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8778セイクリッド・ブルー第三部(10)istint7/31 20:15:202182cfmszB00nHP2M
前回までの話 http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-8724.html

istint7/31 20:15:522182cfmszB00nHP2M||998
アジトに戻ったスネイク達は、疲弊しきっていた。
レンティーニも力を使いきって、もう一人では歩けない程だったし、涼しげに振舞ってはいたがムスティンも消耗しきっていた。

istint7/31 20:16:22182cfmszB00nHP2M||540
ニナはルヴィンの治療の為に船で魔力を使い果たし、眠り込んでいる。
スネイクは全身ガタガタになってるにも関わらず、部下達を気遣い、必死に動き回っていた。
作戦に参加した部下の半分はここには還って来なかった。
アジトの中を悲しみが包み込み、あちこちですすり泣く声や、大怪我をして呻く声が聞かれた。
カリが冷静かつ正確に被害状況を報告する。

istint7/31 20:16:172182cfmszB00nHP2M||674
「作戦に参加した地上部隊148人中、86名が死亡、12名が行方不明です。
 ヴァージルガルディはメインエンジン、主砲にやや損傷が見られ、反重力発生用のジェネレーターが過負荷で焼ききれています。
 修理には約2週間程掛かるでしょう。
 レーダーのメモリからは追跡の心配は見られません。
 あの闇ソーサラーが来たのが幸か不幸か、聖蒼教団も本拠地に逃げ帰ったようですね。
 斥候からの情報によるとグランデュール城はほぼ全壊。
 城下町も半壊状態です。
 …それから、非常に申し上げにくいのですが…」

istint7/31 20:16:262182cfmszB00nHP2M||293
いつになく遠慮がちなカリにスネイクが訝る。
「どうした?続けろ。」

istint7/31 20:16:372182cfmszB00nHP2M||124
カリはメガネをクイっと上げると、フウっと息を吐いて続けた。
「では、申し上げます。
 ルヴィン氏の容態ですが、右腕靭帯断裂、複雑骨折、肋骨の損傷、折れた肋骨による肺の損傷、それから全身の神経系に異常が見られます。
 幸い脳には損傷はありませんが、何分全身の骨格にヒビが入って内臓機能が著しく低下している為…
 恐らくもう二度と剣を持つ事は出来ないでしょう。
 異常な力を使ったために肉体がそれについていかずにズタズタになったんでしょうな。
 あの時の彼の力は聖獣をも凌駕していた…」

istint7/31 20:17:12182cfmszB00nHP2M||332
スネイクは疲れきった様子で首を振った。
いつもなら「何とかしやがれ!」とカリに掴みかかるのだが、そんな元気も無かった。
それ以上にショックが大きかったのだ。
ルヴィンがもう回復しないだと!?
そんな事信じられるか!
あいつがいないとこれからどうすればいい!?

istint7/31 20:17:102182cfmszB00nHP2M||452
そこにレンティーニがやってきた。
「話は聞こえたよ。
 俺のせいで…すまん。
 ルヴィンはもう治らないのか…?」

istint7/31 20:17:172182cfmszB00nHP2M||683
しかし、誰もレンティーニを責める事はしなかった。
これはルヴィンが自分で決めて臨んだ戦いだったから。
いつの間にか部屋にはニナの姿もあった。
一同はしばらく黙り込んでいたが、突然ニナが口を開いた。

istint7/31 20:17:242182cfmszB00nHP2M||516
「一つだけ…助かる方法があるかも…。
 白の塔の賢者さまならきっと良い知恵を授けてくださるに違いないわ。
 ねえ、白の塔に行きましょう?」

istint7/31 20:17:412182cfmszB00nHP2M||355
スネイクの顔にも少し生気が戻った。
「そうだな…それはいい考えかも知れねえな。
 よし、んじゃ行くか、その賢者んトコに。」

istint7/31 20:17:502182cfmszB00nHP2M||573
スネイクは白の塔に行く準備をすると言って部屋から出て行った。
しかし、その数分後、汗だくになって戻ってきた。
「お…お前ら、ちょっと来てくれ!」

