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8638セイクリッド・ブルー第三部(8)istint7/17 0:23:25818cfJINIUKrM0LI
http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-8579.html 前回までのお話

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セルレイスもルヴィンも直撃を避けることは出来たが、その大きな力になす術を見出せなかった。
セルレイスはかつて闇ソーサラーの一人、プロセルピナと戦った事があったが、こいつはその時のプロセルピナの比では無かった。

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それもそのはず、セルレイスは知らないが、当時のプロセルピナは古い肉体であったし、転生を前に控えていたので本来の力の半分も出せずにいたのだ。
しかし、その分を差し引いてもこの闇ソーサラーは強かった。

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セルレイスの放った鉄球の一撃を剣を持っていないほうの手で軽々受け止めると、そのまま黒いオーラで鉄球を覆った。
鉄球は見る見る内に腐食していき、終には粉々に破壊されてしまった。
セルレイスの鉄球は生体金属で出来ており、しかも開放状態にあった。
セルレイスはその瞬間に、撤退を決意した。

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丁度城から出てきたカーティスに命令を下す。
「カーティス将軍、あれは闇ソーサラーだ。
 このままでは我が軍は壊滅してしまう。
 今ここでわしと、カーティス、ソロネの三人で戦えばあの化け物を倒す事は出来るかも知れん。
 しかし、今は軍の保守の方が大切だ。
 判るな?
 これは撤退ではない。
 大いなる勝利の為の前進だ。」

istint7/17 0:24:375818cfJINIUKrM0LI||312
カーティスは最初は反対しようとしたが、粉々になった鉄球を見て、すぐに考えを改めた。
命令を受けた後のソロネ、カーティスの働きはすばらしかった。
散り散りになっていた軍をものの数分でまとめ上げ、用意していた古代文明の聖蒼教団用の飛空艇に全員乗り込むと、あっという間に飛び去っていった。

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彼らの船はスネイクの船の半分もない重量だったが、完成されており、すさまじいスピードを誇っていた。
ルヴィンは一人傷付き、気を失っていた。
闇ソーサラーは地面に降り立ち、ゆっくりルヴィンに近付いていった。

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その時、闇ソーサラーとルヴィンの間に空間転移の穴が開き、中から闇の軍団の殺し屋、黒い男が現れた。
そして彼は闇ソーサラーに向かって信じられない言葉を吐いた。

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「闇ソーサラーベアン様、そこまでにしていただきましょうか。
 この男はまだ殺させるわけにはいきません。」

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ベアンは無言で顔全体を覆い隠している兜の継ぎ目から、フシューっと黒い瘴気を吐き出すと、おもむろに黒い男目掛けて剣を振り下ろした。
黒い男は長い爪のような武器を閃かせてその剣を受け止める。

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「…ドケ…殺ス…」
ベアンは黒い男を容赦なく攻め立てる。
黒い男は寸でのところで攻撃を避け続けていたが、両者の実力差は歴然だった。
不意に黒い男は距離を取ると、ルヴィンを空間転移の穴に放り込んだ。
そして、巨大な黒い稲妻の球体をベアンに向けて放った。

istint7/17 0:26:255818cfJINIUKrM0LI||135
ベアンの動きが一瞬止まると、黒い男はその隙に自らも空間転移の穴に逃げ込むと、忽然と姿を消した。
ベアンはしばらくじっとしていたが、突然苛立たしげに剣を振るい、グランデュールの城を瓦礫の山に変え、去っていった。

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スネイク達は、既にアジトに向けて飛んでいた。
スネイクは猛反対したが、カリがその反対を押し切り、強制的に帰還したのだ。
ヴァージルガルディはまだ未完成であったし、もしベアンに攻撃されればこの船の隔壁は豆腐のように切り裂かれてしまうからだ。

istint7/17 0:27:435818cfJINIUKrM0LI||475
カリがベアンの攻撃を見て、そのデータから一瞬のうちに計算した結果だったから間違いなかった。
レンティーニも、ニナも、ムスティンも勿論反対したかったが、あの闇ソーサラーを前になす術がなかったのだ。
そして、レンティーニには信じたくはなかったがある確信があった。
あの闇ソーサラーの行動。
セルレイスを狙わずに、なぜルヴィンを執拗に殺そうとしているのか。

