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8656Strange-06sIs7/19 0:42:71252cf7z7Wwagg24U
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※作品の批評はご遠慮なく。
※この物語はフィクションです。

sIs7/19 0:42:131252cf7z7Wwagg24U||894

『手違いで生まれた』などと言ったが、人間とPFAWの間に子供を作ることは出来ない。
染色体の数が違うから、拒絶反応が起きてしまい、子供も母親も死ぬ。

酒宮史人を殺すよう命じたのは、勿論私個人の用事だからではない。
一時期同棲した女が勝手に身篭っただけの、私にとってはどうでもいい人間に私情を交える意味がない。
では何故酒宮史人を殺すよう命じたのか。

それは―――・・・


sIs7/19 0:42:211252cf7z7Wwagg24U||959


- 二月二十八日 * サカミヤ フミト -



sIs7/19 0:42:361252cf7z7Wwagg24U||350

突然の脱線事故にも大いに驚いたが、それ以上に自分の運の良さに大いに驚いた。
いや、運の良さではなくて悪運の強さか。

大した特徴もない一軒の民家を貫いた鉄の塊は、民家を挟んで線路の反対側にある道路に到達した。
電車の車体であったことが辛うじて判るほどまでに潰れてしまい、元々あった窓やドアから外に出ることは出来なくなってしまった。
俺の他に乗客はニ、三人だったが、いつの間にか全員いなくなっていた。
多分吹き飛ばされたのだろう。
しかし時間帯が幸いしたのか、道路を疾走する車もなく、二次災害は免れた。


sIs7/19 0:42:481252cf7z7Wwagg24U||969

「わわぁ、うおぉ、・・・あぃでっ!」

車体が急に失速しても、人間の体はすぐには失速しない。
元々いた座席から腰が浮いて、そのまま天井だった部分に頭を勢いよくぶつけた。
一瞬体中が痺れたかと思うと、頭から首にかけて何かが伝う感触がした。

―――赤い・・・そうか、血だ。

しかし血が出てもまだ体は止まらない。
終いには一両目と連結していた、今ではぽっかり穴が空いた場所から宙に放り出されてしまった。


sIs7/19 0:43:51252cf7z7Wwagg24U||865

「うわぁぁああぁっ」

電車の車体は車道上で転倒し、完全に止まった。
路上の埃が舞って黄色い煙が発生する。
俺の体は更に道路を挟んで民家の反対側にあるフェンスに打ちつけられた。
がしゃん、という鈍い音が響き、背中にフェンスの針金が食い込む。
そのフェンスがクッションとなって、やっと体が止まった。
下に落ちて、歩道のアスファルトと正面衝突。

ごっ、と、また鈍い嫌な音が響く。
頭から落ちることは辛うじて避けたが、しかし受身は取れなかった。

「・・・ってぇ・・・」


sIs7/19 0:43:171252cf7z7Wwagg24U||336

頭や腰や背中や、色んなところが痺れて気持ち悪い。
もう『痛い』と思うことすらも面倒になるくらい、気持ち悪い。
命は助かったが、今の痛みが続くくらいなら、いっそのこと死んでしまった方がいいかもしれない―――

「・・・じゃあ、殺してあげようか?」

突然、透き通った優しい声が聞こえる。


sIs7/19 0:43:261252cf7z7Wwagg24U||610

―――誰の声だ。
ああ、母さんの声だ。
やばい、幻聴まで聞こえてきてしまった。
こりゃあ本当に死ぬんだろうか―――


sIs7/19 0:43:351252cf7z7Wwagg24U||69

「ねぇ、殺してあげようか、って言ってるんだけど?」

―――しかし幻聴にしては、やけにはっきりと聞こえるなぁ。


sIs7/19 0:43:421252cf7z7Wwagg24U||756

「ねぇ、死んだの?」

―――死んでないよ、まだ耳が動いてるから。


sIs7/19 0:43:541252cf7z7Wwagg24U||165

「・・・死んでるの?」

むんず、と誰かに顎を掴まれる。
それではっとした。
閉じかけていた目が急に覚めて、おぼろげながらも周りの光景を捉えた。
それで分かった、幻聴じゃないことが。


sIs7/19 0:44:61252cf7z7Wwagg24U||124

「・・・あ、母さん・・・?」

あの役立たずの合久警察に捜索願まで出して探した母親、酒宮冠子だ。
しかし・・・。

「何だ、生きてたの?もう、死んでくれた方が楽だったのに」

変だ。
そう直感した。
すぐに母親の手を押し退け、ある程度の距離を取る為に立ち上がる。
血が止まらず軽く貧血になったらしく、頭がフラフラする。
足取りが危ないのが容易に分かる。


