| 9764 | バッタライダー | sIs | 1/9 23:38:14 | 1219cf0Go//NQU9A. |
赤石地方には、変なヤツがいる。 | ||||
| sIs | 1/9 23:38:22 | 1219cf0Go//NQU9A.||297 | ||
「変なヤツ?」 「そう」 その少女はインターネットの掲示板で、そいつの情報を得た。 何でも毎日違う駅から電車に乗って、毎日違う駅で降りるらしい。 その場所の脈絡のなさから、何か目的があって乗っているわけではないようだ。 | ||||
| sIs | 1/9 23:38:33 | 1219cf0Go//NQU9A.||569 | ||
「降りるときに、何か一言言うんだって」 「何を言うの?」 「それは日によって違うらしいけど」 聞いた人はその後の体調が少し良くなるらしい。 「何か出鱈目っぽいよ」 「でも本当らしいよ、頭痛が軽くなったり、口内炎が出来なくなったり」 「ふぅん……名前は?」 | ||||
| sIs | 1/9 23:38:41 | 1219cf0Go//NQU9A.||918 | ||
変な仮面をつけたそいつの名前は、 「えっと、確か『バッタライダー』……」 | ||||
| sIs | 1/9 23:38:47 | 1219cf0Go//NQU9A.||386 | ||
| sIs | 1/9 23:39:1 | 1219cf0Go//NQU9A.||277 | ||
深島月葉は電車に乗っていた。 今日は休日で、彼女はちょっとした用でその電車に乗っていたのだが、 何しろ物凄いローカル線の上、今は一番利用客が少なくなる時間帯である。 二両の短い普通電車の中に乗っている人間の数は五人もいない。 音楽を聴いたり、新聞を読んだり、月葉も含めて全員が自分だけの世界に入り浸っている。 | ||||
| sIs | 1/9 23:39:9 | 1219cf0Go//NQU9A.||392 | ||
月葉はただ外の景色をぼーっと眺めていた。 特にこれといった特徴があるわけでもない、海辺の平坦な水田地帯が広がっている。 海辺とはいえ、直接海が見えるわけではないが。 線路から少し離れたところに国道敷かれていて、時々青いトラックが駆け抜けていく。 | ||||
| sIs | 1/9 23:39:23 | 1219cf0Go//NQU9A.||664 | ||
月葉を乗せて走っているこの電車が走っている線路には、橋斜( きょうしゃ )本線という名がついている。 しかし本線とは名ばかりで、沿線は度のつく田舎。 この先終点までいくつも駅はあるが、多分乗客はこれ以上増えないだろう。 「『鉄道の残った地方』とはいえ、いくらなんでもね……」 | ||||
| sIs | 1/9 23:39:31 | 1219cf0Go//NQU9A.||430 | ||
もはや日本で鉄道が元気な地方はここ以外にない。 北から南まで、国鉄が走っていた頃の時代は既に塵程度の面影しかない。 その中で赤石地方の鉄道が今も元気なのは、ほとんどの道路が未舗装で、電車の方がはるかに便利だからである。 ここから見えるあの国道も、砂埃が舞う砂利道。 それどころか、対向車線すらない。 | ||||
| sIs | 1/9 23:39:44 | 1219cf0Go//NQU9A.||641 | ||
しかし、ここは何といっても街から遠く離れた場所。 鉄道が元気とはいえ、この辺は他地域と大して差がない。 駅舎すらないような小駅も多い。 やがて電車は海辺を離れ、険しい山地へと向かっていく。 景色は水田から畑に変わり、家の外観も微妙に違ってくる。 もう少し走ると畑も家も何もなくなり、ただ小さな川が遡っていくだけになる。 | ||||
| sIs | 1/9 23:39:55 | 1219cf0Go//NQU9A.||176 | ||
『間もなく、奥浜( おくはま )です』 壮年の運転士の気だるそうな声がスピーカーから流れると、電車は速度を落とし、 文字通り何もない山の中にひっそりと佇む奥浜駅に停車した。 普段、奥浜駅からは誰も乗ってこないし、誰も降りない。 しかし、今日は一人だけ乗り込んできた。 これにはさすがの月葉も少し驚いた。 そしてあろうことか、そいつはまっすぐ歩き、月葉の左側に座り込んだ。 | ||||
| sIs | 1/9 23:40:2 | 1219cf0Go//NQU9A.||489 | ||
電車がまた動き出す。 | ||||
| sIs | 1/9 23:40:11 | 1219cf0Go//NQU9A.||560 | ||
「……」 「……」 月葉は隣を盗み見た。 「……何か用でも?」 月葉の隣に座っているそいつは、月葉の視線に気づいて尋ねた。 月葉は驚いて首を横に小さく振り、また正面を見据えた。 そしてまた、今度は気づかれない程度に盗み見る。 | ||||