istint7/17 0:27:575818cfJINIUKrM0LI||846
まともな思考の闇ソーサラーなら、自分たちに対抗しうる唯一の勢力である聖蒼教団の頭を潰す事を第一に考えるはずだ。
セルレイス元帥は滅多に戦場には現れない。
闇ソーサラーといえど、聖蒼教団の本拠地に乗り込んで、それを壊滅させるのは容易ではないはずだ。
そのための足がかりとしてわざわざ暗雲の塔を作り出したのだろう。
この推測と、レンティーニの予感から得られた結論…それはあの闇ソーサラーがルヴィンの父親、アイシスであろうと言う事だ。

istint7/17 0:28:125818cfJINIUKrM0LI||256
恐らく奴はルヴィンを殺しに来たのではなく、飼いならしに来たに過ぎない。
ルヴィンはまだ他の闇ソーサラーにはマークされていないはずだから、信じがたいがあの闇ソーサラーはアイシスだということで間違いない。
今ルヴィンが敵の手に渡れば、この戦争は終結する。
最も悲惨な、絶望的な形で。

istint7/17 0:28:205818cfJINIUKrM0LI||884
レンティーニが思考に浸っていると、操舵室からカリの声がした。
「第六格納庫に生命反応あり!
 敵が侵入した可能性があります!
 全員戦闘態勢!」

istint7/17 0:28:325818cfJINIUKrM0LI||504
皆疲れ果てていたが、ここまで来て諦めるわけにもいかず、船の後方の部屋に向けて走り出した。
そして、ムスティンが最初に部屋にたどり着き、そっとその扉を開くと、そこには…。

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なんとボロボロで傷だらけのルヴィンがぐったり倒れていた。
次々集まってきた仲間たちも驚きを隠せない。
なぜ彼がそこに横たわっているのかは誰にも判らなかったが、そこにいる者は皆、我先にとルヴィンに飛びついた。

istint7/17 0:28:525818cfJINIUKrM0LI||186
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istint7/17 0:29:95818cfJINIUKrM0LI||260
闇ソーサラー『ベアン』の行動は、瞬く間に闇の神殿中に知れ渡っていた。
いや、神殿だけではない。
闇獄界(えんごくかい)全てに噂は広まりつつあった。
ベアンはいつものように、闇ソーサラー『ザファ』のもとへと向かった。
ザファだけは、そんな噂は気にも留めていない様子でいつもの気味の悪い部屋で死体を弄んでいた。
ベアンの姿を見るとおかしそうにクククっと笑い、彼を迎えた。

istint7/17 0:29:205818cfJINIUKrM0LI||667
「おかえり、ベアン。
 流石に私が見込んだだけの事はあるわ。
 お前が暴れたお陰でさぞかしエラドの奴も肝を潰したであろう。
 あ奴は我々他の闇ソーサラーを出し抜いて自らが闇王になるつもりだからな。
 ククク…そうは問屋が降ろさないよ。
 お前の強さは今や既に闇ソーサラーの中でも一、二を争うものだろうから。
 それに…ククク…」

istint7/17 0:29:425818cfJINIUKrM0LI||936
ザファはいつもの調子で話していたが、ベアンが突然持っていた大剣を苛立たしげに床に叩きつけて言葉を遮った。
ベアンは全身から黒い霧を漂わせていかにも不機嫌そうな様子だった。
闇の神殿全体が微かに震えている。
ベアンの発する余りに大きすぎる暗黒の気が、この神殿にも影響を与えているのだ。
もちろん、神殿にいるジスティや、闇の使徒、他の闇ソーサラーもそれに気付いていた。
ザファはその巨大な憎悪からなるベアンを前にしても怯む事はなかった。

