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802ファンタジー小説「天使の舞う夜」龍華6/9 18:58:362101cf9n75TL7kc5o
暗闇の森の中を、鎧を着た男が一人走っていた。
すでに男は何処をどう走っているのかすら判らなかったに違いない。
一緒にいた筈の仲間もすでに散り散りになり、居場所はもはやわからない。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
近くから仲間のものと思える悲鳴が聞こえ、男は恐る恐るそちらにむかう。
「おい、大丈夫………っ!!」
月明かりに照らされ男の仲間の姿が見えてくる。
四肢はバラバラになり、ありえない方向に曲がった首は恐怖の表情を湛えたまま息絶えていた。
…バズ!
男は本能的に逃げようとしたのが先か…
それともそんなことすら考えさせる時間も無かったか…
何者かによって男の首は宙へ舞った。

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「…っにしても何なんだこの村。」
鼻の頭から左頬にかけて傷のあるガラの悪い剣士―フェルダが呟く。
「まぁ、なんにしても歓迎されているんですから良いんじゃないんですか?」
金色の長髪をポニーテールにした魔道師―ガイラは先ほど露天で貰った果物をかじりながら言った。
「食べます?おいしいですよ。」
「あたしほしい!」
ガイラの差し出した果物を一緒にいた黒髪の少女―トルティナが有無を言わさず奪い取る。
「そんなに慌てなくてもまだありますから。」
フェルダ達はこの三人で旅をしていた。
旅の目的は特に無い。
日常が暇すぎた、それで理由は充分だった。

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「あ!池だ!!…魚とかいるかな?」
トルティナは一目散に池に向かって走り出す。
「ティナ!転ぶなよ〜!」
フェルダの言葉に手だけを振って答えまた走り出す。
「はぁ…、まぁいっか。それはそうと話を戻すがその歓迎振りが怪しいんだ。」
「フェルダさん疑り深いんですね。」
「お前らより二年はやく流離い人やってんだ、匂うんだよ。それに…」
あたりを見渡しフェルダは両の手を天にかざす。
「この村、風がおかしい…。」
「師匠ぉ〜!ガイラぁ〜!」
フェルダの言葉をさえぎるようにトルティナの声が響く。
二人がその声の方向を見るとトルティナの横に初老の男性が立っていて、フェルダたちの視線に気がつくと軽く会釈をした。

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コノ人がねぇ!何か話あるってぇ!!」
「フェルダ…、貴方の感は良く当たりそうですね。」
「…だろ。時々いやになる。」

『…人探し?!』
フェルダとガイラの声が綺麗にハモる。
「はい、うちの村の自警団が三週間前に森に定期調査に入って以降未だに戻ってこないんです。報酬はそれなりに用意いたします。」
「…なぁ、ホントに『ソレ』だけか?」
「え…まぁ。」
自治会長となのったその初老の男はばつの悪そうにそう言った。
その部屋にトルティナのジュースをすする音以外しなくなる。

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「あの…引き受けて下さいますか?」
「自警団の人数は?」
フェルダの突然の問いに初老の男は戸惑いを隠せなかった。
「え?」
「だから人数。」
「…八人です。」
「森のどこら辺調べに行った?」
「川の上流の泉です。」
「ココからどれくらい掛かる?」
「…えっと…片道約半日強です。」
「パス」
『えぇぇぇ!!!』
フェルダの一言に残り三人の声が重なった。
「そこまで質問攻めにしといて受けないんですか?」
「そうだよ師匠。それに結構お金くれるって言ってるのに…」
「うるさいな…、じゃぁ最後に質問。これでお前らもパスしたくなるはずだぜ。」
そういうとフェルダは椅子に座りなおし、初老の男を見据える。

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「自警団以外で消えた人数は?」
ソレを問われると男は何も言わなくなる。
顔色が青ざめいているのが何か隠していることの充分な証拠だ。
「三週間まえに消えた。なら異変に気づいたのは森を出発して三日後。
一日もかければ隣町まで行って帰って来ることは可能だろ?馬を飛ばせば。
国の捜索隊が来たに違いない。しかし、未だに見つかってないのに捜索隊の姿も形も無い。捜索隊も行方不明なら兵士が来るはず。
…なのになぜ俺達に頼んだと思う?」
フェルダがそこまで話すと初老の男は小刻みに震えだした。
「兵士も消えて、国はこの村を見捨てた…。違うか?」
初老の男はうつむいたまま顔を上げなかった。

