4770 | 小戦国 | 龍門達也 | 3/25 0:43:36 | 2191cfZZ/NibrxZto |
紅に染まる空。あの中に隙間は無い。 その空を見ながら「わたし」は思う。もう昔の「わたし」ではないんだっけ。って。 「わたし」は思う。 仲間の叫びを聴きながら。 |
龍門達也 | 3/25 0:44:16 | 2191cfZZ/NibrxZto||379 | ||
この国は大戦の敗戦国だ。敵国の人々はこの国の資源による利益を得て幸せに生活を営んでる。しかし資源も何もこの国には無い。国に有るのは人だけだ。 敵国の大国の一つはそれに目を付けた。この国の人による得る利益は一つ。 戦争へ派遣する兵士。 ただ問題点があった。人口の割合率の悪さ。「育成」するのに最適な子供が足りない。確かに大人達の方が上回っているがそれでは駒として不十分である。これがこの国の現状であった。 |
龍門達也 | 3/25 0:44:31 | 2191cfZZ/NibrxZto||935 | ||
それを打破する対策が「人工胎盤育成器」の発明である。 「人工胎盤育成器」の利点は精子と卵子さへあれば後は簡単に赤ん坊ができる仕組みである。つまり、体内で創られていた人間が発明によって機械による完全「人工育成」が可能になったというう事だ。兄弟。姉妹。とは今の時代では同じか近い遺伝子を持つ者と云う意味になっていた。子供などは「産む」のではなく「作る」ものに今の定義は出来た。体も遺伝子を変えたり、機械の部品をいれたりし、並みの人間ではないっようにもした。 |
龍門達也 | 3/25 0:44:36 | 2191cfZZ/NibrxZto||614 | ||
「育成」の方はもっと簡単だ。 学校をそのまま「育成」の機関として政府が管理する。年を重ねる度に配属先が変わり、兵士としての使い方も変わっていった。決められた十二年というカリキュラムを終了すれば自由にもなれる。条件付だが。勿論、「進級」にも条件があった。 「先生」とは上官であり部下でもある。強さがあれば彼らは云う事に完璧に従う。記憶以外は鉄で作られた機械の体であり、学校のトップに従うようにプログラムされていたからだ。 小、中学校にいる「生徒会長」が実質のトップ。後は政府の人間かアンドロイドか。二択しか無い。 |
龍門達也 | 3/25 0:44:49 | 2191cfZZ/NibrxZto||380 | ||
満月の日は嫌いだ。 私はいつも月が満ちた日に聞く泣き声を聞いて育ってきた。それ以外といえば罵声くらいだろう。「査定」の日なんて来なくていい。私はそう思いつつも、体育館の中で皆に混じりつま先をつけ無表情のまま整列していた。「査定」は「進級」にひびく。この1年間はうまくいった方だと思う。それよりも7年間もよくもったものだと思う。今まで何人の同級生が「廃棄」されただろうか。今結果を待つ私の前にも何人か「廃棄場」に泣き叫びながら連行されて行くのを横目で見ていた。泣き叫ぶ声がふつりと止んだ。 壇上の政府の男は次の名を読み上げた。 |
龍門達也 | 3/25 0:45:32 | 2191cfZZ/NibrxZto||916 | ||
「龍王恵。以下の者、要人暗殺23件を成功。これにより進級を許す」 私は呼ばれ無事に進級できた。勿論、任務はそつなくこなし、心配する要素は無に等しかったが。しばらくは珍しく「廃棄」と云う言葉が発せられなかった。実質上学校を治めている生徒会の連中も一人を残し皆残ったぐらいだ。求められるハードルが高い生徒会ではいくら実力の有る者でも一人くらいは「廃棄」されていたものだ。 何度目かの「廃棄」という言葉を聞いて私は自分の耳を疑いその「査定」発表は信じられなかった。むしろ信じたく無かった。 「生徒会長。尾野誠。以下の者、反政府活動により「廃棄」し生徒会長職を副会長に委ねる」 |
龍門達也 | 3/25 0:45:37 | 2191cfZZ/NibrxZto||411 | ||
ざわめきが一瞬だけ巻き起こった。彼、尾野誠はこの学校のトップである。生徒会長が「廃棄」されるような事は今までに無かった話だ。任務中に死亡する事はよくあったが。そして会長という職は政府に忠誠を誓ってさえいた。そして彼は私の顧問上官であり、暗殺や兵士の師でもあったのだ。私は周囲の連中に感づかれず上官であった彼の方を見る。 |
