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2342単純系小説「鋭利な刃物」第七弾beloved8/10 7:21:332182cfxoMmh1hrJd.
 過去ログ。 サブタイトル。
 第一http://chibifantasy.com/bbs/t12-2065.html 泡沫唄胡の殺人講座
第二http://chibifantasy.com/bbs/t12-2101.html 虐殺 命 衝動
 第三http://chibifantasy.com/bbs/t12-2140.html 死神 氷室朝霧
 第四http://chibifantasy.com/bbs/t12-2169.html 愛しき感情 醜い愛情
 第五http://chibifantasy.com/bbs/t12-2197.html 破壊衝動あるいは狂気
 第六http://chibifantasy.com/bbs/t12-2318.html 刃物の形 すなわち虚像

beloved8/10 7:22:02182cfxoMmh1hrJd.||889
「あたしを、どうするつもり?」

 閻魔は、其の純粋な透明感のある瞳を少し伏せて、少し考えるような素振りを見せる。

beloved8/10 7:22:122182cfxoMmh1hrJd.||747
 考えていないことは重々承知だ。
 朝霧が言うように、『半永久的苦痛』が待っている。
 裁きが恐い訳じゃない。
 生を受けることがないことが、一番辛い。

beloved8/10 7:22:322182cfxoMmh1hrJd.||403
「うん、そうだね」

 閻魔は無造作に距離を潰すと、銀線をその場に放り、血色の拳をあたしの中に埋める。

beloved8/10 7:22:472182cfxoMmh1hrJd.||858
「痛い?」

 閻魔は囁くように云う。

beloved8/10 7:23:32182cfxoMmh1hrJd.||932
 痛いに決まってる。
 其れは苦痛。
 神経がぎちぎちと唸る。

beloved8/10 7:23:182182cfxoMmh1hrJd.||947
 ぐらりと揺れたグラスがゆっくりと堕ちる。
 割れたグラスは凝縮した増悪と皮肉をまき散らす。

beloved8/10 7:23:322182cfxoMmh1hrJd.||561
 どうせ、安らぎなんて、無いんでしょ?

beloved8/10 7:23:482182cfxoMmh1hrJd.||521
「ざけんなッ!」

 刃物が扱えない今、扱えるのは足。
 大きく反動を付け、思いっきり前に突きだす。

beloved8/10 7:24:52182cfxoMmh1hrJd.||647
 揺れる心臓。
 縋り付く自己愛護心。
 重い自信。
 悲しき虚像。

beloved8/10 7:24:252182cfxoMmh1hrJd.||450
 しかしいとも容易く受け止められ、逆に指を埋め込まれる。

beloved8/10 7:24:392182cfxoMmh1hrJd.||926
 心臓に。

beloved8/10 7:24:472182cfxoMmh1hrJd.||807

beloved8/10 7:25:52182cfxoMmh1hrJd.||664
「……………!」

 本当に苦痛となった痛みは、悲鳴さえ上げさせない。
 電気ショックを、命の源に直接注ぎ込まれた。

beloved8/10 7:26:542182cfxoMmh1hrJd.||555
「ルイ、それぐらいにしてやれよ」
「まぁだ、波動が憎らしく伝わってくるんだよね」

 一気に言い終わると、更に心臓への侵略を進める。
 朝霧は新しい煙草に火を付けた。

beloved8/10 7:27:122182cfxoMmh1hrJd.||271
 一瞬が、永遠の苦痛となる。
 声さえ無い痛み。
 只唸るような掠れ声だけが、あたしを生きさせている。
 そんな中で、よく自我が保てたものだ。

beloved8/10 7:27:292182cfxoMmh1hrJd.||644
 心臓の中を探っていた彼女は、ずるっと手を引き抜く。

 ルビーのような、真っ赤な石。
 彼女は心臓から手を引き抜くと、誇らしげに掲げる。

beloved8/10 7:27:522182cfxoMmh1hrJd.||742


「ほぉら、取れた」


 綺麗。
 汚い。



beloved8/10 7:28:72182cfxoMmh1hrJd.||494
 二つの感情が分離して、惹かれあう。
 疲れたはずの心臓が、ゆっくりと動く。
 息も吐く。吸う。
 当たり前の行為が、とてつもなく遠い。

beloved8/10 7:28:262182cfxoMmh1hrJd.||788
「綺麗…って思うでしょ?」

 投げられた言葉は的を真っ直ぐに射抜いた。

beloved8/10 7:28:432182cfxoMmh1hrJd.||219
 閻魔はうっすらと笑む。
 悪魔でもない天使でもない。
 それは神故に持てる笑み。
 神は信じられない。
 しかし神々しくも傲慢で劣悪で壊れた。

beloved8/10 7:29:482182cfxoMmh1hrJd.||298
「霊喰いの負の波動が君の心臓に寄生してたんだよね。
 ほっとけば君も霊喰いになってたか、霊としての死を迎えていた」

