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7929セイクリッド・ブルー第二部(11)istint3/18 15:33:142182cfUxdM0vW16m6
http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-7899.html 前回までのお話

istint3/18 15:33:372182cfUxdM0vW16m6||677
翌日、半獣たちに見送られてルヴィン、レンティーニ、ニナにムスティンを加えた四人とティアは白の塔を目指して村を後にした。
ムスティンはレンティーニからルヴィンの事をあらかた聞いていたのでついてきた理由はただ単に彼のことが気にいたから、というだけでなく、スタインの血を監視する意味もあったのだ。

istint3/18 15:33:532182cfUxdM0vW16m6||166
エルフの文献にもスタインの血の事は出ていたのでムスティンもそれなりに知識はあった。
ルヴィンは青龍の力の反動が思ったよりも激しく、右腕は痺れて剣を握る事が出来なくなっていた。
ニナの魔法で少し痛みを和らげる事は出来たが、完全には回復しなかった。
特訓も暫らくは魔法の特訓が中心になっていた。
ムスティンはニナよりも色々な種類の魔力を操る事が出来た。
召喚魔法や幻術の魔法、防御の魔法など。

istint3/18 15:34:152182cfUxdM0vW16m6||609
しかしムスティンは教えるのが下手でルヴィンには全く理解できない。
やはりニナに基礎的な魔力の織り方を教えてもらっているのがいいみたいだ。
ニナの話によると、ムスティンの優れている点は幾本もの魔力の糸をごく短時間で自分の理想の形に織り上げる事と、自分に合ったスキル以外は使わないということだった。
ムスティンは魔法は得意とはいえ、ルヴィンやレンティーニと同じ戦士タイプなので下手に攻撃魔法を練習しても使う機会は少なく、結局は剣による攻撃力がそれを上回る為、無意味なのだ。

istint3/18 15:34:292182cfUxdM0vW16m6||417
彼は魔法をあくまで補助、というふうにしか考えていなかった。(エルフの中では珍しいケースだが)
魔力の糸もせいぜい2〜3本使う程度だ。
例外として光の盾が上げられるが、それは通常数人のエルフがそれぞれの魔力の糸を織り合わせてもう少し規模の大きい結界を作り上げるというものだ。
ムスティンはそれを自分一人が入れるだけの規模の小さいものに改良し、さらにバリアントダガーの魔力を借りて発動している。

istint3/18 15:35:142182cfUxdM0vW16m6||338
バリアントダガーはそれ自体が非常に高い魔力を有しており、より高い次元の魔法を操る時の補助道具としても使用できるのだった。
そういった武器、道具はバリアントダガーの他にもあるらしい。
しかしバリアントダガーは創造主がエルフの王に与えた至宝で、その種の武具の中でも飛びぬけた能力を誇っている。
ムスティンはバリアントダガーを実戦で開放状態にしたのはルヴィンとの戦いが初めてで、やはりその後はひどい疲労感に襲われたらしい。

istint3/18 15:35:242182cfUxdM0vW16m6||208
開放状態のバリアントダガーの発する力は強大で並みの剣士では扱えない。
レンティーニの剣も特別な金属で出来た剣らしく、これまで何度も死線をくぐり抜けて来たにも関わらず、刃こぼれ一つしていない。

istint3/18 15:35:562182cfUxdM0vW16m6||459
ある日、何気なくムスティンがルヴィンの剣に目をやった。
ルヴィンはその視線に気付き、剣を見せてやるとムスティンは驚いたように目を丸くした。
「ルヴィン、この剣どういう剣か知ってるのか?」

istint3/18 15:36:172182cfUxdM0vW16m6||521
ルヴィンは首をかしげた。
「いや。
 これは父さんが旅に出たときに持ち帰ったらしいんだ。
 父さんは鍛冶屋だったらしいから、見本にこの剣を置いてたって母さんが言ってたよ。
 これがどうかしたか?」

istint3/18 15:36:362182cfUxdM0vW16m6||715
ムスティンは少し考えてから答えた。
「これは古代文明時代に当時の魔導師たちが鍛えたものだ。
 ほら、ここにノスリ(鷹科の鳥)の紋章が刻まれているだろう?
 これは古代の最高の騎士だけが持つことを許されたって証なんだ。
 文献ではノスリの紋が刻まれた剣はこの世に三本しか存在しないらしい。
 まあ、レプリカかもしれないが…。
 それからこの剣の柄の部分、ここに小さく文字が刻まれているだろう?

