戻る
7936リキと笛吹き(読切小説)sIs3/19 16:29:302191cfJbjQbv/Fe3k
※話が途中で遮られたら困るので、『* 後書き *』が載るまでレスはご遠慮願います。
※作品に関する批判は構いませんが、それ以外での批判や冷やかしは帰って下さい。
※勿論、荒らしも帰って下さい。

【仔犬のリキシリーズ】
リキと桜  http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-7845.html

sIs3/19 16:29:452191cfJbjQbv/Fe3k||668

僕が寝転んでいた春の丘は

僕が 蝶が 花が 知らない人が

まとめていうなら 皆が


一緒に使う 遊び場です


sIs3/19 16:30:12191cfJbjQbv/Fe3k||942


- リキと笛吹き -



sIs3/19 16:30:192191cfJbjQbv/Fe3k||44

家の庭の隅には、あまり大きくないが木が植わっている。
桜とは違って花は一日しか咲かない。
だけど、リキはこの木が大好きだ。
毎年、若葉が一斉に芽吹くこの時期に限って、この木が好きになるのだ。

「あ、出来てる!」

庭中に、まだまだ幼さの残る声が響く。
大丈夫、どうせ母親は気付かないから。


sIs3/19 16:30:352191cfJbjQbv/Fe3k||288

- - - - - - - - - -


sIs3/19 16:30:532191cfJbjQbv/Fe3k||457

庭の南東の隅っこ。
そこは、リキだけのお気に入りの場所。
若葉が芽吹く頃が一番気持ちいい、何だか特別な気がする場所。

「わっほーぅ!」

ちょっと余計なぐらいはしゃいで、リキはすぐに木の下に潜った。
潜って体を丸めて感じる、お天道様の優しい温もりと、不思議な香り。


sIs3/19 16:31:142191cfJbjQbv/Fe3k||874

リキは四季の中で、春が一番好きだ。
花粉症だけど、それが過ぎればここに来ることが出来るから。
毎年、これが凄く楽しみなのだ。
だから、花粉症はあまり気にしない。というか、気にしたことがない。


sIs3/19 16:31:222191cfJbjQbv/Fe3k||121

- - - - - - - - - -


sIs3/19 16:31:362191cfJbjQbv/Fe3k||171

あんまりに気持ちがいいので、少し眠ってしまったらしい。
リキは目を覚まして、丸まったままの姿勢を起こした。
東の方でキラキラしていたお日様は、いつの間にか空高くに登ってしまった。
影の位置も変わったので、日差しが少し強く感じる。

「うーん、暑いな」

特別な場所が消えてしまったので、取りあえず家に退散。


sIs3/19 16:31:452191cfJbjQbv/Fe3k||654

- - - - - - - - - -


sIs3/19 16:32:52191cfJbjQbv/Fe3k||194

昼食のサンドイッチ(のような料理)を食べ終えて、リキが一息ついていたとき。
母親が皿を片付けながら、リキの方を向かずにこう言った。

「お庭ではしゃぐぐらいなら、お外で遊んできなさいよ」
「お庭がいいんだよぉ」

何も知らない母にリキは少しムッとした。

「何でお庭がいいの?どうせあの木の下で寝るだけでしょ?」
「う」

気付いていないと思って油断していたら、ほとんど見抜かれていたのか。
リキはしまった、と静かに呟いた。


sIs3/19 16:32:172191cfJbjQbv/Fe3k||851

「グルーグの方にでも行ってみたら?」
「グルーグまで?」
「この前公園まで一人で行けたでしょ。グルーグぐらい行けるわよ。
 思いっきり遊んでらっしゃい」

それ以上、母は何も言ってくれなかった。


sIs3/19 16:32:272191cfJbjQbv/Fe3k||286

- - - - - - - - - -


sIs3/19 16:32:412191cfJbjQbv/Fe3k||604

『グルーグ』とは、単なる地名である。
リキの家からそれ程遠くない、丘の名前。
公園より広いし綺麗だし、春から夏にかけてはいい遊び場である。


sIs3/19 16:32:532191cfJbjQbv/Fe3k||368

- - - - - - - - - -


sIs3/19 16:33:42191cfJbjQbv/Fe3k||390

公園より広いとはいえ、周りは五分もあれば一周できるほどの大きさ。
つまり、公園が狭いのだ。

「こんなところで何をして遊ぼうかなぁ・・・」

着いたにはいいが、何をしようか悩んでしまう。
それもそのはず、ブランコやシーソーなんて遊具はない。
というより、グルーグってほとんど平坦な草原で、遊べそうな道具すらない。