| sIs | 1/9 23:40:20 | 1219cf0Go//NQU9A.||774 | ||
電車の暖房になびいている薄紫色のマフラーに、あまり実用性はなさそうな鮮やかな色彩の鎧。 金色の縁に囲まれた赤い胸板、腹部は黄緑色だがムカデの背中にそっくり。 紺色の、革製らしい手袋。 深緑の靴、というよりはブーツ。 腕と太ももの部分には昆虫の腹のような水色の縞模様。 肩当と腰当には何やら奇怪な模様が描かれている。 そして、複眼と触覚まで丁寧に書き込んである緑色の仮面。 | ||||
| sIs | 1/9 23:40:28 | 1219cf0Go//NQU9A.||308 | ||
月葉は、そいつのことを知っていた。 ただし、あくまで人づてで聞いた噂だが。 | ||||
| sIs | 1/9 23:40:35 | 1219cf0Go//NQU9A.||410 | ||
もしかして、これがバッタライダー……? | ||||
| sIs | 1/9 23:40:48 | 1219cf0Go//NQU9A.||252 | ||
そいつは毎日どこかの駅から電車に乗り、どこかの駅で降りる。 降りるときに何か一言呟く。 その呟きを聞いた者は、少しだけ体調がよくなるらしい。 月葉だけではない、もはや赤石地方のほとんどの人が知っている噂である。 しかしまさか、本当にいるなんて……。 「……大丈夫か、お嬢さん」 バッタライダーが月葉の顔を覗き込んで聞いてきた。 どうやら口を開けたまま硬直していたらしい。 | ||||
| sIs | 1/9 23:41:0 | 1219cf0Go//NQU9A.||694 | ||
「あ、いえ、大丈夫です」 月葉は慌てて返事をした。 お前の方が大丈夫か、と危うく突っ込みそうになってしまったが、それはいけない。 いくら何でも失礼である。 「何か驚くことでもあったのか」 「いえ、何も……大丈夫ですから」 「……そうか」 | ||||
| sIs | 1/9 23:41:7 | 1219cf0Go//NQU9A.||691 | ||
しかし月葉はこのやり取りの間、何も大丈夫ではなかった。 大笑いしそうでもあったし、 バッタライダーを蔑んだ目で見てしまいそうでもあったし、 「お前に驚いた」と言いそうでもあった。 とにかく、直視していると全然落ち着かない。 というか、隣に座られているだけでも十分落ち着かない。 | ||||
| sIs | 1/9 23:41:20 | 1219cf0Go//NQU9A.||72 | ||
しかし何故、バッタライダーは奥浜駅から乗り込んできたのだろう。 やっぱり、目的がないようにしか思えない。 そんなことをあれこれ考えているうちに、電車は次の停車駅に止まった。 橋斜本線で最も大きな駅、午鵡( ごむ )駅。 バッタライダーは電車が止まると同時に立ち上がった。 | ||||
| sIs | 1/9 23:41:30 | 1219cf0Go//NQU9A.||401 | ||
「それじゃあ、あまり一人で抱え込みすぎるなよ、お嬢さん。 あ、それと……」 月葉が何も言わないうちに、バッタライダーは続けた。 | ||||
| sIs | 1/9 23:41:37 | 1219cf0Go//NQU9A.||565 | ||
「今年もよろしく」 「え?」 | ||||
| sIs | 1/9 23:41:47 | 1219cf0Go//NQU9A.||153 | ||
バッタライダーはまっすぐ、堂々と歩いて電車から降りた。 他の乗客もみんな降りてしまって、月葉と運転士だけが車内に残された。 「今年もよろしく、って……」 また、会うのだろうか。 出来れば願い下げなのだが。 | ||||
| sIs | 1/9 23:41:56 | 1219cf0Go//NQU9A.||121 | ||
『発車します、ドアにご注意下さい』 運転士の気だるそうな声がスピーカーから流れると、電車は次の駅に向かって走り始めた。 すぐに午鵡駅を出て、午鵡村の静かな市街地を低速で走っていく。 「あ」 | ||||
| sIs | 1/9 23:42:4 | 1219cf0Go//NQU9A.||61 | ||
月葉は窓の外を見て思わず立ち上がってしまった。 バッタライダーが、ピンク色のママチャリを漕いでいた。 ハンドルの部分には、ベルの代わりに何故か真っ白な風鈴がぶら下げられている。 よく見るとガラスの部分に顔の模様が描かれてあった。 | ||||
| sIs | 1/9 23:42:11 | 1219cf0Go//NQU9A.||634 | ||
