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2318単純系小説『鋭利な刃物』第六弾beloved8/8 19:56:122209cfQ8IcNRj7R5E
過去ログ。 サブタイトル。
 第一http://chibifantasy.com/bbs/t12-2065.html 泡沫唄胡の殺人講座
第二http://chibifantasy.com/bbs/t12-2101.html 虐殺 命 衝動
 第三http://chibifantasy.com/bbs/t12-2140.html 死神 氷室朝霧
 第四http://chibifantasy.com/bbs/t12-2169.html 愛しき感情 醜い愛情
 第五http://chibifantasy.com/bbs/t12-2197.html 破壊衝動あるいは狂気

beloved8/8 19:56:352209cfQ8IcNRj7R5E||530
 母はサディスト。
 父はロリコン。
 姉は独占欲の塊。
 あたしは殺人中毒。

beloved8/8 19:56:522209cfQ8IcNRj7R5E||646
 泡沫家は狂人の集まりだと噂されていたのは知ってる。
 学校での苛めは先生すら生徒に協力して、学校全体で行われていたと言っても過言ではなかった。

beloved8/8 19:57:122209cfQ8IcNRj7R5E||486
 憎むには愚かすぎて、甘受するには重すぎた荷物。
 泡沫家に生まれてきたことを悔やんだことはない。
 父に戯れに抱かれ、母に暴行を受け、姉の卒倒した愛情を注がれ育った。

beloved8/8 19:57:312209cfQ8IcNRj7R5E||483
 狂っているという感情すら持てないほど、狂っていたのだろう。
 「狂い」という言葉自体使うことも憚られるほど、泡沫家の内部は腐食して錆びついていた。

beloved8/8 19:57:472209cfQ8IcNRj7R5E||190
 十五歳になったあたしは、ナイフを密かに購入し、家の人間を惨殺した。
 裕福な政治家だった泡沫家には、幾人ものメイドと執事が居たが、彼等も片っ端から殺していった。
 最早殺人衝動は止められなかった。

beloved8/8 19:58:52209cfQ8IcNRj7R5E||658
 泡沫の姓を捨てる気にもならず、親から産み堕とされ言葉の羅列ではあるものの名前を授かった故に、あたしは『ウタカタウタコ』という七文字を『名前』として呼称していた。

beloved8/8 19:58:292209cfQ8IcNRj7R5E||937
 似合わぬ制服に身を包み、虚しく綴られる日常を僅かに浸食するように、人体を傷つけていった。

 負の感情だけが思い思いに詰まった心と、答えのない教科書とノートが詰まった鞄も、いつしか限界が近づいているのは薄々解っていたのだろう。
 塞ぎきって人を寄せ付けないスタイルも、繕うような人間関係も飽きていた。

beloved8/8 19:58:442209cfQ8IcNRj7R5E||697
 じゃあ。
 今こうやって、貴方の腕を受け入れているあたしは誰。

beloved8/8 19:59:22209cfQ8IcNRj7R5E||843
「良かった……生きてた」

 両目からは、真珠のような水が伝っていた。

 声は、掠れていた。

 表情は、強張っていた。

 両腕は、あたしの躯を縛めていた。

 唇が、渇いていた。

beloved8/8 19:59:182209cfQ8IcNRj7R5E||116
 ダメだ。
 泣かないで欲しい。
 綺麗な貴方は、泣かないで。
 願わくば、あたしなんかのために、その両目を曇らせないで。

beloved8/8 19:59:332209cfQ8IcNRj7R5E||200
「助かったみたいだね。死ぬかと思った」

 垂れ流した愛を、其の唇に詰め込ませて。
 腐れた感情を、其の耳に吹き込ませて。
 ありふれた言葉を、其の胸に焦がし付けて。
 全てを奪った貴方を、あたしの物にして。

beloved8/8 19:59:532209cfQ8IcNRj7R5E||254
 痛いぐらいに。
 彼はあたしを抱きしめる。

beloved8/8 20:0:112209cfQ8IcNRj7R5E||612
「唄胡ちゃん辛かったろう?
 霊喰いの波動は、どんな拷問より甘美で戦慄するっていうし」
「覚えてないよ。辛いことは忘れる主義なんだよね」

beloved8/8 20:0:322209cfQ8IcNRj7R5E||45
 波打つ魂の糸が、あたしを巻き付ける。
 糸に巻き付けられ、あたしは傀儡と化す。
 愛しくて溜まらないとき、感情は殺意に変化するんだろうか。