istint7/31 20:18:02182cfmszB00nHP2M||780
レンティーニ達はスネイクに促されるままに後を付いていく。
その先はルヴィンが眠っている部屋だった。
皆が部屋に入ると、ルヴィンの身体が淡い青色に輝き、見る見る内に身体の損傷した箇所を修復していっていた。

istint7/31 20:18:132182cfmszB00nHP2M||496
「こ…これはどういうことだ!?」
レンティーニも長い間生きてきたが、こんな光景を見るのは初めてだった。

istint7/31 20:18:392182cfmszB00nHP2M||442
一同が唖然としていると、どこからともなく声が聞こえた。
聞こえたというより頭に直接響いてくるようだった。

istint7/31 20:18:572182cfmszB00nHP2M||195
(皆、ご苦労だった。
 あの激戦からよくぞ生きて戻ったものだ。
 ルヴィンの肉体はこの私が白の塔に蓄えられている生体エネルギー、核力を用いて修復しておる。
 青龍の封印も再び施す。

istint7/31 20:19:62182cfmszB00nHP2M||73
 皆気付いておろうが、最期にルヴィンが見せた力は彼の本来の力。
 青龍よりも遥かに破壊的で強大な力だ。
 闇の勢力も彼の力を喉から手が出るほど欲しがっておる。
 彼の肉体はまだ若く、まだ戦いに身をおいて間もない。
 そこのレンティーニの訓練によって飛躍的な進歩は見せたが、体力、魔力、核力はレンティーニの十分の一にも満たないであろう。

istint7/31 20:19:232182cfmszB00nHP2M||633
 核力というのは、魔力、体力とは異なる個々によって全く異なる力での、例えばレンティーニの気流、スネイクの王家の力、カーティスの陽炎、といった特別な技を使う為の力だ。
 彼の核力は潜在的に強力だが、まだ使い方を知らない。
 かと言って、核力はいくら訓練しても決められた能力以外には開花しない。
 例えば、ルヴィンが一万年訓練しようとも、レンティーニの気流は体得できない。
 反対にレンティーニがどんなに訓練しても気流以外の能力は得る事が出来ないのだ。
 それは自分で見つけるしかない。

istint7/31 20:19:322182cfmszB00nHP2M||612
 ルヴィンにはまだ大きな力よりも、剣士としての腕前、体力を磨くことが大切だ。
 言い忘れたが、わしは白の塔の賢者である。
 これからもルヴィンを宜しくな。)
賢者の声は次第に小さくなり、消えていった。

istint7/31 20:19:442182cfmszB00nHP2M||843
レンティーニが最初に口を開いた。
「今のが賢者か。
 核力の存在は我々ダークエルフの中では古くから知られていた。
 気流もダークエルフの王家の力だからな。
 俺が見る限りでは核力を最も巧みに操っているのはカーティスだな。
 少し考えたんだが、俺はしばらくダークエルフの里に帰ろうと思う。
 今は何もないところだが、自分の力をもう一度磨きなおすにはうってつけの場所があるんだ。」

istint7/31 20:19:542182cfmszB00nHP2M||391
一同は突然のレンティーニの申し出にざわめいた。
そのざわめきの中から、もう一人の男が声を上げた。
「私もレンティーニ殿と同じ考えです。
 私はエルフの村で姫をお守りする為にありとあらゆる戦闘術、暗殺術、魔法を学んできたが、今のままでは闇ソーサラーや、教団の将軍クラスを相手に守りきれるとは思えません。
 もう一度戻って、我が師に教えを請うつもりです。
 姫様、よろしいですね?」

istint7/31 20:20:92182cfmszB00nHP2M||552
ムスティンの言葉にはニナが一番驚いた。
彼はニナを連れ戻そうとまでした男なのに、一人で帰って修行するなどと言い出すとは考えられなかったからだ。
では、その間誰がニナを守り、ルヴィンを育てるのか。
もちろん、議論はそこに焦点が当たった。
それについてはレンティーニから提案があった。

