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8724セイクリッド・ブルー第三部(9)istint7/27 23:30:272191cf/cRIPoMkCiQ
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ここは白の塔に程近い場所にある幻の塔、ホークルタワー。
周囲には特殊な結界が張られており、塔の姿は見えない。
シェリフェルはこの塔を自分の根城にしていた。
もちろんこの事は教団関係者の誰も知らない。
彼は久し振りに力を使ったため、しばしの休息をとっていた。
大きな椅子に腰掛けたまま眠ってしまったようだ。
やがて、傷は癒え、彼が目を覚ます。
ひどく機嫌が悪そうだ。

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「…く…またあの夢か…。」

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彼は幼い頃よりしばしば同じ悪夢にうなされている。
夢の内容は成長した今も変わらなかった。
夢の中では彼はいつも子供のままで、大きな手に追いかけられていた。
その手の主の顔は常に黒く塗りつぶされており、分からない。
最期にはその手に捕まってしまう。
そして、その主は決まってこう述べる。
「…を殺せ、お前はその為のみの存在…」
初めの部分はノイズが掛かったようにいつもうまく聞き取れない。

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さて、このホークルタワーは古代人の作った施設の白の塔よりもはるかに古い時代の建物で、言い伝えでは「時の観測者」の作ったものだという。
なぜシェリフェルがこの塔を根城にしているのかはわからなかったが、ここにいると闇の勢力はもちろん教団関係者からも完全に姿をくらませられるので都合が良かった。

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彼には大きな野望があった。
まだそれを知られるわけにはいかない。
彼は自分の力に絶対の自信を持っていたが、あの時の闇ソーサラーの力を目の当たりにして考えを改めた。
自分にはもっともっと力が必要だ。
生まれたその時から戦闘マシーンとして育ってきた彼は相手の強さにも敏感だった。

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シェリフェルには実は弟がいるが、弟は兄の存在を知らない。
彼は全てを棄てて、生まれながらに意思を持ち、旅立ったからだ。
生まれた時から目的は決まっていた。
全てを超越する力を手にしてこの世界の支配者になる。
目に映る者はみな敵だった。

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生まれてすぐに戦いの遺伝子が目覚めた事は白の塔の賢者にとっても誤算だった。
遺伝子が命じるままに血を欲する凶暴な子供だった。
一度は賢者が保護したが、少し目を離した隙に自ら封印を破り、百体の零式を破壊し、逃げ出した。
そして意識も朦朧としながらたどり着いたのは、闇ソーサラーと聖蒼教団の戦争の最前線だった。

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彼は襲い掛かってくるジスティを無意識に殺し、プロセルピナとセルレイスの戦闘に割って入った。
そして、気を失ったところをセルレイスに連れ帰られたのだ。
力を欲していた彼は、セルレイスの元でぐんぐん強くなっていった。
と、言うよりも強くなる為に、さらに強いセルレイスを利用したのだった。

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しばらく教団で修行の日々を送っていたが、すぐに教団内では敵なしの強さを手に入れてしまった。
カーティスやセルレイス、ソロネは自分と同じくらいの強さだろう、そう考えたシェリフェルの目は再び外の世界に向く。
教団内部の膨大な古代魔法や、文明の資料を読み漁るうちに、ふと気がかりな文献を発見する。
それはホークルタワーと「時流の観測者」について書かれた本だった。

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「時流の観測者」の操る空間転移の魔力、そしてその歴史を客観的に観測するが故に身に付いた何者にも動じない強さ。
そんな記事はシェリフェルにとってはすばらしく興味深いものだった。
思い立ったシェリフェルはすぐにホークルタワーに向かった。
文献通りの場所にそれはあった。
外敵を拒むようにそれはそそり立っていた。
雲の上まで突き抜けたその姿はヒトの遺伝子に刻まれた神に対する恐怖を思い起こさせる。
シェリフェルですらそれを初めて目にしたときは背筋がぞっとした。
勿論、当時のシェリフェルの力では中に入る事など到底出来なかった。

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しかし、彼の研ぎ澄まされた感覚は、確実に「時流の観測者」の気配を捕らえていた。
何日も塔の側で一人、訓練していると、偶然(それとも必然?)に観測者の目に彼の姿が止まった。
観測者は既に何代も続いており、丁度後継者を探しているところだった。
観測者は彼の思想にやや危険を感じていたが、必死に頼み込むシェリフェルと彼の不思議な能力に興味が湧いたのでしばらく側で飼う事にした。

