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5612猫頭山・五ダンディずん6/6 3:4:176122cfoMAVqdadA4U

あなたは猫頭山という山を知っているだろうか。
 
幾人もの女と猫たちの生命が刻まれた、死と誕生の碑を。
 

ダンディずん6/6 3:4:586122cfoMAVqdadA4U||883
 
 時津彦の期待とは裏腹に、踏み分け道と思ったのは獣道を雪解け水が走った跡であった。

もっとも、高台から周囲を見渡してみた限りでは、思ったとおり、すでに三河原は抜けて西隣の岩須に入っているようであったので、どうやら人里まで降りずとも敵の追撃を心配する必要はなさそうであった。

用心の為、時津彦には分からない何かの強大な力で引き裂かれてばらばらになった追っ手たちの無残な骸は拾い集め、谷底に埋めた。早晩、冬のうちに腹を空かせた獣たちがきれいに片付けてくれるだろう。
 

ダンディずん6/6 3:5:426122cfoMAVqdadA4U||560
 
 そうこうするうちにすっかり陽は傾き、風が出てきた。

気がつくと、さっきまで後ろをついて回っていたあの不思議な少女が、ふっと消えていなくなっていた。

時津彦は薄暮に沈む森に目をこらして少女を探したが、まるで闇に溶けたようにどこにもその姿はなかった。

 ――夢だったのだろうか。

訝しく思いながら少女と出会ったところにまで戻ってくると、時津彦は傍らの梅の樹を見上げた。

梅は満開の花を斜陽に赤く輝かせ、あの少女の存在と、彼女が起こした不思議な出来事を確かに証明していた。
 

ダンディずん6/6 3:7:216122cfoMAVqdadA4U||897
 
 時津彦はその樹の下に横になると、梅の花びらが風に吹かれて一斉に煌く様を眺めながら、今日の出来事に思いを馳せ、今自分がこうして生きていることにちょっとした驚きを覚え、それから明日の計画に考えを巡らせた。
 
 ここが三河原と岩須の国境付近であれば、この山は丹生山ということになる。逃げるのに夢中なあまり、随分と高いところまで登ってしまったようだ。

一番近い里は藪之中であろうが、そこまで降りていくのは危険かもしれない。国境は越えたとは言え、馬淵がここまで追って来ていないとも限らないからだ。
 

ダンディずん6/6 3:7:506122cfoMAVqdadA4U||659

元より三河原の馬淵と岩須一族の久留一族との間には長い戦の歴史があるから、これを機に馬淵が藪之中を攻めることも十分考えられ得る。
 
岩須はならず者のタカノヒラハラをすんなりと通し、おおっぴらに手を貸さないまでも国内逗留を黙認しているわけだから、馬淵としては隣国を攻めるのに十分な口実があるわけだ。

どちらにせよ、このまま尾根伝いに西へ向かって小呂松の陣に戻るのが得策であろう。
 

ダンディずん6/6 3:8:166122cfoMAVqdadA4U||722
 
だが、果たして同志たちは無事に帰り着いているのだろうか。

今の彼にはそれすら分からないのだった。


ダンディずん6/6 3:9:466122cfoMAVqdadA4U||847

                  *

三河原攻めの朝は、しとしとと降る生温かい春雨とともに明け始めた。

鹿子川の中流域の山中を行く兵の中に、長谷時津彦の姿があった。

彼はこの鹿子川部隊の陣頭指揮を任されていた。

この部隊は敵本陣の真正面に踊り出て陽動する作戦の要であったが、彼にとってこの役目は屈辱であった。

彼をその任に指名したのが、あの気に喰わない岸下部若比佐であったからだ。

唯一の救いは、岸下部が伊ノ山側から砦を攻撃する本隊の指揮を執るので、彼と顔を合わせずに済むことであった。
 


ダンディずん6/6 3:10:256122cfoMAVqdadA4U||349

空が鈍く輝きだし、雨雲の向こうに陽が昇ったことを知らせていた。

他の三隊もとうに配置につき、その時を待っているはずだった。

時津彦は今朝の空のようにどんよりとして晴れない心の雲を振り払うように一度強く目をつぶり、そしてゆっくりと開いた。

――今はただ、やるべきことをやればいい。
 

ダンディずん6/6 3:11:206122cfoMAVqdadA4U||86
 
 時津彦の号令とともに森を飛び出した総勢約二千の兵は、雨の中を怒涛のごとく進撃した。

この先では敵の兵約三百が伊治礼橋を守っているはずであった。伊治礼橋は三河原の交通の要衝である。他の二本の川にかかる橋と同時にここを押さえれば、必ず馬淵は大軍を引き連れて打って出る。

時津彦の部隊は一気に鹿子川を遡り、敵に身構えさせる暇も与えず伊治礼橋の防塁を襲った。

しかし、申し訳ばかりに放たれる矢を打ち落とし、柵を引き倒して雪崩れ込んだ彼らが見たのは、敵が逃げ失せた後の空っぽの砦であった。
 

ダンディずん6/6 3:12:26122cfoMAVqdadA4U||152

 あまりのあっけのなさに、兵たちは呆然としていた。

時津彦は砦の中を確かめながら、胸の内で嫌な予感が膨らんでいくのを覚えた。

斥候は確かにここを守る三百の兵を見たはずだった。

なのに、実際に踏み込んでみると、そこにいたのはわずか五十にも満たない兵だけであったのだ。

地べたに打ち捨てられた弓を踏みにじりながら、時津彦は剣の柄を両手で強く握り締めた。

音もなく降る糠雨が、あまりに静かだった。
 

ダンディずん6/6 3:12:306122cfoMAVqdadA4U||108

 その時、北の空から不気味な低い轟きが響き渡り、次の瞬間、黒い雲を激しい稲光がつんざいた。

どよめく兵たちを掻き分けて物見に登った時津彦が見たのは、三河原の扇状地を越えて遠くに聳える伊ノ山に降り注ぐ幾筋もの稲妻と、三本の川が猛り狂い膨れ上がりながら彼らに向かってゆっくりと襲い掛かってくる様であった。

