3808 | 遊園地 | 亜瑠華 | 12/22 17:59:25 | 2101cfVHeEx6eF4SE |
あと3日でクリスマス!!というわけで、クリスマスのお話にしてみました。草薙&由紀です。 |
亜瑠華 | 12/22 18:1:15 | 2101cfVHeEx6eF4SE||104 | ||
「はぁ・・・」 放課後。オカルト研究部の部室で今度の部会で提出するレポートを書きながら、あたしはそっと溜息をついた。 そして自分の横の机の上においた鞄にちらりと視線を送る。 見ないようにしようとしても、つい視線が向かってしまう。 鞄の中には、となりの県にある某有名遊園地のチケットが2枚。 しかも、アトラクション1日乗り放題のフリーパスつき。有効期限は12月24日クリスマスまで。 友達の美香がくれたのだ。 |
亜瑠華 | 12/22 18:4:4 | 2101cfVHeEx6eF4SE||158 | ||
「本当はね、彼と行く予定だったんだけど、急に都合悪くなっちゃって。ちょうど2人分だし、あげるよ。彼氏とでも行っておいで。」 3日前、昼休みに、にっこりと笑いながらくれたのだ。 遊園地は子供の頃から大好きな場所だ。 物語の登場人物たちが歌い、踊り、楽しい音楽が流れ、風船が飛び交う。 人々の笑顔があふれ、歓声に包まれる場所。おとぎと夢の世界。 その中にいると自分も物語の中の一員になったような気がして、とても楽しくて幸せで、一日中いても飽きなかった。 夕方の閉園を告げるベルが、まるでシンデレラの魔法がとける真夜中の鐘の音のように思えて、 『帰りたくないよ』といって両親や兄弟をよく困らしたっけ。 |
亜瑠華 | 12/22 18:5:10 | 2101cfVHeEx6eF4SE||103 | ||
その気持ちは、大きくなった今でも変わらない。 さすがに駄々をこねることはしないけれど、やっぱり帰る時間になると悲しくなる。 そういう場所だから、『いつか大好きな人と来たいな』って、ずっと子供心に憧れていた。 ずっとずっとそう、思っていた。 −思っていたけれど。 あたしは小さく溜息をつきながら、少し離れた窓際で静かに本を読む草薙先輩の端正な横顔を盗み見た。 換気のために開け放った窓の外から運動部の子達の掛け声や歓声なんかが聞こえてくるけど、そんなのちっとも気にしない様子で、シルバーフレームのめがねレンズの奥で茶色がかった瞳が、忙しそうに本の文字を追っている。 |
亜瑠華 | 12/22 18:7:25 | 2101cfVHeEx6eF4SE||877 | ||
草薙忍先輩。 我が校の3年生で剣道部とあたしが所属するオカルト研究部の部長で眉目秀麗、文武両道を絵に描いたような人。 そしてそのクールな言動で『鬼の草薙』『難攻不落のクールボーイ』との異名をもつ、 校内でも校外でもいろいろな意味で有名人。 ・・・そして、あたしの彼氏。 今でも時々『あたしなんかが彼女でほんとにいいんだろうか?』と首をひねりたくなるくらい素敵な人だ。 チケットをもらったとき、すぐに先輩と一緒に行きたいって思ったけど、でも前に先輩が言ってた。 「遊園地には悪い思い出がある。」って。 |
亜瑠華 | 12/22 18:10:1 | 2101cfVHeEx6eF4SE||791 | ||
『だからあんまり好きじゃない』って。 それを知った上で先輩を誘うなんてことは、とても出来なかった。 けれど、小さいころからの憧れをすっぱりとあきらめることも出来なくて。 具体的な行動を起こせないまま、あたしは未練がましくチケットを持って歩いているのだ。 あーあ、どうしようかな・・・。早くしないとクリスマスイヴになっちゃうし。 今日はもう20日。 でも、先輩、遊園地に誘っても一緒にいってくれるかわからないしなぁ。 先輩は自分の意見や考えをはっきりさせるのが好きな人だから、きっぱりと行かないって言われそうだし。 断られたら、やっぱりへこんじゃうよね。でも・・・やっぱり先輩と一緒に行きたいしなぁ |
亜瑠華 | 12/22 18:11:8 | 2101cfVHeEx6eF4SE||993 | ||
