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8349リキとお絵描き(読切小説)sIs5/22 22:15:321252cf0MNeLIaTrdk
※話が途中で遮られたら困るので、『* 後書き *』が載るまでレスはご遠慮願います。
※作品に関する批判は構いませんが、それ以外での批判や冷やかしは帰って下さい。
※勿論、荒らしも帰って下さい。

【仔犬のリキシリーズ】
(3月)リキと桜    http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-7845.html
(4月)リキと笛吹き http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-7936.html

sIs5/22 22:15:441252cf0MNeLIaTrdk||842

五月になると、急に世界がかんかん照りになる。
七月の暑さよりも鬱陶しい、寒さに慣れきった体で感じる陽気が立ち込める。
外で遊ぶのが嫌になる。

リキは手足をだらしなく伸ばして、床に寝転がっていた。
体を覆う立派な毛皮もうなだれている。
声にも力が入らなくなって、どうしても擦れてしまう。

「あーあづい・・・」


sIs5/22 22:15:531252cf0MNeLIaTrdk||32

もう外へ出る気にもならない。
いいや、今日は家の中でグダグダになろう。
そう考えていたリキの目に映る一つの影。

「こら、そんなところで寝ないッ!」

あ、母さんだ。

「なぁーにぃー?」
「どきなさい、ほらっほらっ」

片手に箒を持ちながらリキを追い払う。
無視したらきっと火山が噴火するから、仕方ないがどくことにする。

そして別の部屋でグダグダになる。


sIs5/22 22:16:01252cf0MNeLIaTrdk||931


- リキとお絵描き -



sIs5/22 22:16:131252cf0MNeLIaTrdk||939

「リキー、こっちおいでー」

しばらくしてから、家の掃除を終えた母親はグダグダになったリキを呼んだ。
さっきは『どきなさい』だったくせに。

「なぁーにぃー?」

さっきと同じ間の抜けた返事をしながら、リキは老人のような足取りで歩く。
母親のところへ行くと、母親は両手に山積みにした白くて薄い物を持っていた。

sIs5/22 22:16:241252cf0MNeLIaTrdk||150

「何それ」
「あら、スサルフも知らないの?」
「うん、知らない。
 っていうか、お母さんそんなの見せたことなかったじゃん」

リキはそのつもりはなかったのだが、母親は大分驚いたようだ。

「・・・あ、あらそうだったかしら」
「うん。で何それ?」
「『スサルフ』。沢山余ったからあげる」

そういうと母親は殆ど押し付けるようにしてリキに渡した。
しかしリキは受け取ろうとしない。

sIs5/22 22:16:411252cf0MNeLIaTrdk||461

「どう使うの?」
「えっとね、『ラケリス』を使ってね・・・」

母親が先が尖った細長い棒のようなものを出す。

「こうやってスサルフに押し付けて擦れば」

ラケリスをスサルフに押し付けて手を動かす。
ラケリスの通った後が黒くなっている。

「・・・ほらね。で、間違えた時は」

今度は白くて四角い物を出す。
一見固そうだが、よく見ると柔らかそうな感じだ。

「『オリフト』を使ってこうすれば」

ラケリスの線をなぞるようにして、母親はオリフトを動かす。
すると今度は、ラケリスの線が綺麗に消えている。

sIs5/22 22:16:521252cf0MNeLIaTrdk||557

「ねっ、消えたでしょ」
「・・・ふーん・・・。で、これを何に使うの?」
「な、何って、文字を書いたりとか・・・」

文字を書き出す。

「絵を描いたりとか・・・」

絵を描き出す。
ここでリキの目が微かに輝いた。

「そういう風にして遊ぶの。
 スサルフもラケリスもあげるから、これで遊びなさい」
「ありがとっ」

今度はリキが殆ど奪い取るようにして受け取った。


sIs5/22 22:17:01252cf0MNeLIaTrdk||483

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sIs5/22 22:17:91252cf0MNeLIaTrdk||789

