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5437猫頭山・二ダンディずん5/22 2:43:346122cfoMAVqdadA4U
あなたは猫頭山という山を知っているだろうか。
 
幾人もの女と猫たちの生命が刻まれた、死と誕生の碑を。
 

ダンディずん5/22 2:44:426122cfoMAVqdadA4U||455
 
                ***

 左大臣の毎朝の日課は、目白の世話であった。
 
 元が武人で、家の雑事の一切に口を出さない彼であったが、どういうわけかこればかりは決して他の誰にもやらせなかったので、いつも侍女が替わるたびにひと騒ぎとなった。
 

ダンディずん5/22 2:45:146122cfoMAVqdadA4U||73
 
 年とともにだんだん早起きになっていた彼だが、今日は特に早く、起き出して屋敷中を歩き回ったので、眠っていた侍女たちを驚かせてしまった。

今日は参内しなくてもよい、と言いつけられていたので、日が昇ってから飯と菜ひと皿だけの質素な朝げをゆっくりと平らげると、手を打って侍女に目白を持ってくるように言った。

 侍女はもう五年も左大臣に仕えているので心得たもので、糞や喰い滓で汚れたままの鳥籠と一緒に、紙や水差し、屑入れなどの道具一式を持ってきて部屋の真ん中に並べ置くと、礼をして下がった。
 

ダンディずん5/22 2:45:486122cfoMAVqdadA4U||113
 
 左大臣は籠を目の前にしたまま、あぐらをかいてしばらく庭の方を見つめていたが、やがて思い出したように鳥籠を取り上げ、白いものがだいぶ混じりだした口ひげが突き入りそうなほど顔を近づけて中を覗き込んだ。

突然目の前に現れた大男に驚いた目白は籠目に渡された二本の止まり木を行ったり来たりして、天井裏を走るねずみの足音のような音を立てた。

むやみに羽ばたいたせいで羽根が一枚取れ、ぱっと舞い上がったかと思うとひらひらと籠の底まで落ちていった。左大臣は片付けるものが増えた事を少し喜ばしく思った。
 

ダンディずん5/22 2:46:126122cfoMAVqdadA4U||770

 左大臣は止まり木にとまった目白ごとそろそろと竹編みの籠を外すと、目白が逃げぬよう口を下にして籠を床に置いた。

そうしておいて、底に置かれた陶製の餌皿と水入れを取り出すと、木で出来た籠の底に敷かれた紙を指でつまみ、散らかった粟粒や糞がこぼれぬようにして器用に小さく折りたたんで、目白が狙いを外して木枠に粗相したのを拭い取り、屑入れに放り込んだ。
 

ダンディずん5/22 2:47:46122cfoMAVqdadA4U||458
 
 きれいになった籠底に敷こうと、侍女が持ってきた新しい紙を一枚取り上げてみると、その中に真っ赤に染まった紅葉が漉き込まれていた。

その燃えるような赤は、山が紅葉に燃える季節に見せる、その色そのままを紙の中に閉じ込めたように鮮やかであったので、今は秋かと勘違いしそうなほどであった。
 
左大臣は珍しいものであるかのようにまじまじと見つめ、その入り組んだ外周や葉脈を親指の腹でなぞると、顔を上げて再びじっと庭の方を見た。
 
外は昨晩降った雪で、庭石まで真っ白に覆われていた。
 

ダンディずん5/22 2:47:386122cfoMAVqdadA4U||932

 籠の底に敷くと、紅葉は急に色が褪めてしまったように見えた。

左大臣は餌皿に残った粟を屑入れに空けて新しい粟を盛ると、水を足した水入れと並べて底に置いた。それから籠の吊り手を持ちあげ、元のようにはめた。その間、目白は観念したようにじっと止まり木にとまり、籠と一緒に揺れていた。

