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5774―サザンライド大冒険日記―第二十七章sIs6/20 17:24:542182cf9tXTCvemDjk
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一章〜十九章のURLは、二十章に載っています。


第二十七章   悔やむは自分の非力

sIs6/20 17:25:22182cf9tXTCvemDjk||748
―――あの日が来るまで、キゼミは本当に平和な町だった。

十字暦992年11月27日午前8時頃、キゼミの町―――――

キゼミの町は、城下町やリノルダムから遥か東の岬にある。
昔から、北国ロツフェル共和国とサンガルドを結ぶ定期船の中継地として栄えていた町で、それなりに活気があった。

sIs6/20 17:25:192182cf9tXTCvemDjk||565

「・・・んっ・・・ふぁあ、もうこんな時間か」

中心街から少し離れた郊外に、キドーの家はあった。
今こそ鈍くささが目立つキドーだが、この頃から寝坊は既に日課と化していた

sIs6/20 17:25:412182cf9tXTCvemDjk||706

キドーには両親がいない。
いや、昔はいたのであろうが、キドーが四歳のときに二人とも死別してしまった。
この年はキドーが九歳だったから、既に五年も経っていたのだ。

「・・・」

一人で黙って朝食を済ませるのは、既に慣れていた。
親が死んですぐの頃はそれこそ苦痛だったが、今となっては当たり前のこと。

sIs6/20 17:26:42182cf9tXTCvemDjk||31

「・・・そろそろリドが来るか・・・早めに支度しなきゃな」

リドというのは、その頃彼の親友だった男の子の名前である。
昔からへっぴり腰で、自分の意見を通すことは凄く苦手だった子だ。

sIs6/20 17:26:182182cf9tXTCvemDjk||42
キゼミの町には、学校が一つしかない。
あまり大きな町ではない為、それでも仕方のないことではあるが。
生徒数もかなり少なく、あまり楽しいところとは言いがたかった場所だ。

sIs6/20 17:26:402182cf9tXTCvemDjk||75

「・・・27÷3は・・・」

その日は初っ端から算数の授業で、キドーは眠たい目を擦りながら問題に取り組んでいた。
勉強は得意ではなかったから、算数の時間ともなれば尚更眠い。
リドは横の席でニヤニヤしながらキドーを見ていた。

(いっつもこんな調子で授業受けてるなら、たまには叩き起こしてみようかな)

キドーの周りは腹黒い人が多い

sIs6/20 17:27:42182cf9tXTCvemDjk||387
キドーがのんびり考え、ノートに「6」とさっきの問題の答えを書く。
数字が逆だと言うことに気づかずに次の問題に取り組もうとしたその時だった。

sIs6/20 17:27:152182cf9tXTCvemDjk||234

     ガラッ


sIs6/20 17:27:392182cf9tXTCvemDjk||681
―――キゼミ初等学校の校則は、日本の学校と大して変わらない。
「廊下は走るな」とか、「授業は真面目に受けよう」とか、そんなのだ。
その校則の中には、授業中は教室から出てはならない、と言うことも書いてある。
つまり、授業中である今、扉が開くのは有り得ない話なのだが・・・。

sIs6/20 17:27:552182cf9tXTCvemDjk||102

「・・・君達は誰だね?」

先生が怪訝そうに聞いた。
しかし、その先生は非常に弱いから、別に大して怖くはない。

sIs6/20 17:28:112182cf9tXTCvemDjk||197
先生が訝しげな表情をしているのにも関わらず、入ってきた人物は先生に向かって突然、

sIs6/20 17:28:212182cf9tXTCvemDjk||926


    ドスッ



sIs6/20 17:29:142182cf9tXTCvemDjk||172
突然、先生を刃物で刺した。
目の前の状況が理解できた途端、聞こえた金切り声。
女子生徒の誰かが上げた悲鳴だ。

「・・・」

生徒達がノートや鉛筆を放り出し、椅子から立って逃げようと散り散りになる。
騒ぎ声が教室を、廊下を、全員の耳を占領する。

sIs6/20 17:29:292182cf9tXTCvemDjk||34

「う・・・ガキだ・・・・・・いと分・・・いのか・・・」

入ってきた二人のうち、一人がボソボソと小声で言う。
そしてもう一人が同意したのかどうか、さっき先生を殺した剣を生徒に向かって・・・、

sIs6/20 17:29:412182cf9tXTCvemDjk||374


ドスッ  ザシュッ  ドシャァッ



sIs6/20 17:30:02182cf9tXTCvemDjk||501
男女構わず、手の届く生徒から斬り殺していく。
手首を斬られる生徒、膝から下を斬られる生徒、首を斬られて即死の生徒・・・。
木造の教室が、たちまち濁った赤に染まっていく。

sIs6/20 17:30:162182cf9tXTCvemDjk||70

「う、うわぁぁぁ・・・」

リドやキドーも逃げようとする。
しかしリドは、さっき呟いた方の男に捕まえられてしまう。

sIs6/20 17:30:562182cf9tXTCvemDjk||466

「・・・コイツでいいか・・・」

意味が分からないことを言う。
キドーはちっとも理解できていなかったが、親友のピンチだと言うことだけは分かった。

「リドを離せっ!」

そう言いながら突っ込んでいくキドーを、男はいとも簡単に蹴り飛ばす。
キドーの軽い体は教室の端まで吹っ飛んだ。

「・・・がっ・・・」

キドーは背中を強く打ち、そのまま動かなくなる。
脊髄に直に衝撃を受けた為、神経や筋肉が反応しないのだ。

sIs6/20 17:31:112182cf9tXTCvemDjk||890

「目・・・キが見・・・ぞ。・・・ル、急・・・らねば」

またさっきのボソボソ声。
それと共に止まった剣の鋭い音。

sIs6/20 17:31:292182cf9tXTCvemDjk||214
―――キドーが次に目を開けたときには、謎の二人も、リドも消えていた。
教室は生徒の死体で埋まっている。さっきまで茶色だった木材が、真っ赤に染まっている。
どうやら、キドー以外に助かった生徒はいないようだ。