レポート用紙を睨みつけるようにして眺めながら、頭の中でいろいろな考えがぐるぐるしていたその時、 「鈴原君」 不意に名前を呼ばれて、あたしはびっくりしてしまった。 「は、はい」 思わず声が上ずってしまう。 顔をあげるといつの間にか目の前に先輩が立っていて、涼やかな目元が心配そうにあたしを見つめていた。 「何か困ったことでもあるのか?」 「え?」 「今日、ここで俺と会ってからさっきので5回目の溜息だ。 |
亜瑠華 | 12/22 18:12:12 | 2101cfVHeEx6eF4SE||67 | ||
なにかレポートでわからないところがあるのなら、いくらでも相談にのるが」 「あ、いえ、そういうわけでは・・・」 「では、どうしてさっきから溜息ばかりついているんだ?」 「ええと・・・」 どう説明したらいいのかわからなくて、言葉につまっていると 「俺では君の役にたてないのだろうか?」 と、少しさびしそうな顔をした。 胸の奥がズキンとした。先輩にそんな顔をされると、あたしまで悲しくなってきてしまう。 「いえ、違うんです、先輩。そんなんじゃあないんです。 あの、先輩に関係ないっていうか、いえ、むしろあるって言うか、あの、なんていうか、その・・・」 |
亜瑠華 | 12/22 18:12:37 | 2101cfVHeEx6eF4SE||325 | ||
説明をしようとしてますますあたふたするあたしを、先輩は何も言わずに見つめている。 けれど、その目はあくまでも冷静で。 その瞳に見つめられているうちに、だいぶ落ち着いてきた。 先輩はあたしの目の前にある椅子をひくと、静かに腰掛けた。 「もし、俺に関係があるというのなら説明してほしいのだが」 (あ、先輩、少し緊張しているのかな) 口調はあくまでも冷静でいつもと変わらないようにみえるけど、先輩の目を見たとき、なぜかそう感じた。 |
亜瑠華 | 12/22 18:14:37 | 2101cfVHeEx6eF4SE||663 | ||
先輩はあいまいな答えを望まない。でも、どんなにくだらない内容でもきちんと話を聞いてくれる人だから。 うまく順序だてて話せないけど、でも自分の考えを自分の言葉で伝えよう。ダメでもいいから、きちんと誘ってみよう。 あたしは深呼吸して、話し出した。 「実は3日前に、友達から遊園地のチケットをもらったんです・・・」 そしてチケットを手に入れたいきさつと、先輩と行きたいけど誘おうかどうか迷っっていたことをしどろもどろに話すと、 「なんだ、そういうことなのか」 そう言って先輩は少しほっとしたように小さく笑った。 |
亜瑠華 | 12/22 18:17:17 | 2101cfVHeEx6eF4SE||838 | ||
「君があんまり深刻な顔をしていたから、もっと違った内容の話だと思っていたよ」 そしてあたしが取り出したチケットを受け取り、その表面をじっと見詰めた後 「俺ならいくらでもつきあうが」 そういいながら、チケットを返してきた。 先輩の思いがけない答えを聞いて、あたしはびっくりして思わず立ち上がってしまった。 「じゃあ、一緒に行ってくれるんですか!!」 うれしさのあまり興奮して大声をあげるあたしを、先輩がやや苦笑しながら見上げている。 「ああ。クリスマスイブは今のところ、何の用事も入っていないから、大丈夫だ。鈴原君はどうだろうか?」 「はい。ばっちり空いてます」 |
亜瑠華 | 12/22 18:18:0 | 2101cfVHeEx6eF4SE||223 | ||
胸の前で両手を握り締めながら力強く答えると、先輩がくすくすと笑った。 「そこにいけるのが、よほどうれしいのだな、君は」 「だってすっごく行きたかったんですもの」 「そうか。それはよかった」 「あ、でももちろん、遊園地にいけるのもうれしいですけど、それよりも、大好きな場所に先輩と一緒に行けるのが、すっごくうれしいんです」 「・・・そうか」 あたしの言葉をきいた先輩が、軽くうつむいて指でめがねの位置をなおした。 けど、あたしはしっかりと見てしまった。うれしそうな照れたような、なんともいえない表情を。 |
亜瑠華 | 12/22 18:18:40 | 2101cfVHeEx6eF4SE||65 | ||
