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8579セイクリッド・ブルー第三部(7)istint7/4 15:20:426056cf8AQdBeQS03A
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セルレイスは空中を悠々と舞うその巨大な艦を仰ぎ、口元を歪ませた。
教団でももちろん、闇の勢力、反対勢力に対する手段として、古代の文明の研究を行っていた。
しかし、このグランデュールにも、教団本部にもここまで巨大な艦は存在しない。
せいぜいこの十分の一ほどの規模の地上兵器がある程度。
火力にしても十分の一には届かない。

istint7/4 15:22:106056cf8AQdBeQS03A||412
「これが…城壁を殲滅させた船か。
 まさに脅威だな。」

istint7/4 15:22:226056cf8AQdBeQS03A||838
しかし、セルレイスの口元には笑みが浮かんでいた。
彼には盗賊団ごときがここまでの兵器を作り上げる技術力に心当たりがあった。
聖蒼教団屈指の天才技師、「カリ・ヘイレン」。
彼はスネイクが城を出て間もなく、姿を消した。
あの変わり者のことだ、出て行った理由はくだらぬ事であろう。

istint7/4 15:22:306056cf8AQdBeQS03A||246
突然セルレイスは空の船に向けて、斧に溜めた巨大なエネルギーの塊を放った。
間近で見ると、見たことも無いほどの大きさのエネルギー弾だったが、その空中戦艦には強力な障壁に遮られ、煤ひとつ付ける事もままならなかった。
その隙にムスティンが全員を一箇所に集める。

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「おい、スネイク!
 これからどうするつもりだ!?
 私にもあの船まで飛ぶ魔力はもう無いぞ。」
ムスティンは表情を崩さずに淡々と、しかし力強く述べた。
スネイクがニヤッと笑った。
「こんな状況でもあんたは冷静だな。
 尊敬するぜ。
 たしかにこのままじゃ、頼みの綱は遥か空の上…さてどうする?」

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スネイクは通信機を取り出してまた命令した。
「おい!カリ!グズグズすんな!!
 さっさと俺たちを収容しろ!
 このままじゃ全滅だ!」
ノイズ音とともに返事が返ってきた。
「ザ…ザザザ…
 こちらヴァージルガルディ、了解した。
 収容用重力ビームを作動する。」

istint7/4 15:23:146056cf8AQdBeQS03A||235
次の瞬間、戦艦から五人に向かって光が降り注いだ。
すると身体が軽くなって、少しずつ宙に浮いていく。
セルレイスはそれを見て、五人に鉄球を投げつけた。
この速度では間違いなく直撃する。
誰もがそう思ったとき、鉄球は弾き返された。
気絶していたはずのルヴィンが片手で、それも青龍抜きでやってのけた。
セルレイスも少し驚いたが、すぐに納得がいった。

istint7/4 15:23:276056cf8AQdBeQS03A||589
「あいつはソロネが言っていた…成る程、外から掛かっていた青龍による封印が解けて…というよりシェリフェルに青龍が叩きのめされた為にラロッシュの力が漏れ出しているな。
 面白い…闇ソーサラーとどちらが上かこの目で確かめてくれる!」

istint7/4 15:23:446056cf8AQdBeQS03A||373
彼は斧を構えてこちらに向かって突進してきた。
ルヴィンは剣を握り締めると、青い瞳でしっかりとセルレイスを睨みつけた。
「はっはっは!いい目だ!」

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セルレイスは斧に溜めたオーラの弾を一度に五つ放つと、もう一方の手から火球のつぶてを数十個投げつけた。
ルヴィンはその身体から真っ黒のオーラを迸らせ、一人、戦場に戻った。
スネイクがルヴィンに向かって叫ぶ。

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「おい!
 何考えてるんだ!?
 戻れ!戻れよ、ルヴィン!
 お前、今誰を相手にしようとしているのか判っているのか!?」

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ルヴィンは答えなかったが、セルレイスの放った攻撃を全て剣一本で受け流した。
ルヴィンの放った衝撃波はセルレイスの斧に防がれたが彼の巨体を数メートルほど後方に滑らせた。

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グランデュールに戻った教皇エラドは、自室に閉じこもっていた。
そして、彼の側にはあの例の殺し屋「黒い男」が控えていた。

istint7/4 15:24:436056cf8AQdBeQS03A||20
「貴様…あれほど勝手な行動は慎めと言って置いたはずだが?」
エラドが強い口調で黒い男に迫る。