istint7/17 0:30:05818cfJINIUKrM0LI||992
「おやおや、今日は随分ご機嫌が優れないようだな。
 あまりここで目立った行動は控えるべきだと思うが。
 まあ、今のお前に面と立ち向かってこれるような奴はグラッド、プロセルピナ、私くらいのモノだろうがな。
 エラドや他の闇ソーサラーは自分の地位を脅かされまいと必死だろう…クク。
 ……で、彼には会ったんだろ?どうだったんだ?」

istint7/17 0:30:115818cfJINIUKrM0LI||977
幾分落ち着きを取り戻したベアンが地の底から響くような低いしゃがれた声で答えた。
「会った。
 奴はまだ我々の脅威となるような力は無い。
 それよりもあのエラドの暗殺者に邪魔をされた。
 あいつは一体何を考えているんだ?」

istint7/17 0:30:275818cfJINIUKrM0LI||672
「ククク…それで機嫌が悪いのか。
 あいつは表向きはエラドの暗殺者だがこの私の人形でもあるからな。
 出会った頃から何を考えているかわからん男よ…。
 奴は『時流を観測する者だ。』
 空間転移などの膨大な魔力を消費する技を操れるのは時流を観測する者の特権のようなものだからな。
 時流を観測する者はその時代時代に必ず世界にただ一人だけ生まれる。

istint7/17 0:30:405818cfJINIUKrM0LI||106
 観測者には善、悪といった概念は無い。
 我々に従っているのは観測者が最も観測に適した場所にここを選んだからであろう。
 しかし、この私にも一つ、解せぬ点がある。
 観測者自らがその時代に直接干渉する事はこの今まで無かった事だ。
 だがあの男は自らの意思で戦い、殺し、歴史に手を加えておる。
 本来中立であるはずの男が、だ。
 ククク…これは中々面白い研究対象だ。
 どちらが観測している立場かいずれ判る時が来るであろう。」

istint7/17 0:30:545818cfJINIUKrM0LI||655
ザファが一旦、言葉を切った。
暫らく静かな時が流れ、ベアンが部屋を出ようとしたとき、突然ザファの冷酷な気が、一瞬の殺意を帯びた。

istint7/17 0:31:125818cfJINIUKrM0LI||795
「どこへ行く?
 まだ話は終わっておらんぞ、『アイシス』。
 お前の、息子の話がな。」

istint7/17 0:31:255818cfJINIUKrM0LI||754
ベアンは立ち止まると、振り返らずに答えた。
「気付いていたのか、ザファよ。
 フフフ…因果なものよな。
 奴もいずれこちら側の人間になる。
 ラロッシュのもつ因子は必ず闇の極が強く、濃い。
 抑え切れぬ殺意、破壊衝動は闇の使徒に酷似しておるわ。
 …もし万が一我々の脅威どなろうものなら、その時はこの手で奴の首を斬るまで…。」

istint7/17 0:31:375818cfJINIUKrM0LI||619
「ククク…お前にそれが出来るかな?」
ベアンは部屋の壁に触れると、少し力を込めた。
すると壁は見る見る内にグツグツと泡を立てながら沸騰し、ドロドロに溶けてしまった。

istint7/17 0:31:475818cfJINIUKrM0LI||259
「出来なければ我が存在の意味がないわ。」
彼は静かに、そして冷酷に、そう言い残して部屋を後にした。

istint7/17 0:32:15818cfJINIUKrM0LI||693
彼が部屋を去って暫らくすると、ザファが部屋中に転がしている死体の一つが動き出した。
死体は痙攣を起こしたようにガバッと起き上がると、突然腹から臓物をぶちまけ出した。
そして、その腹の中からは、全身血と、粘液まみれの全裸の絶世の美女が現れた。

istint7/17 0:32:85818cfJINIUKrM0LI||548
女は何事も無かったかのように女神のような微笑を浮かべると、ザファに尋ねた。
「ねえ、彼をあのまま行かせて良かったの?
 それにしても死体の中でじっとしてるのは案外退屈なものね。」

istint7/17 0:32:175818cfJINIUKrM0LI||498
「相変わらずだな、プロセルピナよ。
 お前が言っていることはよく理解できないが。
 少なくとも私は人の部屋の玩具に潜んで盗み聞きしているような女よりはベアンを信用しておる。
 何より奴の魂は…クックック。」

