6917 | 午睡 | 壱号 | 10/17 18:4:28 | 6127cfjjkaSD0enTA |
よーしパパ新スレ立てちゃうぞー(ぇ というわけで、『午睡』書いていきたいと思います。 幸福論も午睡も、「時空転移者」という壱号のオリジナル小説です。 スタート→→午睡→→→→→…………→→幸福論、となります。 いきなり時間軸が開きまくってますが気にしないで下さい。 キャラは サーナ 女。某国の司祭長。黒髪青紫目。 ラスク 男。某国の貧民。黒髪青紫目。 となります。 |
壱号 | 10/17 18:5:11 | 6127cfjjkaSD0enTA||602 | ||
「只今もどりましたー陛下」 荷物を持ってないほうの手でドアを器用に開ける。 家の中はしんとしている。ドアへ風が吹き抜ける。秋の午後のほんの少しひやりとした風。 「陛下? 戻りましたよ?」 風の音がまた聞こえる。開け放されたドアをリビングへと入り、テーブルに紙袋を置く。 中身を整理しながらも、視線は家の中を探っている。 「どっかいったのかなぁ?」 テラスに目を移すと、夕暮れ時の薄い橙色に染まった石の床に、不自然な漆黒のかけらが見える。 足音を潜めて、いつでも攻撃できるように精神を集中させて、テラスに近寄る。 |
壱号 | 10/17 18:5:52 | 6127cfjjkaSD0enTA||454 | ||
黒いかけらは、彼の探し人の髪だった。 彼女は、やわらかいソファほどの大きさのクッションに上半身を預けて、ゆったりと眠りに身をゆだねていた。 彼は警戒を解いて、起こさないようにそっと近づく。 自分を抱きしめるように両腕とか、日に染まった白い肌とか、いつもの怒った顔よりぐっと安らいだ表情とか、 そんなものが、心に染みて、このまま自分の心の時が止まればいいなんて、柄にもなく思った。 |
壱号 | 10/17 18:6:10 | 6127cfjjkaSD0enTA||429 | ||
「(この人は、外見だってそりゃきれいだけど、やっぱり心がきれいなんだ。 こんなふうに何にも警戒せずに、安らいでるこの人は、そこらへんの女よりずっときれいだ。 心を開いてるときのこの人は、相手に気持ちを何にも隠さずに伝えてくる。そのときが一番輝いてる)」 触ったりなんかしたらそれこそ烈火のように怒り狂うに違いない。そんなときの瞳の輝きでさえ、誰もが息を呑む。 なんだかおかしくなってきて、顔がにやけてくる。 |
壱号 | 10/17 18:6:28 | 6127cfjjkaSD0enTA||303 | ||
あなたは美しい。 私の気高き女王。 私の、孤独な愛しき娘。 クッションの傍に置かれた、飲みかけのグラスを取って、夕焼けに透かす。 彼女が美を愛でる時いつも使っているお気に入りのグラス、そして薄紫の果実酒。 「幸せそうで、良かった」 彼女に背を向ける。二階に肩掛けを取りに行かなければ。そろそろ夜は冷えてくる時期だ。 |
壱号 | 10/17 18:6:45 | 6127cfjjkaSD0enTA||642 | ||
彼が肩掛けを持って戻ると、彼女はゆっくりと身じろぎして、目を開けた。 「よく眠ってましたね」 「・・・ラスク?」 青紫の瞳が、まだ寝ぼけたように潤みながら見つめてくる。 「そろそろ冷えてきますよ。・・・お酒のお代わりは?」 「いる」 きょろきょろと床を見渡している。 「・・・グラスなら、片付けましたよ。ぶつかりでもしたら、危ないですから」 「・・・・・・」 何か言いたげに見返してくる。軽く微笑んで見つめ返すと、決まり悪そうに目線をそらした。 |
壱号 | 10/17 18:7:8 | 6127cfjjkaSD0enTA||772 | ||
「・・・二つ持って来い」 「え?」 「・・・グラス二つだ。お前も飲め!」 今までに見せたこともない種類の癇癪に、彼は急いで台所に向かい、彼女用のグラスと、自分用のマグカップを引っつかみ、 果実酒のボトルと共にトレイに載せて戻った。 彼女は相変わらず赤くなっていて、彼が声をかけた途端、彼の背中を押してベランダに出、並んで座らせた。 トレイから自分のグラスを奪い、彼に向かって突き出す。酌をしろという事らしい。 いつもだったら気にするグラスとマグカップの相性の悪さにも、全く気がいっていないようだ。 |