istint7/31 20:20:172182cfmszB00nHP2M||605
「ここから少し南西に行った所に暗黒の森があるだろう?
 そこより西に進むとまた別の森がある。
 その森を北に抜けると大きな町があるんだ。
 マシュルシティっていうふざけた名前の町なんだがな。
 そこに俺の古い友人がいる。
 そいつを訪ねるといい。
 きっと今のお前達には大きな力になってくれるはずだ。」

istint7/31 20:20:272182cfmszB00nHP2M||721
「マシュルシティなら聞いた事があるぜ。
 ギャンブルで有名な町じゃねえか。
 ロクデナシばっかり集まった犯罪者の巣窟だろ。
 そんなトコに姫さんを連れて行って大丈夫か?
 それにルヴィンみてえなガキにゃあの町は毒だぜ。」

istint7/31 20:20:362182cfmszB00nHP2M||955
スネイクが思わず異を唱えた。
スネイクの言うとおり、マシュルシティは市民の9割方が何らかの形で追われている賞金首や、犯罪者達だった。
残りの1割は、娼婦や詐欺師だ。

istint7/31 20:20:462182cfmszB00nHP2M||868
「心配するな。
 それにお前も行ってくれるんだろう?
 あの町にはもう一つの顔がある。
 まあ、行けばわかるだろうが…俺ももう十年以上あそこに行っていないからな。
 その男に会ったらこれを見せろ。」

istint7/31 20:21:12182cfmszB00nHP2M||818
そう言うとレンティーニはスネイクに紙切れを渡された。
レンティーニがその男に宛てて書いた手紙だ。
男の名前はジェイド。
かつてレンティーニ、アイシスと共に旅立った王国三騎士の一人だ。
ジェイドは三人の中では最も若く、そして才能に溢れた戦士だったが、アイシスの離反を期にギャンブル漬けの毎日を送るようになってしまった。
もちろんそんなことはスネイクは知らない。
ジェイドの名前だけは知っていたが。

istint7/31 20:21:112182cfmszB00nHP2M||438
「まあ、お前が言うんなら付いてってやるけどさ。
 俺とルヴィンとニナ姫の三人じゃ、道中少し心細くねえかい?」

istint7/31 20:21:352182cfmszB00nHP2M||130
レンティーニもそれが心配だった。
出来ればムスティンには残って欲しかったが彼は言い出したらたとえレンティーニの頼みも聞かないだろう。
それにムスティンの気持ちも大切にしてやりたかった。
ムスティン長いエルフの人生の中ではまだ若い。
たとえ戦闘能力が抜きん出ていて、冷静を装っていても今回の戦いで彼なりに悩んで出した結論に違いなかったからだ。
皆が色々思案を巡らせていると、なにやらアジトの入り口が騒がしくなってきた。

istint7/31 20:21:432182cfmszB00nHP2M||113
スネイクの手下が肩で息を切らせながら部屋へ飛び込んできた。
「お頭!何だか妙な奴がルヴィンに会わせろってうるさくて…。
 一人でここを嗅ぎ付けたらしいんだが、おかしな格好してやがる野郎で、今にも暴れ出しそうなんだ。
 どうする?」

istint7/31 20:21:512182cfmszB00nHP2M||613
スネイクは首をかしげた。
このアジトを一人で嗅ぎ付けるなんて…闇の使徒か?
「お友達ってわけじゃなさそうだな、わかった、すぐ行くぜ。」

istint7/31 20:22:42182cfmszB00nHP2M||979
スネイクに続いて、レンティーニも様子を見に行った。
すると、数人の盗賊に取り押さえられて、暴れている男が目に入ってきた。
男は前あきの奇妙な服を身につけて、靴も藁で出来たサンダルのようなものを履いていた。