山積みになったスサルフから一枚とって、ラケリスを押し付ける。
ラケリスを持っていない手でスサルフを押さえる。
そのままラケリスを持った手を動かす。

「わ、出来た!」

リキが初めて描いた、押し付けすぎて滲んだ線。
更にスサルフが軽く変形している。
しかしリキは構わず次の線を描き始めた。

「わはーっ、面白ーい!」

次から次へと線を描いていく。ただそれだけ。でもそれでいい。
リキはこの不思議な遊びが出来るだけで満足だった。


sIs5/22 22:17:171252cf0MNeLIaTrdk||283

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sIs5/22 22:17:311252cf0MNeLIaTrdk||562

そのうち山積みになっていたスサルフも半分ほどに減り、そろそろリキも線描きに飽きてきた。

「何かつまんないなぁ・・・」

そう言い出すと、ラケリスもオリフトも放り出して床に大の字になった。
左目の視界の端に線がいくつも描かれたスサルフが散らかっているのが映っている。
書いてあるのは勿論線ばっかり。
直線からぐにゃぐにゃした曲線まで色んな線はあるものの、どれも所詮は一本の線。
それ以上もそれ以下もない。


sIs5/22 22:17:441252cf0MNeLIaTrdk||349

暇になったから何気なく辺りを見回してみたりする。
向こうに何にもない本棚がある。その向かいには机がある。
窓が一個だけあるけど、外はよく見えない。
家の中でも日当たりが悪いこの部屋は、元々リキの父親が使っていた・・・。

「・・・あ、そうだっ」

sIs5/22 22:17:511252cf0MNeLIaTrdk||826

リキは何かを思いついたらしい。
突然起き上がって、放り出したラケリスを急いで掴み、まだ何も書かれていないスサルフを一枚取る。
一生懸命何かを描いている。どうも線ではないらしく、時々間違えたところを消したりする。

「・・・ここをこうして・・・あ、ここは違うや、えっと・・・」

まるで何かにとり憑かれたかのように、恐ろしいスピードで書き上げていく。

sIs5/22 22:18:01252cf0MNeLIaTrdk||457

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sIs5/22 22:18:161252cf0MNeLIaTrdk||259

「リキー、ご飯よ?」

昼過ぎにスサルフやラケリスを息子にあげた母親は、息子を呼びに部屋まで行った。
ドアを開ける。そして足を止めて「うわっ」と小さく漏らす。

「あ、お母さん。何、ご飯?
 もうちょっと待ってー」

スサルフの山に埋もれながら、必死になってまだ何かを描いているリキが返事をした。
あんなにあげたスサルフは、もう半分も残っていない。

sIs5/22 22:18:231252cf0MNeLIaTrdk||726

「何描いてるの?」
「もう少しだから待っててー」

母親には目もくれず、ひたすら描いている。
息子が必死になった姿を見て、彼女は少しため息をつきつつも部屋を後にすることにした。
滅多に没頭することがない息子があれだけ頑張っているのだ、もう少し待ってあげよう。

sIs5/22 22:18:301252cf0MNeLIaTrdk||918

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sIs5/22 22:18:491252cf0MNeLIaTrdk||7