 午前中はそのまま部屋に座り込み、せわしなく籠の中を跳ね回る目白を眺めて過ごした。そして時々、何かを待ちわびるように庭に目を遣った。
 

ダンディずん5/22 2:48:266122cfoMAVqdadA4U||222
 
 事実、今日の彼には待ち人があった。左大臣は侍女を呼ぶと、目白の籠を冬の雲間から漏れる陽が柔らかな部屋の南側の軒に吊るすように言い、ついでとばかりに尋ねた。

「まだ来ないのか」

 侍女は失礼にも左大臣に尻を向け、軒の吊り金に手を伸ばして背伸びしていたが、気にも留める様子もなく、そのまま背中越しに答えた。

「今朝、御降臨があると御触れがございましたから、通りが民でふさがっているのでしょう」

「そうか」

「今日の御降臨は少し遅うございますし」

侍女は振り向いてそう言ったが、左大臣はそれ以上返事もせず、またじっと庭を眺めているばかりであった。
 

ダンディずん5/22 2:49:346122cfoMAVqdadA4U||828
 今日が御降臨の日だということを、彼は昨日から知っていた。

 帝から直々に聞かされた時、彼はもはや反対はしなかった。かつて幾度か考え直すように建言したことがあったが、一度として聞き入れられることはなかったからだ。

黙って了解した左大臣を見て、帝はもう一つ、噂に聞いて抱いていた彼の不安を掻き立てるような言葉をかけた。
 
左大臣は帝の前を下がった後しばらく考え込んでいたが、やがて筆をとると、遣いの者に文を持たせた。
 

ダンディずん5/22 2:49:456122cfoMAVqdadA4U||535

返事は夜遅くにきた。

手紙には、明日こちらに顔を出す、とだけ書かれてあり、花のついた梅の小枝が添えられていた。

ろうそくの薄暗い灯りの中で白梅の静かな香りをかぎながら、左大臣は益々不安が強くなっていくのを感じていた。
 

ダンディずん5/22 2:50:286122cfoMAVqdadA4U||177
 
 
 御降臨は、昼をまわってから随分経った頃にあった。遠く北東の空から低い響きが聞こえ、地鳴りがしたことで、左大臣はまた幾人かが山に喰われて死んだことを知った。

軒の鳥籠が揺れ、目白が高い声で狂ったように鳴きわめくので、左大臣は侍女を呼んで、揺れが収まるまで籠を押さえさせなければならなかった。

待ち人が訪れないまま時は経ち、日も暮れかかって、待ちくたびれた左大臣が座ったまま居眠りを始めた頃、侍女がやって来た。

「お出でになりました」

その声で我に返った左大臣は慌てて身を起こし、

「通せ」

と言うと、烏帽子を軽く手で整えた。
 

ダンディずん5/22 2:53:466122cfoMAVqdadA4U||373
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この板、意外と早く回っているようで、少量ずつ進められそうで助かります。
とはいえ、構想さえも全くストックのない状態で思いつくままに書いているので
あんまり早くても困りますが。
それにしても、皆さんがURLをわざわざ列記している理由がやっとわかりました。

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marinoe5/22 13:25:392191cfKsHSaewD9OE||644
ずん様、こんにちは☆
この左大臣は犬麻呂と言う名前だろうなと思いながら、
グイグイ、読ませていただきました。
今昔物語も、源氏物語も現代語訳でしか読めなかった私です。
宮廷絵巻はもう究極のファンタジーとして、大河ドラマも見ています。
冬寒の一日の描写、素敵です。
地震と御光臨の関係はどうなっているのか、謎が謎を呼び
私は、この板の回転がもう少し速くなればいいのにと思った日曜日でした。

博多ダンディ(兄5/22 14:42:456122cfoMAVqdadA4U||537
マリーさん、こんにちはです
今はこの二人が果たして何者であるかはご想像にお任せいたしますね
それが話を短く切る連載形式の醍醐味でもありましょうから
ただ、話の一番太い骨子だけから見切り発車し、
「書く直前から、その日書く分だけ考える」という無謀な挑戦でもあるこの企画
予定が無いに等しかったとはいえ、二回目にして当初の考えを三次元方向に裏切るかのような
膨らみっぷりに、作者としても甚だハンドルさばきに苦労しそうな気配です
平安チックに話は進んでいますが、源氏の三分の一を現代語で読んだだけの者が書いていますので
これからのオフロード走行っぷりを楽しんでいただければいいなぁと思っております


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