龍門達也 | 3/25 0:46:26 | 2191cfZZ/NibrxZto||719 | ||
彼は彼らしくないうっすらとした笑いを浮かべ、会長のバッチを隣にいる困惑している副会長に手渡し、深呼吸と深いため息をしたのち天井を睨んだ。 その顔を見た時。私は急激あることを思い出した。 そもそも彼は三年間ほど生徒会長をしていた。理由は彼以上の実力者はなかなか出なかったからだ。 |
龍門達也 | 3/25 0:46:31 | 2191cfZZ/NibrxZto||988 | ||
と云うより前の生徒会長よりも彼の方が実力があり、歳若いながら副会長と云う立場でもあったからだ。前の生徒会長が任務中に死亡し副会長だった彼がそのまま会長に就任した。彼はこのまま行けば中等部の生徒会長にもなれていただろう。そうすれば卒業とともに政府に入れ、今よりは楽が出来たはずだ。 私がそんな彼と会ったのは彼がまだ生徒会長になる前。私が幼等部を出たばかりの頃。 |
龍門達也 | 3/25 0:46:45 | 2191cfZZ/NibrxZto||961 | ||
「君が竜王さん?」 初対面の尾野は自分よりも背が低いからと、軽く腰を曲げて話かけた。 「はい。尾野上官。副会長という実力のある方に指導していただき」 「ストップ。ちょっとまって」 決まり事である上官への挨拶を途中で止められて私は少し途惑った。何か気に触る事でも云っただろうか?それとも態度か? 「その話し方は君本来の話し方かい?それとも決まりかい?」 尾野は苦笑を浮かべ私を見ている。 |
龍門達也 | 3/25 0:46:56 | 2191cfZZ/NibrxZto||803 | ||
「本来の話し方など、上官の前でするなど恥じ以外にありません」 私の考え方は何か間違っているだろうか。 「いや。せっかくの新しい制服に似合わない話し方だったから。気になってさ。…本来の口調でいいからもっと砕けてくれないか?年下に敬語されるのは嫌いなんだ」 変わっている。私は尾野の人間性を疑ってみたい。この時代に歳なんて関係ない。実力こそが重視される物だ。新しい制服と云っても政府の支給品には変わらないし。何よりも上官に対して敬語を使わないなんて「査定」にひびき「進級」も出来なくなる。 |
龍門達也 | 3/25 0:47:10 | 2191cfZZ/NibrxZto||255 | ||
「内緒にしとくから敬語は止めてくれ。それに俺の事は呼び捨てでいい。」 「…………」 沈黙を彼は肯定としたらしい。 「ではまずは……自己紹介から」 本当に彼は変わっている。私は思わず笑いをこぼした。 「俺は尾野誠。君の上官っても1年ぐらいだと思う。カリキュラム終了まで後8年。夢は……これは内緒」 指をたて口に当ててクスクス笑ってから私を指差した。 |
龍門達也 | 3/25 0:47:34 | 2191cfZZ/NibrxZto||657 | ||
「私は竜王恵。カリキュラム終了まで後10年。夢は…夢?夢って何?」 私は聞きなれない単語をかれに尋ねる。返ってきた返答はよくわからない言葉だった。 |
龍門達也 | 3/25 0:47:45 | 2191cfZZ/NibrxZto||124 | ||
「願いとか。強く想う事かな?」 「願い?」 「教育」では習わなかった言葉。殺す事とは違う「教育」は初めてだ。 「そう。願い。俺の願いは内緒だけど竜王さんの願いは何?云いたくなかったらいいけど」 願いと云われても私はどうもピンとこない。しばらく考え込んでいると尾野が首を振り満面の笑みを浮かべ、私の手を引っ張り出す。 「それはいつか訊くとしよう。……訓練でもしよう」 訓練と云った瞬間には彼に笑顔は無かった。暗殺や破壊工作の訓練は彼は嫌いなんだろうか。それよりも、私は気になった事がある。 「……尾野上官。訊いていい?」 「上官もいらないって」 |
龍門達也 | 3/25 0:48:3 | 2191cfZZ/NibrxZto||521 | ||
