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7246どこかで誰かが笑ってるスワロー11/28 19:3:256111cfyil7c1Ws9M.


それは一瞬にして永遠の出来事だった。

     グチャリ

空気を通さずに直接響いた不快な音。

辺りは血の海で、

私はそれを高みから、ただ傍観していた。

目の前に見知らぬ男が泡を吹いている。

赤い鮮血と、白く醜い唾液と、肉。

さらにその下に誰か倒れている。

見えるのは、伸びやかな若い足だけ。

    なぜだろう?

両手が真っ赤だ。

高いビルディングの合間から、切り取られた空が見えた。


スワロー11/28 19:5:576111cfyil7c1Ws9M.||953

脂汗をかいたサラリーマン風の通行人が、

携帯電話を片手に何か叫んでいる。

しかし私の耳には何を言っているか聞き取れない。

痙攣していた男は、通行人が呼んだ救急車も待たずに息絶えた。

その直後に、到着した救急隊員によって遺体は寄せられ、

下敷きになっている女が顔を出す。

    ・・・・・私だ。

ふと見ると、真正面にゆらりと白い男が立ち上がる。

スワロー11/28 19:6:496111cfyil7c1Ws9M.||866

空が割れ、見えない光が男を包んだ。

淡く発光する何者かに手を引かれ、

男は高く高く舞い上がり、

厳かな天国の鐘の音が、迷える迷惑な子羊を向かい入れた。

――――――――――――――血まみれの私を地上に残して。


スワロー11/28 19:7:216111cfyil7c1Ws9M.||663

「まだ若いな、可哀相に・・・」

「自殺するなら、他の人間巻き込むなよな・・・!」

不運な私の遺体は救急車で運ばれていった。

     どうしよう。

   わたし、死んじゃった?

橘 里香18年と二ヶ月と4日。

本日を持ちまして、人間やめて、幽霊はじめました。

スワロー11/28 19:9:486111cfyil7c1Ws9M.||499

自殺だから、パトカーも来て、テレビ局も来て、野次馬もいっぱい来て、

あたしはその間、実体のないひざを抱いて体育座りしてた。

誰の目にも留まらないから、

時々死体のラインに沿って、寝そべったりしながら考えていた。

眠って起きたら、もう一度同じ朝が来るのじゃないかと・・・

よし寝る。

起きる。

   んん? まだこいつら居るぞ?

もう一度ぐっすり寝る。

起きる。

時計を見る。進んでない。

わたしの時計は、飛び降りたアイツに潰された時から壊れたままのようだ。


スワロー11/28 19:10:386111cfyil7c1Ws9M.||869



うぅん――――違う、わたしの時間が止まってるのだ。

      「いやあああああああああああああああぁぁぁ」



スワロー11/28 19:11:206111cfyil7c1Ws9M.||107

髪が逆立つような絶叫とともに、世界がめまぐるしく動き出す。

流れ星みたいに人間たちが過去の影を引きずって、早送りに通り過ぎてゆく。

日が落ち、また昇り、また沈み、

太陽は変わらずに、また世界を照らし、幾度目かの朝が来た。

わたしは悲鳴をあげるのをパタリとやめた。

声を上げても無駄だと悟ったから。

      ウチに帰ろう。

スワロー11/28 19:12:246111cfyil7c1Ws9M.||793

改札口で、定期を出して電車に乗って家路に着く。

体がなくても、座席には座れるようだ・・・思い込みの力か。

玄関に喪中のたて看板がある。

      ただいま〜

額から血を流したまま、元気よく扉を開けた。

だれもいない。

      どこにいったんだろう・・・

ひどく悲しくなってしまった。

みんなのバカ。

スワロー11/28 19:15:596111cfyil7c1Ws9M.||157

恨んでやる。あの男の家族も呪ってやる。どうやるかは知らないけど、祟り殺してやる。

なぜ私だけがこんな目に遭わなきゃならないんだ。

わたしが死んだ今も、当たり前に生きて、誰かが笑っている。

ガタガタと身を震わせて、憎しみだけが心に灯る。

すると何処からか、わたしを呼ぶ声がする。

スワロー11/28 19:17:516111cfyil7c1Ws9M.||184

      なんだろう・・・

グラリと仰向けに首をまわして、眩暈に瞼を閉じる。

目を開けると、湿った球体が見える。

    線香くさっっ!!!

坊さんの後頭部から逃げ出そうと振り返ると、黒ずくめの親戚ご一行が手を合わせている。

とっさに、わたしは状況を察した。これは、私の葬式だ。

スワロー11/28 19:18:226111cfyil7c1Ws9M.||571

      冗談じゃない。あたしはこれから立派な悪霊に・・・

目の前に、遺骨がある。

      私の体、もう焼かれてるし!本人の許可とか要らないわけ?