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黒い男はゆっくり間を置いてから答えた。
「教団に危険が及んでおりましたゆえ…。
私はいつも己の判断で動いております。
 それは偉大なる闇ソーサラーであられる、あなた様にも縛られませぬ。」

istint7/4 15:25:156056cf8AQdBeQS03A||887
黒い男は驚くことに、自分は闇ソーサラーの命令ではなく、自分の意思で動いていると答えた。
さらに驚いたことにエラドはそのことに対しては怒りを表さなかった。
確かに、その黒い男は今はエラドの従属として動いているが、その目的はエラドにもわからなかったのだ。
黒い男は闇王の復活にも興味が無いようだった。
闇ソーサラーの地位が欲しいわけでもなかった。
エラドは黒い男からその真意を聞き出そうと、話を切り出す。

istint7/4 15:25:246056cf8AQdBeQS03A||966
「そうか、そうであったな。
 お前がこの私の下に現れた時から今まで、私はそのことに疑問を抱かなかった。
 ただお前の並々ならぬ力が欲しかっただけだ。
 私が興味のあるのはお前ではなく、お前の力だからな。
 貴様は一体何が目的で我が闇の軍団に来たのだ?」

istint7/4 15:25:436056cf8AQdBeQS03A||280
黒い男は立ち尽くしていた。
表情はすっぽり被ったフードに隠されて見ることは出来ない。
闇ソーサラーであるエラドにすら、その僅かな気の流れを感じ取る事も出来なかった。
黒い男には感情が無いのか。
黒い男は闇ソーサラーの前にいても、闇の神殿でも、萎縮する事は無く堂々としていた。
人間なら誰でも遺伝子に刻み込まれた本能から、恐れの感情などを抱く。
彼は人間ではないのだろうか。
かと言って、闇に属するものでもない。
もしそうだとしたら、闇ソーサラーに判らない事は無いのだ。

istint7/4 15:25:506056cf8AQdBeQS03A||120
部屋に緊張が走った。

istint7/4 15:26:16056cf8AQdBeQS03A||365
エラドが常人ならその場にいるだけで塩の柱になってしまうほどの凄まじい殺気を放つ。
しかし、黒い男はそれでも動じなかった。
やがて、男は口を開く。

istint7/4 15:26:96056cf8AQdBeQS03A||163
「私の目的は…全てを知ること。
 私はこの世界がどこへ向かっていくのか、観測したいのです。
 はっきり言って私は闇と光の闘争には興味ありません。
 ただ、その先の未来に何が待っているか、知りたいだけです。
 私の力はそのためのもの。
 今は大きな力の側にいれば大局が見れるので、闇の勢力に属しているに過ぎません。」

istint7/4 15:26:266056cf8AQdBeQS03A||665
エラドは驚いた。
自分の殺気に動じないこの男の精神力にも驚いたが、ぬけぬけと闇の力を利用していると言い放った事に驚いたのだ。
この男は死を恐れていないのか、それとも闇ソーサラーである自分より強いとでもいうのか。
恐らく、後者ではない。
闇ソーサラーを超える力を持つものの存在がいるとすればその者の存在にはもっと早く気付いていたはずだ。
それにこの男からは紛れも無い闇の力を感じ取れる。

istint7/4 15:26:396056cf8AQdBeQS03A||797
「それが、貴様の目的というわけか。
 もしも他の闇ソーサラーに知れたら貴様は間違いなく魂もろとも八つ裂きにされるであろうな。
 お前の力はこれからも私のために使え。
 もし裏切れば永久に闇の鎖に繋ぎ、魂をむさぼってくれるわ。
 いいな。」
エラドが語気を強めて命令した。

istint7/4 15:26:516056cf8AQdBeQS03A||862
黒い男は何も言わずに部屋を後にした。
暫らくエラドが黒い男の立っていた場所を凝視していると、彼の後ろから声がした。
「オイ!なぜあの男を行かせたんだ?
 あんたらしくねえ。
 俺に命令してくれれば、今、この場であいつを挽肉にしてやったものを。
 …しかし、あんたに貰ったこの肉体、この力…まだ奴に見せれないってのが歯がゆいぜ。」