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シェリフェルは観測者が驚愕するほどのスピードで技を自分のものにしていった。
観測者はやはり危険だと悟り、この男に自分の魂を受け継がせられないという結論に達した。
シェリフェルは師のそんな思惑を見抜いていた。
そして、ある日、師が使っていた観測者の武器、「魔候の爪」を盗み出し、死闘の末に師である観測者を殺し、完全な観測者の能力を手に入れたのだった。

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もちろん本気で戦っていればシェリフェルは塵になっていただろうが、観測者の一瞬の気の迷いと、一時でもシェリフェルを惜しい男だと考え、躊躇したことが敗因だった。
また、シェリフェルは師を殺す事に何のためらいも感じていなかったし、師を大いなる野望の踏み台くらいにしか考えていなかった。
そう、観測者はシェリフェル自身に興味を抱いたのに対して、シェリフェルは師ではなく、師の持つ能力にのみ興味があったのだ。
最期に人としての心を見せた師の甘さに付け込んだ巧みな罠だった。

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かくしてシェリフェルは三年足らずで恐ろしい能力を手に入れ、教団に舞い戻り、力試しに守護聖を練習試合でなぶり殺して将軍の座を射止めたのだ。
将軍としての品格は全く無かったが、次々に戦闘で勝利を収め、逆らうものは皆殺しにするそのスタイルが世界中の人々から恐れられ、「死神シェリフェル」の異名を持つまでになる。
そんなシェリフェルの悪名はもちろん闇の勢力にも知れ渡っていた。

istint7/27 23:34:192191cf/cRIPoMkCiQ||94
そして彼はついに闇ソーサラーとの接触を持った。
そう、シェリフェルは五聖将軍シェリフェルであると同時に、闇の殺し屋「黒い男」でもあったのだ。

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もちろん彼が闇ソーサラーとの接触を持ったのは更なる力を欲したからだ。
以前闇ソーサラーに述べた観測者としての使命は詭弁に過ぎない。
いずれ彼らをかつての師のように喰らい尽くしてやるつもりだ。
しかし、今回の闇ソーサラー「ベアン」を見る限りでは一筋縄ではいきそうに無い。
あの時はたまたま助かったが、戦い続けていれば敗戦は必至だったろう。
「ベアン」は彼がいずれこの手で殺さなければならない因縁の闇ソーサラーでもあったので、焦りすら感じていた。

istint7/27 23:34:542191cf/cRIPoMkCiQ||149
このように彼の人生は血塗られた戦いの歴史だった。
だが彼には世界を手中に収めるという目的の他に、もう一つの確固たる目的があった。
その為には魔神の血をすすってでも力を手に入れるつもりだった。
「フフフ…さて、これから白の塔の賢者様に挨拶に行こうかね。  
 教団の方はまだムラサメ将軍が戻ってきていないからどうにでもなるだろうし…。
 彼の技は僕にとっては相性があまり良くないからね。」

istint7/27 23:36:02191cf/cRIPoMkCiQ||239
聖蒼教団、闇の勢力…シェリフェルにはやらなければならない事が山積みだった。
しかし、彼はその事を考えると自然と口元から笑みがこぼれた。
その理由はいずれわかる。

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istint7/27 23:36:262191cf/cRIPoMkCiQ||715
白の塔の中枢を成している巨大コンピュータの端末には、かつて古代文明においてラロッシュ、生体金属、戦闘艦、対闇ソーサラー兵器を開発した賢者達の人格がデータとして存在している。
彼は肉体を持たないが、自ら精神体として活動しすることができ、更に新しい情報も自ら得る事が出きる。
彼の生きた時代では、闇王サ・レギュオンは復活する事は無く、闇ソーサラーを闇次元に追い返すことに成功した。
だが、今の時代は当時とは比べ物にならないほどの激戦で、いつ世界が闇に取り込まれてもおかしくなかった。
賢者はルヴィンたちを送り出した後、ずっと彼らの行動を見ていた。

istint7/27 23:36:422191cf/cRIPoMkCiQ||69
忠告したとおり、ルヴィンを取り巻く青龍の封印はシェリフェルによって打ち破られてしまった。
そして、恐るべきはあの闇ソーサラーの力だ。
かつての大戦時にはあのような力を持つ者は闇ソーサラーの中にもいなかった。
闇ソーサラーの力も度重なる戦いで弱まってきていたはずなのに、あの闇ソーサラーの力は原初の力そのものだった。
これは何を意味しているのだろうか。
闇ソーサラー達は、敗戦時に自らの力と引き換えに大きな力を持つ文明を滅ぼし、遺伝子すらも書き換えて脅威となる存在が生まれないように操作した。