「南無妙法蓮華経・・・」

クソ坊主が読み上げるたびに、体が1mm上昇する。

スワロー11/28 19:19:126111cfyil7c1Ws9M.||620

お母さんが泣いている。

珍しく、お父さんも泣いている。

2つ上の姉が、唇をかんで泣いている。

見たことないおじさんも泣いている。

生まれたばかりのハトコも泣いている。

私がもらい泣きする。

       だめだ。成仏しちゃうよ〜〜〜

全員の祈りの力が、天国の扉をこじ開けようとしてる。

逃げようにも、そこから動けない。

スワロー11/28 19:21:436111cfyil7c1Ws9M.||248

式場の扉にかじりついていると、扉の向こうからもう一人、私の為に泣いている。

女の人だ。

扉を透して見て、私はこの人が何者か直感した。

       あの男の人の・・・・

あいつにも家族が居る。

死んだ者だけでなく、残された人にとっても、突然の死はいつも理不尽なのだ。

そう思った。

なぜか分からないが、その瞬間に、

すべての説明のない出来事を許していた。


スワロー11/28 19:22:136111cfyil7c1Ws9M.||89

私はもうすぐ、自分じゃない魂そのものに浄化されていてしまうだろう。

       その前に、みんなの為に祈っておこうか・・・

わたしは、自身の葬式で、家族の為に手を合わせた。

       ありがとう、お母さん。
   
       ありがとう、お父さん。

       怒らないで、お姉ちゃん。

       長生きしろよ、おっさん。

       元気で育ってね、チビっ子。
 
       さろうなら、もう、声もかけられないけど、みんなが結構好きだったみたい。


スワロー11/28 19:23:446111cfyil7c1Ws9M.||761

体を透かして、絨毯の細かな織り模様が見える。時間がない。

      お姉さん、あいつに会ったら、あなたのことを伝えておきます。

天井を越えて、私は空へ昇る。

何処に居ても安らぎはあるのだと知ると、自然と笑みが浮かぶものだ。

私のために、天国の鐘が鳴った。


     ゴーーーーーン  ゴーーーーーン ゴーーーーーン


仏教って、かっこ悪い。
寺の鐘一〇八つで、私は天に召されました。おしまい。


スワロー11/28 19:29:416111cfyil7c1Ws9M.||966
†††あとがき†††

短編ですが、初めて書き上げることができました。
『どこかで誰かが笑ってる』は、
冒頭の部分で、主人公を殺人犯っぽく書きたいと思って作りました。
ちゃんと思うように描けているでしょうか?

間違ってるところや、ご意見ありましたら、一言お願いします。
(言葉遣いが間違ってる場合は、本気で覚え違ってることあるので。)

その前に、読んでくれる人がいるのかどうか不安です・・・

刄Kンマ11/28 19:34:212201cfSDdT16eXgeQ||427
感動しました・・・;;
良いお話ですね^^

ひとつ間違い(?)を見つけてしまいました^^;
「さろうなら」ではなく、「さようなら」なのでしょうね^^

霄惟11/28 19:34:472102cfIlw0yDIYzxc||548
こんばんわ、スワローさま
最初から最後まで、監視しておりました(笑)
切なく思えるのですが、どことなく面白い部分もあり、楽しかったですw
言葉使いは間違っていないと思います
(私自体がよく分かっていないだけのですが)

次回も書くのであれば・・・と言うよりも書いてほしいのですが(ダマレ
その時もまた、楽しみにしています♪

レスク11/28 21:38:372228cfWBNnsqlh37I||147
良い話で設定もナカナカない設定で感動です。
これからも作品に手をかけていってほしいと思います。
次回作も楽しみにしていますんでよろしくお願いします。

スワロー11/29 7:27:386111cfyil7c1Ws9M.||970

  刄Kンマ剽lへ
感想がいただけるなんて、感激です!
本当だ「さろうなら」になってます(><;
えぇーと、主人公が泣いてて、鼻がグズグズだったと思い込んでください(催眠術)
嘘です、今思いついた言い訳です、ごめんなさい!

   ×さろうさら ○さようなら  でございます。

もっと気合入れますね。教えてもらえて、助かりました^^
ちなみに、もう一つ自分で見つちゃったり… よかったら、探してみてください。
これが本当の、間違い探しですね(オイッ

スワロー11/29 7:28:406111cfyil7c1Ws9M.||486
 霄惟さま、こんばんは。
監視されていたとは知らなかったです(笑)
私もこっそり、貴女様の詩を拝見しております。
面白いと言ってもらえて、恥ずかしいやら、嬉しいやら、嬉しいやらです(*ノノ)

読んでくれる人がいると、こんなに励みになるって知りませんでした♪
本を読むのが遅くて、招じて語彙が少なく、人より書くのも遅くなるので、
いつ完成するか分かりませんが、諦めないで頑張ってみます。

スワロー11/29 7:29:116111cfyil7c1Ws9M.||474
  レスク様へ
感想ありがとうございます!!
つたない小説を、読んでいただけただけでも嬉しいのに、
ナカナカない設定だなんて、お褒めに預かり、光栄ですっ(*^-^*)
今後も皆さんに読んでもらえるように、コツコツ書いていこうと思います。

銀月11/30 18:23:372182cfLMvpixotkc6||432
スワローさん、こんばんは☆
先日のイベントでお見かけして以来、接触する機会を狙っておりました(危
こんなにすぐやって来るとは…。

銀月11/30 18:23:512182cfLMvpixotkc6||320
読みやすく、ストーリーが独特で面白かったですv
心にすっと文章が入り込んできたので、一気に読んでしまいました。
>高いビルディングの合間から、切り取られた空が見えた。
この一文に心惹かれました(*ノノ)

長文が書き込めないようで、分割でのレス申し訳ありません(〃´ `)ゞ

スワロー11/30 23:22:16111cfyil7c1Ws9M.||365
 銀月さま、こんばんわっ☆
また、お会いできてうれしい限りです。
無茶なストーリーで、さぞ、読みにくかったでしょうに・・・
もっと他の人を見習って、
長くても読みやすく書けるよう、ただ今、勉強中でございます。

実は例の一文は、下手なくせにちょっとカッコつけてみたのです(*ノノ)
褒められるなんて・・・書いといてよかったな〜、えへへへっ(キモイ
イベント共々、どうも、ありがとうございましたm(__)m



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