istint7/4 15:27:76056cf8AQdBeQS03A||97
エラドの背後に置いてあった大きな鏡の後ろから、大男がヌッと姿を現した。
大男は全身を黒い体毛で覆われ、獣の様な身体だったが、顔は人間の男の顔だった。
男は牙を剥き出しながら話した。
片方の目には大きく傷が付いており、塞がっていた。
姿は変わったが、それは紛れも無く元聖蒼教団騎士団団長、バルガスだった。

istint7/4 15:27:196056cf8AQdBeQS03A||894
「バルガス…。
 ククク…お前の片目を奪った男がこの城に来ているぞ。」

istint7/4 15:27:276056cf8AQdBeQS03A||294
バルガスの目の色が変わった。
「それは本当か!?
 この時を待っていたぞ…!
 俺はあいつと、シェリフェルだけはこの手で八つ裂きにしてやらなきゃ気が済まぬ。」

istint7/4 15:27:366056cf8AQdBeQS03A||464
「しかし、今その男はセルレイスと対峙しておるぞ。
 そしてそこには間もなくカーティスも到着するだろう。
 残念ながらお前の能力ではその二人は倒せまい。」

istint7/4 15:27:486056cf8AQdBeQS03A||102
バルガスは納得がいかないように首を大きく振った。
しかし、彼にもそれは理解できた。
闇の転生の儀式と、エラドの肉体改造によって人間離れした戦闘能力を身につけた今でも、かつての上司であるセルレイス、カーティスの二人には勝てる気がしなかった。
バルガスは悔しそうにギリギリ歯を鳴らしたが、大人しく引き下がった。

istint7/4 15:27:556056cf8AQdBeQS03A||958
また、いずれ機会はあるだろう。
あのガキはこの手で必ず捻り潰してやる。

istint7/4 15:28:106056cf8AQdBeQS03A||857
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istint7/4 15:28:466056cf8AQdBeQS03A||173
ルヴィンとセルレイスの戦いは凄絶を極めた。
ルヴィンは完全に自我を失っていた。
彼の身体を動かしているのは彼の意識ではなく、彼の中に眠る長い戦いの歴史を刻んだ遺伝子だった。
彼は古代人が作り出し戦闘生命体。

istint7/4 15:29:36056cf8AQdBeQS03A||415
そこにはもう人としての意識は無く、目の前の敵を滅ぼす為だけに戦う。
しかし、遺伝子は完璧でも今の身体はルヴィンの身体だ。
徐々に遺伝子の伝達する司令に肉体が付いていかなくなってきていた。
本来、ラロッシュとしての覚醒は早くても25歳を過ぎた頃にゆっくりと始まる。
ルヴィンは覚醒には若すぎた。
なぜかは判らないが、遺伝子に何らかのバグが生じたのだ。
偶然か、それとも意図的にか。

istint7/4 15:29:116056cf8AQdBeQS03A||243
とにかく、セルレイスの強さは尋常ではなく、ルヴィンは次第に押されつつあった。
スネイクがその様子を見て、たまらず怒鳴り散らす。

istint7/4 15:29:236056cf8AQdBeQS03A||500
「おい、お前等!
 何とかなんねえのか!?
 ルヴィンはどうなっちまったんだ?
 レンティーニ、あんた何とかしてくれよ。」
今度ばかりはレンティーニも黙っていた。

istint7/4 15:29:386056cf8AQdBeQS03A||252
なぜならレンティーニにはもう戦う力が残されていなかったのだ。
それだけではない、彼が客観的に見たところ、もう既に今のルヴィンの強さはレンティーニの届かないところにあった。
レンティーニは消耗していたとはいえ、シェリフェルに手傷を負わせることも出来なかった。
彼はこんな絶望感を味わうのは三度目だった。

istint7/4 15:29:506056cf8AQdBeQS03A||112
一度目は自分の国、ダークエルフの国が滅ぼされた時。
あの時も彼はかけがえの無い友を失った。
友は彼を生かすために犠牲になり、戦場にて壮絶な死を遂げた。
二度目はルヴィンの父、アイシスが闇に堕ちた時。
あまりに強大な力の前になす術が無かった。

