6950 | 『空白』 | 壱号 | 10/23 17:55:13 | 6127cfjjkaSD0enTA |
新スレです〜。 午睡と幸福論の中間にあたります。 って言っても、主人公+主な仲間たちのほとんどが初登場です。 主人公リオと、義理の息子ユゥリ、二人の友人アイスとウィルの視点をそれぞれ書いていこうと思っています。 今回はリオ視点で、ある事件の数日後から始めていきます。 ちょっとbl混じってますが、できるだけ感じさせないように書いていきます。 やばいな、と思ったら、スルーしてくださいね。 リオ 男 17歳 背中に赤い羽 黒髪紫目 ちなみに息子は20過ぎ(藁 |
壱号 | 10/23 17:56:40 | 6127cfjjkaSD0enTA||929 | ||
目を開けるのさえ億劫で、意識が目覚めているとあの時の事ばかり考えて、眠ってしまいたくて、眠ると必ず夢をみる。 いつもあいつは俺を見下ろして、あの時と同じ表情、声色で自分を責める。 そして消える。動けない俺を嘲笑うかのようにゆっくりと。 そして目が覚めて、自分が泣いていることに気付く。 また思い出して、眠りに落ちて、また目覚める。なんて怠惰で無気力な同道巡り。 |
壱号 | 10/23 17:56:59 | 6127cfjjkaSD0enTA||81 | ||
体と心の軋みが(一応)取れて、起き上がれるようになった頃、着替えようと思って、服を脱いで、気付いた。 体中の噛み痕、青あざ、引っかき傷。あいつが付けた。 理由はわからない。わかりたくない。ただでさえ大事な息子にめちゃくちゃにされたばっかりだ。考えるのが億劫だ。 |
壱号 | 10/28 16:17:6 | 6127cfjjkaSD0enTA||582 | ||
またいくらか時が過ぎて、大分心と体が落ち着いてきた。 窓を全部開けて、風を入れる。朝の光がまぶしい。 「お兄さん、アンタにお客だよ」 ドアを開けて、騒々しい声が入ってくる。ユゥリに俺の世話を頼まれた宿屋の娘で、サラっていう、ちょっとませた女の子だ。 「食堂で待ってるよ。キレイな女の人だったけど、彼女か何か?」 「そういうオハナシは大きくなったらね」 「なによぉ〜う」 サラのふくれっつらを軽く笑いながら、横を通り過ぎて部屋を出る。 良かった。このぐらいの軽口を叩く力は戻ってる。 |
壱号 | 10/28 16:17:25 | 6127cfjjkaSD0enTA||806 | ||
食堂に向かうと、見知った顔が手を振ってきた。 「リー――オー――ぉ、こっちこっち。久しぶり」 「ウィル、久しぶりじゃないか。よくココがわかったな。 他の奴には会ったか? 俺はユゥリと別れたばっかだけど」 「―――ほら、とりあえず座って座って! なんか食べるもの頼んでいい? あたし跳んできたばっかりだから小腹が空いてるのん」 片手を挙げて、厨房へ大声でオーダーする。その姿にいつもと違いはない。 「リオ、なんかおすすめある? あたしシュクシュク系のもの食べたぁい」 「却下。あれ絶対臭いって」 「あれがいいのよあれがぁ〜。臭えば臭うほど味が出る☆」 「げぇー、勘弁してくれぇ」 |
壱号 | 10/28 16:17:39 | 6127cfjjkaSD0enTA||407 | ||
話してる間に、サラがやたらでかいマグを二つ持ってテーブルへ来た。 「お姫さん、この村特産の果物のジュースだよ! キンキンに冷えてて甘いよぅ! 栄養もたっぷりだしね。 最近お兄さんってば体壊してね。今はこんなに明るいけど、一時はすごかったんだから」 「サラ!」 俺が脅すような低い声を出すと、ひゃっと飛び上がって厨房へ逃げていく。 |
壱号 | 10/28 16:17:56 | 6127cfjjkaSD0enTA||644 | ||
「ウィル、あいつのいうこと気にしないで良いからな。そんな体調悪くなったわけじゃないし」 俺が軽く言うと、真剣な顔でこっちを見つめてきた。 「―――リオ・・・無理しないで、良いんだからね?」 「どうした? 今日はやけに心配性だな。何かあったのか?」 俺が言うのに首を振って、こっちを上目使いに見上げてきた。 「隠さないで。ほんとは、あたしが口出しする事じゃないのかもしれないけど、心配なの」 ぴんときた。 「知ってるのか?」 なるべく優しく尋ねる。 目をそらして、こくりと頷く。 |
壱号 | 10/28 16:18:46 | 6127cfjjkaSD0enTA||848 | ||
「・・・なるほど。―――誰から聞いた?」 「―――何日か前ね、アイスがユゥリに会ったんだって。で、話聞いて、それで、あたしのところに相談しにきた。 今の自分には冷静な判断は出来ないからって」 そりゃそうだ。あいつの教義じゃユゥリのやったことは神に裁かれる類いの罪だからなぁ。 「あたし、何があったか知りたいし、リオのこと心配で、何かできることがあったら、って思ったの。 ユゥリのこともそりゃ心配だけど、アイスと話したときはやばそうな感じはしなかったらしいから」 じっとこちらを見つめてくる。ほんとに俺を心配してくれてる。 「・・・ありがとう。俺も、あんまり今回のこと、自分で整理できてないんだ」 |