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「悪いが、そんなやばそうな仕事を何も話してくれない連中の為にするのはゴメンだね。他の奴らに依頼してくれ。」
そう言ってフェルダは立ち上がる。
「ガイラ、ティナ行くぞ。」
ガイラとトルティナが互いに顔を見合わせる。
「師匠…」
「フェルダさん。」
部屋に嫌な沈黙が立ち込める。
「…それを言えば…」
それを打ち破ったのは初老の男性だった。
「言ってしまえば…だれも引き受けてくれない…!!
今までに何人にも話したが受けてはくれなかった!
秘密にしていたことは謝ります!!ですから…自警団の…私の息子の安否を!!
…お願いします…」
最後の言葉を涙でかすらせながら初老の男は言った。

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フェルダは振り返らずに口を開く。
「確認したところで、最悪のことになってる可能性の方が高いぞ。」
「…それでも、構いません…」
「ガイラ、ティナ。すぐに支度しろ、行くぞ。」
「師匠!!」
トルティナが我慢できずに立ち上がりフェルダの服をつかんだ。
「見捨てるの?!」
フェルダが見下ろすとトルティナは今にも泣きそうな顔をしてる。
ガイラも同様に不満を浮かべている。
「だから、すぐに支度しろ。」
フェルダは優しく、髪をなでながらトルティナに言った。
「おっさん、俺達が帰ってくるまでに報酬用意しとけよ。俺達は事前報酬は貰わない主義だからな。」

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結局、どんなに速くしたところで出発準備が終わった頃には夕暮れになっていた。
「さてと、怪しいところを探すか。」
フェルダはそういって森の中に入って行くが進む方向が泉の方向とは違う。
しかし、それを誰も深く言わない。
「ねぇ師匠、もしかしてあれやるの?」
「その方が早いだろ。」
「まぁ、この森には私達以外は『人』はいないですから問題は無いでしょう。」
彼らの前に崖が現れた。
その崖を見上げフェルダは気合を入れた。
「よっしゃ!!行くか!!」

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一体どうやったのか?
フェルダ達は普通半日掛かる場所に二時間足らずで到着していた。
空には綺麗な月が浮かんでいた。
「ティナ、どうだ?」
「うーん、無い。なーんも無い。」
泉を見渡せる位置に登ったトルティナは遠くを眺めながら言った。
「それにしてもよく見えますね。夜なのに。」
「アイツの目は梟並だな。」
フェルダたちが下で待っているとトルティナが叫んだ。
「何かいる!!下の森になんかいる!!」
「何かってなんだ?」
「わかんない!でもスッごいスピード!!こっち来る!!」
トルティナが器用に上から降りてくる。
「フェルダさん、トルティナさんココに来て下さい。」

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岩陰のガイラの元に近づくと魔法を発動させた。
魔方陣が三人を包む。
「声を出さないでくださいね。」
こくりと二人は首を立てに振る。
その刹那、川下から何かが月光の元に躍り出た。
全体的に黒く、手のひらが以上にデカイ、長く鋭い爪は生々しく光っている。
耳元まで裂けた口、その背中にはこうもりのような翼があるが所々破けてしまっているので飛べそうにはない。
人の成れの果て異形の存在、そんな言葉がぴったりだった。
その異形の存在は三人を探すかのようにあたりを見回る。
フェルダ達の隠れている岩陰を覗き込むが何もせずに他へ行く。

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「ドコダ…」
異形の存在はそう呟くとその場から消えて行った。
あたりから気配が消えたのを確認してガイラは術をといた。
「駄目元でやって見ましたが、この術で私達が見つけられなくなったと言う事は…」
「間違いない、悪魔かキメラかそんなとこだな。」
「でも確認されてから全然この森から出てないから悪魔じゃないの?」
「…いや、両方でしょう。」
ガイラは岩陰の奥を覗き込んで言った。
「両方?」
「ここ、見てください。」
岩の奥に壊れた石造がある。

