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9424君が神ならおびわん11/8 19:11:372191cfrBPjiabhHlc
その日、神と名乗る男が現れた。
 小さなビルの屋上に立ち、白い布を纏って「私は神だ」と叫んでいる。当たり前の事だが誰一人見向きもしない。と、彼はそのビルの屋上からそれより高いビルの屋上へと飛び上がった。偶然それを見た数人がざわめきだした。「あいつ、本当の神じゃねえのか」



おびわん11/8 19:11:582191cfrBPjiabhHlc||115
「……この退廃的な世界を救うための救世主として私は生まれた。今の現実を見よ。人々は皆人を疑うことしか知らず、自分が悪いと思っている者など一人もいない。全ての責任を他人に押しつけ、無表情のまま無関心のまま街を歩き続ける。そんな虚しい人間たちを救うために私は……」
 その時一人の男が歩み寄って言った。
「君が神なら……何故そんな世をつくったんです?」

おびわん11/8 19:12:382191cfrBPjiabhHlc||972
これはとてもお気に入りの作品です。

おびわん11/8 19:29:112191cfrBPjiabhHlc||483
集団意識

その日のいつもの時間、いつものように皆が登校してきた。
 それぞれが席に着き、教科書を開いて予習を始める。担任はまだ来ない。
 教室を見渡すと、制服があるわけでもないのに皆同じ服を着ている。形はもちろん、色も若干濃淡の違いがあるだけだ。
 
 担任は入ってくると教室内をざっと見回した。
「そこは?」
「消去しました」
「それでは授業を始める……」




おびわん11/8 19:29:162191cfrBPjiabhHlc||294
少しの間の沈黙。と、誰かがくすくすと笑い始めた。それは一秒とかからぬうちにクラス中に広まり、最初に笑い出した者が誰なのかは既にわからなくなっていた。
 一人、笑いに加わらなかった者が、つと顔を上げて訊いた。
「何で笑ってるの?」
 少しの間の沈黙。

おびわん11/8 19:31:592191cfrBPjiabhHlc||469
規則
 その日も彼女は駄々をこねた。
「……ちゃん、いつも言ってるでしょう。もうお休みの時間なのよ。何度言ったら覚えてくれるの」
「でも……」
「……困った子ねえ。ママの言うこと聞けない子はよそへやっちゃいますからね」
「でも、ママ……!」
「さあいらっしゃい。ママがお歌歌ってあげるから……それともご本がいい?……さあ!」
「でも……でも、お外はあんなに明るいのよ。お日さまさんがまがずうっと、あんなに上の方にあって……」
「何度言ったらわかるの!夜だから寝るんじゃないのよ、九時だから寝るの!いい?」

おびわん11/8 19:33:292191cfrBPjiabhHlc||248
透視
困ったものだ。
 壁があろうと、目を瞑ろうと、常に何かが見えている。なまじ持ってしまった透視能力は本人の意志を無視して休むことを知らない。
 覆面している強盗の顔も、デート中の彼女の姿も、とにかく顔を向けた方向の何から何まで見えてしまう。
 最も困るのは眠りたい時。
 部屋の中が真っ暗でも壁を透かして見えてしまう。そんなだから熟睡というものを経験したことがない。いつも夢と現実の区別がつかないまま、うとうとしている。
 その日も、そんな眠り方をしていた。
 ああ、遠くの方で爆弾が発射されたなぁ。こっちへ飛んでくるみたいだ……。
 夢だろうか、それとも……。

おびわん11/8 19:34:232191cfrBPjiabhHlc||755
失敗
 その日、彼は積み木で遊び始めた。
 組み合わせ、つなげ、からませ、切断し……。
 何度も何度も、幾つも幾つも。
 そのうち彼は飽きてきて、気に入ったのを一つ残して残りを全部投げ捨ててしまった。
 失敗作の一つは地球に落ちた。


