3642 | 少女の休日。少年の打算。 | くにまる | 11/30 20:26:23 | 2202cfwKIgBablNMk |
「打算。」 少年は、廃ビルの上。 もたれているのは、錆びたフェンス。 時々、軋んでいた 廃ビルは塗装が剥がれて無惨な灰色を晒していて、ガラスは外され穴ぼこだらけだった。 心地よさそうに、眼下に広がる街を眺めていた。 遠くが白んで見えないその街は、所々に突き出るようにビルが立っていて、ただひたすらに広大で。小さな建物が絨毯のように敷き詰められていた。 まばらに緑が混じるのは大きめの公園で、青空が穏やかにそれらを照らしていた。 太い道路の上をゆっくりと車が走っているのが見える。 太陽が、一番高いところをちょっと通り過ぎただけの、のんびりした昼下がりだった。 |
くにまる | 11/30 20:27:11 | 2202cfwKIgBablNMk||476 | ||
ふと風が音と共に吹き抜けて、少年がまぶしそうに眼で追う。 視線の先。そこに、少女は立っていた。 少年に気づくと少女はゆっくりと近づいて行って、少年の前に立つ。 「ラジコン、ここにはいちゃって、うぇっく、で、でもここ危ないから入っちゃいけないって、ひっく、学校で習って、 でも、ラジコンこの間、うぇっく、・・・買ってもらって大切で、・・でも入っちゃいけなくて・・・・」 どうやら、ビルのそばの路地で遊んでいたら廃ビルにラジコンが入り込んだらしい。 少女の着ているワンピースはすでに埃で汚れていた。 声を殺して泣き出した少女に少年は一瞬驚いた後、 |
くにまる | 11/30 20:27:30 | 2202cfwKIgBablNMk||563 | ||
「一緒に探して上げるよ。」 そういって少女の肩に手を置く。少女は、赤くなった眼で上目遣いに少年を見て、 「い、いの?」 「うん。きっと見つかるよ。」 「あ、ありがとう。」 言ってから、声を上げて泣きだした。少年はちょっと困ったようにそれを見て、行こう、と促す。 少女はうなずいて、屋上を降りる階段に向かう少年の後ろについて行った。 廃ビルは、かつて張ってあった大きなガラスが全部取り外されて、塗装がはげ落ちていた。 中は味気ない灰色一色で、ガラスが外れて出来た大きな、たくさんの四角い穴から風が吹き込んでいた。 それなりに広くて電気は無かったが、太陽が空洞から差し込んで、なかなか明るかった。 |
くにまる | 11/30 20:27:49 | 2202cfwKIgBablNMk||260 | ||
それから少年と少女は、ビルの中をあちこち探し歩いて、そして見つからなかった。少女が泣きそうになると、 「大丈夫だよ。もう一度見て回ろう。」 決まって少年が言って、その度に少女は頷いて少年から変に視線を外した。ほとんど全ての階を調べ終えたとき、 「あった!」 少女が唐突に叫んで、そばにあった廃材をどかし始めた。 眼は真剣で、口は笑っていた。 がちゃん、と音がして鉄パイプが乗っていたブロックから落ちる。ラジコンが隙間に挟まっていた。 |
くにまる | 11/30 20:28:22 | 2202cfwKIgBablNMk||150 | ||
白いラジコン飛行機を拾い上げた少女は、そこで転がっていたパイプにつまづく。派手に転んだ。 ひっ、と悲鳴を上げる少女。コンクリートに響くちょっとした破壊音。膝から血が滲んでいた。 そばで外の景色を眺めていた少年は、破壊音に振り向いて何があったか理解した後、心配そうに近づいて、 「あー、膝がすりむけてる。ちょっと貸して。」 言いながら、ポケットからハンカチを取り出して、手際よく傷口に巻いていった。 すりむけた傷が隠れていって、布がわずかに血の色に染まった。 少年は巻き終わってから、これでよし、と言って笑った。 |
くにまる | 11/30 20:28:28 | 2202cfwKIgBablNMk||910 | ||
少女が、まぶしそうに眼を細める。 「じゃあ、これで。見つかって良かったね。もう無くすなよ。」 茶目っ気を含んだ声に少女は弾んだ声で、 「うん。ありがとう。」 |
くにまる | 11/30 20:28:52 | 2202cfwKIgBablNMk||687 | ||
それから少し悩んで、 「また会える?」 「きっと。またいつか。」 少女は笑った。それから、背中を向けた少年にひらひらと、小さく手を振った。 少年の、少女に比べてもあまり変わらないそれは、やっぱり昼下がりの太陽に照らされて、少しだけ広く見えた。 上から太陽が少年の肩を斜めにカットして、服の色が映えていた。 段々足音が遠くなる。 少女が手を下ろしたときだった。 |
くにまる | 11/30 20:28:57 | 2202cfwKIgBablNMk||560 | ||
階段を下りようと足を伸ばした少年は何の前触れもなくひゅっ、と転げ落ちる。情けない音と共に転がっていって、途中でぼきっ、と音がした。 かなり悲惨な体勢で下の階に叩きつけられた少年は、変な方向にねじれた腕をなるべく見ないようにして、 階段の上を見上げて、駆け寄ってきた少女と眼があった。 少女の顔が、泣き笑いになっていた。少年も軽く引きつった笑みを浮かべて、一言尋ねる。 「ねえ、さっきラジコン探して上げたよね?悪いけどちょっと手貸してくれる?」 |
くにまる | 11/30 20:33:56 | 2202cfwKIgBablNMk||731 | ||
( あとがき) くにまる。それは実は伝説の英雄で、それは実は頭脳明晰で、 それは実は超人で、実は眼からレーザーが出せて、実は10メートル跳躍できて、 その実体は、超生命体だった。・・・・らいいな、なんて愚かな私です。 今回は短編でした。はい、感想ください。 ・・・なんて図々しい私です。 ええー、ようやくいい加減とっとと素早くあとがきに入りますが。 今回は短編でした。ええ、アドバイスください。 ・・・・なんてしつこい私です。 |
ベベル | 12/1 10:22:2 | 2201cf7W/6XixXWJM||21 | ||
おはようでっす♪ 何というか・・かゆいトコに手が届くというか、そこが知りたかったんだ! っていう背景まで描かれていて∬´ー`∬ウフ♪ 読み終わって何だかスッキリしました。 ほのぼのな二人なんですが廃ビルにいた少年に何だか切なさに似た何かを感じてしまいました。 腕が痛そうですが(||゚Д゚)ヒィィィ!(゚Д゚||) でも意外と近い再会にまたほのぼのな笑顔になれました♪ 背中に翼とかないですか?今度鏡でじっくりとご確認をw |
くにまる | 12/1 16:17:1 | 2202cfwKIgBablNMk||876 | ||
ベベルさんこんにちは。 今回は短編と言うことで二つの読み方を設定しますた。 1つはかなりほのぼの恋愛。 二つ目はちょっとシュールでバイオレンスな読み方です。 つまり、少女が泣いていたのは嘘泣きで少年が実はそれを知っていてちょっと後で何か 返してもらおうとして演技につきあって少女もそれを知っていて・・と言う者です。 また、ありがとうございました。 |
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