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725小説もどき「escape:7」loveless6/5 21:9:172209cfpc6LVK63c3g
こんばんわ。
久し振りに夜に投稿です。
ラッキーセヴンな第七話。
時間と都合と貴方が許しましたなら、どうぞごゆるりお読みくださいませw

過去ログ
http://chibifantasy.com/bbs/t12-463.html :1 始めの始まり
http://chibifantasy.com/bbs/t12-507.html :2 強敵との遭遇
http://chibifantasy.com/bbs/t12-593.html :3 蝶々刀の活躍
http://chibifantasy.com/bbs/t12-626.html :4 魔人との邂逅
http://chibifantasy.com/bbs/t12-649.html :5 世界への旅立
http://chibifantasy.com/bbs/t12-674.html :6 魔王の手込め
(↑愛無からのお願い:意味がわからなくても、お父さんお母さんにたずねちゃダメだよ☆)

loveless6/5 21:11:442209cfpc6LVK63c3g||919
 薄暗い路地を歩く。
 オレンジの街灯が点いて、足下を照らした。
 真上を向いたら、空は紫。

「ねえねえ、真人。
 暗くなりはじめたよ」
「わかってるよそんくらい」

 大通りから離れて、約20分。
 姐さんのホームにたどり着く気配は、まだない。

「真人ー、まだー?」
「まだだっつってんだろ」

 このやりとりは、今ので10回目を越した。

loveless6/5 21:12:92209cfpc6LVK63c3g||263
 教科書と漫画の詰まったナイロンバックを背負い、ぽよまろを抱えたまんま、20分間歩くというのも、なかなか辛い。
 あたしの通学路は1分歩いて駅に行き、電車で10分座って5分歩く。
 2年間も続けりゃあ、そら慢性的な運動不足にもなります。
『足が棒になる』の意味を、身をもって知った20分間。
 真人をからかう余裕もなかったり。

「はじけてんのが、あたしの個性なのに……」

 それが無けりゃあ、あたしなんて只の馬鹿だ。
 一応の自覚はしてるのだ。

loveless6/5 21:12:342209cfpc6LVK63c3g||278
 くそう何なんだこんちくしょう。
 ようし、ここはそれを奪った要因の、笑顔魔人こと真人を恨もうでわないか。
 見てろ魔人め。

転べ、転べ……
「何ぶつぶつ言ってンだよ」
「呪い。」
「は?」
「わかれ!」
「ムリ!」

 相変わらず理解も柔軟性もない軟弱さんめ。
 矛盾したことをつらつら考えながら、足を引きずるように歩く。
 っていうか魔人男だろ鞄持てよ芸人味も甲斐性もねえのかこんちくしょうめ。
 ああ、こんな事だったら花畑でもっかい自殺企てりゃよかった。
 優柔不断は人間の特権だ。

loveless6/5 21:13:342209cfpc6LVK63c3g||363
「真人ー、まだー?」

 これで11回目を突破した質問に、

「もうすぐだ、ちったあ黙ってろよ」

 おろ。
 1回目の新しい答えを出してくれた。
 この時ばかりは、魔人が神に見えた。

「おっしゃあ真人!
 さっさと行きましょう姐さん宅!
 GO! GO! あたし一刻も早く座りたい!」
「……オレは、あんま気ィ進まないんだけどな……」

 気のせいか石畳に視線を、歩く速度を、そして肩を落として真人は呟く。

loveless6/5 21:14:22209cfpc6LVK63c3g||946
 まるで家出してきて腹減ってコンビニに立ち寄ったものの財布を家においてきたことに気付きそれでも何とか1、2時間は絶えたが結局空腹に負けて家の前に来たんだけどプライドが邪魔して家の前を変質者宜しくうろうろしてる少年みたいだ。
 我ながら、あたしの比喩というものは屈折しまくってて、何故かストーリーがあって、そして一応的を射てるが究極に解りづらかった。

「あー、姐さんに何言われっかなあ……。
 や、寧ろ問題は他の住人だよなあ……」

 呟いて、真人はあたしを見る。
 え、何ですか、その視線の意味。
 アタクシ何か致しました?
 ――色々やったけど。

loveless6/5 21:14:292209cfpc6LVK63c3g||68
 真人は溜息をついて、

「やー、もー、お前。」

 やおら向きなおり、

「いいから、とことんまでオレに話を合わせろ。
 良いな?」
「真人はギャグの何たるかが解ってないからヤダ」
「そーゆー問題について論議してんじゃねえよ」
「知ラナインデスカ。
 笑いを制すものは世界を制す。
 常識デスよー」
「どこのトンデモ世界の常識だよ」
「真人クンは笑顔魔人なのでその点はある意味バッチリですネ」

 言いながら、やっぱり魔人でもテンション低いときは笑わないんだなあとか、ぼんやり思う。

「魔人ゆーな。」
「いひゃひゃひゃひゃひゃ!」

loveless6/5 21:14:592209cfpc6LVK63c3g||684
 真人くんはナチュラルにキレた!
 真人くんのターン、ヒロイン有希ちゃんAのほっぺたを伸ばす!
 ヒロイン有希ちゃんAに10のダメージ!