istint7/27 23:37:02191cf/cRIPoMkCiQ||73
彼らの思惑通り、数千年の間はそのような力を持つ者は生まれなかった。
しかし、徐々に遺伝情報は修復され、より強固な文明を形成しようとしていた。
まずは、エルフ族。
彼らは魔力という点では古代人に勝るとも劣らない能力を持っている。
ダークエルフの身体能力は古代人が作り出した生体兵器ラロッシュに近しいものだった。

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そして、人間の中にも優れた能力を持つものが生まれつつある。
賢者はおそらくそれこそがセイクリッド・ブルーの福音であると考えていた。
だが、今回のあの闇ソーサラーを見ると、そういう事柄もさほどプラスには働かないように思えてならない。
彼が思考を巡らせていると、何者かが白の塔に近付いてきていることに気付いた。
シェリフェルだ。
まあ、心配する事は無いだろう。
この塔は次元的に閉じた空間に存在している。

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istint7/27 23:37:372191cf/cRIPoMkCiQ||589
「ふう、やっぱり入り口は無いんだな。
 力ずくで穴を開けても意味が無いだろうし…。
 フフフ…全く臆病者の賢者らしいよ。
 また戻ってきてやったというのに。
 やれやれ、魔候の爪なら開けられるかな?」

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シェリフェルはおもむろに空間転移の穴に手を突っ込むとそこからズルズル爪を引っ張り出した。
魔候の爪は生体金属ではないが、それ以前より存在している武具で、その名のとおり魔界で作られた武器だ。
古代文明の生体金属はそれらの武具を模倣して作られたもの。
魔候の爪は特性として空間を切り裂く事が出来る珍しい性質を持っていた。
彼は魔候の爪に魔力を注入すると、そっと白の塔のレリーフにかざした。
このレリーフにはルヴィンの「ノスリの紋章の剣」と同じ模様が描かれており、それ以外では開かないはずだった。

istint7/27 23:38:42191cf/cRIPoMkCiQ||452
しかし、魔候の爪は完全にノスリの剣を形態模写すると、あっさり封印を解いてしまった。
シェリフェルは悠々と白の塔に侵入した。
彼は懐かしそうに塔の中を見回す。
すると、突然彼の身体を光が包み込み、例の閉ざされた空間へと転送されてしまった。
賢者が作り出したその空間内では、魔候の爪の空間転移も、シェリフェルの観測者の能力も上手く働かなかった。

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「フ…フフフ…流石は賢者、といった所か。
 でもこんなもので僕をいつまでも抑えきれると思っているのかな?」

istint7/27 23:38:292191cf/cRIPoMkCiQ||441
シェリフェルには、時間さえ掛ければこの空間そのものを消し飛ばすほどの核力があった。
賢者もそれを見抜けなかったわけではない。
賢者は時間が欲しかっただけだ。
それに、シェリフェルとて、それほどの力を放出すればすぐには元気に動き回ることが出来ないからだ。
今はシェリフェルには下手に動かせる時ではない。

istint7/27 23:38:372191cf/cRIPoMkCiQ||829
彼の思想、能力は危険であるし、いつ闇ソーサラーが彼の能力を自分達のものにするとは限らないからだ。
あの闇ソーサラーの力を見た以上、賢者はシェリフェルにもいつまでも抵抗していられるとは考えられなかったのだ。
そんな思惑を知ってか知らずか、シェリフェルは空間を破壊する為の核力を集中し始めた。

istint7/27 23:40:272191cf/cRIPoMkCiQ||64
今回はここまでです。
第三部は次回でようやく完結です。
すいかは種を取るのが面倒ですが、おいしいですよねー!
食べたくなってきました^^

シェイラ7/29 0:3:372184cfTfmqUKe673U||950
読ませていただきました!今回はシェリフェルが何処まで、底が知れない男か考えさせられました……。こ、怖い人ですよね。でも、弱点がないって感じがクールで好きです(コラ)話は変わりますが、私はすいかの種ごと食べちゃう派です。(不精なものでして……)私も、すいかが食べたいです!
第三部完結目指して頑張って下さい!応援してます!


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