私は尾野上官のいった事は気にせず尋ねた。 「尾野上官の夢は何?」 「俺?……内緒…って云ったけど気になるか……そのうち。そのうちに教えてあげるよ」 私は無言でその言葉を頭にいれる。 「まずは簡単に、この学校から裏山の頂上まで五分で行く事。一秒でも遅れて出来なかったら一周追加するから」 じゃあ、と彼は云って信じれないスピードで私の前から消えた。おそらく罠でも仕掛けるのだろう。彼ならそこまでしているはずだ。――実際そうであったが。 私はその後の1年間、訓練に必死でその事を忘れて過す。 |
龍門達也 | 3/25 0:48:19 | 2191cfZZ/NibrxZto||273 | ||
思い出したのは先程「廃棄」を告げられた、「査定」の後の彼をみた後だった。彼の願いは何だったのだろうか?今となて思い出し夢について聞けないのは残念だ。 その私の想いを彼は察したのか私の方を向いていつもの笑顔を浮かべ見つめていた。 |
龍門達也 | 3/25 0:48:37 | 2191cfZZ/NibrxZto||462 | ||
「廃棄される前にお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」 尾野は政府の男に尋ねる。 「何だ?」 政府の人間は尾野を睨み返答する。尾野はその目を跳ね返すように持ち前の明かるさを含んだ声で 「最後の別れをさせてくれませんか?」 尾野は竜王の方を見つめ、笑いかけた。竜王が尾野の方を見ていたからだ。 「お前は反政府活動をしていたが・・・・・・会長をしていたし・・・・・・特別にいいだろう。しかし、手短にな」 あごを摩って政府の男は彼の頼みを許し、自分の部下達に命じ尾野から離れるように指示する。 「有難うございます」 |
龍門達也 | 3/25 0:48:56 | 2191cfZZ/NibrxZto||972 | ||
深々とお辞儀をして、尾野は整列している他の生徒の間を掻き分けるように最奥の出口に近い竜王の前に進み出た。 「面と向かって話すのは久しぶりだね。えっと・・・・・・二年ぶり……ぐらいかな?竜王さん」 頬を照れくさそうに掻きながら尾野は竜王に云う。 「そうですね。尾野上官」 彼女は驚きを隠すように平静を装って返答する。顔を見ないように下を向いていたが。 「もう上官でも何でも無いんだけどね」 渇いた笑みで彼は彼女を見ている。周りの生徒たちも横目で彼の目をを窺ってる。 |
龍門達也 | 3/25 0:49:12 | 2191cfZZ/NibrxZto||762 | ||
「上官」 「何?」 下を見つめていた竜王は尾野の目を初めてきちんと見た。死への恐怖はまったく見られなかった。 「何故、私を最後の別れの対象にしたのですか」 周りの目がよりいっそう熱を帯び集まっていくのがわかる。皆、この状況に途惑っているからだ。彼女自身も言葉の節々に自分の疑問を含ませてはいたが、直接訊くとなると気が引けたが、彼女は訊く。尾野は客観的に云う。 |
龍門達也 | 3/25 0:49:33 | 2191cfZZ/NibrxZto||923 | ||
「………最後の教えていた部下で、特別優秀だったからだよ」 嘘をついている。直感的に彼女は悟り、首を横に振った。 「それだけでは、ない筈です……上官はいったい何をして…政府に逆らう事を?」 壇上の政府の男はぴくりと眉を動かす。尾野はそれに気付いたのか、 「…………」 彼は口を堅く閉じ、黙り込む。ただ眼だけは活き活きとしている。希望を宿しているようなその眼の中に恨みの念は無い。むしろ竜王の前に出た時からその強さは増していた。その事は本人以外に気付いていない。 |
龍門達也 | 3/25 0:50:0 | 2191cfZZ/NibrxZto||489 | ||
「直にわかるよ。きっと。ああ、そうそう……君は優秀だからきっと会長になれるよ。頑張って」 「…………」 今度は彼女が沈黙する番であった。会話に不審な点があった場合、おそらく彼女も「廃棄」されるだろう。政府の男は無言でことらを見てくるのはその為だと思う。 男は腕時計を見て人差し指で出口を指し、沈黙のまま部下に尾野を連行するよう指示する。 |
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