「・・・」

親友がさらわれ、沢山の級友が殺されたショックと悲しみで、キドーはしばらく動けなかった。
・・・算数の問題を平和に解いていた時間が、もう百年以上も前のように思える。

sIs6/20 17:31:492182cf9tXTCvemDjk||405
しかし、動けない時間もそう長くはなかった。
中心街のほうで、凄く大きな音が聞こえたからだ。

sIs6/20 17:32:22182cf9tXTCvemDjk||616


ドゴオオオォォォォン



sIs6/20 17:32:222182cf9tXTCvemDjk||219
誰が聞いてもそれは間違いなく爆発音。
後から聞こえてくる人の悲鳴と、何かが燃え始める音がキドーの心を支配する。

―――逃げなきゃ・・・。

彼の出来る、たった一つの助かる方法だった。
生徒達や先生を弔うことは無理だが、今はそんなことを言っている暇などない。
キドーはすぐに走り始めた。

sIs6/20 17:32:382182cf9tXTCvemDjk||902
学校を出て、裏町の通りを巧みに駆け抜け、そして大通りに出て・・・。
通りに軒を連ねる店が、さながら太陽の表面のように燃え盛っている。

「・・・うぅっ・・・」

悲しみと苦しみを必死にこらえ、キドーは走る。
道に倒れているのは、無残に切り刻まれた人の死体。
何も出来ない自分を悔しく思ったが、それを切り抜けて走り続けた。

sIs6/20 17:32:522182cf9tXTCvemDjk||549
―――やがて、町から少し離れた林の手前で、キドーはやっと立ち止まった。
燃えた家の灰が、空気と一緒に肺に入り、呼吸を苦しくさせている。

「・・・はぁっ、はぁっ、・・・はぁっ」

やっと新鮮な酸素を吸い、一息つくキドー。
後方を見れば、キゼミの町の辺りが真っ赤に燃え上がっている。

sIs6/20 17:33:112182cf9tXTCvemDjk||744

「・・・く、苦しい・・・」

そう言って静かにへたり込む。
二酸化炭素に侵された肺に、酸素をたっぷりと送り込んでやる。
燃えるように熱かった肺の中が、少しずつ涼んでいく。
全てが一遍にキドーの思考を襲った為、状況を理解するのに少し時間がかかった。

sIs6/20 17:33:232182cf9tXTCvemDjk||396
今日は992年11月27日だということ。
つい先刻、キゼミの町は何者かによって奇襲され、炎上したこと。
彼の親友、リドが謎の男にさらわれたこと。
キゼミの町民で、自分以外に助かった者はいないこと。

sIs6/20 17:34:62182cf9tXTCvemDjk||192
時間が経つにつれて、少しずつ事実が頭に入り込む。
それは、どれも苦しく辛い事実ばかりで・・・。

しかし、感情に浸る暇もなく、キドーは立ち上がった。

「サザンライド城へ・・・行かないと・・・」

今日キゼミで起こった事を全て国王に知らせなければならない。
キゼミ大虐殺から逃れた自分だけが出来る、たった一つのこと。

sIs6/20 17:34:142182cf9tXTCvemDjk||268
そして、キゼミ大虐殺でたった一人助かった少年は、数日後に王の下へ辿り着いたのだった。

sIs6/20 17:34:482182cf9tXTCvemDjk||118
〜作者の独り言〜
いつもながら話が飛躍しすぎに見えるよ、自分の小説(´Д`;)

キドーの思い出回想シーンで埋め尽くした二十七章。
舞台は8年前のキゼミです。
ここで出てきた人物は、後々のストーリーに非常に関係してきます。
だから、覚えていると今後の展開が結構楽しめます。

この頃のキドーは馬鹿でした。
本文中にある通り、「9」を「6」と書き間違える程ですからね(笑
27÷3は理解できていたのでしょうか・・・。
次回からは十字暦1000年に戻ります。

ピート6/20 23:58:242182cfMsAhBDZZF9I||38
わーい、予想的中〜♪(ぁ
やっぱりキドーの故郷でしたね。
しかし・・・随分と辛い目にあったようで。
それでも少々鈍くさいが元気に生きているキドー君は強いのですね。
2つ疑問
なぜ謎の男A、Bは幼いキドー君を蹴り飛ばした後、切り殺さなかったのでしょうか。
あとなぜ切り殺さずに蹴り飛ばしたんでしょうか。
まぁキドー君が死んでたらこの物語ないですけどね。

sIs6/21 15:52:542182cf9tXTCvemDjk||792
的中されました。まぁ、当たり前といえば当たり前か(笑
キドー君は実は(精神的に)強いです。尊敬するぐらいに。

疑問回答@
「目・・・キが見・・・ぞ。・・・ル、急・・・らねば」

の言葉より、恐らく「目当てのガキが見つかった」から、殺す必要はなかったのでしょう。
ちなみに爆発を起こした人間と教室を襲った人間は別人です。

疑問回答A
リドを掴み上げていた男は剣を持っていなかったからです(笑


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