戻る
7747心秘め事空華2/23 11:53:52031cfugNPyUOK282
風の唄
第1部
http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-6926.html←プロローグ
http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-7320.html←第12話

第2部
http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-7346.html←第1話
http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-7699.html←第11話
http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-7724.html←エピローグ

今回は読みきりの短編です。

空華2/23 11:57:482031cfugNPyUOK282||265
「――私は空、君を見てるよ。
私は風、君をなぜるよ。
私は空気、君を包むよ。
君の傍に居て、けして目には見えない者たち。
私はそれだよ、それでいい。
私は小さなシルフィード――」


少女は歌っていた。
ただ、歌っていた。
優しい声で、呼びかけるように。
周り全てを包み込むように、両手を精一杯に広げて。
歌い終えれば微笑う。
微笑って、振り返った。

空華2/23 12:5:462031cfugNPyUOK282||89
「遅かったね」

がら、と横滑りに開いたドアに向けて、少女が言葉を投げかける。
そこは、教室だった。
やたらに大きな校舎の5階、廊下の突き当たりの教室。
前後の壁には掲示物が所狭しと張られ、廊下に面した壁があり、そして少女は窓の傍に立っていた。

「ごめん、リセちゃん」

返答があった。
ドアから教室の中を覗き込む、もう一人の少女。
歌っていた少女――リセよりも、ずっと背が高い。

空華2/23 12:14:52031cfugNPyUOK282||379
「遅くなっちゃって、ほんとごめん」
「ううん、平気だよ。わたし、ここに居るの好きだし」

謝る少女にリセはそう返して、楽しげに微笑んだ。
真実、そこに居るのが楽しそうな笑顔。
つ、と窓から離れて、リセは足元に転がる鞄を拾い上げた。
それを肩にかけると、行こ、と呟き少女の方へと駆け寄る。

「ねえ……いつも思うんだけど、何してるの?」
「内緒」

少女の素朴な疑問に、リセはあっさりと言葉を返した。
えー、と少女が不満げな声を零すが、リセはただ微笑むだけ。

空華2/23 12:26:02031cfugNPyUOK282||118
「内緒だよ。……マイちゃんにだって、秘密くらいあるでしょ?それとおんなじ」

マイと呼ばれた少女は、う、と言葉に詰まる。
マイに再びにこ、と笑いかけて、リセは歩き出した。
二人とも、高校一年生。
けれども小柄なリセは、長身のマイと比べると小学生のようにも見える。
一つ溜め息をついて、マイはその横に並び歩く。
そして、ぼやくように言葉を投げかけた。

「リセはなー……可愛いんだけどね。そこまで秘密主義にしなくてもいいと思うぞお?」
「別に可愛くも無いし、秘密主義でもないよ。
ただ、言いたくないことがあるだけ」

空華2/23 12:31:552031cfugNPyUOK282||867
「その『言いたくないこと』が多いって」

溜め息混じりのマイの言葉に、リセはふふ、と笑みを零す。
その表情のまましばし、思案するように宙を見た。

「……心秘め事」
「は?」

歌うように呟いた言葉に、マイが不思議そうな声をあげた。
リセは再度、心秘め事、と呟く。

「何それ?」
「秘密のこと。『心に秘めたもの』」
「……今考えたの?ひょっとして」
「そうだよ」

空華2/23 12:56:342031cfugNPyUOK282||489
にっこりと笑うリセに、やれやれ、とマイは首を振った。
けれどもそれが常態らしく、リセもマイもそのまま昇降口に向かっていく。
にこにこと笑んで歩くリセは、どこか幼子のようだった。


昇降口は、既にしんとしていた。
当然だ。もう下校時刻は過ぎている。
ずらりと並ぶ下駄箱の中は、大抵が上履きだろう。
靴をはいて、リセとマイは外へと出ていく。
そのときリセが、あ、と小さな声を上げた。

「どうしたの?」

マイの問いに答えず、リセはただ一点を見つめていた。

空華2/23 12:59:392031cfugNPyUOK282||899
どうしたの、とマイが再度問う。
リセはしばらくその方向を見ていたが、やがて

「……たしはそれだよ、それでいい……私は小さなシルフィード……」

そう小さく呟くと、マイの方に向き直った。
既にその表情には、笑顔が戻っている。

「なんでもないよ、平気」
「そう?」

訝しげにしていたマイだが、軽く肩を竦めると、追求を止めた。
そして二人は、校門を出ていく。


リセの視線の先に居たのが一人の少年であることに、マイは気づかなかった。

空華2/23 13:2:202031cfugNPyUOK282||780
+後書き+

何となく思い付いた短編です。
最初の歌は、即興です。
「心秘め事」よりも、「シルフィード」の方が良かった、などと今になって思いました。
でももう遅いです。
風の唄の番外編も書きたいです。
今度はそれを書くつもりです。

読んでいただき、有難うございました^^

見習い兵士2/23 16:32:482205cffsmuQJNdj.A||922
お疲れ様でしたね^^

キーア2/25 10:5:192191cf/cZWdmfTKcw||432
おはよう御座います

短編でもとても読みやすくよかったです。
高校1年生なのにリセはマイと並ぶと小学生みたいに見えるんですねw

どれくらい身長差があるのでしょうか・・などと気になっていました
マイちゃんとリセちゃんみたいな性格というか・・感じの子
私はとても好きなので気に入っちゃいました

次回も楽しみにしています

空華2/26 12:32:232031cfugNPyUOK282||386
>見習い兵士様
読んでいただき有難うございます^^
途中でお昼挟んだのですが、やっぱり少し時間がかかりましたね;

>キーア様
誉めていただけて嬉しいです^^
長身の子と小柄な子だと、身長差ってだいぶあります。
この二人はまた使いたいです。
長編だとあんまり書かないんですよね、恋愛物。
短編なら書けるのに、何故でしょう?(苦笑)
読んでいただき有難うございました^^


本文(<>," shift+7使用不可)
 ※メルアドや電話番号を公表してはいけません、荒らしを批判するのは「俺が神掲示板」以外は禁止!
 
特殊文字 by.チビファンタジー 過去ログ
無料ゲーム総合サイト: おもしろフラッシュ総合サイト: PS2:GBA:PSP:NDS:GC:XBOX