istint7/31 20:22:192182cfmszB00nHP2M||495
「拙者は話にきただけと言っておろうが!
 ルヴィン殿はここにおるのだろう?」
男は興奮して今にも腰に差した、少し反りのある鞘から剣を抜きそうだった。
レンティーニは一目見てそれが誰だか理解できた。
そう、彼こそルヴィンたちがお尋ね者になる原因を作った張本人、異国のサムライ「マサムネ」だった。

istint7/31 20:22:292182cfmszB00nHP2M||285
彼はレンティーニを見つけると、突然大人しくなった。
「おお!
 レンティーニ殿!探しましたぞ!」

istint7/31 20:22:432182cfmszB00nHP2M||992
彼の話によると、今彼の故国ズパングには彼の探している聖蒼教団の仇はいないらしく、それを追って再びこの大陸に渡ってきたそうだ。
彼の探す仇とは五聖将軍の「ムラサメ」将軍だった。

istint7/31 20:22:572182cfmszB00nHP2M||328
ムラサメは他の将軍に比べ、知名度が低く、大して戦果も収めていなかったので皆首を傾げた。
元々ムラサメはズパング一の剣士であり、弓取りだった。
王にも非常に重用されており、王室抱えの剣術指南役として活躍していた。
しかし、ある日ムラサメはズパングに伝わる名刀「下弦乃皇閻(かげんのこうえん)」を盗み出し、国から姿を消した。

istint7/31 20:23:162182cfmszB00nHP2M||775
そして再びこの国に現れたときは五聖将軍となっていたのだ。
マサムネはムラサメの弟子であり、彼が姿を消して以来はズパングの隠密の長として活躍してきた。
ムラサメとも何度と無く争ったが、全て惨敗に終わった。
彼の居合い剣術もムラサメには通用しなかった。
ムラサメはズパングに伝わる剣の奥義「絶」の奥義書も盗み出し、それを体得していたのでマサムネにはなす術がなかったのだ。
王に命じられたマサムネは、ムラサメから奥義書と下弦乃皇閻を取り返すための仲間を集めに来たということだった。

istint7/31 20:23:282182cfmszB00nHP2M||595
スネイクはマサムネの話を聞き終えてから静かに口を開いた。
「ふう…
 お前の国も色々大変なんだな。
 でも俺たちもそれどころじゃねえんだ。」
次はスネイクがマサムネに自分達の事情を説明した。

istint7/31 20:23:402182cfmszB00nHP2M||662
「成る程。
 ではこうしては如何かな?
 そのマシュルシティとやらまでの道のりの用心棒として拙者を使うがよろしかろう。
 それならばレンティーニ殿も安心して修練に打ち込めるし何より拙者もルヴィン殿には借りがあるゆえ、それをお返しする絶好の機会。」

istint7/31 20:23:502182cfmszB00nHP2M||616
スネイクは胡散臭そうにマサムネを見た。
「本当に大丈夫なんかよ?
 随分自信があるみてえだけど…。」

istint7/31 20:24:62182cfmszB00nHP2M||531
レンティーニは心配そうなスネイクをよそにすっかり安心していた。
マサムネは武術大会では破れはしたが、本当の実力を見せていなかったし、レンティーニにはそれが判っていた。
マシュルシティまでの道程ならば任せても安心だろう。
それに彼の実直な性格なら命に代えてもルヴィンを守ってくれるはずだ。
マサムネはニナとも再会した。
ニナも驚きはしたが、これからの旅に彼が加わってくれると聞いて喜んだ。
スネイクも渋々レンティーニの言う事に従うことにしたようだ。

istint7/31 20:24:192182cfmszB00nHP2M||544
作戦室で、今後の事について詳しい話し合いが行われる。
レンティーニ、ムスティンは一時帰国。
ルヴィン、ニナ、スネイク、マサムネはマシュルシティに行く。
そこでジェイドという男を訪ねる。
そんな話し合いをしていると、部屋にフラフラした足取りでルヴィンが現れた。
真っ先にレンティーニが駆け寄り、彼を支えた。

istint7/31 20:24:272182cfmszB00nHP2M||131
「ようやく目を覚ましたか。
 まだフラフラじゃないか。
 大丈夫か?
 今は皆でこれからのことについて話してたトコだ。
 お前とは暫らく別れる事になるが…」

