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8424真夜中のスクールメイト―人狼少女・後編―空華6/4 21:52:02031cfugNPyUOK282
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空華6/4 21:52:392031cfugNPyUOK282||475


++人狼少女・メアの物語、後編です。
       なぜかとても長いので、ご注意を++


空華6/4 21:53:42031cfugNPyUOK282||846
……どうしよう。
いつ、どう切り出せばいいのか。遅くなればなるほど、危険は増すというのに。
迷ううちに、好奇心いっぱいの彼らは、次々に質問してくる。

「なんで、夜しか人に変われないんだ?」

その質問を受けたとき、少女の表情が、微かに歪む。
尋ねたジーンが、ちょっと首を傾ける。
それに小さく首を振って見せてから、少女はぽつぽつと話しだした。

「わたし……本当は、全部人狼じゃないです。半分だけ、光魔界の人の血が混ざってるんです。
 だからなのか……分からないですけど。嫌いに、なれないんです、ジーンさんや、エリスさんを。
 でも、他の皆はそういうの、許せないって」
「……じゃあ、それで?」

空華6/4 21:53:342031cfugNPyUOK282||736
最初は「夜しか人になれない」ことを言われたのかと思ったが、少年の視線は自分の身体に向けられている。
怪我のことだと、少女は気が付いた。もしかしたら、涙のことも。
彼女は頷いて、続けた。

「でも、違うって……思うんです。だって、昔のことでしょう?今いがみ合う理由なんて、ないです。
 それに誰だって、怖いじゃないですか?自分に、何かしそうなものが。
 だから何もしなければ、仲良くできます、きっと。
 お父さんと、お母さんみたいに……」

よしよし、と慰めるような手が暖かい。
ジーンのものか、エリスのものか、あるいは両方か。
……少女は、息を吸った。今、言うしかないと。

空華6/4 21:54:102031cfugNPyUOK282||162
「でも、他の人はそう思っていません。だから、もう、ここにいちゃ駄目です」
「え?」

エリスの方が、きょとんと声を上げる。
ジーンは、にっこりと笑顔を浮かべた。

「大丈夫だよ。オレたちは、一応だけど王族だ」
「他の人たちは、あなた達を殺すのを、少しも迷いません!駄目なんです、こんな所にいちゃ……!」

少女の初めての厳しい声に、ジーンもエリスも、少なからず驚いたのが見て取れた。
やがて彼らが「分かった」と頷いたそのとき―――
少女は、遅かったことを知った。

「光のガキ……それも王族の」

空華6/4 21:55:492031cfugNPyUOK282||556
少女は弾かれたように、首を巡らせる。
半ばぽかんとしたように、こちらを見ている姿が目に入った。
少女も知っている、彼女の家のすぐ傍に住んでいる男だった。
彼はしばらくこちらを見ていたが、やがて踵を返して村へ走っていく。
それが逃げたのでないことは、分かる。

「ジーンさん、エリスさん……早く、逃げてくださいっ」

彼らを押すようにしながら、少女は言った。
人狼の足は速い。早くしないと、それらはすぐに来てしまう。

「……君、名前は」
「そんなこと、言ってる場合じゃ……」
「いいから、教えて」

ひどく真剣になったエリスの目に見つめられて、少女は素早く答えた。
焦りに、突き動かされて。

空華6/4 21:56:112031cfugNPyUOK282||783
「メア」
「よし、メアちゃん……おいで!」
「え……?」
「エリス!上だ」

りょうかーい、と明るく声を上げて、エリスはメアの身体を軽々と持ち上げた。
ええ、と困惑と驚きの声をこぼすメアを抱きかかえて、飛んだ。
……当然のように、それまで何も無かった背に黒い翼を広げて、飛翔した。
高く高く、昇っていく。
その中途で、メアをジーンに渡す。そのジーンに、空中で問われた。

「話の続き。そのお母さんとお父さんは?」
「……もう、いない」

胸の痛みを感じながら言った言葉で、通じたのだろう。
金髪の少年はメアの頭を軽く撫でた。
そして、エリスと向き合う。

空華6/4 21:56:532031cfugNPyUOK282||437
「オレらの還るほうが、早いよな」
「もちろん。メアちゃん……選択だよ。10秒以内に答えて。」
「ここに残るか?」
「一緒に行くか?」
「……行きます」

焦りと共に反射的に答えた言葉に、何故か後悔は生まれなかった。
見下ろした先に、黒い点が幾つも見える。
弓矢などを持ち出されてはたまらないが、早いと言っている。
……きっと、大丈夫。なぜだか、そう思えた。

ジーンとエリスが、指先に文字と光を紡いでいる。
それらが収束して、輪のようなものを作り出した。

メアはもう一度だけ、視線を落とした。
声に出さず、「さよなら」と呟く。瞬いた拍子に、残っていた涙が一粒だけ流れた。

空華6/4 21:57:122031cfugNPyUOK282||552

『世界と世界に関があり
 表と裏に扉あり

 我ら開くは表裏の扉
 光は鍵とし 闇の道

 我ら通るは光陰の道
 鍵は煌く道しるべ

 今 ここに―――扉よ、開け』

空華6/4 21:58:232031cfugNPyUOK282||345


――その輪を通って。
光へ。
幸せへ。
たどり着けたことを、幸運に思う。



空華6/4 22:1:512031cfugNPyUOK282||892
+後書き+

妙に長かったメア編でした。
おかしいです、長いです。
多分、過去とかいろいろ語らせたからでしょう。

裏・光魔界について補足します。
あれは同じ世界の表裏なので、「扉」を開くことによって移動ができます。
ただし高位の魔術なので、王族と専門の魔術師くらいしか使用できません。
世界を移動する、「関」を越えるのはもっと難しいです。
王族くらいです、できるのは。

ということです。
分からなかった点があれば、どうぞ。
読んでいただき、有難うございました^^

キーア6/6 20:7:582191cf/cZWdmfTKcw||211
メアはそうやって光魔界にやってきたのですか・・・。
ジーンとエリスとっても優しいです*^^*
でも、10秒以内に答えろというのは・・・。
それだけ急いでいたのですね^^;
最後の言葉もとても心に残ります。

まだ番外編が続いてくれるのかな?
これからも頑張ってください

空華6/17 12:5:52031cfugNPyUOK282||399
返事が大変遅れてしまい、申し訳ないです;

キーア様、毎回有難うございます^^
ジーン・エリス・メアの少年少女時代が書けて、楽しかったです。
幼少時代とかも面白そうかな、などと思ったり。

番外編は、あと一つです。
また前後編になってしまってます(苦笑)


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