istint7/4 15:30:56056cf8AQdBeQS03A||238
己の無力さを嘆いて闇の転生の儀式まで行い、手に入れた力が何の役にも立たなかったのだ。
そして、その息子のルヴィンだけでも、と思い、今まで必死に彼を守り、緻密な計画の下、彼を育ててきたのだ。
しかし、今その息子であるルヴィンまでもが父の二の足を踏もうとしている。
悔しくないはずが無かった。
手のひらの皮が破けて血が滴り落ちるほど固く拳を握り締めていた。

istint7/4 15:30:236056cf8AQdBeQS03A||128
スネイクが今度はカリに突っかかる。
「おい!カリ!
 あのセルレイスとかいうおっさんにナーガブラスターをぶっ放してやれ!」
カリはいつも通り落ち着き払った様子でサイズが合わないのか、ずり落ちてくるメガネをクイっと上げると、答えた。

istint7/4 15:30:376056cf8AQdBeQS03A||508
「正気ですか?
 あのナーガブラスターはまだ試用段階の武器でエネルギーをコントロールする事はできません。
 そしてこの武器の特性は、あなたの特殊剣『インヴァリッド』と同じ、原子に振動を与えて高熱を生み出し、且つ物体の抵抗力を完全に無視して破壊することです。
 従って、距離によってエネルギーが弱まる事は無い。
 そんな事をすればルヴィン君はセルレイス共々粉々になってこの世から消滅するでしょうな。」

istint7/4 15:30:566056cf8AQdBeQS03A||725
「じゃあ、何か考えろ!
 他に何か手はねえのか!」
スネイクがカリの胸倉を掴んだ瞬間、船が、大気が大きく震え出した。
「こ…今度は何だ!?」
ムスティンが慌てた様子でデッキから駈けてきた。
「レンティーニ様、ニナ様、外をご覧下さい!」

istint7/4 15:31:396056cf8AQdBeQS03A||169
皆、ムスティンに言われるままデッキに出ると、空に黒い雷雲が渦巻き、その中心に一人の鎧姿の剣士が立っていた。
鎧は悪魔の頭骨をえぐりだして繋ぎ合わせたような禍々しい姿で、全身赤黒い血で染まっていた。
鎧自体、まるで生き物のように脈動し、剣士の顔は鬼神の頭をそのまま兜にしたような物を被っており、確認できなかった。
頭の先から足の爪先まで悪魔そのものより恐ろしいいでたちだった。
まさに悪魔を喰らう鬼神…!
そしてその剣士の身体から発せられる威圧感は大気を震わせ、霊魂を呼び覚まし、死者すらも怯えさせた。
発する闘気はシェリフェルが見せたそれよりも激しく、憎悪に満ち、見るものを圧倒した。

istint7/4 15:32:16056cf8AQdBeQS03A||839
レンティーニが唾を飲み込む。
「まさか…あいつは…。」
スネイクはレンティーニの漏らした一言を聞き逃さなかった。
「何だよ!?レンティーニ!
 知り合いか?」

istint7/4 15:32:106056cf8AQdBeQS03A||91
レンティーニは凍りつくように答えた。
「闇ソーサラーだ。」

istint7/4 15:32:296056cf8AQdBeQS03A||244
カリの電子計算機が物凄い勢いで動き出した。
冷静なカリも今度ばかりは青ざめた。
「こ…この質量は…!?
 エネルギーの総量は本艦『ヴァージルガルディ』の全エネルギーの数倍に達しています!
 まさか…この艦は古代文明が闇ソーサラーに対抗する為に作られたものなのに、これをここまで凌駕するとは…信じられん!」

istint7/4 15:32:456056cf8AQdBeQS03A||928
闇ソーサラーは矢印を上に向けたような形の黒い剣を無造作にルヴィンたちに向けて振った。
轟音と共に地面は裂けて亀裂からは真っ黒の暗黒の波動が噴き出した。
城の中庭は完全に崩壊し、城の塔の一つも崩れ落ちた。

istint7/4 15:34:286056cf8AQdBeQS03A||484
今回はここまでです。
少しずつ暑くなってきましたね。
いつも感想ありがとうございます。
第三部もあと少しで完結しそうです^^

シェイラ7/14 21:14:372191cfs1v8kC/Pmis||279
こんにちわ〜。次から次へと沢山の敵が出てきて、早い展開に毎回毎回、楽しみにしています。この間、山登りに行って来たのですが蚊に刺されまくりました(;´Д`)今でもとても痛くて痒いです。istint さんも体にお気をつけて、この夏を乗り切って下さいね。


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