istint7/31 20:24:362182cfmszB00nHP2M||653
ルヴィンは突然の出来事にワケが分からなかった。
そっとニナに勧められたイスに座ると黙ってうつむいたままみんなの話を聞いていた。
ルヴィンはシェリフェルとの戦闘中に意識を失って以来の記憶が無い。
右腕に触れてみると、青龍の気を感じ取れた。

istint7/31 20:24:432182cfmszB00nHP2M||960
(青龍…消えたかと思ってたけど…
 一体俺は…どうなってしまったんだ…)

istint7/31 20:24:512182cfmszB00nHP2M||230
そのルヴィンの疑問には誰も答えてくれなかった。
ただ、レンティーニからは青龍の力の暴走だと言われた。

istint7/31 20:25:32182cfmszB00nHP2M||810
「いいか、ルヴィン。
 良く聞け。
 青龍の力は確かに強力だ。
 しかし、濫用すると今回のようにまた暴走するかもしれん。
 強力な力は得てして危険なものだ。
 お前もあのシェリフェルの力を見ただろう?
 マシュルに着いたら、ジェイドの言う事を良く聞いて修行に打ち込め。
 力はいずれ身につく。
 お前が成長するまでは俺たちが身体を張ってやるさ。」

istint7/31 20:25:132182cfmszB00nHP2M||734
「レンティーニ…」
ルヴィンは父親を知らなかったが、実際に父親がいたらきっとこんな感じなんだろうと思った。
そしてその父のように慕っているレンティーニの為にも彼の教えを守り、次に会うときには必ず彼の力になろうと決意した。

istint7/31 20:25:302182cfmszB00nHP2M||554
************************************

istint7/31 20:25:462182cfmszB00nHP2M||566
旅立ちの前日、レンティーニの部屋をニナが訪れた。
「珍しいな、お前が俺を訪ねてくるとは。」
レンティーニは眠れないらしく、剣を抱いたまま、膝を抱えていつものように月を眺めていた。
砂漠の乾いた夜風が肌に心地よい。

istint7/31 20:25:572182cfmszB00nHP2M||801
「あなたほどの人が眠れないのね…。 
 ルヴィンは一体何者なのかしら…?
 賢者様も何か真相を隠して話されていたようだったし、あなたもいつもの様に何か大切な事は隠しているもの。」

istint7/31 20:26:62182cfmszB00nHP2M||332
レンティーニは片方の眉を上げて初めてニナの方に向かって座りなおした。
「…鋭いな、ニナ。
 まあ、俺が知っている事もお前達の持ってる情報とさして変わらないさ。
 俺はあいつの父親と暫らく付き合いがあったから勘が働くだけだ。
 ルヴィンは、驚く程あいつの父親に似ているよ。
 剣の才能だけじゃない、仕草も、性格も。
 あいつの父親はな、俺たち三騎士のリーダー格だった。
 戦闘の腕もそうだが、何か人を惹きつけるものを持っていたよ。
 青龍を倒せたのもあいつがいたお陰だったしな。
 で?お前は俺の昔話を聞きに来たのか?」

istint7/31 20:26:342182cfmszB00nHP2M||296
ニナは困ったように微笑むとレンティーニの側に腰掛けた。
彼女自身、なぜレンティーニを訪ねたのか判らなかったのだ。
今までこの旅の道しるべとして、仲間達を引っ張ってきた彼がいなくなるのは不安だった。
レンティーニの話を聞いてそれがよく身に染みる。
きっとレンティーニもルヴィンのお父さんという道しるべを失って不安と戦い続けてきたに違いない。
ニナは幼い頃から強くて頼りになる存在としてしかレンティーニを見ていなかったのでそんなレンティーニの心中を推し量って複雑な気持ちになった。

