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8501リキと雨の帰り道(6月の読切)sIs6/20 17:41:271252cf0MNeLIaTrdk
※『* 後書き *』が載るまでのレスはご遠慮を。
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【仔犬のリキシリーズ】
(3月)リキと桜      http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-7845.html
(4月)リキと笛吹き   http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-7936.html
(5月)リキとお絵描き http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-8349.html

sIs6/20 17:41:381252cf0MNeLIaTrdk||73

「もう一回やろうよー」
「あのさ、二人で何回もやって面白い?」
「面白いよ、だからもう一回」
「・・・もう一回、もう一回って、もう何回目かね」
「・・・い、いいじゃん・・・」


sIs6/20 17:41:451252cf0MNeLIaTrdk||590

「・・・あ、雨だ」
「えっ?・・・あ、ホントだー」
「今日はもう帰ろっか」
「雨のせいにして帰るのかよ」
「・・・さー、どっかにアギの葉っぱないかなー」
「・・・うっわ、逃げやがった」


sIs6/20 17:41:591252cf0MNeLIaTrdk||317

「・・・あったあった、これは二人とも入れるぞ」
「ホントだね」
「家まで送って行ってやるよ」
「えっ・・・でも」
「いいっていいって! さ、濡れる前に帰ろ」


sIs6/20 17:42:101252cf0MNeLIaTrdk||130


突然降って来た雨の下の、いつかは流れていくお話。



sIs6/20 17:42:201252cf0MNeLIaTrdk||390


- リキと雨の帰り道 -



sIs6/20 17:42:341252cf0MNeLIaTrdk||325

「ねー、スー兄ちゃんはお腹減った?」
「ん?ああ、お前とずっと遊んでたからなぁ」
「何だよ、それ」

リキはぷくーっと膨れ上がった。
その横でリキより背の高い子供が笑う。


sIs6/20 17:42:441252cf0MNeLIaTrdk||914

「ははっ、嘘だよ」
「・・・兄ちゃんの嘘はホントでしょ?」
「なっ、何を・・・」

今度はリキが笑う。
上では大きなアギの葉っぱが左右に揺れながら、雨の音楽を奏でている。


sIs6/20 17:42:581252cf0MNeLIaTrdk||70

スー兄ちゃんは、リキより三つ年上の猫。
近所に住んでいるけれど、一人っ子のリキにとっては兄弟も同然。
スー兄ちゃんの方もリキを弟のように可愛がっている。
リキは甘えっぱなしだ。