istint3/18 15:36:462182cfUxdM0vW16m6||438
 小さくてよくわからないがこれはエルフが使うルーン文字よりもっと古い言語、エスペランサ文字だ。
 そして恐らくこの文字はこの剣の開放呪文を記したものだ。
 青龍のオーラが腕だけじゃなくて剣全体まで包んでいたことからこの剣がただの剣じゃないと思ってたんだ。
 普通の武器なら剣までは特殊なエンチャント魔法を使用しない限りはオーラや魔法は伝導しない。
 この剣は本物である可能性が高い。」

istint3/18 15:37:92182cfUxdM0vW16m6||35
ムスティンの予測はほぼ正しいものだった。
この剣はルヴィンの父、アイシスが青龍を倒した時にその玉座の裏に刺さっていたモノを抜き取ったものだ。
青龍は塔の最上階でこの剣を守っていたのだった。
世界を滅ぼすほどの力の封印を守るのが四聖獣の役目だったのだ。
もちろんレンティーニはそれを知っていた。

istint3/18 15:37:292182cfUxdM0vW16m6||743
レンティーニ達は闇の勢力に対抗する為にその封印を解きに行ったのだ。
元々青龍の力を借りる事は彼らの目的ではなかった。
ルヴィンはというと、もちろんそんな事は聞かされていないし、ワケが分からなかった。
ムスティンにエスペランサ文字を読んでくれ、と頼んだが、彼にも解読は出来なかった。
王家の人間であるレンティーニ、ニナなら解読できるかもと思い二人にも同じ質問をしたがニナは勉強不足で読めず、レンティーニは文字が小さすぎると言って相手にしてくれなかった。

istint3/18 15:37:392182cfUxdM0vW16m6||831
その夜、ルヴィンは父の事を考えて眠れなかった。
(なんでそんな剣が家にあったんだろう…?
 母さんからは父さんの話は殆ど聞いたことがないし。
 本当に鍛冶屋だったのかな?)

istint3/18 15:37:502182cfUxdM0vW16m6||883
アイシスはルヴィンが生まれる前にはもう旅先で死んだ。
青龍の幻が以前父の事を話していた事も気になっていた。
よく考えればルヴィンは父の事を何も知らなかったのだ。
(父さん…あなたは一体…?)

istint3/18 15:38:182182cfUxdM0vW16m6||426
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istint3/18 15:38:302182cfUxdM0vW16m6||847
レンティーニもまた、古き友アイシスの事を考えていた。
月に写した友の面影に向かって語りかける。

istint3/18 15:38:482182cfUxdM0vW16m6||54
「ルヴィンがお前の形見の剣の秘密にたどり着いてしまったよ。
 お前は生まれてくる子供には戦争を経験させたくないって言ってたな。
 そして最期にも子供を頼むって…。
 俺は今日まであいつを息子だと思って導いてきた。
 だがお前との約束、戦いを知らない子供に…ってのは守れなかったな。
 あいつはもう一人の戦士になっちまった。
 俺を恨むか…アイシスよ。
 ニナ、ムスティン、ルヴィン。
 時代が必要としてるのは今の若い奴らかも知れんな。」

istint3/18 15:39:12182cfUxdM0vW16m6||725
月はレンティーニの語りに何も答えてはくれなかった。
巨大な白の塔が月明かりに照らされ、神秘的な輝きを放っていた。

istint3/18 15:39:122182cfUxdM0vW16m6||717
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istint3/18 15:39:252182cfUxdM0vW16m6||679
白の塔周辺には聖蒼教団の基地がある。
その夜、基地は本部から司令官が到着し、騒然としていた。
基地を管理している隊長が緊張した面持ちで本部からの客を迎える。
基地内の兵は全て集められ、整然と並ぶ。

istint3/18 15:39:372182cfUxdM0vW16m6||223
白の塔は聖蒼教団の管理下にあるといっても、このような田舎の部隊はそう重要視されておらず、本部の部隊が来る事はまずないことだった。
しかも派遣されてきたのは本部のエリート中のエリート、イェン司令の部隊だった。