istint7/31 20:26:512182cfmszB00nHP2M||640
「フフ…いえ、あなたも人間らしいところがあるのね。
 そうよ、私達はあなたがいなくてもきっと大丈夫よ。
 いざとなればルヴィンだってあの聖蒼教団の元帥と引き分ける程の力があるし、マサムネだってスネイクだって付いて来てくれるし!
 レンティーニは自分の納得いくまで技を磨いて…」

istint7/31 20:27:142182cfmszB00nHP2M||868
ニナはそこまで言うと背を向け、部屋の扉に手を掛けた。
そして消えそうな声でささやいた。
「そして…必ず帰ってくるのよ…」
レンティーニは無言でその後姿を見送ると再び月を眺め出した。
「ありがとう…」

istint7/31 20:27:222182cfmszB00nHP2M||430
月を見ていると不思議と昔の事が思い出される。
その頃、ルヴィンも自室で月を見上げていた。

istint7/31 20:27:352182cfmszB00nHP2M||141
「なんだろう…月を見ていると胸がザワザワする。
 そういや、城下に残してきた母さんとカリン(妹の名)は無事だろうか…。」

istint7/31 20:27:492182cfmszB00nHP2M||665
ルヴィンの母と妹は城下でずっとルヴィンの帰りを待っているに違いない。
明日、レンティーニに二人の事を頼んでみよう。
エルフの村に帰るならきっと城下に寄ってから行ってくれるだろうし…。
俺は…一体何者なんだ…?
本当に母の息子なのか?
そうだ、青龍に尋ねてみよう。
ルヴィンは心に青龍の姿を思い描いて呼びかけた。

istint7/31 20:27:572182cfmszB00nHP2M||951
(小僧…、何用だ。)
青龍の声が頭の中に鳴り響く。

istint7/31 20:28:52182cfmszB00nHP2M||59
「俺は、あの時どうなっていたんだ?
 俺は自分が何者なのか知りたい。
 お前が知ってる事を教えて欲しいんだ。」

istint7/31 20:28:312182cfmszB00nHP2M||200
(面白い事を吐かす…
 小僧、貴様は真実の重みに耐えられるかな?
 あの時、貴様は己の意識の限界を超える力をこの俺から引き出した。
 その結果、肉体は完全に俺の精神の支配下に於かれた。
 だが、俺は気付いていた。
 お前の潜在意識下に眠る本当のお前が目覚めようとしておるのを…。
 俺はレンティーニとの義理もあった為、その力を封じるのに尽力した。
 しかし、敵が強大すぎ、力の大半を戦闘に費やしてしまった。

istint7/31 20:28:412182cfmszB00nHP2M||548
 結果、お前は弱まった封印を打ち破り、不完全な状態で覚醒した。
 賢者から聞いておるだろうが、生体兵器『ラロッシュ』としてな。
 しかし、お前のそれは古代の兵器ラロッシュのものとはどこか違う…。
 それは俺にも判らんが、賢者は隠し事が多いからな。
 おっと、話を戻すぞ。
 お前はその後、教団の元帥と互角に戦った。
 覚醒が不完全だったせいでお前の肉体は精神についていく事が出来ず、崩壊していった。
 俺が確認できたのはここまでだ。
 お前が何者なのかは俺には判らない。
 それはおまえ自身が解き明かしていかなければならない事であろう。)

istint7/31 20:28:532182cfmszB00nHP2M||886
「俺が…聖蒼教団の元帥と戦った…?
 生体兵器ですらない…?
 知れば知る程分けが分からないよ…。」

istint7/31 20:29:42182cfmszB00nHP2M||199
(…そうか。
 俺の知っている事は全て伝えた。
 これからも俺はお前の封印として存在するが、忘れるな。
 お前自身がその封印を解こうとすればこの封印は意味を成さない事を。
 お前は自分の力量を知り、それに見合った力を使うことを覚えろ。
 そうしなければ…)

istint7/31 20:29:152182cfmszB00nHP2M||634
青龍はいつものように少しずつ消えていった。
青龍は古代からの知識を持っていたが、ルヴィンのような者に出会うのは本当に初めてだった。
自分以上の力を持つものに対して戸惑いは感じなかったが、哀れだと思った。

