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953HURISHA ―儚き恋― 』ピゅナ6/16 19:11:472221cfgq4jcCp8VgQ
うっすらと、淡いオレンジ色に染まった空。
辺りは色とりどりの花で覆いつくされている。
ふわふわな、綿のようなもので包まれた暖か味のある花や、
妙に細長く、
一つの茎に沢山の花を咲かせている植物など…。

とにかく、

それはいろいろな花でその世界は包まれているような錯覚を
感じさせる景色だった。

ふわり、と

ピゅナ6/16 19:12:142221cfgq4jcCp8VgQ||511
心地よい暖かな風が舞った。
優しくて淡いその風は、その永遠に続くような花畑を、舞った。

ひらり、ひらり。

花々から放たれたその欠片は、その風に合わせて空高く舞い上がった。

わさっ……。

今までとは違う音が交えて聞こえた。
「やっぱり、此処にいたんだね」
振り返るとそこには、一人の男が立っていた。
「ギラム…」
私はその男の名前を呼んだ。

ピゅナ6/16 19:12:362221cfgq4jcCp8VgQ||813
男はここには場違いな程、全身黒い洋服を纏っていた。
まるで、浮世離れしているような印象をも纏っていた。
背中の大きなマントがはためき、それが、彼がちゃんと此処に存在していることを
示した。
彼はいつもマスクで顔を覆っている。
奇妙に笑っているような、マスクに描かれた目は人々を不吉な気持ちにさせる。
背中には悪魔のような羽根もあった。
それらすべてが、彼を『バットマン―コウモリ男』と呼ぶようになった原因だった。

ピゅナ6/16 19:13:72221cfgq4jcCp8VgQ||74

それでも―…

私は構いはしない。
不吉な感じを覚える事もない。

何故なら――

私は彼を、心から愛しているから。
この世の何よりも、尊い。

「フリシア…。キミは本当に美しい。この世の誰よりも…。
 この場所は、まるでキミだけの為のステージのようだ」
私はくすりと笑って見せた。
そんな私を見て、彼も楽しそうに口元を歪める。

ピゅナ6/16 19:13:312221cfgq4jcCp8VgQ||310

私は幸せだと思う。
それと同時に、この幸せは永遠に続くであろうと、幼い私は信じていた。

ある日。

私は突然、病に倒れた。
それは『死の病』と呼ばれる病気のひとつだった。
感染したら、治ることはあり得ないと言われていた。
私は、死 を目の当たりにしたのだ。


ピゅナ6/16 19:13:562221cfgq4jcCp8VgQ||850
「あぁ、フリシア…。何故お前がこんな目に遭わなきゃいけない?
 できるなら、今すぐにでも変わってやりたい…」
「そんな事言わないで、ギラム…。どうか、私の分まで幸せになって」

そう言いながらも、私は日々、恐怖に震えていた。
頭がどうかなってしまいそうだった。

死神が、日に日に、距離を狭めてくるのを感じていた。

ピゅナ6/16 19:14:162221cfgq4jcCp8VgQ||144

「フリシア!フリシア!!」
呼ばれて、私はいつもの苦しく、深くて暗い闇から覚めた。
すっかり食事は口に入らず、それはもう、生き地獄だった。
もう、このまま死んでやりたいと思った。
「ギラム…。こんな夜にどうしたの…?」
「キミの為に、命の源を手に入れた…。さぁ、これを呑むんだ…」
差し出したのは、小瓶に入った、青い光のようなものだった。
それは闇を綺麗に照らした。

ふわわり、と。


ピゅナ6/16 19:14:362221cfgq4jcCp8VgQ||183
「…命の源?…ギラム…。駄目よ。盗んで来たのでしょう?
 これはこの世界の人々の薬の元ではないか。
 これを今、私が呑んでしまえば、世界中の人は治る病も
 治らなくなってしまうわ…」
「そんな事…。もう、今のキミには関係の無い事ではないか。
 キミが死んだら、キミにとって世界は終わる。
 そして、このボクも、キミの居ない世界なぞ、滅びたの同然…」

私は反対した。
けれど、結局、私は死にたくなくて、それを呑んでしまったのだった…。


ピゅナ6/16 19:14:582221cfgq4jcCp8VgQ||543
しかし、それからも、私の容体はまったく良くなる気配を見せなかった。
私は日に日に衰弱した。
つられるようにして、周りの人々も少しずつ減っていった。
薬がなくなり、病にかかった人は皆、死んでいった。

「何故?なぜだ!まったくフリシアの容体は良くならないではないか…」
盗人になってしまったギラムは、毎日人目を盗んで、私に会いに来た。
「でも…。お医者様に言われた最期の日はとうに過ぎたわ。
 余命は延びているの…」
「駄目だ…!これでは駄目だ…!フリシア、キミは絶対ボクが助ける!!」
ギラムはそう、言い残して私の元を離れてしまった。