「出来たーっ!」

リキが歓声を上げる。
次の瞬間、ドタバタとうるさい足音が響く。
やっと出来たか、と母親は急ぎ足の息子を迎え入れた。

「おかーさーん、見て見て!」

姿を現すや否や、リキは母親の眼前に一枚のスサルフを押し付けた。

「はいはい、どーしたのそんなに・・・。
 ・・・!」

リキが押し付けてくるスサルフを見て、彼女は息をのんだ。
三匹の犬が描かれている、くしゃくしゃで黒くなったスサルフだ。

sIs5/22 22:18:581252cf0MNeLIaTrdk||960

「・・・これは」

真ん中で笑っている一番小さな犬は、恐らくリキ自身であろう。
そして、左側ではリキと手を繋いで同じく笑っている雌犬、多分彼女が描かれている。
更に右側には・・・。

「へっへー、お父さんも描いたよ!」

やっぱりリキと手を繋いで笑っている一番大きな犬が描かれていた。
リキの父親であり、彼女の夫である犬だ。

sIs5/22 22:19:71252cf0MNeLIaTrdk||403

「お父さんとお母さんって『べっきょ』してるんでしょ?
 ・・・早く三人で一緒に遊びたいね」

リキは笑顔で母親に語りかける。
でも、語りかけられた母親はうつむいていた。

「・・・お母さん?」
「そう・・・ね」

溢れ出てくる感情を抑えつけて、母親は頑張って顔を上げた。
その顔には、一滴の涙が通った跡と満面の笑顔があった。

sIs5/22 22:19:141252cf0MNeLIaTrdk||387

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sIs5/22 22:19:241252cf0MNeLIaTrdk||385

* 後書き *

最後、この終わり方は一体何なんでしょう・・・泣くって。
お母さん、泣いたらダメでしょうが(そんな話を書く私はもっとダメでしょうが)

五月は話を書けそうな季語が無かった為、急遽『お絵描き』というネタで・・・。
来月分はしっかり季語を基に書きます。
・・・どうせ予測できる内容なんだけどね(爆)


マハザン5/23 2:59:72102cfXZy02qfwov.||604
sIs様、こんばんは。
感想を少々・・・。
登場人物が「犬」ってのが、
またなんか、こう、不思議ですね。
状況の描写とキャラのセリフが、うまい具合に混ざってていい感じですな。
あと「グダグダ」って言葉が、いい味出してます(笑)

あ、「小説の方法?」スレでは、返信、ありがとうございました。
芸術は心だっっっ、ということを改めて実感。

sIs5/23 16:54:451252cf0MNeLIaTrdk||478
>マハザンさん
感想ありがとうございます(o_ _)o

日常にありそうだけどない話、それが私の書いてみたかった小説。
登場人物を人ではなくあえて『犬』にしたのは、そういう理由があります。
『グダグダ』はカタカナで使ってみたかったんです。平仮名だとイマイチ伝わりにくい気がしたので。

『小説の方法?』スレタイはとにかく(爆)、かなり有意義なスレだと思います。
マニュアル通りにやっててもいい作品は書けないよ、ってことを改めて教えていただけた気がします。

☆マリン☆5/23 18:3:291248cf5g/tRUZThkQ||677
こんにちゎ。 引き込まれるほどすごい!! 私なんてそんなコード↑↑な技(わざ?)なんて出来ません!! これからまた書くとしたら、ガンバッテクダサイ!!。・゚・(ノД`)・゚・。

sIs5/24 0:6:151252cf0MNeLIaTrdk||98
>☆マリン☆さん
感想ありがとうございます。
作中の中に引き込まれてくれたなら凄く嬉しいです。
引き込まれたついでに、リキ君と戯れてやってください。きっと向こうも喜びます。

感想貰っておいてこんなこと言うのも何なんですが、これから私のスレへ書き込むときは出来るだけ喋り方に気をつけていただきたいと思います。
個人的に少々気になりました。

炎髪灼眼の討ち手5/25 21:7:336062cf2Mp.ZYODUNA||54
のめりこみました(液晶画面に)。
いや〜ときどきチラリとsisさんの作品は見させてもらってますが、今回のもまたいいですね〜
感動ッス先生(ノ∀`)

sIs5/25 23:49:31252cf0MNeLIaTrdk||83
>炎髪灼眼の討ち手さん
感想ありがとうございます。かつてない3人目(何っ)
の、のめり込んだんですか。申し訳ないですが、修理費は出せません(違)

チラリ、ですか。
見てくださっていたのなら、もっと積極的に感想言ってOKだったのに。
次はもっと感動してもらえるように、先生頑張りますよ!(悪ノリ)


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