壱号 | 10/28 16:19:29 | 6127cfjjkaSD0enTA||390 | ||
これはほんとの事だ。今は落ち着いてるだけ。辛いことは考えたくない。自分でわかってる。 「実感湧かないっていうか、あいつのやったこと、信じられないんだ。 育て方、間違ってたかな」 「そうじゃないよ! リオは悪くないよ! ユゥリも悪くない! ただ、すれ違っちゃっただけ! お互い、相手が好きでしょ? どう好きかは違っても、傷つけあいたいなんて思ってないでしょ?」 顔を真っ赤にして、ウィルはかすれた声を出した。 「仲良くしてたいの。皆で集まったり出来ない分、それぞれが皆と仲良しでいたいの。 間違えたなんて言わないで! お父さんでしょう? ユゥリのたった一人の、自分より大事な人でしょう?」 |
壱号 | 10/28 16:20:16 | 6127cfjjkaSD0enTA||481 | ||
めそめそと泣くようなことはせず、気丈にこっちを見つめて、涙をこらえている。 お前はこんなに強いのに、俺は弱いから。 お前の期待にこたえられない。たった一人の家族も傷つけて、仲間にこんなに気を使わせて。 「・・・お前の言ってること、良くわかる。でも、今は無理だ。 しばらく独りでいたい。そうしたら、もっとましな俺になれると思う」 よしよしと頭を撫でてやる。 自分の情けなさに嫌気が差すけど、俺は今これ以上は何もできない。 「あたしこそ、ごめん・・・リオのために何かしてあげたいって思ってるのに、こんなふうに邪魔しちゃって」 |
壱号 | 10/28 16:20:33 | 6127cfjjkaSD0enTA||451 | ||
正直アイスが羨ましい。ウィルは本当にいい奴だ。こいつの強さが俺にもあったらと思わずにはいられない。 「しばらくここにいる? それとも、どこかへ行くの?」 わずかに潤んだ目で、それでも笑ってこちらに話し掛けてくる。 俺も空々しくない程度に笑顔で返す。 「適当に独りになれる場所を探すさ。古代遺跡にでも行ってみるかな」 「やだ、文化財盗んでこないでよ?」 「トレジャーハンターだからなぁ、俺。どうしよっかな」 「もー、リオったらぁ〜」 「ははは」 |
壱号 | 10/29 15:39:30 | 6127cfjjkaSD0enTA||403 | ||
ウィルの明るさは時に場違いなくらいまで盛り上がるけど、今はそれに救われた。 すぐにとは行かないまでも、きっと恩は返せるだろう。 「じゃあ、あたしはこの世界をしばらくぶらぶらしてるから。何か手伝えることがあったら言ってね」 ウィルは輝くような笑顔で、宿を去っていった。 「結局あの人何なの?」 「親友かな。俺にはもったいないくらいの」 宿の前で一緒に見送るサラの問いに答えを返す。 頭を撫でてやると、もう子供じゃないのよ、と少し拗ねたように見返してきた。 いやいや、お前はまだまだ子供さ。親の後ろについていく、可愛いひよこさ。 「さ、俺もそろそろ行こうかな」 |
壱号 | 10/29 15:39:53 | 6127cfjjkaSD0enTA||638 | ||
「へ? どこへ? 体はもういいの?」 「心配すんな。これでも青春真っ盛りの青少年だからな」 「言ってることが親父臭いね。 代金は相部屋だった人からもらってるよ。おつりが払えないぐらいの大金をね。 お兄さんたちって、正体不明の代名詞みたい」 「なんじゃそりゃ」 デコピンを一発。ちょっとつつくぐらいの軽い奴なのに、派手に痛がる。ほらみろ、そんなことする奴はまだまだ子供だ。 「俺の知り合いが来たら『リオは独りになりにいきました』っつっといてくれ。 俺は武者修行に行ってくる」 |
壱号 | 10/29 15:40:15 | 6127cfjjkaSD0enTA||59 | ||
「何言ってんだか。せめて明日まで待てない? お母さんたち心配してたし、お別れパーティーやろうとか言い出すよ」 「善は急げってな。・・・いい子はきっぱり諦めろ。ものすげぇお土産話をたっぷり持ってきてやるよ」 「約束よぅ」 「はいはい。そんなに時間はかからないと思う。一ヶ月ぐらいで戻ってくるさ」 俺はサラに背を向けて、森の中へ歩き出す。 「今度はお友達もおいでよぅ! 歓迎するからね!」 「ありがとよ!」 サラの可愛いキンキン声が、だんだん遠くなる。 さぁ、どこへ行こうか? 場所はお前が決めればいい。 俺はエゼルガに囁いた。 |
壱号 | 10/29 15:46:17 | 6127cfjjkaSD0enTA||723 | ||
はい、空白一時終了です。 ウィルとアイスはリオとユゥリのお友達です。 ウィルは茶髪赤目の元気な手品師、アイスは銀髪碧目の聖職者見習の少年です。 エゼルガというのはリオの中にある武器のことです。 鋏の形をしたエネルギーの塊で、刃に触れたものを切断することが出来ます。 リオたちがテレポートするのに必要なアイテムです。 はい、補足説明終わり!(藁 |
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