それが、私の聞いた、ギラムの最期の言葉だった…。


ピゅナ6/16 19:15:182221cfgq4jcCp8VgQ||665
それから、季節が巡り返してきた頃、フリシアは突然のごとく、元気を取り戻した。
それはもう、元気に走り回れるほどに。

けれども、そこにはギラムの姿は無かった。
私はギラムを探した。
何処にも、居なかった。

聞くと、ギラムを探しているのは私だけではない事を知った。
命の源を盗んだギラムは、犯罪者として捜索されていた。

見つけ次第、死刑。

私は焦った。
なんとか、なんとかして彼を誰より先に見つけなくては…!!


ピゅナ6/16 19:15:402221cfgq4jcCp8VgQ||998
私は旅に出た。
両親を振り切って。

長く、長く、辛い旅だった。
白かったはずのドレスと、背中の天使の羽根は、すっかり黒ずみ、
元の姿を失っていた。
それは、私も同じだった。

もう駄目かと諦めた時――

ついにギラムを見つけた。
それは、あの、花畑で。
淡いピンクや黄色の花に囲まれ、守られるようにして、彼は倒れていた。


ピゅナ6/16 19:15:592221cfgq4jcCp8VgQ||436
その時の私は、もう嬉しくて、嬉しくて…
立ち竦んでいた。
頬には長い事伝わらなかった熱いのが流れた。

ギラム…!あぁ、やっと、やっと見つけた…!!

しかし―…

駆け寄ると、ギラムには体温がなかった。
すっかり痩せ衰えた体は
まるで、雪のように、冷たかった。
それは、私が今までで知っている何よりも冷たかった…。
手には、いくつかの葉や実が握られていた。


ピゅナ6/16 19:16:182221cfgq4jcCp8VgQ||521
「…っ!?ギラム!!…ギラム!!!」

返事は……無かった。
わかっていた。
どんなに、呼んでも、叫んでも、もう、手遅れなのだと…。
だから、余計に虚しかった。
悲しくて、悲しくて…。
さっきとは違う涙が、あとから、あとから溢れ出た。

こんなにも広い世界を、どこまで探しても、もう、彼の温もりを感じることはできない―…

「ギラム…。あなたの居ない世界なんて、滅びたの同然。
 私もこのまま、あなたと共にいるわ…」
私は、ギラムの隣に、そっと寝転んだ。


ピゅナ6/16 19:16:342221cfgq4jcCp8VgQ||343
それから…
何日かして、そのふたりの姿を、人々に発見された。
人々はその姿を見、
悪のバットマンを、フリシアが倒したのだと思い込んだ。

そして、
私は永遠に、その世界に語り継がれる、伝説の中での正義となった。


ピゅナ6/16 19:22:432221cfgq4jcCp8VgQ||868
☆ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ☆
はい^^これは、KIAの番外編です。
まったくKIAの物語には関係無いようですが、実はコレ、
物凄く重要なのです^^

キャラを魅力的に、
ストーリーより深く

を目指して書いたのです。

前作にレス下さった方々、一度でも目を通して下さった方々、
そしてこの話を読んで下さったすべての方に感謝致しますm(__)m
☆ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ☆

ぷっち6/16 19:52:192224cfs5fTTnIcDP2||637
マジ涙出てきました・・・
言葉では表せないくらいの感動でした・・・

どーもこういう小説に弱いなァ・・・私・・・;;

リナ=インバース6/16 20:19:16125cfI3g.7ztboMM||341
感動だぁ!!私はこんなにすばらしい小説かけないやぁ・・・・・

mei☆6/16 20:52:122191cfzD8hoWSrBxg||614
うぅ・・。。
切ない。。
彼女の伝説はKIAの世界に深く絡み合っているんでしょうね^^
もっと知りたい・・!
次も楽しみにしてるよww♪

アーヤ6/16 21:32:202227cfRes8t0yFzuc||144
切ないですね・・・。こういうお話も大好きです。

△亜紀△6/17 14:14:92031cfmsEA.FDLOL6||729
ハッピーエンドがsyべてじゃないですね・・・。感動しました!次回も頑張ってください><

シェーラ6/17 15:39:452182cfeTy1zOffTD.||666
わぉ、かんどうです!
次回もがんばってください

いおり♪6/17 18:53:62184cfLLIShuLI3Y6||452
なんて素敵な話しなんだろう。と思ってしまいします。
KIAとどういう関係があるのか気になりますねぇ

花枕6/19 10:25:72202cfoBCC8AHIHp.||930
・・・・
切ないです(;д;)
KIAとの関係かぁ・・・
気になりますっっ!!
続きがんばってください!!!


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