 ほら。



beloved8/8 20:0:512209cfQ8IcNRj7R5E||956
「好きよ、朝霧」

beloved8/8 20:1:92209cfQ8IcNRj7R5E||736
 捉え損ねた切っ先は、真っ直ぐに壁へと突き進む。

beloved8/8 20:1:332209cfQ8IcNRj7R5E||94
「…・ッ!」

 彼は銃身を巧みに扱い、あたしの『感情』が凝り固まった銀を遮った。

 憎悪。
 険悪。
 疑い。
 その表情がごたまぜになって現れた。

 愛しいよ。
 愛しくて、殺したいの。
 大好きだから、悲鳴を聞きたいの。

beloved8/8 20:1:542209cfQ8IcNRj7R5E||909
「死んで。あたしのために死んでよ…?」


 ククッと喉の奥が揺れる。
 ダメだ。
 その言葉とは裏腹に、あたしの衝動は止まらない。

beloved8/8 20:2:122209cfQ8IcNRj7R5E||293
 否。
 衝動と言うよりは、干渉。

beloved8/8 20:2:312209cfQ8IcNRj7R5E||239

「させないよ。泡沫チャン」

 研磨された音。
 そうとしか表現できない音と共に、あたしの右手首がするりと堕ちた。

beloved8/8 20:3:342209cfQ8IcNRj7R5E||188
「いやあああああああッ!!」

 痛い。
 痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイ…………………

 骨も神経も全て削ぎ落とされた。
 只残るのは、胸を締め付ける痛み。
荒れ狂う感情と鏡のように姿を映す、緋色。

beloved8/8 20:3:592209cfQ8IcNRj7R5E||816
「こんなんじゃ死なない。だって君、死んでるモンね」

 血色の手袋に、操るは銀線。
 朝霧以上にシニカルな笑みに、真っ黒なスーツ。
 結い上げた赤毛に、星空のような瞳。

beloved8/8 20:4:172209cfQ8IcNRj7R5E||23
 誰だよ。
 剥き出しの感情の原泉に手を付けられ、汚された感覚。

beloved8/8 20:4:342209cfQ8IcNRj7R5E||173
「あんたは誰だよ」
「ああ、自己紹介が遅れたね」

beloved8/8 20:5:162209cfQ8IcNRj7R5E||692
 銀線を操る。
 左手首が飛んだ。

beloved8/8 20:6:42209cfQ8IcNRj7R5E||827
「第十五代目閻魔大王、ルイ=ルドワール。
 此処はワタシの城だから、騒ぐのだけは止してくれないかな?」

beloved8/8 20:6:232209cfQ8IcNRj7R5E||855
 閻魔大王。
 あたしは裁かれる。
 死か、生か。
 其れを知るのは、神のみぞ知る、と。
 大した皮肉だろう。

beloved8/8 20:6:572209cfQ8IcNRj7R5E||246
ふん、とあたしは嗤う。

「生憎、神は信じてない」

beloved8/8 20:7:222209cfQ8IcNRj7R5E||275
 かなりスランプです。でもちょっと脱出系です。
 全然思ったような文章が書けないまま、第六弾をお送りします。
 何度書き直してもピンとこないので、次の場面へと移りたいと思います。スイマセン。

 この挨拶ですら、何を書こうか迷います。
 ですからさっさとうち切っちゃいましょう。そうしましょう。(え)

beloved8/9 7:53:582209cfQ8IcNRj7R5E||406
付け足し。
スランプだからといって、手を抜いた訳じゃありません。
一応今現在の最高を出したつもりです。私なりに。


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