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7772水の唄空華2/26 12:40:22031cfugNPyUOK282
風の唄
第1部
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第2部
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心秘め事
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今回も読みきりの短編です。

空華2/26 13:2:162031cfugNPyUOK282||304
わたしの名はアイデル。
今現在、ある小さな島の村に住む。

十数年前までは、わたしは一つの湖に住んでいた。
湖と言っても、海と見まがうほどに大きな湖。
そして、とても美しい場所だった。
湖水は澄みきって、昼は陽光に、夜は月光に輝く。
岸辺には四季折々の花が咲いていた。
この湖は、一つの島にあった。
あまり人には知られていない、静かな湖。
この湖が何なのか、ここに何が居るのか。
それを知っているのは、湖を取り巻く森の中の、村の人々だけだった。

秘められた湖、とでも言えそうな、そんな場所だった。

空華2/26 13:8:462031cfugNPyUOK282||656
わたしはそこで、数えきれないほどに長い年月を過ごしていた。
そして……いつの事だったろうか。
ある日、遠い島から、数人の使者がやって来た。

それは、「誕生の儀式のための立会人≠育てるのが始まった」、という報せだった。
『誕生の儀式』。千年に一度ある、新しい命を生み出すための儀式。
わたしは、それをまだ一度も見たことが無かった。
なぜなら、わたしの年齢はまだそこまでとどいていなかったのだから。
立会人は、その儀式がどう言うものなのかを教え込むために、十数年をかけて育てられる。

使者の滞在していたのは3日間。
そしてその時、わたしは偶然に彼と出会った。

空華2/26 13:19:52031cfugNPyUOK282||885
わたしは、湖に住む者の中でも少し変わっていたのだと思う。
他の者たちは、滅多に外へ出ることは無かった。
けれどもわたしは、外へ行くのが好きだった。
外側から見る湖は、とても美しかったから。

彼のほうは、散歩に来ていたらしい。
そして、湖の外へと出たわたしと会った。
丁度湖から上がって来た所だったから、少しだけ驚かせてしまった。

「……使者の方ですか?」

そうわたしが問うと、彼は頷いた。
わたしがアイデルと名乗ると、彼はファリと名乗った。

……その後の2日間も、わたしは彼と会っていた。

空華2/26 13:24:592031cfugNPyUOK282||810
わたしは、敬われるのが嫌いだった。
ファリは、敬うのが苦手だった。
だからかもしれない。わたしとファリが、仲良くなれたのは。
わたしは、彼が住んでいる村の話を、たくさん教えてもらった。
この島とは全く違う島の話を。

広がるなだらかな丘、少し低い山。
山から流れる川に、小さな平地にある村。

この島に丘は無い、山も無い。
川も無く、ただ湖だけが広がる。
人々が住むのは森の中。

彼のしてくれる物語は、とても新鮮なものだった。

空華2/26 13:37:592031cfugNPyUOK282||241
日はすぐに過ぎてしまった。
2日目の夜にファリが来て、明日の早朝に出発すると言った。

その時、ようやくわたしは気づいた。
多分、わたしは彼が好きなのだと。

早朝の出発のために、彼は早く眠らなければいけなかった。
わたしはもう半分以上、諦めようと思っていた。
わたしとファリでは、時の過ごし方が違いすぎる。
だから、だからこそ……

「あなたにとってはたった少しの時間でも、一緒に居たい」

彼の言葉が、嬉しかった。

空華2/26 13:42:52031cfugNPyUOK282||602
          ***

「アイデル?」
「……?」

目を開けると、ファリが不思議そうな目で見ていた。
いけない。物思いに、沈みこんでしまった。
彼が微笑う。

「お疲れ様。たった2日間なのに、随分大変だったね」
「ありがとう。でも、それはフィナにも言ってあげて」
「もう寝てるよ」
「あら……」

本当に、何ということだろう。
そんなに時間が過ぎているなんて。
思わず笑いながらわたしは、この時間を大切にしようと、あらためて決意した。


わたしはアイデル。
水の島より来た、水の聖霊。

空華2/26 13:45:402031cfugNPyUOK282||710
+後書き+

今回も短編です。
そして、風の唄の番外編です。
ラストで、もしくはそれ以前でわかる通り、「フィナのお母さん」です。
今回は科白が少ないですね。読みにくかったら申し訳ないです。

ようやく、次に書くものが決まりました。
今度は現代ファンタジーっぽくできたらいいなと思っています。

読んでいただき有難うございました^^


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