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「これが壊されたのはつい最近ですね。誰かが壊し地霊魔を開放してしまったんでしょう。単なる地霊なら言葉は話しません。誰かを乗っ取ったんでしょう。」
「サタンキメラ?最悪ぅ〜」
「ま、そういうな。ちょっと厄介だが俺達の敵じゃないね。」
そう言うとフェルダは岩陰から姿をさらす。
「おーい、怪物!お前が探してるのはここにいるぞ!!」
ガザザザザザ!!
草むらからものすごい音をたてて奴が近づいてくる。
「…っ!」
そして草むらから奴が出てくるのとほぼ同時に、フェルダは文字通り宙を舞う。
異形の存在もソレを追い飛ぶ、がどんなにジャンプ力があろうともフェルダの高さまで追いつく事はできない。

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異形の存在の爪はフェルダの服のすそを軽く掠めただけでむなしく宙を切る。
そいつは理解出来たであろうか?
何故フェルダに手が届かなかったか。
自分よりも速く動き、自分よりも高く飛ぶ生き物なのいなかったのだから。
「くらえ!!」
「グガァァァ!!!」
そいつが理解するよりも速く、フェルダの剣が相手の体深くに刻みこまれる。
とっさにフェルダはその剣を離し後ろに飛ぶ。
瞬間今までフェルダのいたところを爪が空を切る。
「おっと危ない危ない。」
「キサマラァァ!!」
体に深く剣が刺さったまま異形の存在はトルティナの方に走る。

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最初の時のようなスピードではない。
だが子供相手なら通用するはずだった。
…普通の子供なら。
異形の存在がたどり着く前にトルティナも空高く舞っていた。
「困るな〜、あたし非戦闘要員なんだから。」
「ま、所詮地霊ごときが俺達『天使』にかなうわけないんだよ」
「そういうことです。」
そう言ってガイラは自らの手のひらから光を放ち…
…異形の生物が見たのはその光景がラストだった。

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フェルダたちが村に戻ったのはその次の日の夕方近くになったいた。
「おっさん、戻ったぜ!」
「…戻られましたか!!よくぞご無事で…!!」
「えっと…、おじさんあのね…」
トルティナが言いにくそうにしていると初老の男性は何かを悟ったのか悲しげに黙ってしまった。
「…まぁ、でも落ち込むなよ。俺達は原因は退治したけど自警団の死体を見つけたわけでもなんでもない。国の人間の死体は確認したけど。」
あの後夜通し歩き続け、何人もの無残な死体を発見していた。
バラバラになり、野犬などに荒らされたせいもありハッキリした人数が確認できなかったのは確かだ。

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しかしその多くが鎧兜を纏っていた国の人間だった。
帰るのが遅くなったのはその遺体を全て埋葬していたからである。
「…だから、報酬はいらねぇ。依頼を全うしてないんだからな。」
「しかし…原因は退治してくれたと…」
「成り行きでそうなってしまっただけです。気にしないで下さい。」
「そのお金、山に眠ってる兵士の供養に使ってあげて。」
「しかし…」
初老の男性はばつの悪そうな表情を浮かべる。
「なら…」
フェルダが少し考え込んだ後声をあげた。
「あったかい御飯とふかふかのベッドをセットで無料で一泊お願いできますか?」

龍華6/9 19:10:592101cf9n75TL7kc5o||851
―終わり―
っつうことで文章能力が少し戻ってきたので小説書いて見ました〜。
小説っていうかSSって感じですが(笑)
格闘シーン書くのが苦手なのがばればれですねコレ。

loveless6/9 20:38:22201cf2pxpT6OlND6||755
おおー!
すごい好みの文章で、夢中になって読ませて頂きましたw
これからも、頑張ってくださいw

龍華6/10 0:23:42211cffOt4EHNy6.w||117
lovelessさん有り難うございます。
お褒めの言葉は何よりの私の糧になります。
頑張ります!!

銀月6/10 4:43:562182cfLMvpixotkc6||902
コバワですw
面白くって、一気に読みきりました!
最近全然本を読んでなかったので、頭の活性化にもなりました^^
トルティナのキャラがなんか可愛くていいですw
続きを書かれるのでしたら楽しみにしてます〜☆

龍華6/12 1:41:392211cfbDF4OjYgEbQ||985
銀ちゃんコンバンワ〜☆彡
キャラを気に入ってもらえるなんて作家冥利につきます。
続きは何とか一日考えたら浮かんだので文章上がりしだいこっちに持ってきます。
多分早くて来週の水曜かな?


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