istint7/17 0:32:255818cfJINIUKrM0LI||556
プロセルピナは怪訝そうにザファの顔を覗き込んだ。
しかし、彼の顔は黒いフードに覆われ、さらに障壁で覆い隠されていたので彼女の神眼でも表情を捉えることは出来なかった。

istint7/17 0:32:355818cfJINIUKrM0LI||863
「また、一人で隠し事をしているのね。
 グラッド様に知れたら…と言ってもあなたはグラッド様の事も怖くないんでしょうけど。」

istint7/17 0:32:465818cfJINIUKrM0LI||64
「ククク…それは買いかぶりすぎだ、プロセルピナ。
 グラッドは闇王の代弁者だからな。
 かと言って私はグラッドに従うつもりもないがね。
 所詮アレは出来損ない…我々闇ソーサラーより以前から存在していただけだ…。」

istint7/17 0:32:585818cfJINIUKrM0LI||513
プロセルピナはニヤッといつもの不敵な笑みを浮かべた。
「あら、今日は随分グラッド様の事をこき下ろすじゃないの。
 でも、気をつけることね、あのお方はあなたが考えている以上にすばらしい力をお持ちよ。
 流石に闇の大公だわ。
 あなただって知らないわけじゃないでしょう?
 七人の闇ソーサラーを束ねる者として闇王サ・レギュオン様がお選びになった方よ?」

istint7/17 0:33:85818cfJINIUKrM0LI||709
「ククク…よくもまあ、そんな事をヌケヌケと言えたものだ。
 他の者は謀れてもこの私はそうはいかぬぞ…。
 貴様が何を企んでようと私には関係ないがな…。
 グラッドの力は確かに認めるが、奴は実世界にはまだ実体化することができぬ。
 忌々しき古代人どもの封印を解かねばな。
 『イービル・レッド』さえあれば…」

istint7/17 0:33:175818cfJINIUKrM0LI||801
「またその話?
 『イービル・レッド』は消滅したと思ったけど。
 まあ、本当にそれが見つかればセイクリッド・ブルーなんて恐れるものではなくなるわ。
 あの赤い輝きさえあれば私達も本気で地上活動ができるのにね。」

istint7/17 0:33:305818cfJINIUKrM0LI||387
ザファはもうプロセルピナの話は聞いていなかった。
彼は目の前に横たわっている死体を再びいじりだしていた。
彼の考えは同じ闇ソーサラーのプロセルピナには理解できなかったが、彼女はザファの事を闇ソーサラーの中では一番慕っていた。
なぜなら、謀略が渦巻くこの神殿でこの男だけはたった一人、闇の軍団の製作と闇王復活の為の研究に己の全てを費やしていたからだ。
プロセルピナは黙って部屋を後にした。

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istint7/17 0:33:565818cfJINIUKrM0LI||968
「セルレイス閣下、到着いたしました。」
真っ白の制服を着た将校に促され、セルレイス、カーティス、ソロネの三人が船を降りる。
ここは聖蒼教団の本部だ。
グランデュール領よりはるか西に彼らの本拠地はある。
建物はグランデュール城よりも大きい。

istint7/17 0:34:55818cfJINIUKrM0LI||526
外観は無骨な四角い建物で、壁は分厚い金属で出来ていた。
あちこちに大砲や戦車が備え付けられており、本部自体も深い山岳地帯にたくさんの基地に囲まれていた為、難攻不落の城だった。
たとえ闇ソーサラーといえど、この城を陥とすことは容易ではないだろう。

istint7/17 0:34:165818cfJINIUKrM0LI||753
本部の中を歩きながらカーティスがおもむろに口を開く。
「閣下、なぜグランデュールを棄てられた?
 あそこは暗雲の塔攻略の為の大切な前線基地だったはず。
 なぜこうもやすやすと城を棄てられたのか。
 我々三人がその気になればあの闇ソーサラーとて追い返せたはず。
 現に閣下は生体金属の開放を…」