sIs6/20 17:43:161252cf0MNeLIaTrdk||838

「おっ、リキ、あれ見てごらん」

スー兄ちゃんが前方を指差す。

「んー、何?」

リキは目を凝らしてスー兄ちゃんの指先を見る。
緑色の、ぬめぬめしていそうな体の小さな生き物がいる。

「レピだよ。こんな日に珍しいなぁ」
「うげっ、気持ち悪いよ・・・」
「そっか?」


sIs6/20 17:43:311252cf0MNeLIaTrdk||988

気付けばスー兄ちゃんは鷲掴みにしている。

「ギャー!兄ちゃん、汚い、汚いってばぁ!」
「そんなことないよー、ほらぁ、レピだよー」
「近づけないでよーぉ!」

半泣きになりながら、リキはアギの葉っぱの外に出てしまった。

「・・・そんなに嫌がることないじゃんか・・・」
「だって・・・気持ち悪いもん」
「俺も気持ち悪いみたいになってたよ・・・」

スー兄ちゃんはすっかり傷ついたようだ。

「・・・でも手に持つなんて」

レピを逃がした後も、リキはスー兄ちゃんから離れている。


sIs6/20 17:43:461252cf0MNeLIaTrdk||872

「そんなにダメだった?」
「うん、僕だったら絶対触らないもん。
 つつきたくもないよ」

リキはそっぽを向いた。
そのまま無言で、二人はしばらく歩く。


sIs6/20 17:44:21252cf0MNeLIaTrdk||971

「・・・なぁ、レピのことなら謝るから」
「どうせそれも嘘なんでしょ」
「何で嘘つくんだよ、こんなときにさ」

信用されないので自棄になりつつあるスー兄ちゃん。
反対にリキは微笑んでいる。

「いいって、もう許してるからさ」
「・・・ホントか?」
「僕はスー兄ちゃんと違って嘘つきじゃないもん」
「お、俺だって違うよ」
「ホントかなぁー?」

意地悪く笑うリキ。その顔は三歳とは思えない。


sIs6/20 17:44:191252cf0MNeLIaTrdk||442

「・・・あ、スー兄ちゃん、あれ見て」

今度はリキが前方を指差した。

「ん?」
「ほら、あれ」

リキが指差しているのは、葉っぱの上をのそのそ進んでいる生き物だ。
背中に大きな巻貝を背負っている。

「うげ、ジュグかよ」
「可愛いねー」
「・・・ど、どこがだ」
「え、可愛くない?あんなにノロノロ歩いててさぁ」

などと言いながら、リキはジュグを鷲掴みにした。


sIs6/20 17:44:331252cf0MNeLIaTrdk||335

「うげぇ!お前レピがダメでジュグが大丈夫って、何だよそれ」
「レピに比べたら全然気持ち悪くないよ?」
「す、捨てろよ!」
「・・・何だよー、レピは平気だったくせに」

リキは偉そうに言うが、結局はお互い様だ。

「・・・帰ったら手、洗えよ?」
「スー兄ちゃんもね」
「お、俺は毎日洗ってるよ、うん」
「僕だって」

本物の兄弟のような、何の隔てもない会話だ。
リキがこんなに楽しそうな会話をするのは、こうやってスー兄ちゃんと話しているときぐらい。
それぐらい、リキにとってのスー兄ちゃんの存在は大きなものなのだ。


sIs6/20 17:44:541252cf0MNeLIaTrdk||59

またしばらく無言で歩き続けると、またスー兄ちゃんが何か見つけた。

「おっ、リキ、今度は気持ち悪くなんかないぞ」
「・・・ホントかなー?」

リキはからかう。

「いや、ホントだって。ほら、あれ見ろよ」

そういってスー兄ちゃんが指差していたのは、生き物じゃなくて花。

「・・・何、あれ」
「綺麗だろ、パニザだよ」

丸い花が一輪咲いているのではなくて、いくつもの小さな花が集まって丸くなっているらしい。
その数はそれぞれ違うが、平均すると四十ぐらいだそうだ。


sIs6/20 17:45:111252cf0MNeLIaTrdk||15

「うん、綺麗だね」
「青いのと、紫のとあるぞ」
「紫の綺麗だねー」
「そうだなぁ。でも赤はないんだよな」

スー兄ちゃんは首をかしげた。

「そういえばないねぇー」

リキも同じようにして首をかしげる。

「黄色とかもないね」
「・・・いや、黄色は似合わないだろ」
「え、じゃあ茶色とか」
「お前、もうちょっとマシな色考えろよ・・・」

どうもリキは芸術に関心がないらしい。
黄色や茶色はパニザには似合わないだろう。
極端に明るかったり暗かったりする色じゃなくて、青ぐらいの色調がぴったりの花なのだ。


sIs6/20 17:45:321252cf0MNeLIaTrdk||884

「・・・あ、雨」
「お?・・・おぉ、止んだな」

アギの葉っぱを下ろして、リキとスー兄ちゃんは空を見上げた。
雲の隙間から小さな晴れが見える。

「おお、虹だぞ」
「え、どこ?」
「ほら、あれ」
「んー?・・・見えないよ」
「・・・リキはホントにチビだな、ほら」

そう言うとスー兄ちゃんはリキを担ぎ上げた。
スー兄ちゃんの頭とリキの頭が同じ高さになる。

「んー?・・・あ、ホントだ」
「綺麗だな」
「うん、綺麗だね」


sIs6/20 17:45:461252cf0MNeLIaTrdk||383


あっという間に止んだ雨は、いつの間にか二人の心にも虹を作っていってくれたようだ。



sIs6/20 17:45:591252cf0MNeLIaTrdk||227
* 後書き *

区切り線使わずに(使い忘れて)六月作品完成。
何とか創れて良かったです。雨で気分が乗らなかったからなぁ。

紫陽花は見つかったけど、蛙や蝸牛は見つからない私の町。
仕方はないけれど、でも折角六月なんだから一目見たいなぁ。
今年に入ってから雨が嫌いになったけれど、こういうときはとことん降って欲しいのです。


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