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4269―サザンライド大冒険日記―第七章sIs1/31 18:30:152221cfIUUAmmR7WA6
第一章、第二章、第三章 http://kamakura.cool.ne.jp/kadukiria/
『入口』→『創作活動』→『sIs』→『小説』
第四章 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-4174.html
第五章 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-4195.html
第六章 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-4245.html

第五章と六章が空いてるのは気にせずに・・・(ぁ
六章は滅茶苦茶になってますがファンタジーなのでスルーしてください。

第七章 『さすが辺境、廃れ方も尋常じゃないわね(リディ談)』

sIs1/31 18:30:302221cfIUUAmmR7WA6||701
十字暦1000年4月17日午後6時頃、ウェドナ入口―――――

 サク、サク、サク・・・
歩く、歩く。二人は歩く。草原に降り積もった雪の上に足跡を残して歩く。時刻はもうすぐ夕暮れだ。
 サク、サク、サク・・・
やがて、キドーが前を見てリディに声をかける。
「・・・あれじゃないか?ウェドナの町」
キドーの声を聞いてリディも前を向く。

sIs1/31 18:30:432221cfIUUAmmR7WA6||427
「ふうっ・・・あれがそうみたいね。・・・それにしてもこの町、随分煙突が多いわね」
 確かに、煙突がやたら多い。大小様々な煙突がそびえ立っている。さすが、鉱山町である。ウェドナの大きな特徴だろう。
 しかし、その数の割には、煙の出ている煙突が少ない。数十本はあろうかという煙突でも、二、三本ほどしか動いている様子はない。小さい頃聞いた話では、ウェドナの上空はいつも煙でいっぱいだったらしいが、この景色を見る限りでは本当には聞こえない。あまりにも活気がなさ過ぎる・・・

sIs1/31 18:31:22221cfIUUAmmR7WA6||864
『ようこそ、鉱山町ウェドナへ』
町の入口にあったその看板を見ても、鉱山町という雰囲気は微塵もない。
「おかしいわね?」
リディが呟く。その顔には不安の表情が浮かんでいる。
 キドーは町に足を踏み入れた。そして、見えた光景に目を見開いた。

sIs1/31 18:31:292221cfIUUAmmR7WA6||301
ウェドナの入口は、そのまま大通りに直通している。そしてその大通りから数えるほどしかない小さな横丁や路地が延びている。町の半分は製鉄工場とかそういう工場だから、店の並ぶ路地はほとんど皆無に等しい。
 キドーは町の大通りを遠慮がちに歩いた。ところがリディは平然とした顔で歩いている。“こんな町大したことないわ”って感じの顔だ。・・・つくづく嫌な女だ

sIs1/31 18:31:462221cfIUUAmmR7WA6||4
 大通りは立派なレンガ造りだったが、雪に埋もれてレンガはちょっとしか見えない。そのレンガも凸凹していて、歩くたびに足元が不安定になる。道行く人は虚ろな目をしており、行き先もなさそうな歩き方をしている。その道行く人も少なく、通りにいる大半の人間は建物にもたれかかっている。小さな子供も元気なさそうに倒れており・・・、その子供に雪を被せながら泣いている女もいた。
 建物も悲惨そのもので、レンガ造りの店――だったと思われる建物――も崩れかけており、人のいる気配がしない。窓ガラスも粉々に割れていて、扉には板が打ち付けられている。『アイクの玩具屋』と書かれた看板も汚れていた。

sIs1/31 18:32:02221cfIUUAmmR7WA6||648
「うわっ、ひでぇなこりゃ・・・」
キドーが呟いた。
「そお?大したことないじゃん。早く行きましょうよ」
リディが平然と返した。
 ちょっと待て、サザンライド城はこんなに廃れていたか?サザンライド城以外の町に行ったことも無いくせによく言う奴だ。リディの神経は謎めいている。

sIs1/31 18:32:152221cfIUUAmmR7WA6||532
 しかし、キドーはこの光景に似た光景を見たことがあった。建物が崩れ、人の死体が無造作に散乱しており、誰も助からなかった、あの日に嫌なほど似ている・・・。キドーの胸が痛んだ。
 ここでちょっと触れるが、実はキドーはサザンライドの生まれではない。出身は・・・また後日にでも話すだろう。
 キドーはその町のことを思い出すたびに全身が痛くなる。そして、気がつくと涙を流しているのだ。あの日、皆に信じてもらってたら・・・町は助かったのに。

sIs1/31 18:32:302221cfIUUAmmR7WA6||862
 リディが深刻な顔をして涙を流しているキドーを心配そうに覗き込んだ。
「い、いや、何でもないさ。目にゴミが入っただけだ」
キドーはリディを安心させるためにとっさに嘘をついた。が、
「へぇ、それにしては長いことボーっとしてたわね?」
とリディに的確に突っ込まれた。どうやら心配してなかったらしい。
 キドーは嘘までついて損した気分になりながら前へ歩いた。それでもこの町のこの風景を見ると涙がこみ上げてくる。・・・えぇいっ!何でこんな時に故郷なんて思い出すんだっ!