istint7/17 0:34:265818cfJINIUKrM0LI||811
そこでセルレイスがカーティスの言葉をさえぎった。
「確かに俺はまだ一段階の開放しか使っていなかったし、まだまだ本気ではなかった。
 しかし、あそこで俺が本気を出して敵に手の内を晒すわけにはいかんのだ。
 あの闇ソーサラーはどこか今までの奴とは違う…あのままやっても勝てたかどうか…。
 それに少し気になる事があってな。
 将軍たちはここまででいいぞ。
 俺は今から十神老に謁見に行ってくる。」

istint7/17 0:34:365818cfJINIUKrM0LI||466
十神老は、十人の教皇と教団の教祖も法皇からなる組織で、軍の関係者は五聖将軍であってもおいそれと話す事が出来ない程神聖視されていた。
セルレイスもここに入るのは一年ぶりくらいだった。
部屋の奥には大きな階段があり、セルレイスはその階段の前までいくと、腰の剣を床においてひざまずいた。

istint7/17 0:34:445818cfJINIUKrM0LI||884
「セルレイスただいま戻りました。」

istint7/17 0:34:525818cfJINIUKrM0LI||365
階段の上のほうから声だけが聞こえる。
「大儀であった。
 面を上げよ。」

istint7/17 0:35:55818cfJINIUKrM0LI||909
セルレイスは言われたとおり、顔を上げると階段に向かって歩き出した。
すると突然、階段の両脇から教団所属の死刑執行部隊、ジュディケーターの真っ白な衣装に身を包んだ二人組みが現れてかぎ爪のような形の剣で通路をさえぎった。

istint7/17 0:35:155818cfJINIUKrM0LI||324
セルレイスは落ち着いた様子で尋ねる。
「これはどういうことかな?
 貴様等、この俺が誰かは知らんわけじゃあるまい?
 元帥に対してそのような無礼が許されると思うたか?」

istint7/17 0:35:245818cfJINIUKrM0LI||434
すると、また階段の上から声がした。
「セルレイス、控えよ。
 ジュディケーターは教団に所属している者だ。
 故にお前の命令など聞く必要が無い。」

istint7/17 0:35:425818cfJINIUKrM0LI||44
セルレイスは困惑した表情で剣に掛けていた手を下ろした。
「どういうわけかさっぱり判りませぬな。
 説明していただきたい。」

istint7/17 0:35:525818cfJINIUKrM0LI||509
すると階段の上の声が話し出した。
一人の声ではなく、複数の声が同時に、または順番に話していった。
「お前のグランデュールでの失態は聞き及んでおるぞ。
 己の存在意義を忘れたわけじゃあるまい?
 シュヴァルツの聖石を宿したお前なら容易いことであったはずだ。
 何ゆえここへ逃げ戻ってきた?」

istint7/17 0:36:05818cfJINIUKrM0LI||553
セルレイスは落ち着いた堂々とした態度できびきび答えた。
「少し気になる事柄がございましてな。
 私も軍人の端くれ、兵法を多少なりとも心得ております。
 はっきりとは判りませぬが何か…違和感のようなものを感じまして。
 今回の事柄は誰かが裏で糸を引いているような…何かそういった違和感でございます。」

istint7/17 0:36:145818cfJINIUKrM0LI||433
「ほう…それが何かははっきりとは判らぬと。
 まあよい、もう一つお前に言っておかなくてはならん事がある。
 お前に謀反の疑いがあるという情報が入ってな。
 しばらくお前を監禁する事にした。」

istint7/17 0:36:265818cfJINIUKrM0LI||330
セルレイスは自分が何を言われているのかすぐに理解できなかった。
しかし、理解すると同時に怒りを覚えた。
目の前にいる老人たちはまるで自分の保身の事しか考えていない。
その情報はどこから仕入れたのだろうか。

istint7/17 0:36:355818cfJINIUKrM0LI||645
「合点がいきませんな。
 まあ、この私を監禁するなら勝手にするがよろしかろう。
 おっと、この二人をけしかけるおつもりならお止めになった方が宜しいですよ。
 死体が二つ出来上がるだけでしょうから。」