みんなは先輩が無表情だというけれど、絶対にそんなことはないと思う。 先輩の目や口元や雰囲気でわかる。今、どんな風に思っているのかって。 むしろ先輩くらい感情の豊かな人っていないと思う。ただ、それらが表に出ないよう自制できる人なんだって思う。 先輩と一緒に行けるうれしさで舞い上がっていたあたしだけど、すこし冷静になって考えたとき、さっきまで感じていた不安が心をよぎった。 「先輩」 「ん?」 先輩が顔をあげて、あたしを見る。 さっきのあの表情は消え、いつもの冷たいとも思えるほどの真っ直ぐな視線がそこにあった。 あたしはおそるおそる聞いてみた。 |
亜瑠華 | 12/22 18:21:34 | 2101cfVHeEx6eF4SE||167 | ||
「あの、・・・無理してませんか?」 「俺が?」 いぶかしげな顔をする先輩に 「あたしに付き合うために、ほんとは行きたくないのに無理させちゃってたら、あの、悪いなって思って・・・」 「俺は行きたくないとは、言っていないと思うが」 「でも先輩。そういう場所は嫌いだって、言ってたじゃないですか。悪い思い出があるからって。だから行きたくないんじゃないかなって思って・・・。」 「・・・ああ、そのことか。・・・遊園地は、俺が母親に置き去りにされた場所でね。はしゃぎまわってて、いつのまにか母親はいなくなってた・・・。迷子になったのかと思ったが、俺はそこで捨てられたんだ。 |
亜瑠華 | 12/22 18:23:17 | 2101cfVHeEx6eF4SE||734 | ||
だから、2度と行きたくないと思っていたが・・・。」 「でも、別に無理などしていない」 「思いっきり無理してるじゃないですか。」 「いや、大丈夫だ。本当にイヤなら、断ればいいだけなのだから」 「でも・・・」 先輩はなおも言い募るあたしの言葉を静かにさえぎった。 「それにひさしぶりに行ってみたいし。」 |
亜瑠華 | 12/22 18:41:51 | 2101cfVHeEx6eF4SE||125 | ||
「それに君は遊園地が好きなのだろう。」 「はい、大好きです」 そんなあたしを、先輩はやさしい目で見つめている。 「確かに遊園地自体にはあまり興味がないのだが・・・」 自分でも気づかなかったけれど、先輩の言葉に、ちょっとがっかりした顔をしたのかも知れない。 あたしの顔をみた先輩が、くすりと笑った。 「でも俺は、君と一緒に行きたいんだ。 大好きだという場所に行って幸せそうにしている君を、側でみていたいんだよ」 「・・・」 |
亜瑠華 | 12/22 18:42:44 | 2101cfVHeEx6eF4SE||84 | ||
さらりと言う先輩の言葉の一つ一つに、心が体が反応してしまう。 うれしくって胸が弾む。顔が自然にほころんできてしまう。 「自分でも不思議だ。昔、あれだけ嫌だったのに、君となら行ってもいいと思える。いや・・・」 そういって言葉をきると、先輩は顎に手をあてながら苦笑した。 「・・・むしろ、ぜひ行きたいと思うのだから、ほんとに人の気持ちというのは、随分と変われるものなのだな」 そして部室の窓の外に広がる空に目を向けながら「晴れるといいな」と、つぶやくように言った。 「そうですね」 |
亜瑠華 | 12/22 18:43:18 | 2101cfVHeEx6eF4SE||549 | ||
あたしもつられるように、窓の外に視線を移した。 夕陽のオレンジ色の光が空いっぱいに広がり、下校の時間が近いことを教えてくれる。 部室に視線を戻せば、窓からに差し込む光が先輩の横顔を照らし出していた。 先輩は視線をあたしにむけると 「そろそろ帰ろうか、鈴原君。もうすぐ校舎がしまる時間になるから」 「あ、はい」 そういうと先輩は立ち上がって、窓際へと歩いていく。 あたしは机の上に広げていた筆記用具をまとめると、急いで鞄の中にしまった。 荷物をまとめ顔を上げると、風で揺れるカーテンを手で押さえながら窓をしめる先輩の後姿が目に入った。 |
亜瑠華 | 12/22 18:44:3 | 2101cfVHeEx6eF4SE||81 | ||