istint3/18 15:39:582182cfUxdM0vW16m6||40
聖蒼教団の軍の階位は大きく分けると、元帥・五聖将軍・司令・団長となる。
団長はさらに細かく階位が分かれているが、司令以上は固定だ。
司令になるには一定以上の戦果を上げ、なお且つ軍の試験に合格しなければならない。
試験は年一回で毎年数人の受験者がいるが受かるのは五年に一人いるかいないかだった。
守護聖はその階位からは外れた特殊な階級で、任務も軍を率いるものではなく、五聖将軍を守ることだ。
守護聖には試験などは無く、五聖将軍が自ら選んで任命する。
大体司令と守護聖は同じくらいの地位だ。

istint3/18 15:40:102182cfUxdM0vW16m6||780
司令クラスともなると単独行動はまず無く、周囲を常に団長が取り巻き、さらに何十という部隊を操り戦略を進める大幹部だ。
そんな司令がこんな小さな駐屯地に、しかも殆ど兵を連れずに来たのだから皆が驚くのも無理は無かった。
このような事態は異例中の異例、基地の団長が恐る恐るイェンに話しかけた。

istint3/18 15:40:222182cfUxdM0vW16m6||894
「この度はこのような田舎の駐屯地までお越し遊ばされてご苦労様でございます。
 イェン司令閣下のようなお方をお招きすることが出来て光栄にございます。
 して、今回はどういった用向きでいらっしゃったのでしょう?」

istint3/18 15:40:372182cfUxdM0vW16m6||851
イェン司令は厳しい顔つきをした堅物軍人で、部下達からは鬼司令として恐れられていた。
細い目に面長の顔、口には丁寧に手入れされた髭が生えている。
身長はそんなに高くないし、身体は大きくは無かった。
しかし戦闘、という面に於いては教団の中でもかなり上位にあげられ、かの猛将カーティス将軍の守護聖も務めたこともある。
彼は団長に一瞥をくれると煙草に火をつけて答えた。

istint3/18 15:40:462182cfUxdM0vW16m6||952
「今回はセルレイス元帥閣下直々の命令だ。
 お前も聞いてると思うが国家転覆を謀ったテロリストを追ってここまできたのだ。
 テロリストの中にはあの黒騎士もいるらしい。
 奴らは白の塔を目指し、もうじきここを通るだろう。
 気を引き締めておけ。」

istint3/18 15:40:572182cfUxdM0vW16m6||882
黒騎士レンティーニは傭兵や騎士の間ではもはや伝説となってるほど有名な名前だ。
その名を聞いて部隊の緊張は一挙に高まった。
そう、もう明日にも彼らは白の塔を目指し、ここへやってくる。
ここにイェン司令がいることはルヴィン達にとっては致命的な誤算となるのだった。

istint3/18 15:41:152182cfUxdM0vW16m6||627
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istint3/18 15:41:322182cfUxdM0vW16m6||967
闇の神殿の内部で闇ソーサラー、ザファが新しく生まれた闇ソーサラー、ベアンと共に自室でいつもの生体実験を行っていた。
部屋中に千切れた腕や、足、右半分だけの頭、全身の皮を全てはがされた死体、目玉を抉り取られ、口を縫い付けられた人間、または両手両足をもぎ取られて無理矢理生かされている人間が物のように転がっている。

istint3/18 15:41:432182cfUxdM0vW16m6||249
辛うじて生きてるものはたまに痙攣したりうめき声を上げたりしていた。
壁には血がこびりつき、もう長い時間がたつのか黒くなってしまっている。

istint3/18 15:42:42182cfUxdM0vW16m6||255
そこへ例の黒い男が現れる。
ザファは実験の手を止めると頭からすっぽり覆ったローブの奥の瞳を不気味に光らせた。
人間の出す声とは思えない不気味な低い声が部屋に響き渡る。

istint3/18 15:42:172182cfUxdM0vW16m6||401
「思ったより早かったな。
 お前の主人はまだ聖蒼教団ごときにこだわっているのかい?
 クク…あの男は人一倍野心が強いからな。
 私には聖蒼教団もグランデュール王国も興味ない。
 私の望みは闇王ザインを復活させ、教団も王国も赤ん坊も老人も動物も植物も破壊して、皆殺しにすることだ。
 大地を腐らせ、海を汚染し、風に死臭を漂わせる心地よい闇の世界がもうすぐ始まる。
 この闇ソーサラー、ベアンもその一翼を担うであろう…ククク。」