istint7/17 0:36:455818cfJINIUKrM0LI||258
「しょうがない奴だ。
 まあ、お前の事だ、止めても無駄であろう。
 今回はお前を信用しよう。
 早急にグランデュールを奪還し、闇の勢力を駆逐するのだ。」

istint7/17 0:36:575818cfJINIUKrM0LI||171
セルレイスはその言葉を最期まで聞かずにさっさと部屋を出て行った。
セルレイスが部屋を出た後、老人たちの話し合いが始まる。

istint7/17 0:37:275818cfJINIUKrM0LI||816
「何か我々が与り知らぬ事が起こっているというのか…
 聖戦の刻…
 セイクリッド・ブルーはまだ見つからぬ…
 セルレイスめ、己の出生の秘密も知らぬ人形が…
 だが、まだ奴には知らせる時ではない…
 白の塔の賢者はどうしている…
 それよりも時流を観測するものの所在、掴めぬのか…
 賢者は全て知っていようか?
 否、賢者はコピーに過ぎぬ…
 アルマの天秤を開放すべきか…
 まだそれには早い…

istint7/17 0:37:495818cfJINIUKrM0LI||671
 エラド教皇には気をつけろ…
 判っておる、奴は…
 闇ソーサラーはまだ地上で活動する為の肉を持たぬのか…
 それも時間の問題であろう…
 我々が永遠の存在となる為には奴らは邪魔だ…
 幻のホークルタワーは姿を見せぬのか…
 もはや四聖獣の封印の一つはとうに解かれておる…
 残りの封印は解くべきか…
 誤まれば一万年前の悲劇を繰り返すぞ…
 だが闇ソーサラーに渡すわけにはいくまい…

istint7/17 0:37:575818cfJINIUKrM0LI||325
 我々の他に歴史を操るものの存在…
 観測するもの…
 あれは消したはずだが…
 消した?消されたのではないか…?
 忌むべき血の御子か…
 もはや奴の存在は危険だ…
 考えるのだ…
 考察し、導くのだ…
 我々は永遠なる存在…」

istint7/17 0:38:375818cfJINIUKrM0LI||359
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istint7/17 0:38:515818cfJINIUKrM0LI||966
カーティスとソロネが通路でセルレイスが出てくるのを待っていると、通路が騒がしくなってきた。
バタバタと走り回る騎士達。
そして建物の入り口の方角からは聖蒼教団騎士団の鎧の上からローブを纏った集団が列を成して歩いてきた。
カーティスはその集団を見るのは三年ぶりだった。

istint7/17 0:39:05818cfJINIUKrM0LI||369
彼らは五聖将軍『マジェリッド』に仕える魔法兵団だ。
マジェリッドは教団屈指の魔法の使い手で、アンシェント・ソーサリングをも操る。
戦績はカーティス、ソロネに一歩及ばないが、それでも激戦地に送り込まれては勝利を収めてきた。

istint7/17 0:39:155818cfJINIUKrM0LI||704
今回は教皇エラドの命令によってタウィーン地区に出向いていた。
タウィーンには闇の軍団によって滅ぼされた町がある。
そこは既に闇の前線基地と成り果てており、死に切れない霊魂が闇に取り込まれて生あるものを求めてさまよっている。
かつてまだその町が滅ぼされる前にカーティスもそこで戦った事があった。
結果は、兵力の大半を失い、町も完全に滅ぼされてしまった。
聖蒼教団きっての猛将と言われているカーティスですらその有様だ。
その後、ソロネ、セルレイスも大軍を率いてタウィーンに出向いたが、地形も険しくすっかり魔界の瘴気に晒されてしまった地域は落とせなかった。

istint7/17 0:39:295818cfJINIUKrM0LI||521
それだけに今回のマジェリッドの帰還は注目されていた。
カーティスはマジェリッドとは不仲だった。
シェリフェルもそうだが、セルレイスに心から忠誠を誓っているようには思えなかったからだ。
実はカーティスは元々セルレイスとは友人のような関係だった。
それだけに教団とセルレイスに害をなす者は何があっても、たとえセルレイスに叛く事になっても排除するつもりだった。
このマジェリッドと言う男はカーティスより後から教団入りしたが、セルレイスには話を通さないで、十神老がどこからか連れて来たのだった。
かーティスがアレコレ思惑を巡らせていると、長身で怪しげな瞳の輝きを放つ男が守護聖と共に現れた。