beloved8/10 7:30:82182cfxoMmh1hrJd.||351


 笑み。
 閻魔は只、笑う。

beloved8/10 7:30:252182cfxoMmh1hrJd.||852
 ぞぅっと。
 その場の空気が、急速に冷えるような気がした。

 閻魔の顔にあるその透明な笑みが、殊更恐い。
 あたしの叙情の原泉を、かき乱して揺らして壊す。

beloved8/10 7:30:472182cfxoMmh1hrJd.||477
 恐れ。

 誰かに抱いたこともない感情。

 ゆっくりと浸食する。

 月食のような。

 揺らめく光が、あたしを壊して喰う。

 只、害意。

 そして冷えるような怖さ。

 一気に襲ってくる、裁きへの恐怖感。

beloved8/10 7:31:32182cfxoMmh1hrJd.||984
 閻魔はそんなあたしを一瞥すると、壊れそうなほど楽しげに歪める。

beloved8/10 7:31:202182cfxoMmh1hrJd.||325
「あー、そんな硬くならないで頂戴」

 彼女はその血色の手袋を脱ぐ。
 握ればすぐに砕けそうな、石化石膏より真っ白で華奢な両手。

beloved8/10 7:32:42182cfxoMmh1hrJd.||782
「泡沫チャンは、ナイフ遣いだもんね。両手と心臓なおして上げるから」


 一瞬、光が煌めいた。
 何が起きたか解らないけど、心臓と手はあった。
 穴は塞がれ、感覚もすぐに戻る。

beloved8/10 7:32:192182cfxoMmh1hrJd.||188
 そして彼女は初めて、優しく笑う。

beloved8/10 7:32:392182cfxoMmh1hrJd.||511
 その瞬間、悟る。

 彼女は神だ。
 今まで神に祈り縋ってきた人々を軽蔑してきたあたしだけど、信じたっていい。
 彼女には人には持ち得ない輝き、全てを知ったような顔をして尚、貪欲に生きている。
 全てを統べる女王のような、佇まい。
 彼女が神であるアカシ。

beloved8/10 7:33:352182cfxoMmh1hrJd.||998
「有り得ない」

 あたしは呟いた。

「神だから」

 彼女は云った。

beloved8/10 7:33:552182cfxoMmh1hrJd.||549
「……ねえ神を信じる?」


 すぅっと細められる目。
 星空のような漆黒の瞳が、光を失い虚無を呼び寄せる。
 天鵞絨のようであり、墨を流したような色。

beloved8/10 7:34:132182cfxoMmh1hrJd.||12
「自分自身を信じられない人は、存在する価値すらないんだよ。ワタシは神を信じる」


 一瞬見せた真剣な表情をすぐに打ち消し、壊れるように唇を歪める。

beloved8/10 7:34:322182cfxoMmh1hrJd.||923
 面白い理屈だと思う。
 彼女はそれでも笑み、朝霧は煙草を燻らせた。

beloved8/10 7:34:512182cfxoMmh1hrJd.||125
 でもその理屈が世界に通用するなら。
 世界からどれほどの人間が消えるんだろうか。


 ――あたしも含めて。

beloved8/10 7:35:112182cfxoMmh1hrJd.||484
「それよりね」

 崩れ落ちる笑みを消し去り、閻魔――否、ルイはその言葉を唇に乗せ、空気へと解き放った。

beloved8/10 7:35:352182cfxoMmh1hrJd.||972
「君は面白いタマシイノカタチをしてるね」
「……タマシイノ、カタチ」

beloved8/10 7:36:132182cfxoMmh1hrJd.||619
 八文字が、渇いた砂漠に水をまくように染み渡る。
 五臓六腑に響き渡り。
 脳髄を駆けめぐり血液へと落ちる。

beloved8/10 7:36:282182cfxoMmh1hrJd.||528
「死にたくないんでしょ?
 泡沫チャンは面白いタマシイノカタチをしてるし、いいこと教えたげる」

beloved8/10 7:36:452182cfxoMmh1hrJd.||245
 閻魔の笑みは神の笑み。
 神の笑みは傲慢の笑み。

 薄く微笑んだルイ=ルドワールという人物に、あたしの躯を預けられるんだろうか。

beloved8/10 7:37:62182cfxoMmh1hrJd.||672
「あたしは――」

beloved8/10 7:37:192182cfxoMmh1hrJd.||424
 さあ、決断を出せ。
 神に魂を売るか、否か。

 道は二つ。
 全て、地獄行き。

beloved8/10 7:37:332182cfxoMmh1hrJd.||821
 第七弾です。これでも精一杯に書きましたとも、ええ。
 氷室君の出演が少ないです。…寧ろ皆無?
 今回はルイちゃんと泡沫嬢の絡みを描きたかったんです。仕方ないと諦めます。

 第一弾のような、何かグロイよぅってかんじの小説を期待していた人、ゴメンナサイ。
 あんまし哲学も云いません。(予定は未定です)
 グロイ系だと書くのが面倒デス。それに構成もまとまりづらいんで。

 それでも良いと思った方は、二人の冒険を見守ってやってください。

おぐ8/10 9:30:432201cfUtxTjvMO1u.||250
いつも、ひっそり読ませて頂いています♪
とっても好きなんです。この小説。私にはあまりブラッキーには見えませんよ?私は、だから読めるんだと思いますが・・・
人の神秘みたいのを知れて好きです。感想は書けない時がありますけど・・・いつも読んでますから☆☆応援してます♪♪

beloved8/10 11:29:552201cf0r49s8PLiY.||714
始めまして。こんにちはです。
いつも読んでいただいて、本当にありがとうございます。
ちょっと久し振りの感想(あ)何で、ちょっとエキサイトしてます。

人の神秘ですか。この小説読んでいただいて
そんな大層な物を感じられるとは…凄いですね!(作者は全然感じられないのか)

これからも頑張ってきますんで、どうぞ読んでやってくださいねv


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