istint3/18 15:43:182182cfUxdM0vW16m6||247
ベアンと呼ばれた闇ソーサラーは他の闇ソーサラーと違い、全身を覆う漆黒のローブの代わりに悪魔の骨をモチーフにした赤黒い鎧を身に付けていた。
もちろん顔も牙をむき出しにした羊のような悪魔の頭骨で出来た不気味な兜で隠され、表情が判らない。
そして今までの闇ソーサラーには無い感じの禍々しいオーラを常に纏っていた。
そのオーラは鎧の継ぎ目から常に漏れ出していて、それがこの闇ソーサラーの恐ろしさを物語っていた。

istint3/18 15:43:282182cfUxdM0vW16m6||437
しかし、黒い男はその闇ソーサラーを見ても怖気づいた様子は見せず、黙って三人の団長の死体を無造作に部屋に転がした。

istint3/18 15:43:422182cfUxdM0vW16m6||813
「クク…ご苦労。
 新しい実験体だな。
 そうそう、このベアンはお前も良く知る男だ。
 まだ一度目の転生にも関わらずすばらしい力を秘めてるぞ。」

istint3/18 15:43:522182cfUxdM0vW16m6||302
黒い男はザファの言葉を聞き流し、初めて口を開いた。
「一つザファ様に報告があります。
 例の因子を持つものが白の塔に近づいてるようです。
 殺しますか?」

istint3/18 15:44:72182cfUxdM0vW16m6||860
ザファは嬉しそうに身体をゆすって笑い出した。
「ククク…お前のその迷いのない殺意…すばらしいぞ。
 だがその心配は要らんようだ。
 エラドが先手を打ったようだからな。
 私に判らぬこと等何もない…あの男が何を考えているのかもな。
 クク…お前もおかしな気を起こさんことだ。」

istint3/18 15:44:252182cfUxdM0vW16m6||371
ザファは一通り話し終えると、側に寝かせてある死体をいじくり出した。
ザファの手が赤く光るとジュブジュブ音をたててドス黒い血液を撒き散らせながら死体の腹にめり込んでいった。
すると死体の口からこの世のモノとは思えない狂ったような恐ろしい叫び声が部屋中に響き渡った。
目玉を飛び出さんばかりに剥き出して、暴れている。
ザファはケラケラ笑いながら死体の腹から薄明るく光る玉を抜き取った。

istint3/18 15:44:452182cfUxdM0vW16m6||876
玉は糸の様なもので死体の腹とつながっている。
死体は「あ゛ー、あ゛ー」とうめき続けていた。
ザファはその玉を弄んだあと、指先から魔力の糸を何本も繰り出して鎖のようなものを作り上げた。
死体は激しく身体をのけぞらせ、意味不明な言葉を喚き散らしながら自分の顔を目玉がえぐれて皮膚が裂けるほどかきむしる。
ザファは光る玉を鎖でがんじがらめにすると自分の腹の中に鎖を繋いだ。

istint3/18 15:45:02182cfUxdM0vW16m6||367
そして玉と死体を結ぶ糸を少しずつ引きちぎっていく。
死体は苦しそうにもがき、うめいていたが、遂に糸が切れるとガクッと横たわり、大人しくなった。
ザファは死体から魂を抜き取り、それを闇の鎖で地獄と繋いでしまったのだ。
地獄につながれた魂はもう浄化される事も生まれ変わる事も出来ない。
この先永遠に苦しみ続け、闇ソーサラーの奴隷となって未来永劫働き続けるのだ。

istint3/18 15:45:112182cfUxdM0vW16m6||403
こうして新しい闇の使徒ジスティは生まれる。
ザファは満足げに笑うと三人の団長の死体をいそいそと実験台に置いた。

istint3/18 15:46:132182cfUxdM0vW16m6||716
今回はここまでです。
もう第二部も完結に近づいてきました。
応援よろしくお願いします。

シェイラ3/20 21:30:172191cf3ov.HagsRA6||537
こんにちわ。いよいよ、佳境に入ってきましたね。白の塔で第二部のクライマックスが来るんですね。楽しみです! istint さんもルヴィンくんもかんばって下さい!


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