「ところで先輩」 「ん?」 「さっきの話ですけど」 「さっきの話?」 先輩が手を止め、あたしのほうに振り返る。 「はい。あたしがチケットのことを説明したあと、『違った内容の話かと思った』って言ってましたよね。何の話だと思ったんですか?」 別に他意があったわけじゃない。ただ純粋に、好奇心で聞いてみただけで。 あのとき、なぜ先輩が緊張していたのかが、どうしても知りたくて。 だって「鬼の草薙」と剣道部の後輩に恐れられている先輩が緊張するような話が、 |
亜瑠華 | 12/22 18:44:29 | 2101cfVHeEx6eF4SE||850 | ||
あたしからでてくるなんて、どうやっても考えられないもの。 その理由が知りたくて聞いてみたのだけれど、 先輩は黙ったまま窓の方に向き直ってガラス戸を閉め、カギをかけた。 そしてあたしの側にもどってくると、「はぁ」と大きなため息をついた。 「・・・参ったな。俺としたことが、失言だった」 「失言?」 「そうだ。安心しておもわず言ってしまった。本当なら口にだすべきじゃなかったから」 |
亜瑠華 | 12/22 18:45:24 | 2101cfVHeEx6eF4SE||373 | ||
ますます訳がわからなくて首をかしげるあたしを見て、 先輩が苦笑しながら中指でめがねのフレームを押し上げた。 「やはり、失言だよ」 「?」 頭の中を疑問符が飛び交う。やっぱりあたしには何がなんだかわからない。 先輩はくすりと自嘲気味に笑った。 「・・・実を言うとあの時、俺に対して君から何かよくない話があるんじゃないかと思っていたんだよ」 「それって、なんとなくですか?」 「ああ、単なるカンだったのだが。」 |
亜瑠華 | 12/22 18:45:48 | 2101cfVHeEx6eF4SE||7 | ||
それなら、なおさらわからない。 どうしてあたしが、先輩に対してよくない話をするって思ったんだろう。第一、よくない話って、なんだろう? 話の先がまったくわからない。 ますます首をかしげたあたしから、先輩はそっと視線をはずして窓の外を見た。 「この部室に来てからずっと、君が落ちつかない様子で俺の方をちらちら見ながら、 深刻そうな顔で溜息ばかりついている。これはてっきり・・・」 そしてこの人にしては珍しく、実にいいにくそうな口調で言った。 |
亜瑠華 | 12/22 18:46:22 | 2101cfVHeEx6eF4SE||330 | ||
「・・・てっきり俺にとって都合の悪い話なんじゃないかと思ったんだよ」 「先輩にとって都合の悪い話・・・」 鸚鵡返しに繰り返すと 「ああ、そうだ」 「でも、それって一体なんのことなんですか?」 先輩はあたしに視線を戻すと、額に手をあてくすりと笑った。 「ほんとに君は、筋金入りの鈍感だな」 「?」 「いや、わかってはいたことだが」 |
亜瑠華 | 12/22 18:47:3 | 2101cfVHeEx6eF4SE||134 | ||
そう言って手を伸ばすと、あたしの頬に軽く触れてきた。 そして少しかがんで視線をあたしの目線にあわせると、顔を覗き込むようにする。 すぐそこにある双眸が窓から差し込んでくる夕陽のかけらを映し出して輝いているようだったから、あたしはすっかりどぎまぎしてしまった。 「俺と一緒にいるのは退屈だ、とか、迷惑だ、別れたいという類の話ということだ」 あたしが先輩といるのは退屈・・・。迷惑・・・。別れたい・・・。え!?別れたいって・・・!! 「・・・え、ええ!?」 あまりにも予想外の答えに、しばらく先輩の言った内容が理解できなかったあたしが、 ようやく素っ頓狂な声をあげると、先輩が困ったような顔をした。 |
亜瑠華 | 12/22 18:47:43 | 2101cfVHeEx6eF4SE||22 | ||
「今の俺が一番恐れているのは、君からその手の話をきりだされることなんだよ」 そう言って、あたしの唇に軽くキスをした。 すぐそこにある先輩の瞳に、呆然としている自分の顔が映し出されている。 あたしから別れ話をきりだされることを、先輩が恐れている・・・? 後輩たちから恐れられている、あの『鬼の草薙』が・・・? 「何を笑ってるんだ?」 目元をほのかに紅く染めて先輩はあたしを軽く睨んだ。 「だって・・・」 そういってくすくすと笑うあたしに「理由があるなら早く言ってくれないか」とすこし拗ねたような顔をする。 |
