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5676Sheet1−淡い記憶−みりん6/11 23:31:182191cfkL4H6fruIAw



    『私には夢を持つことさえ許されないのでしょう』

みりん6/11 23:32:42191cfkL4H6fruIAw||707

「初めまして。P−57型、凛々です。今日から宮成家で働くことを許され、ここへ参りました」
「あぁ、十日間のための。父が勝手に頼んだものだ、帰って良い」

 初夏 緑が少しづつ濃くなり、熱を帯びた空気がまとわりつくようになった。
 宮成十夜へ仕えるために訪れたこの屋敷は、妙なくらい広く風通しの良く、涼しげだ。

「帰れだなんて、私困ります。今帰っても、研究所には入れないと思いますし・・。何か、何かのお役にはたてないでしょうか。そう、ただのお話し相手でもいいのです」
 今にも泣き出しそうな顔に情が湧いたのか、首を縦に振った。

みりん6/11 23:32:492191cfkL4H6fruIAw||336

翌日から、生活始まったが一方通行の会話ばかりが日を重ねて、いつまでも素っ気ない主人に不安が募っていった。

「十夜様、私に存在価値はありますか?」
「急に、何だ」 ふうわりとした優しい空気に包まれた昼
「・・私は虚しくなるのです。自分を想えば想うほどに。夢さえも持てずに、決められたプログラムの下で動くだけではないですか」
「それは違う」
「でも」
 言い終わるより早く、話し始めるよりも早く、十夜は口を開いた。

みりん6/11 23:33:102191cfkL4H6fruIAw||449

「だって、お前は夢を背負っているから。自分が夢を持っていなくても、誰かの夢によってつくられたのが『凛々』だから、他人の夢を自分だと想えばいい。存在に不安を感じたら、思い出せばいいんだ。
・・夢に生きるお前が消えるということは、他の人の夢が消えるということ、だから・・もう答えはあるだろう?自分の中に」

「はい・・・」

みりん6/11 23:33:452191cfkL4H6fruIAw||387

 五日目の朝を迎えた。期限まであと丁度半分だ。
−私は十夜様に惹かれている  これは、プログラムを越えた現象だった。
 その夜、私はまたプログラムを越えた。 夢を見た。

 ふと疑問に思った。私が居ても良いと許された時間はなぜ十日間だけなの?
「死ぬんだよ」

「俺の命日になるんだ。余命通りに進めば、の話だが。・・骨の癌なんだ」
受け容れ、なくちゃ いけない。

愛する人が 消える日まで あと二日
また、プログラム以上の現象が起きた。 頭痛。

みりん6/11 23:34:62191cfkL4H6fruIAw||603

あと一日 今日
痛い 痛い 痛い 頭が壊れてしまいそう。
フラッシュバック?淡く蘇る断続的な映像。

「あ゛ッ」

電気が一気に体中を走り、爆発したような そんな感じだった。
目を覚ますと、自分のベッドの上だった。水色の天蓋がやけに眩しい。

みりん6/11 23:34:242191cfkL4H6fruIAw||255

涙が頬を伝う。全てを思い出してしまった。
「十夜、十夜、ねぇどうして?」
「し・・ず・・・く?」

みりん6/11 23:34:402191cfkL4H6fruIAw||763

−本当の名前は遠野雫
 
 私は十夜と恋人同士だった。良家同士の交際だったから、一部では政略結婚めあて、なんて不謹慎な噂も流れたけれど、私は十夜が好きだったから気にしなかった。
そんなとき、記憶を失った。原因は交通事故。

全てが真っ白になった。けれど覚えている言葉『忘れられたくない』

みりん6/11 23:35:02191cfkL4H6fruIAw||856

 信じていたけれど、親は違った。政略結婚、させたかったんだろうね。別々になって、必要性を失った私はいとも簡単にアンドロイドにされた。外見や脳の直接的な中身はそのままに、中を機械にされた。そしてクリーニングされ、真っ白な状態で九日前ここへ来た。

みりん6/11 23:35:152191cfkL4H6fruIAw||525
張りつめていた風船に針をさしてしまった。溢れ出す空気、止まらない。

「忘れないでって」 辛いはずでしょう
「いいんだよ」   今にも崩れてしまいそうな顔 嘘なんてつかないでよ

みりん6/11 23:37:582191cfkL4H6fruIAw||700

 忘れないでって言ってくれたのに、あれほど消えることに怯えていたのに、「忘れて」って言った。 
 覚えてなくちゃ、いけなかった。私はもう「遠野雫」じゃない。もうP−57型『凛々』止まらない。後戻りは出来ないという絶望に心を握りつぶされてしまいそう。
涙は流れるままに。