「……別に正義のヒーローってわけじゃなさそう……」 それにしては、何だか気が抜けるようなヤツだ。 月葉は、ふっと笑って座り直した。 | ||||
| sIs | 1/9 23:42:20 | 1219cf0Go//NQU9A.||787 | ||
その日以降、月葉の体調が少しだけ良くなった。 | ||||
| sIs | 1/9 23:42:44 | 1219cf0Go//NQU9A.||63 | ||
■ 後書き 遅ればせながら、皆さん明けましておめでとうございます。 ようやく新年最初の小説が書けたので乗せておきます。 冒険記や旅詩集も待っていてくださいね… orz これは「今、過疎地の神様は」などと同じ地方でのお話です。 深島月葉はsIsが今一番赤石地方の小説の中で気に入っているキャラです。 彼女は以前にも1度だけここに出現しています。 バッタライダーは某方からアイデアを頂きました(爆) あ、赤石地方というのは架空の地方ですよ。 | ||||
| O-O | 1/10 22:7:3 | 2101cf1fn4JUGO1X6||813 | ||
| こんばんは! 今までにない作品といったのが第一印象です。 出版されて、映画化しそうな物語だと思います。(ホントニ 主演は加藤 あい がしそうで、バッタライダーは、大泉 洋がやりそうです。 外れましたが、とってもいい作品なので、 本当に、出版願います。 次回楽しみに待っています。 | ||||
| sIs | 1/11 18:3:51 | 1253cfDWl78lm1bdc||788 | ||
■ O-Oさん 確かに、今までにない作風になりましたね(笑) ネーミングからして明らかにバッタライダーはシリアス系ではないので…。 ギャグ、ではないですが僕にしてはかなり異色なコメディ(?)です。 ちなみに映画化も出版化もないと思います。 仮面ラ○ダーとどこか似ているような気もしますが、間違いなく気のせいです。 次の小説も頑張りますね〜|△・)ゞ | ||||
| バルトーク | 1/11 22:37:52 | 2212cfBcsmysAsVME||617 | ||
| こんばんわ^^あけましておめでとうございます。 バッタライダーという題名を読んだとき、それに良く似た名前のアーティストを思い浮かべてしまいました。 都市伝説がまさか、ローカル線に現れるとは。しかも正体は推測してはならないタブーな雰囲気に包まれています。コスプレとかいう言葉は禁忌ですねw ゆったりと展開する一人称の不思議物語。なんだか癒されました。 終わり方もいい感じですし、一話完結の短編とか僕、書きたいんですよ! それのいい感じのものをまざまざと見せつけられた気がしました。 赤石地方を舞台にしたお話も他の作品と同様に期待大テです。 これからも頑張ってくださいv | ||||
| ピマ | 1/13 11:35:23 | 2219cfzQXzY1fm16Y||658 | ||
| sIsさん、こんにちは。 ご無沙汰してました(汗)ごめんなさい。 ひっさしぶりに芸術掲示板を覗いてみたら発見することに成功しました〜。 まず、やっぱり題名にインパクト大!です。 ライダーとつくものだから、何故か正義のヒーロー物かと思いました(笑) これは、もう完結したんですよね? 続編がみてみたいなあ♪と思いました。 謎めきすぎです、バッタライダー。。 またみますー。 | ||||
| sIs | 1/13 23:48:47 | 1253cfDWl78lm1bdc||272 | ||
| ボケーっとしていたらネット3日ぐらい繋ぎ忘れていました。 新学期が始まって頭がパンクしていたようです。 ■ バルトークさん これがいわゆる「都市伝説」ですか。知りませんでした(爆) 正体は推測してはならないのではなくて、出来ないですね。 ただし断じてコスプレではないです。 読切にしては結構長いな、と思ったのですが大丈夫でしたか? 投稿したあとで「うわ、これ誰か読んでくれるかな」とかうろたえたり。 バッタライダーに似た名前のアーティスト…世間知らずなので分かりませんでした orz | ||||
| sIs | 1/13 23:48:55 | 1253cfDWl78lm1bdc||336 | ||
□ ピマさん ご無沙汰していました。 そんなにインパクトが…異彩を放っていたんですね(・△・;) 何故かライダーと書くと皆正義の味方だと思ってしまうようですが、 仮面ラ○ダーなどは何も関係していません。 だってバッタライダーだから。ネタだから(爆) これは、そうですね、sIsの中ではこれでお終いです。 続編、書いてみますか?(笑) | ||||
特殊文字 by.チビファンタジー 過去ログ : PS2:GBA:PSP:NDS:GC:XBOX | ||||