「お前はなぁいきなりそおゆう訳のわからん事喋りだしたり訳のわからんこと始めたりやたらオレをからかったりでやけに似てて恐えんだよ。
 そーゆうわけで、良いから協力しろ解ったな」
「ひゃい、ひゃい、はふぁっらはりゃほっへはあへ!」

(訳:はい、はい、解ったからほっぺ放せ!)

 頷きまくったらよし、と言って真人はほっぺたを解放した。
 ハハハびっくりしたよ。
 人間の頬って、意外に伸縮性を有してるもんなんですね。

loveless6/5 21:15:262209cfpc6LVK63c3g||739
 チークの赤み+ひっぱられた赤みで、林檎病みたくなってるんだろうなあ。
 痛みの余韻残るほっぺたをさすりながら、考える。

「じゃ、とにかく。
 余計なことは喋んなよ」
「うっす、タメになることを話します」

 真人は無視して歩いた。
 3歩歩いて、急に止まった。

「それと、」
「ん?」

 向きなおって、腕を組みこめかみに指を当て、

「サイダー虐めンのも、辞めろ」
「ああ」

 あたしの腕の中には、ぽよまろが眠っていた。
 頭ら辺から、バタフライナイフを生やして。

loveless6/5 21:16:152209cfpc6LVK63c3g||239
「いやあ何か痛覚無いっぽいからさあ。
 復讐がてらストレス発散、みたいな? あは

 笑いながら、ナイフを引き抜いて鞄に仕舞う。
 歩いてる間、片手にぽよまろ、もう片手にナイフを持ち。
 そらあもう遠慮も配慮も何もなく、ざくざくざくざく突き刺してました。
 ぽよまろ、嫌な顔一つせず、左袖銜えたまんま眠りこけました。
 ついに真人、天を仰いで目を覆ってしまった。

「……神さまー、どこまでオレを陥れればすむんですか」
「ウフフフ、真人クンはきっとどこまでも笑顔がステキだから、神様に嫉妬されたんだよ良かったね。」
「その、生暖かい目でオレを見るな」

loveless6/5 21:17:232209cfpc6LVK63c3g||488
「……ここが、姐さんのホームな」
「へー」

 4階建ての、背の高い建物だった。
 灰色を基調とした煉瓦で作られていて、所々に蔦が絡んでいる。
 恐らく金属製の、華奢で白い窓枠が気に入った。
 華奢な割にデザインは豪奢、繊細な作りのそれは洋風でとても可愛かった。
 真人は木製のドアを叩く。

 タン、タタタン、タタン、タン。

「入れ」

 変わったリズムのそれに、ドアの向こうの声が答える。
 女の人の声だ。
 ほどよく低くてカッコイイ。
 あたしそーゆー人憧れるなあ、声だけで女王になれちゃいそうで。

loveless6/5 21:17:502209cfpc6LVK63c3g||868
 などと思っていると、

「失礼します」

 真人がドアの前で礼をして、静かにドアを開ける。
 あたしも習って礼をして、真人の後に続いて入った。
 うわう、なんだかちょっと緊張。

「ああ、真人か。
 今日は遅かったな」

 紫煙が、空気に流れる。
 オレンジ色の照明に当てられて、木製の壁にぶつかって揺らいで消えた。

「すみません姐さん、今日はちょっと拾いモノがあったんです」

 5歩歩いて、真人は右を向いて礼をする。
 その横に並んで右を向けば。

loveless6/5 21:18:62209cfpc6LVK63c3g||680
「ふぅん、拾いモノ……」

 カウンタの向こうに、左を向いて座る人影があった。
 一番始めに目を引いたのは、その紅い装束。
 とりどりに重ねられた単衣を、彼女は右肩を出して着崩していた。
 右肩に彫られた桜の刺青。
 胸を隠すようにホルターネックの黒いキャミソール。
 細い左腕を、包帯が覆っていた。
 煙管をもつ左手の細い人差し指には、血色と桜と朱色の指輪が重ね付けされて。
 ゆるりと紫暗を吐き出すは、朱色の熟れた唇。
 右目を覆う黒い眼帯。
 伏せられた紫色の左目蓋が揺れて開いて。
 整った面立ちの中で、アメジストの瞳があたしを映した。
 射られるかのような、強烈な視線。