一番してはいけないことを 犯してしまった。

みりん6/11 23:38:242191cfkL4H6fruIAw||324

「ずっと想ってた。雫が俺を忘れても、それでも好きだから。でも、忘れて欲しかった。俺の知らないところで幸せになってほしかった」

止まらない。想いが、涙が、全てが

「私が覚えてなくちゃいけなかったのに」

「いいから」 よくないよ
「いいから」 どうして? そんなに苦しそうな表情をしているのに

 ふらっと力が抜けたように、彼は倒れた。息が弱く、凄く苦しそうだ。
「もう、初めに戻ろう。俺は向こうに行くから、雫も凛々に戻って。誰も知らない世界に、誰も知らなかった頃の自分に戻って、また出逢おう」

そう言ったあとに、口からは鮮血が溢れた。もう言葉なんていらない。

みりん6/11 23:38:402191cfkL4H6fruIAw||3

「もう苦しくてたまらないんだ。それ以上に、雫の涙が。頼むから笑って」
「・・・っ笑えない。笑えないよ」
「わらって」

涙は止まらなかった。それでも「本当の自分」だから、ぐしゃぐしゃの笑顔をつくった。もう、いい 一緒に真っ白な世界へ・・

 雫の首の裏へ手がのびた。長い髪の下には小さなボタンがひとつ。
息絶えるそのとき、カチッと音がした。

もっと早く出逢って、もっと早く恋して、もっと早く思い出して、もっと早く幸せになりたかった・・・

みりん6/11 23:38:562191cfkL4H6fruIAw||883

雫は凛々に戻った。いや、凛々になった。本来のプログラムの指示にだけ従い、誰一人いない屋敷の中で喋り続ける。


みりん6/11 23:39:242191cfkL4H6fruIAw||563

『コンニチワ』
開け放たれた庭園へ続く大きな窓を兼ねた戸から、さぁ・・・と風が吹いた。
『ハジメマシテ』
『サヨウナラ』
庭園には濃く茂った緑が野放しの状態で残されている。
『アリガトウ』
『トウヤサマ』

みりん6/11 23:39:382191cfkL4H6fruIAw||512



『アイシテル』ほろり と涙が零れた。

そんな気がしたが、掻き消すようにまた柔い風が吹いた・・


みりん6/11 23:43:272191cfkL4H6fruIAw||319


■□アトガキモドキ□■

凄く長いです;; 読んでもらえるかがかなり心配だったり*アー
でもッ考える過程を楽しめたので満足♪満足♪

アンドロイドが実在する世界、今よりも少し未来のお話です。
もしも読んで下さった方がいたならば、感想頂けたら幸いです^^

■オワリ

natsumi6/12 9:50:502202cfzwcCIABQNHg||283
こんにちゎぁヾ(´∀`*)ノ
また登場してみました。
いい加減にしろみたいに扱われてることは知ってますが
なんかまた登場してみました(ぁ
切ない恋ってほんとに切ないと思います。
最愛の人の記憶をなくして
自分の存在価値がなくなって。
アンドロイド・・・もうちょっと医学が進めば
そのうち街はアンドロイドでいっぱいになるかも・・ね?
記憶をなくしたほうもつらいけど
記憶をなくされたほうもつらいんだょね(´Д`;||)ハァ
凛々、いや雫の思いがよく伝わってきました。
それでは、乱文失礼しました。
梅雨ってほんとやだよね。とにかく蒸し暑い!(ぁ

mimoza6/12 13:26:456120cfhTXw.//r5fs||773
すっごい感動ですねっ
なんか、今泣きそうです。。。
切なすぎです(泣
それと、みりん様の文章力の高さに、惚れました(ぉぃ
プロみたい・・・。
また、小説かいていただけたら、うれしいですねっ
(初めましてなのに、変なこと書いてすみません。。。)


みりん6/20 9:25:172191cfJ22eeN3Sn/M||759

うぁ〜;返信遅れて申し訳ない、ごめんよ
−いい加減にしろ。なんて思っとりませんので、安心してね(ぁ

切ない恋って本当に切ない、私もそう思うよ。
楽しみとか、喜びとか、そういう感情が付きまとうもの・・・ってか、幸せなものが恋じゃないのかな?って思うよ。でもこんな考えは幼稚なだけなのかも;

うーん。見解を広めれば広めるほどに複雑な想いとか、理解出来そうだけど、素直に受け容れられず卑屈になっちゃいそうでやだな。(中途半端に知識を得てしまえば。

登場人物から何かを感じてもらえたら、幸せ^^記憶は、忘れてしまえば辛い。
だからそう易々と忘れさせてはくれないんだろうね。

みりん6/20 9:32:292191cfJ22eeN3Sn/M||240

mimozaさん 初めましてッ 返信かなり遅れてしまいまして;;

感動物語をつくり気はさらさら無くて、ほんわか暇なときにキーボードを打ったお話。なので、思い入れとか、そんな大層なものは多く込められてません(ぁ
けれど、『感動』とか『泣きそう』とか読み感じてくださったことを聞くと嬉しく思います^^

文章力なんて、5段階評価の内−100くらいのレベルですよ!?私。
プロだなんて、早々の夢です。アララ

えっと、感想に初とかそんなの関係ありません。
小説/詩は思いついたら気まぐれに書き込むので、気まぐれに見ていただけたらと思います。
感想有り難うございました


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