仕方ないから寝転ぶことにした。


sIs3/19 16:33:162191cfJbjQbv/Fe3k||767

- - - - - - - - - -


sIs3/19 16:33:272191cfJbjQbv/Fe3k||873

朝のようにリキがうとうとしていると、リキの耳に何かが聞こえてきた。
何か、不思議な音だ。こんな音は聞いたことがない。
そんな感じの音。

子供特有の好奇心が赴くままに、音源に向かって歩いていく。


sIs3/19 16:33:382191cfJbjQbv/Fe3k||121

- - - - - - - - - -


sIs3/19 16:33:512191cfJbjQbv/Fe3k||649

音源にいたのは、若い感じのする羊。
この羊も当然ながら、地球上で『羊』と呼ばれている生物に似たような生物だ。
何かを両手で持って、先の部分を口にくわえている。
さっき遠くで聞いた時よりも、はっきりと音が聞こえてきた。


sIs3/19 16:34:162191cfJbjQbv/Fe3k||619

やがて羊はリキに気付いたのか、手を止めてリキの方を振り向いた。

「やぁ・・・君は誰かな?」

さっきの音に似たような、穏やかな響きの声だった。

「え・・・えっと、リ、リキ・・・」

突然聞かれたので、リキは少し戸惑いながら答えた。
初対面の人にいきなり名前を教えていいのか、と思ったのだ。
だが、そんなリキの答え方は気にしなかったように、羊は笑いながら喋った。


sIs3/19 16:34:332191cfJbjQbv/Fe3k||923

「へぇ、リキ君・・・か。いい名前だね。
 僕はループっていうんだ。はは、変な名前でしょ?」
「え・・・えっと・・・」

ここで変な名前だと言ったら怒られそうな気もしたので、結局ごまかした。
それすらも悪い気がしたのだが。
別の話にしようと、リキは必死で口を開いた。

「あの・・・それ・・・」
「ん?これかい?」

ループは今さっきまで自分が使っていた細長い物を差し出した。

「それ、何・・・ですか」
「これはね、『笛』っていうんだ。
 ほら、こういう風にして使うんだよ」


sIs3/19 16:34:442191cfJbjQbv/Fe3k||116

そう言ってループは、また笛を吹き始めた。
さっきとは別の曲。ちょっと悲しそうな雰囲気がする、さっきとは全く違う感じ。
聞いたことのない音に少し驚きながら、リキは一生懸命聞いた。


sIs3/19 16:34:552191cfJbjQbv/Fe3k||929

- - - - - - - - - -


sIs3/19 16:35:102191cfJbjQbv/Fe3k||148

数分経って、ループの演奏が終わった時に、リキは思わず拍手をした。
悲しい感じだったけれど、凄く綺麗だったのだ。

「ははは、これだけで拍手をもらえると、何だか少し恥ずかしいな」
「ううん、凄く・・・凄かったです」

『これだけ』というには勿体無さ過ぎる、そんな物だった。
何と言うか、心に何かが落ちて響いたような、そんな感触がした。


sIs3/19 16:35:282191cfJbjQbv/Fe3k||473

「他に、曲はないんですか」
「うーん、沢山あるけど・・・何聞きたい?」
「何でもいいです」

もう一度、もう一度、あの感じを味わいたい。ただそれだけ。
だから、曲は別に何でもよかった。


sIs3/19 16:35:382191cfJbjQbv/Fe3k||682

「そうか、じゃあ適当に吹くね」

ループは少し微笑んで、また笛を吹き始めた。
その音色は、グルーグを通り抜けていくそよ風に乗って、リキ以外の他の者の耳にも、届いていったかもしれない。

日が傾き始めても、リキはループの演奏から離れようとはしなかった。


sIs3/19 16:35:542191cfJbjQbv/Fe3k||862

- - - - - - - - - -


sIs3/19 16:36:112191cfJbjQbv/Fe3k||286

* 後書き *

仔犬のリキシリーズ第二段。
やっぱりシリーズ化しましたよ。書いていて楽しいです。
でも、『絵本みたいにしてみよう』とどんなに頑張っても、私はこれが限界みたいですよ。
うーん、やっぱシリアス路線に替えようかな・・・。

桜もちょっと長いくらいだったのに、笛吹きはもっと長くなってしまいました。
削ろうと思っても、どこを削ればいいか分かりません。
長い割に退屈な話です、すみませんでした。

ちなみにループさんの名前は手抜きです(殴)



本文(<>," shift+7使用不可)
 ※メルアドや電話番号を公表してはいけません、荒らしを批判するのは「俺が神掲示板」以外は禁止!
 
特殊文字 by.チビファンタジー 過去ログ
無料ゲーム総合サイト: おもしろフラッシュ総合サイト: PS2:GBA:PSP:NDS:GC:XBOX