loveless6/5 21:18:292209cfpc6LVK63c3g||567
「それか?」

 煙管であたしを指す。
 答えようとして、答えられないことに気付く。
 声が出ない。

「はい」

 真人が代わりに答えた。
 声が震えていた。
 声ばかりではなく、体も震えていた。
 さっきの、真人の忠告は要らなかったと思う。

『余計なことは喋んなよ』

 ああ、もォ、ちくしょう。
 必要なことすら、喋ることなんざ出来ねえ。
 緊張、と言うよりも恐怖に近い。

loveless6/5 21:18:502209cfpc6LVK63c3g||604
「はん、真人もやるな」

 彼女はあたしから視線を逸らし、煙管を弄ぶ。
 視線を逸らされただけで、恐怖は霧散しない。
 にやり、と蠱惑的に口元が笑った。

「彼女か?」
「ッ、違いますッ」

 真人がややムキになって返す。
 何だか一瞬、ムカついたのは気のせいかい?
 魔人に好かれてもあんま嬉しくはないけど。

「彼女じゃないのか、つまらない」

 そう言って、嘆息した。

loveless6/5 21:19:352209cfpc6LVK63c3g||405
 高く結った髪の後れ毛が、ゆらりと首筋にかかった。
 一瞬和んだ空気が、再び冷たく凍りつく。
 アメジストが、再びあたしを射る。

「じゃあ、入居希望者か?」
「はい」

 一応、あたしの立場はそういうことになっているらしい。

「はぁん……」

 ギシリ、と床が音を立てる。
 彼女はこっちを向いて、ゆっくりと頬杖をつく。
 観察、いや、寧ろ見透かすような目でじっとあたしを射抜く。

「名は?」


loveless6/5 21:20:02209cfpc6LVK63c3g||322
 その簡潔な問いに答えるべく、口を動かすが、やっぱり声は出なくて。
 ビビんな自分。
 飛び降りたときの度胸は。
 ビルの前で屋上に行くまでに有した度胸は。
 何処にやってきたんだ。

「我妻、有希」

 腹に力を込めて、もう一度挑戦して、ようやと声が出た。
 ものすごい震えてたけど。

「へえ」

 すい、と彼女の目が細くなる。

「大した度胸持ってるみたいじゃないか。
 真人、良い拾いモノをした」

 満足気に響いた声に、真人が短く答えた。
 今度の真人の声は震えるも何も、響きすらしなかった。

loveless6/5 21:20:252209cfpc6LVK63c3g||697
「年は幾つ」
「じゅう、なな」
「ふぅん、真人と同い年か。
 最近のは割と度胸があるんだな」

 ビビんな自分。
 ビビんな自分。
 自己暗示のように思ってないと、この圧に潰されそうだ。
 彼女はその葛藤すら知らない様子で、もしくは見透かした様子で。
 弧を描いた唇が次の質問を紡ぐ。

「職業は何で、武器は何を持つ?」

 ビビんな。

loveless6/5 21:20:522209cfpc6LVK63c3g||601
「職業は、女子高生、」
「この世界で、学生を名乗るか」

 面白い奴だ、と、彼女は笑みを深くする。

「武器は、バタフライナイフと、」

 ビビるな。
 ビビるな。
 今の生活を全て失うと決めた覚悟は。
 自分の命1つで世界にケンカ売ると決めた覚悟は。

「命、1個」

 虚勢を張った。

loveless6/5 21:21:222209cfpc6LVK63c3g||368
 押しつぶす圧に負けないように、かろうじて潰されないように虚勢を張った。
 ずいぶんとまあ滑稽な言葉だ。
『命1個』
 考えてみれば、死に損ないの命なんかに、どれほどの価値があるんだろう。
 死に損ないの命1つで、世界の何が変わる。
 やっぱり個性を無くしたあたしは只の馬鹿だ。
 言ってから考えた。
 もういいや。 どうせ遅い。
 口に出した言葉は、どう頑張っても消すことは二度と出来やしない。

loveless6/5 21:21:442209cfpc6LVK63c3g||467

 

「言うな、若造」

 

 そう言ってから、彼女は急に笑みを消した。


loveless6/5 21:22:62209cfpc6LVK63c3g||17
「真人、こいつをどう思う?」
「良く思っていないとすれば、オレはこいつを、拾ってきたりなんてしません。
 そのまま、捨て置きます」
「そうか」