sIs7/19 0:44:201252cf7z7Wwagg24U||597

「だ、・・・誰だ」
「誰だって、あんたのお母さんでしょ?
 目ぇ、大丈夫?」

違う、これは母親じゃない。

「やだ、色んなところ怪我してるじゃない。
 手当てしてあげるからこっち来て・・・何警戒してるのよ?」

絶対違う、母親じゃない。
左手を後ろに回してニタニタ笑いながら近寄ってくるような、気持ち悪い女じゃない。
動きながら、ちらっと見えた鋭い光。


sIs7/19 0:44:291252cf7z7Wwagg24U||554

「・・・左手に何で、包丁なんか?」

俺は呟いた。
変な話だが、自分の呟きで全てが分かってしまった。


sIs7/19 0:44:391252cf7z7Wwagg24U||654


―――まずい、逃げろ。
すぐに逃げるんだ。
今すぐだ。・・・今すぐ、今すぐ!



sIs7/19 0:44:471252cf7z7Wwagg24U||305


―――動けっ!



sIs7/19 0:44:591252cf7z7Wwagg24U||650

やっと体が反応して、急に走り出す。
誰かに助けを求めようと、奈庫堂駅の方へ向かって。
やっぱりフラフラして、いつもみたいに速くは走れない。
しかし母親は動かない。よし、とりあえず撒けるぞ。


sIs7/19 0:45:61252cf7z7Wwagg24U||611


- 二月二十八日 * PFAW 0759 -



sIs7/19 0:45:171252cf7z7Wwagg24U||132

冠子は動かずに史人を見続けている。
後ろにPFAW 0759が来ると、彼女は軽く肩をすくめた。

「・・・気付かれちゃった」
「馬鹿、掴んだ時点で刺しなさいよ」
「過ぎたことだから忘れて」
「・・・ったく」


sIs7/19 0:45:341252cf7z7Wwagg24U||865

後ろには、数日前まで人間だったものが四ついる。
県警の青い制服を着た男、小太りの主婦、そして合久高校の制服を着た男子と女子、それぞれ一つずつ。

「仕方ないわね。剛樹」
「はい」
「駅前の交番にでも立っといて。
 アイツがいたらすぐ殺しなさい」
「はい」
「それと嘉世子」
「はい」
「適当に駅前でもうろついててくれればいいわ。
 見つけたらすぐに殺して」
「はい」

警察官の参号剛樹と、主婦の西戸嘉世子だったものは、無感情に返事をするとすぐに姿をくらました。


sIs7/19 0:45:481252cf7z7Wwagg24U||590

「冠子も一応追って。幹宏は自宅すぐそこよね?
 なら手筈どおりに動いて。多分あんたを頼ってくるだろうから。
 和恵は・・・いいわ、私と一緒についてきて」

0759はてきぱきと指示していき、三人ともすぐに従う。
成る程、面ヶ瀬千佳の脳は予想以上に使えるものだったようだ。


sIs7/19 0:45:561252cf7z7Wwagg24U||737

遠くを駆けていく酒宮史人の後姿を見ながら、0759は微かに笑った。


sIs7/19 0:46:221252cf7z7Wwagg24U||170

* 前回の感想へ *

>ピマさん
お忙しい中見てくださってありがとうございます。
実際私は乗ったことないんですがね(汗) 氷の上を滑るような電車ばかりで。
振動電車にも乗ってみたいなぁ・・・そうしたら、もっとリアルに書けるのに(ぇ)
史人君は・・・一体どうなってしまうことやら。
そこを楽しみに、続きを読んでいってくださると嬉しいですね。
面ヶ瀬+冠子はサバサバした性格のようです。プチ発見(?)



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