おびわん11/8 19:36:182191cfrBPjiabhHlc||193
策略
その日、僕は学校へ行った。
 誰とも話さぬまま席に着くと、いつものように彼が話しかけてきた。
「よう」
「おっす」
「どこから来たんだ?」
「?」
「ああ、まず名前だな。名前は?」
「名前って……何だよ、どうしたんだよ」そして、思わず彼の名を呼んだ。
「!もう覚えてくれたのか、光栄だな」
「光栄って……」
 僕は周りの奴等の視線がいつもと違うのに気がついた。何かよそよそしい。
「冗談もいい加減にしろよ」
「何だよ、何、怒ってんだよ」




おびわん11/8 19:36:232191cfrBPjiabhHlc||564
教育センター管理塔。昨日のテストのトップは皆の記憶から消去した。いつも通り僕がトップだ。ただ、まだ本人の記憶の消去が完全ではないようなので、今夜、彼が就寝した後、彼の……」

おびわん11/8 19:37:12191cfrBPjiabhHlc||280
外出
その日、誰かが僕の家の戸をノックした。
「はい」
 そこに友人が立っていた。
「やあ」
「どうしたんだい。鼻が潰れているじゃないか」
「まあ見てくれよ」
 彼は横を向いた。
 体が紙のように薄っぺらだった。
「おいおい、何処へ行って来たんだい?」
「ちょっとブラックホールまで」

おびわん11/8 19:37:292191cfrBPjiabhHlc||533
目撃者
その日、人が殺された。
 警察の捜査は行き詰まり、挙げ句の果てに何もしていない友人を犯人として発表し、処刑した。
 二年後、本当の犯人は崖から転落死した。
 真実を知っている者は僕だけとなった。あの日殺された僕だけと。

おびわん11/8 19:38:142191cfrBPjiabhHlc||466
ビック・バン
その日はやけに外が騒がしかった。
 外にいる人に何があったのか尋ねようと体を起こした。いつもより身が軽いような気がした。
「何があったんです?」
「いやあ、大変な事になりました。昨日、ビッグ・バンが起こりましてねえ」
「え?」

おびわん11/8 19:39:172191cfrBPjiabhHlc||67
探し物
その日僕は探し物をしていた。
 ショウウィンドウに並んでいるTシャツがどんなに高くたって、そんなこと僕には関係ない。エネルギーが少なくなった今、ビルの中が冷房していなくたって、僕の知ったこっちゃない。
 街の中、Tシャツを着ている奴ら、アイスクリーム持って足早に歩いていく。暑いだろうね。僕と違って。
噴水を囲むレンガの縁、カップルがたくさん座ってるよ。僕、一人足を組んで透けて見える体がちょっともの悲しい。陽射しが強い街、街、街。
 亡くし物、探し物、僕の探している物――僕の体。

おびわん11/8 19:40:322191cfrBPjiabhHlc||562

その日は何故かとても眠くて、いつもより一時間ほど早く寝た。眠っている間、まるでスペースオペラのような凄い夢を見ていた。
 次の日、私は学校でそのことを友だちに話そうとした。
「ねえ、聞いてよ、私、凄い夢を見たの」
「ふうん、どんな?」
「化け物がどんどん出てくるの。それを私とかっこいい……」
「コンナバケモノダッテ……?」友だちであった者たちが、顔には眼しかないもの、黒い影のようなもの、体が薄青く変化し、爪がとがり、醜い形相をしたものへと変わっていった。

おびわん11/8 19:40:372191cfrBPjiabhHlc||713
「キャーー!!」
 気がつくとそこは砂漠だった。何が何だかわからなくなった私は、現実に戻るため、もう一度眠った。
 目が覚めた。大丈夫、いつもと同じ。顔を洗って鏡を見ると、見慣れた私の顔があった。
 学校に行くため家を出た。途中で会ったおばさんが私を見るなり、まるで化け物でも見たかのような顔になり、走り去ってしまった。どうしたというのだろう。
 鏡には顔が映っている。誰もいないのに。


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