壱号 | 10/17 18:7:23 | 6127cfjjkaSD0enTA||439 | ||
不審に思いつつ酒を注ぐと、一気に飲み干してしまう。こんなところも彼女らしくない。 「もう一杯」 「はぁ」 彼女は酒に強いから、酔うようなことはないだろうが、体に悪いことは間違いない。弱い酒ではまったくないし。 そそぐと、今度はそっぽを向いて、ちびちび飲み始めた。 |
壱号 | 10/20 20:6:42 | 6127cfjjkaSD0enTA||803 | ||
おかしい。訳がわからない。 何か気に触るようなことをした覚えはないが。 「・・・どうかしましたか?」 「・・・っ!」 そっと声をかけると、びくりと肩を震わせた。 「・・・・・・名前で呼べ」 「は?」 「私を名前で呼ぶことを許可する! 今後私のことはサーナでいい!」 「はぁ?どうしたんですかいきなり」 「何度も言わせるな! お前は馬鹿か!」 |
壱号 | 10/20 20:6:59 | 6127cfjjkaSD0enTA||335 | ||
あんまりいきなりなので、当然彼は硬直した。 彼女は今まで彼女の父を殺した(不可抗力)彼を、執政者、聖職者、その他諸々の地位でもって正式に処刑しようと、百リンク近くしのぎを削ってきた。 それがいきなり、こんな馴れ合うようなことを。 「もしかして、オレのこと許「自惚れるな! 国に帰れば、必ず処刑する!」 何がなんだか。やっぱり酔ってるのか? 酔うほど飲むようなことはしないはずだが。 「ただ、私は・・・悪魔ではないからな。処刑されるまでのしばらくは、それぐらいの優遇はさせてやらんでもない。 勘違いするな! 警護や私の手伝いなど、仕事は今まで以上励んでもらう!」 |
壱号 | 10/20 20:7:17 | 6127cfjjkaSD0enTA||554 | ||
本当に、顔から火が出るぐらいに真っ赤になって、怒っているのか照れているのか。 「何を間抜けな顔をしている! 喜べ! お前の身分では通常夢にも見れぬような待遇だぞ!」 「わ、わかりました、わかりました陛下、とにかく落ち着いて」 「陛下ではない!!」 これ以上怒らせたら暴れ狂うに決まっている。急いで平伏。 「ハイ、陛下・・・じゃなくて、サーナ様!」 ほとんど使ったことのないその名を、そっと呟く。 |
壱号 | 10/20 20:7:32 | 6127cfjjkaSD0enTA||742 | ||
沈黙の後、本当に微かに、彼女が返事をする。 「・・・ラスク」 「はい」 「・・・・・・『竜の指し示すまま、我らは海を渡るであろう。戻るな、そして信じ、疑うな』・・・お前も故郷の土を踏みたかろう」 歌うように神魂集の言葉を吟じ、彼女は彼のグラスを取り、差し出した。 「取れ。私はお前を裏切らない。誓え、私を守ると、もう一度」 声は微かに震えている。何を恐れている? 彼は心の中で問うた。 顔を上げ、グラスを受け取り、彼女を見つめる。 |
壱号 | 10/20 20:7:46 | 6127cfjjkaSD0enTA||70 | ||
「私の忠誠は、貴方の物です。 あの民衆たちの前で宣誓された時から、ずっと、これからも」 「・・・『誓え。魂在る限り』」 恐れる声に、しっかりと返す。 「『誓う。血の絶えるまで』」 二人で、酒を口に含む。味が感じられない。喉がひりつく。 『黄昏と午睡は、二人に何をもたらしたか。』 |
壱号 | 10/20 20:11:0 | 6127cfjjkaSD0enTA||72 | ||
はい、午睡終! おつかれさまでしたー(おつかれさまでしたー)。 ここ重要なはずなんだけど、前後がないとさっぱりだね!しってる! 次は長めのシリーズが続きます。 サーナの孫あたりかな!娘生きてるけどね!若いし! ちょっとあっち系だし暗いけどキニシナイ!(AA略) |
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