istint7/31 20:29:292182cfmszB00nHP2M||621
彼はルヴィンに対して一つ嘘を言っている。
そう、父親の事を話さなかったのは彼を不憫に思ったからだろう。
今その事を知れば精神が不安定になり、暴走を招く。
かつての大戦時、暴走したラロッシュを仕留める為に聖獣クラスの兵器が何匹やられたことか…。
青龍にとってもルヴィンは今や単なる宿主ではなくなっていた。

istint7/31 20:29:392182cfmszB00nHP2M||215
※聖獣はラロッシュ開発後に、出力を落とし、制御しやすい形で改良、開発された生体兵器群。
 青龍は大戦後に封印を守る為に開発された『四聖獣』の一つ。
 出力は聖獣より上で、制御を必要としない。(自律思考型)
 また、精神体のみでの活動も可能。

istint7/31 20:30:02182cfmszB00nHP2M||618
*************************************

istint7/31 20:30:102182cfmszB00nHP2M||458
あくる日、それぞれがそれぞれの想いを胸に抱き、集合した。
ルヴィンはレンティーニと目を合わさないようにしていた。
ムスティンはそんなルヴィンに気付いて、歩み寄ってきた。

istint7/31 20:30:182182cfmszB00nHP2M||204
「お前とも暫らくお別れだな。
 ニナ姫を危険な目にあわせるなよ。
 次に会うときを楽しみにしているぞ。」

istint7/31 20:30:332182cfmszB00nHP2M||39
周りでも皆声を掛け合っていた。
しかし、ルヴィンはずっと黙っている。
レンティーニがそっとルヴィンの肩を大きな、分厚い手で抱いた。
ルヴィンはその瞬間、胸から何かが溢れだして来て思わず涙をこぼしてしまった。

istint7/31 20:30:422182cfmszB00nHP2M||270
「これでお別れってわけじゃないんだ。
 元気でな。
 剣の腕を磨け。
 鍛錬を忘れるな。」

istint7/31 20:30:512182cfmszB00nHP2M||924
ルヴィンも何か声を掛けようとしたが、声が出ない。
やっと出た一言が「ありがとう」の一言だった。
そんなルヴィンをレンティーニは優しく、しっかり抱きしめた。
一しきり別れが終わると、レンティーニとムスティンは馬に跨り、(レンティーニはティアに)荒地を駆けていった。
別れ際には快くルヴィンの母の事も承諾してくれた。
ルヴィンたちは二人を見送ると、自分達の旅の一歩を踏み出した。

istint7/31 20:31:472182cfmszB00nHP2M||935
第三部・完


istint7/31 20:31:572182cfmszB00nHP2M||134
『用語集・登場人物紹介』

istint7/31 20:32:72182cfmszB00nHP2M||359
アイシス (アイシス=スタイン)
ルヴィンの父親。かつてはレンティーニと共に王国三騎士として活躍。
青龍の封印を解き、『ノスリの紋章の剣』を手に入れる。
その剣は後に、形見としてルヴィンに受け継がれる。
闇ソーサラーベアンとの戦いで自らの力を暴走させ、ベアンを破るも、破壊と闇の化身と化してしまう。
そこに目を付けた闇ソーサラーザファによって拾われ、闇ソーサラーベアンと融合する。

istint7/31 20:32:162182cfmszB00nHP2M||382
アリステア (アリステア=ドルガヴァーレ)
グランデュール王家に仕える最期の騎士。
聖蒼教団の五聖将軍『カーティス』を兄に持つ。
その剣才は兄にも勝るとも劣らない。
陽炎剣術の腕は一流で、ソロネの守護聖であるハルファスを下す。
しかし、カーティスとの戦闘後、行方不明。