 真人の答えに満足して、彼女は再び笑う。

「あたしもそう思う。

 気に入った。

 合格だ、我妻有希。」

loveless6/5 21:22:272209cfpc6LVK63c3g||738
 そう言った瞬間、笑みの質が変わった。
 視線は柔らかくなり、辺りを包んでいた空気も霧散する。
 笑み1つで辺りの雰囲気を変えてしまった彼女は、

「あたしの名前は水月流宇香だ」

 満足気にそう言った。





→続く。

loveless6/5 21:29:62209cfpc6LVK63c3g||299
ラッキーセヴンの第七話は、魔王と魔人にとってはラッキーなんかじゃありませんでした。

お読みくださってありがとうございます。
今回、シリアス路線でした。第一話以来です。
椎名林檎嬢の歌声は、こーゆー雰囲気の物語を書くとき、BGMに最適ですねw
さて、今回初めて御名前を借りましたのが、水月流宇香さまこと浅漬けさま
触れれば切れそうな彼女の役についていただきました。
ありがとうございます(ぺこり)
あ、そいえば読み方は「みずつき るうか」さまで合っているのだろうか;
ご本人、馬鹿な私に教えてやってください><

それでは、次回も会えましたなら光栄です(ぺこり)

ぷっち6/5 21:30:92228cfBfq7WHoq32s||174
ずっとさっきから監視しておりました><(ぁ
メッチャオモシロイなァ・・・本当上手ですねww
ちなみに
悪魔ちゃん(悪役)ん時は
メッチャはじけたバカ希望です・・・(マテマテマテマテ

↑スルーシテクダサイ><;

ベベル6/5 22:6:542191cfKMsaOgkLSZQ||950
やっぱりとても面白いです^^
とうとう募集キャラ出てきて(*´∇`*)
浅漬け様が出てきて^^次は誰かなぁ?
また楽しく読ませて下さい(▼-▼*) エヘ♪
ベベルでした(^ー^* )フフ♪

銀月6/5 22:36:32182cfLMvpixotkc6||780
こんです^^
面白いデスネw
何か、上手い具合に読者を引き込ませる感じがします。
やっと、近い時間にレスできた^^;;
次回も楽しみにしてますw

浅漬け6/5 22:49:92211cfwdGUp7imX5Q||329
わー!!!ついに!!登場!!私!!(爆/殴
あ、みずつきではなくてみなつきです;;
ごめんなさいです;;
うーん・・・面白いキャラですw個性的!!
It's a アタシ!!(何ソレ
次回も楽しみにしてますwでわ@

loveless6/6 15:39:116119cfxqzH98WHlGM||394
>ぷっちさま。
監視していただいてありがとうございますw
それにしても、レスが次の日って何なのさ自分;
ゴメンナサーイ!
面白いなんて言っていただいて、ありがとございます(ぺこり)

loveless6/6 15:43:56119cfxqzH98WHlGM||372
>ベベルさま。
毎度レスポンスありがとうございますw
はい、募集キャラクタの方々、今回から登場です。
次は誰を書かせてもらおうか、こちらも楽しく考えておりますですねw
それでは、もし宜しければこれからも、読んでやってくださいませ(ぺこり)

loveless6/6 15:51:96119cfxqzH98WHlGM||142
>銀月さま。
感想ありがとうございますw
近い時間にレスしていただいたのですが、お返事が今日になってしまって申し訳ない><;
お褒めの言葉、ありがとうございます(ぺこり)
そんな大それた力、この小説もどきが所有してるなんて言ってもらえて、
愛無はとても幸せです。 ありがとうございます。
それでは、また次回、お会いできましたらw

loveless6/6 15:55:156119cfxqzH98WHlGM||191
>浅漬けさま。
平に……平にご容赦くださいませ!!
「みなつき るうか」さまですね、ごめんなさい><;
愛無は某所で水無月姓を名乗ってたりするので、何となく親近感です。
(どーでもいい上に意味不)

こんなキャラで宜しかったでしょか?;
浅漬けさんのカッコを見たとき、パッと閃いたのが姐さんだったりします。

これからも、よろしければ、この小説もどきに付き合ってくださいませw

loveless6/6 16:7:146119cfxqzH98WHlGM||910
どーでもよい話。

文字数が 4400文字を 越していました まる
(一太郎調べ)
前々回の反省は何処へやら。
何処へ行ったマイ反省心。


本文(<>," shift+7使用不可)
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