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5393猫頭山・一ダンディずん5/19 6:8:426122cfoMAVqdadA4U
あなたは猫頭山という山を知っているだろうか。
 
幾人もの女と猫たちの生命が刻まれた、死と誕生の碑を。
 

ダンディずん5/19 6:9:366122cfoMAVqdadA4U||152
 猫頭山についてのもっとも古い記述は、第三代無冠帝の勅命で編纂された「古今鳥獣珍妙聞」にある、「乙と犬麻呂」という物語の中に見られる。

「古今鳥獣珍妙聞」は最も軽薄な勅撰話集と悪名高いが、実のところ収められている百五十六話のうち、よく取り上げられる「魔羅猿と瓜姫」「闇夜の大烏帽子」「竹竿入道」などの卑猥な話は少数であり、むしろその醍醐味は庶民の生活を題材とした数々の悲喜劇にあろう。

特に「乙と犬麻呂」は、「草紋記」の「蜻蛉の水鏡」「あないみじ草子」と並んで無冠帝時代の三大悲劇として名高い。
 

ダンディずん5/19 6:10:246122cfoMAVqdadA4U||375
 古今鳥獣珍妙聞が編纂された当時はまだ猫頭山とは呼ばれておらず、「丹生岳」の名で登場する。

十六冊見つかっている写本のうち最も新しく、七帝時代前期、赫王の頃のものと思われる二冊のひとつ、佐々木本では「猫首山」、もうひとつの楠谷本では「びやうたう山」と書き換えられていることから、この頃に猫頭山という呼び名が定着したと考えられる。

この名前の変遷にも逸話が存在するのだが、このことについては後述する。
 
 
 まずは「乙と犬麻呂」を簡単に紹介しよう。

ダンディずん5/19 6:11:166122cfoMAVqdadA4U||712
 今は昔、第一代無冠帝が即位したばかりの頃、宮中にひとりの女卜部がいた。卜部とは、今で言う占い師や風水師のようなものである。

 第一代無冠帝は、後に支那文化払拭政策を取り始めるまで重役に卜部を置き、国の先行きや行事の日取りの吉凶を占わせていた。

 女は、名を「おと」といった。
 
「緒斗」と書かれることもあるが、ここでは最も一般的な「乙」と表記する。

ダンディずん5/19 6:11:536122cfoMAVqdadA4U||703
 乙は支那国の人間であったという。

 まだ帝政の始まる前、太白神代に錫船交易船に乗ってこの島国にやって来、無冠帝が全土統一を成し遂げてこの土地を「日本」と名付けるのを傍らで見たのだから、日本に来た後から勘定しても優に三百年は生きていたことになる。

 にもかかわらず彼女がうら若い少女として描かれることから、第一代無冠帝の五百年間の治世を可能にした不老延命の秘術を授けたのは乙である、という説もある。

ダンディずん5/19 6:14:446122cfoMAVqdadA4U||96
 乙は「風をよせ、水をあやつり、火を舞わせ、土を動か」すという、不思議な魔術に通じていた。

 また、その容姿は「風にそよぐほどに軽やかで、水にとけるほどにすきとほり、火を纏ひ、土に緑をもたらす」かのようであった。
 
 その能力と美貌でもって宮中で絶大な決定権を持った乙であったが、その性格はいたって慎ましやかであった。乙の栄華は、むしろ彼女の仁徳ゆえであったのかもしれない。
 

ダンディずん5/19 6:15:76122cfoMAVqdadA4U||536
 乙は支那国から連れてきた、白虎という勇ましい名の猫を飼っていた。アフリカ原産である猫は、当時まだ少数しか日本に入ってきておらず、この白虎は文献に現れる最も古い猫でもある。

白虎はその名前に似合わず弱々しい仔猫で、いつも乙の膝に抱かれ、頭やあご下をかいてもらうのを好んだ。そして、乙がいつまでも若々しいのと同じように、白虎もいつまでも仔猫であった。

ダンディずん5/19 6:15:376122cfoMAVqdadA4U||255
卜部は帝に最も近い官職であり、その名を除き一切が極秘であったにも関わらず、乙の才色兼備は宮中で有名であった。

 乙を一目見よう、あわよくば千代の契りも結ばんと、幾人もの名家の嫡子が様々な手練手管でもってして近づこうとしたが、乙は取り合う素振りすら見せなかった。
 

ダンディずん5/19 6:17:276122cfoMAVqdadA4U||152

ある者は宮中の竹の植え込みに隠れ、乙が縁側に出てくるのを待ち続けたが、結局数年後に亡骸となって見つかった。

 その時には彼の死体は、竹の猛烈な成長力のせいで地上から八尋(約12メートル)のところまで持ち上げられていた。


ダンディずん5/19 6:17:516122cfoMAVqdadA4U||116
 
 ある者は燃えるような恋心をうたにして扇子にしたため、乙に贈った。
 
 その晩、彼の屋敷は火事で彼もろとも灰燼に帰した。乙が呪法でもって、彼の心から恋の炎を取り出した故であった。
 

ダンディずん5/19 6:18:126122cfoMAVqdadA4U||620
 
 ある者は雪のそぼ降る真冬に、乙の屋敷を色とりどりの造花で飾りつけた。

 翌日、彼が様子を見に乙の屋敷に行ってみると、驚いたことに、雪で真っ白な庭に鮮やかな桃色の桜が咲き誇っていた。


ダンディずん5/19 6:19:136122cfoMAVqdadA4U||328

 乙の素気無い態度は、密かに帝の寵愛を受けていたからであった。帝も乙の美貌に一目で虜になり、毎夜のように彼女のもとに通ったが、重職とはいえ皇后でも女御でもない卜部が帝の寵愛を受けることなど考えられず、あくまでお忍びの関係であった。

だが、この望外の幸せが、乙の不運の始まりでもあったのだ。


ダンディずん5/19 6:26:516122cfoMAVqdadA4U||898
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時々詩もどきや小説もどきを書き込んではいたが、
今回は、連載、とやらをしてみようと思う。
しかも、今までと違ってかなりエンターテイメント寄りの予定である。
至って気ままに書き殴る性分ゆえ、果たしてどのようなものになるか、
私自身も全く想像がつかないが、雑事の合間を縫って少しずつ進めて
いこうと思う。

ちなみにこの話はフィクションであり、実在の個人及び団体、
史実等とは一切関係ありません。

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marinoe5/19 12:18:532101cfE1iGSbESYs.||177
ずん様、おはようございます
フィクションの大元は御伽草子にあると思っている私の待ち望んでいた物語のようです
出だしの説明チックなしゃちこばり方がとてもずん様らしい
トントントンと、しっかり頑丈な土台を作って
滑らかにくり出したお話は水を得た魚のようにピチピチと
波紋を造って泳ぎ回りそうですね
首をながくして持ち焦がれるものがまたできて、嬉しさ100万倍

博多ダンディ(兄5/19 19:18:366122cfoMAVqdadA4U||885
マリーさん、こんにちは
かつて書いたカッパワールドを膨らましているうちに、なにやら一国の歴史めいた
とめどなく繰り返す猫話へと発展してしまいました。
行き当たりばったりで創るキャラクターや世界設定も、連載という形で長い期間を
かければそれなりになんとかまとまって来ないかなぁ、と希望的観測で見切り発車です。
相変わらず大仰な書き方は直らず、言の葉の優雅さも正確さもいまいちな似非万葉ですが、
よろしければどうぞお付き合いください。


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