亜瑠華 | 12/22 18:48:21 | 2101cfVHeEx6eF4SE||880 | ||
「『鬼の草薙』を恐れさせることができるだなんて、そんなこと、みんなが知ったらびっくりしちゃいますよ」 「・・・本当のことなのだから、仕方がない」 そう言って先輩はあたしの側から離れ、自分の鞄がおいてあるほうへ歩いていった。 後姿しかみえなかったけど、先輩の耳が紅く染まってみえるのは、あたしの気のせいかな? 愛しさが胸にこみ上げてくる。幸せな気持ちで体中が満たされていく。 「先輩」 呼びかけると、先輩が体を少しだけこちらに向けた。 「先輩、たくさん遊びましょうね。あたし、おもしろそうなアトラクションをチェックしときますね」 「ああ、君にまかせるよ」 |
亜瑠華 | 12/22 18:49:5 | 2101cfVHeEx6eF4SE||305 | ||
くすくすと笑う先輩の顔が幸せそうで、それをみている私まで笑顔になってしまう。 先輩に初めて会ったとき、先輩から自分以外のものすべてを拒絶しているような空気を感じて、びっくりしたことを覚えている。 と同時に、先輩という存在から目が離せなくなってしまったのも、確かだった。 そして、今。 現実世界でこうして側にいて肩をよせあい、指先を触れ合わせ、 お互いの視線を交わしながら話をすることによって、いろいろな先輩を知ることができた。 |
亜瑠華 | 12/22 18:49:33 | 2101cfVHeEx6eF4SE||359 | ||
でも、それだけじゃあ、飽き足らない。 もっと先輩の笑顔が見てみたい。 もっといろいろな先輩を見てみたい。 もっと先輩のことを知りたい。 ・・・もっともっと、その魅力であたしを虜にしてほしいから。 部室にカギをかけ、誰もいなくなった廊下を並んで歩きながら、そっと先輩に視線を送る。 それを感じ取ったのか、先輩があたしのほうに顔を向けた。 「どうした?」 |
亜瑠華 | 12/22 18:50:24 | 2101cfVHeEx6eF4SE||444 | ||
ちょうど学年ごとにわかれている下駄箱のスペースに差し掛かったところだから、自然にあたし達の歩みがとまる。 先輩の顔を見つめながらあたしは持てる限りの勇気をだして言ってみた。 「先輩、あたし、すっごく欲張りなんです」 「?」 「もっといろいろな先輩を見せてくださいね。もっと先輩のこと教えてくださいね」 「・・・」 「もっとあたしを、夢中にさせてくださいね」 あたしが大真面目な顔でそういうと、先輩はしばらくあたしの顔を見つめた後、唇の端でうすく笑った。 そしてあたしの腕をひいて抱き寄せると、耳元でそっと囁いた。 「・・・もちろん、そのつもりだが」 |
亜瑠華 | 12/22 18:50:50 | 2101cfVHeEx6eF4SE||709 | ||
そしてすばやく頬にキスをすると、顔を紅くしたままその場に立ち尽くす私ににっこりと笑った。 「じゃあ、玄関のところで待っている。家まで送るから一緒に帰ろう」 そういって、自分の学年の下駄箱があるほうへ、何事もなかったように歩いていった。 その後姿を呆然と見送りながら、あたしはそっとキスされた頬に手をあてた。 そこにはまだ、先輩の唇の感触が残っていて。 胸いっぱいにひろがる甘酸っぱい気持ちを抱きしめながら、あたしは自分の下駄箱の方へと歩き出した。 |
亜瑠華 | 12/22 18:51:50 | 2101cfVHeEx6eF4SE||233 | ||
完成です。随分長くなってしまった様な気がしますが・・・。 それでは、感想などお待ちしております。 |
ベリ子 | 12/22 22:22:2 | 2031cfmsEA.FDLOL6||552 | ||
や〜今回は前回の刺激の強さのせいかちょっぴり甘かった。。。くらいですねw だけど先輩もだんだん印象が変わってきてうれしいです!って先輩母捨てたんですか!・・・有得ない。自分の子供を捨てるなんて><ということは次回は遊園地でぇとの話っぽい予感wこれからも頑張って下さいね! 今回も楽しかったですよ! |
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