時津彦はこの時、自分たちが敵の罠に落ちたことを悟った。
 

ダンディずん6/6 3:12:596122cfoMAVqdadA4U||266

 ――泣沢女か。

時津彦は徐々に近づいてくる巨大な水の柱を目の前にして立ち尽くしたまま、若比佐の浅はかさとアマノヒラハラの考えのなさに音がするほど強く歯噛みした。

 部隊は一気に混乱状態に陥り、兵たちは算を乱して逃げ始めた。

悲鳴と怒号の入り乱れる中に、時津彦は誰かがこう叫ぶのを聞いた。

「神の怒りだ」
 

ダンディずん6/6 3:13:196122cfoMAVqdadA4U||807

 時津彦は憤然として兜を脱ぎ捨てると、空を仰ぎ、声をふりしぼって天に吼えた。

「神などいるものか!」

 ――神などいるものか。

 幾度も胸のうちで叫びながら、時津彦は襲い来る水柱に背を向けて走り出した。
 


ダンディずん6/6 3:13:596122cfoMAVqdadA4U||220
 氾濫が大地をなめ尽くした後、残った時津彦の部隊の兵数は半分になっていた。

流されずに済んだ兵もすでに士気はなく、敗走しているところに目の前から馬淵の兵が攻めてきた。

馬淵は北隣の領主、租宇部氏と組んで密かに兵を山陰に回りこませ、四方を囲んでこの機を待っていたのだ。

作戦とは全く逆の展開に、最早なす術もなかった。
 

こうしてアマノヒラハラの軍は壊滅的な被害を受け、馬淵氏に敗北したのであった。
 

ダンディずん6/6 3:14:356122cfoMAVqdadA4U||383
           *
 
 ――五日も歩けば小呂松にたどり着くだろう。全てはその後だ。

 時津彦は眠りについた。

猫の目のように細い三日月が空にかかり、深い眠りの淵に落ちてゆく時津彦を淡い光で優しく照らしていた。
 

ダンディずん6/6 3:19:246122cfoMAVqdadA4U||799
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あぁ、予定の半分しか話が進まなかった
もっとも当初の予定ではこの「猫頭山」自体が5回程度で終わるはずであったのだが
いまだ一つ目のエピソードを書き続けているというこの不思議
時々うんざりするほど通俗的に思えて筆を下ろしたくもなるのだが、
膨らみ続けるこの世界にもうしばし住んでみるのもなかなか悪くないかもな、とも思ったり
しかし今回は前回以上に説明的でやんなっちゃう

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ダンディずん6/6 3:21:326122cfoMAVqdadA4U||617
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猫頭山・一 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-5393.html
猫頭山・二 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-5437.html
猫頭山・三 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-5458.html
猫頭山・四 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-5540.html

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ダンディずん6/6 3:29:36122cfoMAVqdadA4U||170
あ、岩須一族とか書いてる…設定をその場でテキトーに作ってるのがバレバレ…

博多ダンディ(兄6/6 5:13:426122cfoMAVqdadA4U||633
あ、また・・・タカノヒラハラて なんちゅー間違い

5円玉6/6 16:56:222182cfRUvPz7oIbC.||443
     )\∧/ヽ(_/(_∧/(_∧/(_
  )\/靖国参拝 捏造         (_    火 の な い と こ ろ に
  \         从 従軍慰安婦   /
    ) 強制連行  ∧_∧ ♪     フ   
  )~          (-@∀@)~  扇動 (      放 火 す る
  ゝ歴史教科書 _φ___⊂)        /
 <        /旦/三/ /|  歪曲  >
   )  从   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  |      (           それが朝日クオリティ
  /  軍靴   |. 脳内.ソース .|/  从     フ

博多ダンディ(兄6/6 17:1:376122cfoMAVqdadA4U||875
昨日ウチん前の国道をパレードしてらっしゃったよ、愛国心の強い方たちが
騒音は出しても交通法規は守る そんな好感度高な方々でした
ケーサツいっぱいいたけど

marinoe6/6 17:22:312101cfiYKbBX/gqkY||188
ずん様、こんにちは☆
甲冑ものに、魔法的な世界が展開して、今はやりの
和ファンタジーの先端をいっているのは確かです。
ここまでに至ったかの説明がきちんとある方が
話も膨らんで、どういう世界か理解も深まっていいのではないかな。
書く前に立ち止まらずに先に行きましょう、行ける所まで。
『乙と犬麻呂』のエピソード、とても面白いし、
かぐや姫伝説みたいで、どこら辺に落ち着くのか楽しみですよ☆

博多ダンディ(兄6/6 18:41:436122cfoMAVqdadA4U||540
marinoeさん、こんにちはです
和ファンタジー…なにか斬新な響きです
キラキラとしたファンタジー世界に不慣れな者ゆえちょっとドギマギしてしまいますが、
これも過去という非現実がもたらすイメージが私の想像に働いたおかげでしょう
先を急ぐばかりに削りすぎた感のある文になってしまってますが、
ここらで少し切り替えて、じっくりと内なる世界書庫の一冊をめくっていきたいと思います
いつも感想ありがとうございます なにより一番の励みですよ


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