istint7/31 20:32:262182cfmszB00nHP2M||871
アブソリュート・ゼロ (魔法)
青龍の最強魔法。
しかし、厳密に言えばこれは魔法ではない。
生体兵器である青龍に備えられた破壊武器の一つで、そのあまりの威力の為、普段は幾重ものプロテクトによって使用出来なくなっている。
プロテクト解除のコードを読み上げる事によって意図的にそのプログラムを実行する事が出来る。
現在はルヴィンと肉体を共有している為、プログラムを解除する為にはルヴィンのコード詠唱が必要。
威力もルヴィン自身の能力に依存している。

istint7/31 20:32:382182cfmszB00nHP2M||449
アビス (武器)
生体金属によって作られた剣の一つ。
使用者はレンティーニ。
開放状態での単体破壊力は使用者のレンティーニの能力と相まって、最高クラス。
しかし、あまりに大量に核力を消耗する為、開放状態を使ったことがあるのは一度きり。
生体金属には一万年前の大戦時に作られたものと、それ以前より存在しているものの二種類ある。
大戦時に作られたものは、それ以前のもののレプリカ。

istint7/31 20:32:502182cfmszB00nHP2M||891
プロセルピナ (闇ソーサラー)
女の姿をした闇ソーサラー。
かつてセルレイスと戦った事がある。
表向きはグラッドに忠誠を誓い、闇の軍の為に働いているが腹に一物抱えているような人物。
実際、彼女の行動は色々と不可解な点が多い。

istint7/31 20:32:582182cfmszB00nHP2M||901
シェリフェル (シェリフェル=スティーン)
五聖将軍の一角を担う男。
年恰好は殆どルヴィンと変わらないが、その戦闘能力の高さは世界中に知れ渡っている。
時に、あまりに冷酷で強すぎるため、畏怖の念を込めて「死神シェリフェル」と呼ぶものもいる。
彼の持つ武器、「魔候の爪」は魔界で作られた生体金属で、空間を切り裂く能力がある。
彼は「時流を観測する者」でもある。

istint7/31 20:33:62182cfmszB00nHP2M||339
時流を観測する者
各時代に必ず一人存在する。
彼らには善、悪といった概念は無く、淡々と歴史を記録するのが目的。
いつから存在しているのか、誰が最初の者なのかは不明。
空間を操る能力がある他、強大な魔力、核力を操る。
シェリフェルは師である観測者を殺害し、その能力を奪った。
そのため、彼は例外的にその使命をないがしろにしている。

istint7/31 20:33:142182cfmszB00nHP2M||639
黒い男 (人物)
闇の勢力に属する冷酷な殺し屋。
その正体はシェリフェル。
闇ソーサラーのベアンに逆らった後、姿をくらませている。

istint7/31 20:33:212182cfmszB00nHP2M||353
核力
魔力とは異なる概念の力。生命力。
その大きさ、形は個人によってバラバラ。
具体的にはレンティーニの気流、カーティスの陽炎など。
また、生体金属の開放にも核力を要する。
というより、核力の性質と生体金属の相性、更に核力の強さがあって初めて開放できる。
※開放自体には主に魔力を消耗する。

istint7/31 20:33:302182cfmszB00nHP2M||192
十神老
聖蒼教団の最高司令部。
軍部での最高責任者は元帥だが、教団の最高責任者はこの十神老である。
その名の通り、十人の教皇で構成されている。
意味深な発言が多く、その真の目的は元帥であるセルレイスにすら知らされていない。
何かと謀略を張り巡らせている老人達である。

istint7/31 20:35:192182cfmszB00nHP2M||516
これにて第三部は完結です。
お疲れ様でした!
次回からは第四部、と行きたい所ですが、一話分だけ、番外編の掲載を予定しております。
その次からは第四部の連載を開始します^^

シェイラ8/1 23:46:252182cfqccrLvuQjr6||696
いつも、楽しく読ませていただいています!最初にルヴィン君が、剣を持てないと聞いて、かなり心臓がびくびくしましたΣ(・ε・;) でも、元気になってくれてよかったです♪みんなすぐばらばらになってしまって、少し寂しい気がしますが、またみんな成長して会える事を信じています。次も楽しみにしています!


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