sIs1/31 18:32:502221cfIUUAmmR7WA6||899
 キドーとリディは大通りの突き当りを右に曲がった。そして足を急に停める。もう少しでぶつかるところだった。え、何にって?それは・・・

sIs1/31 18:33:22221cfIUUAmmR7WA6||609
「・・・誰?あんた達」
それが声を出した。キドーは震え上がって後ずさりする。

sIs1/31 18:33:182221cfIUUAmmR7WA6||563
 少女だった。まだ十歳あるかないかぐらいだろう。人形のような顔立ちをしてて、長い髪の毛を後ろで括っている。だが、顔や服は汚れていて、目もやる気のなさそうな目をしている。足を怪我しているらしく、短いズボンの裾から赤く染まりかけた包帯が見えている。
「誰って・・・サザンライドの王女とただの兵士だけど、何かある?」
リディがきつく言う。キドーはリディの言い草に腹を立てた。
「何だ、サザンライドか・・・なら良かった。って、王女?あんたが?変なの」
少女も投げやりに返す。

sIs1/31 18:33:352221cfIUUAmmR7WA6||406
「で、良かったって何のことよ?」
リディがさらに返す。
「グラスラッグの連中じゃないから」
「グラスラッグがどうかした?」
「あら、知らないの?ここと戦争してるってこと。王女ならそれぐらい知ってましょうよ」
「・・・」
返す言葉がなくなったのか、沈黙に落ちたリディ。

sIs1/31 18:33:522221cfIUUAmmR7WA6||560
 キドーも今思い出した。そうだった、ウェドナとグラスラッグは今戦争をしていたんだっけな。グラスラッグが金の輸入量が少ないとか言って戦争になったんだっけ。
「とにかく、何の用でここに来たのか知らないけど、さっさと帰ったらどう?危ないわよ、この町は」
少女が言う。口調からして「こんな奴ら別にどうでもいいんだけどね」と思っているに違いない。こいつもリディと同じ性格のようだ。
「何でだ?」
キドーが言ってみた。

sIs1/31 18:34:112221cfIUUAmmR7WA6||263
「そろそろ三日経つわ。グラスラッグの連中に殺される前にここを離れることね」
そう言って少女は二人に背を向けて歩き出した。
 キドーは逃がすまいと必死になって、
「おい、それじゃあ一つだけ聞くけどよ、そのー、何だ、物知り老人ってどこにいるか知らないか?そいつに用があるんだが」
と早口に言った。

sIs1/31 18:34:302221cfIUUAmmR7WA6||863
 少女は一瞬こちらを向いたかと思うと、
「・・・それってリュウロク爺ちゃんのこと?爺ちゃんなら、北のウェドナ鉱山にいるわよ。行くなら早く行くことね」
「北?ここの北か?」
「サザンライドから来たなら、白の村に寄ってるわよね。白の村からここに来るときに交差点あったでしょ。あそこを真っ直ぐ行けばいいわ」
少女は気だるそうに言った。
「ありがとう、それじゃ」
お礼もそこそこにキドーは町を出ようとした。

sIs1/31 18:34:472221cfIUUAmmR7WA6||880
「あっ、あの鉱山に行くなら一つ言うけど・・・」
少女がまた口を開いた。
「途中の道には気をつけなさいよ。石に躓かないように」
 意味の分からない助言だ。キドーは呆れながらも少女に礼を言った。少女はそれを無視して町の奥へ歩いていった。
「死ぬ前に誰かと話せて良かったわ・・・」
 少女が去り際にそう言ったのをキドーは聞いた。・・・深刻な問題のようだ。そしてリディを連れて歩き出した。また戻るのか・・・面倒だ。今日も徹夜で歩くはめになるのだろうか・・・。
 この旅はすぐに終わらなさそうだ。

sIs1/31 18:35:12221cfIUUAmmR7WA6||969
〜作者の独り言〜
ハァ、終わったよ・・・やっと(^_^;)
どんどん面倒な展開になってきて、頭の回転が追いつきません。時間もないし、すごく切羽詰ってます。うう、早く春休み来ないかなぁ・・・
 今回もキドーの秘密に迫りましたね。詳しいことはかなり後の章でお話しすることになると思います。ちなみに言いますが、リディはサザンライド生まれです(笑)


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