istint7/17 0:39:405818cfJINIUKrM0LI||493
身長はカーティスよりも高いが、体格は少し細い。
魔法を得意としてあるだけに、彼は剣を持っていなかった。
カーティスの姿にわざとらしく気付いて見せて、会釈した。

istint7/17 0:39:475818cfJINIUKrM0LI||994
「カーティス閣下、お久しゅうございます。
 ソロネ閣下もお変わりなく…。
 今回はグランデュールが大変だったそうで。」

istint7/17 0:39:575818cfJINIUKrM0LI||127
相変わらず腹に何を溜め込んでいるのかわからぬ奴よ。
カーティスは仕方なく調子を合わせる。
「そちらこそ大変だったのでは?
 なにせタウィーン地区に行っておられたのだろう?
 さぞ疲れたであろう。」

istint7/17 0:40:85818cfJINIUKrM0LI||685
マジェリッドは大仰に扇子のようなもので顔を仰ぎながら涼しげな顔で返答した。
彼は一般にいう、整った顔立ちでは無かったが、いつも落ち着いた気品のある雰囲気をかもし出していた。
しかしそれは貴族出身のカーティスのような感じでは無く、お金持ちの教養のある気品だ。

istint7/17 0:40:195818cfJINIUKrM0LI||922
「そうでもありませんよ。
 あの町は壊滅してまいりました。
 私の魔法で全て焼き払ってきましたのでね。
 そちらこそ大変だったのでは?」

istint7/17 0:40:385818cfJINIUKrM0LI||918
マジェリッドは嫌味たっぷりその台詞を残すとわざとらしく優雅な仕草で去って行った。
カーティスはその態度に怒りを禁じえなかったが、それ以上にマジェリッドの戦果に驚きを覚えた。
今まで誰も落とせなかった町を壊滅させるとは…。
マジェリッドの戦いぶりは知らなかったが、これほどまでとは思わなかった。
しかし、一対一での戦いならカーティスの方が上だろう。
マジェリッドは大規模な戦争に向いた能力を持っていたというだけの話だ。
セルレイスもそう考えていたし、何よりもカーティスを信頼していた。

istint7/17 0:40:495818cfJINIUKrM0LI||574
五聖将軍は表立っては対立してはいないが、セルレイス派と十神老派に分かれており、カーティス、ソロネはセルレイス派。
マジェリッド、ムラサメは十神老派だった。
シェリフェルは何を考えているのか判らない為、どちらの派閥からも敬遠されていた。
そう言えばシェリフェルはどこへ行ったのだろうか。

istint7/17 0:43:455818cfJINIUKrM0LI||437
こんにちは!
いつも感想ありがとうございます。
もうすっかり夏ですねー。
今回は少し長くなってしまいました…。
ホントはもう少し短く区切って読みやすいようにしたいのですが、忙しくてそうもいかず…。

istint7/17 0:46:105818cfJINIUKrM0LI||614
山登りは楽しそうですね!
私もたまにはそうやって自然と触れ合いたいなあ…でも今年も夏はきっと仕事漬けでしょう(;_;)
蚊に刺されたところはもう治りました?
この時期は虫もたくさん出るから苦手な人は大変ですねー

シェイラ7/20 22:23:422191cf9XlSoXgIz8o||769
こんにちわ〜。いえいえ、こちらこそ、奥深い話を読ませていただき、とても幸せです♪ベアン=アイシスってルヴィン君にとってはとても辛いことですよね〜。ますます、ルヴィン君を応援したくなりました!お中元ありがとうございます!しかも、二個も……。ほ、本当にありがとうございます!虫刺されはまだ沢山引っかいたのでまだ腫れてますね……。この暑い夏、スイカでも食べながら一緒に乗り切りましょう!


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