持たせる。
　それが、クレアトーレの用いた、最後の魔術だった。

　リュークと椿という1対の人形に、命を吹き込む魔術だった。

loveless7/31 20:57:136119cfyDOGXfpG5uc||408

　

loveless7/31 20:57:386119cfyDOGXfpG5uc||112
　椿がゆうらりと目蓋を開く。
　光すら映さないはずの右目が、輝き煌めいてリュークを捉えて笑む。
　タリスマンを入れた革袋に指を入れて、1つの赤いそれを取りだした。
　口に運んで、がりりと噛み砕く。
　怒りと悲しみと共に、噛み砕いた。
loveless7/31 20:58:16119cfyDOGXfpG5uc||204
《続きはまた次回》
loveless7/31 21:1:426119cfyDOGXfpG5uc||287
「椿姫」と「美しき樹木」は、人形なのです。
この設定が書きたいが為に、タイトルを「Doll」に致しました。
タリスマンをヴィータとして、生きる人形。
これから、設定を掘り下げつつ物語を進めていきたいと思います。
でも、その前にしばらくお休みするかもですのね＞＜
愛無の中で、エスケプとたんぽぽの方々がウズウズしていらっしゃるのでｗ

それでは、読んでいただきまして、ありがとうございました！
貴方さえよければ、次回もお付き合いくださいませ（ぺこり）
改ｘｘｘ7/31 21:2:102202cfJZS.OUWOnSw||171
お疲れ様です＾＾師匠!
2人は人形だったんですか…^^;
うーん続きが気になります^^;
あとタリスマンって食べられるんですねｗ
食べてみたい…（ぁ
ではではー
loveless7/31 21:4:436119cfyDOGXfpG5uc||697
＞改ｘｘｘさま。
こんばんわ！速攻レスありがとですｗ
はい、人形です。
伏線をいくつか張っていたので、気付いてる人はもう気付いてたかもですが；
タリスマンは、彼女だからこそ食べられると思いますよー。
何せ石だし。しかも魔力の塊。人間様が食べられるのかなあ？
よし、椿に聞いてみよう。
それでは、ありがとうございました（ぺこり）
マジュニア7/31 21:12:392031cf3bsMkaB7C7.||516
最初から全部読んでみました〜
人形の物語なんですね。
二人を人形だと分かるような表現の仕方がうまいです
前作の少女を抱いた時の冷たさは感心してしまいます
どういう風に物語が進んでいくのか楽しみです
これからも読ませていただきます
beloved7/31 21:16:76119cfyDOGXfpG5uc||608
カッコイイ。グッジョブデス。（え。）
もぅbelovedさんもがんばらなって思いましたんですぞ。
構成がしっかりしてて、描写が的確でイイカンジです。
私の小説は曖昧に表現するところが売りですから（←宣伝禁止。）
次回も期待してますぞ。
祥大7/31 22:56:512192cfjwWTQQyXEQ.||670
　こんばんは＾＾祥大です
飛鳥「飛鳥だぜ！」
　人形だったのか、二人とも・・・
飛鳥「まさかとは思ってたけどな・・・。これからが楽しみだな！」
　うん。設定も細かいし・・・
飛鳥「人形だからタリスマン食えるんだな！でも、小さい魔力石なら食えるらしいぞ」
　人が食べた例はまだ無いぞ、動物だけだよ
飛鳥「そうか・・・。じゃ、次回も楽しみにしてるぜ！」
marinoe8/1 0:9:402181cfI8pDiqSSOyU||52
loveless様、こんばんは
とても、浪漫主義な香りが漂い、とても摩訶不思議な世界です。
ビスクドールよろしく、青い目のお人形に、
中世の魔術師が言霊を授け、命を吹き込む。。。。
今回の淡々とした言い回しが、
前回までのコンビのエネルギッシュな暖かさと対比され、
ぬくもりのないガラスの冷たさを宿した文章でした。
またまた、堪能してしまいました。
蔵斗8/1 1:28:382022cfw9uMGue7UWk||923
2ch見て来ましたorz

自分の事褒めて悲しくないかい？
タロー8/1 6:43:436120cfRd1qnFl3HhQ||48
面白いです！
loveless8/1 11:14:232201cfsirZBOVKEaM||597
ちょっと待って。
気になる記述があったので、先にﾚｽさせていただきます

＞蔵斗さま。
うちも今、2ch見てきた
で、叩かれるかいじられるかしらんが、弁明してきました
belovedとは姉妹です
自作自演で自分褒めるなんざ、ンな虚しい行為はしませんよー
そんなんやったら只の阿呆なんで
や、元から阿呆だけど、そこまでじゃないんでｗ
loveless8/1 11:29:522201cfsirZBOVKEaM||564
＞マジュニアさま。
おはよございますです（ぺこり）
はい、御人形ですｗ
拙い伏線ばかりだったので、いつ見破られるかビビってみたりｗ
この後物語がどう進んでいくか、人形さん達はどうなるのか……
じつは、愛無も良く解らないという；
宜しければ、これからもお付き合いくださいませｗ
loveless8/1 11:34:392201cfsirZBOVKEaM||495
＞beloved。
さんくーなんだよ。
お前のも期待してんよ。
ヘタに言うと誤解されそうだからもう言わない。
短くてすまぬ。
loveless8/1 11:36:482201cfsirZBOVKEaM||751
＞祥大さま＆飛鳥さま。
お2人ともありがとうございますです（ぺこり）
動物が魔力石食べただけでああなるから、恐らく人間がタリスマン食べたら
さぞかし凄いことに成るんでしょうねえ……＞＜；
それでは、次回も人形達の歩く物語、
読んでいただけましたなら、幸いですｗ
loveless8/1 12:12:152209cfqzb4ADQ5jcU||401
＞marinoeさま。
おはよございますですｗ
大好きな世界観をここぞとばかりに詰め込んでみたり。
元となる世界観があるので、それを壊さないでやるのはけっこー辛いものだと
今回の企画で実感しました＞＜；
それでは、ありがとうございました（ぺこり）
loveless8/1 12:54:262209cfqzb4ADQ5jcU||317
＞タローさま。
その一言がとても嬉しいですｗ
ありがとうございます（ぺこり）
銀月8/1 16:30:52182cfLMvpixotkc6||142
こんにちはです＾＾
やはり、妹さんとはちょっと違うﾓﾉがありますね。
それを説明してみろと言われると、言葉には詰まりますが、
印象と言っていいのかなんなのか･･･。

初めての言葉や文体に出会い、うはうはしてますｗ
続きがとても楽しみですm(__)m

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