8454 | セイクリッドブルー第三部(5) | istint | 6/12 19:32:57 | 6056cfPe5uVYEslDw |
http://bbs.chibicon.net/bbs/t12-8399.html 前回までのお話 |
istint | 6/12 19:34:10 | 6056cfPe5uVYEslDw||459 | ||
ルヴィンは暗黒のオーラに包まれたシェリフェルに、全力で立ち向かっていた。 ルヴィンの繰り出す一撃一撃は全て強大な氷の魔力を纏った衝撃波だったが、シェリフェルはその全てをことごとく弾き返していた。 |
istint | 6/12 19:34:19 | 6056cfPe5uVYEslDw||811 | ||
ルヴィンは攻め続けなければならなかった。 攻め手を止めると恐怖に飲み込まれそうな気がした。 それに防御に回ってしまえばどんな攻撃が来るかわからない。 その証拠にルヴィンは体中が引き裂かれそうなくらい全力なのに対し、シェリフェルはまだ口元に笑みを浮かべている。 |
istint | 6/12 19:34:27 | 6056cfPe5uVYEslDw||714 | ||
二人の巨大な気のぶつかり合いで、城壁は吹き飛び、木は根こそぎ薙ぎ倒され、地面には幾つもの亀裂が走っていた。 ルヴィンの放つ一撃の重さは凄まじく、シェリフェルの魔候の爪にぶつかるたびに、白い光を放ち、周囲の空気を凍りつかせて雪の結晶が弾け飛ぶ。 不意に、シェリフェルの動きが止まった。 |
istint | 6/12 19:34:36 | 6056cfPe5uVYEslDw||678 | ||
「気に入らないな、ルヴィン。 そんなのが君の本当の力かい? がっかりしたよ、折角僕と同じ…まあいいや、そろそろ本当の力を見せてみろよ。 そんな借り物の力じゃなくてさ。 怖いのかい?」 |
istint | 6/12 19:34:55 | 6056cfPe5uVYEslDw||588 | ||
青龍の力に包まれたルヴィンはシェリフェルに簡単に弾き飛ばされて城の壁に激突してしまった。 態勢を立て直そうとしていると黒い雷撃がマシンガンの様な勢いで飛んでくる。 その内の一本がルヴィンの肩を貫通した。 全身に猛毒が回ったようなショックに襲われ、痛みで思考が混乱する。 しかしルヴィンは小さな声でブツブツ呪文のようなものを唱えていた。 耳のいいエルフのムスティンは、それを聞き逃さなかった。 |
istint | 6/12 19:35:3 | 6056cfPe5uVYEslDw||46 | ||
「ニナ姫、私の後ろにお下がり下さい。 推測が正しければ今ルヴィンが使用する呪文は青龍の最大の破壊魔法です。 どんな効果があるかは分かりませんが、あのスペルの並びは間違いない。 私の光の盾ならば直撃さえ受けなければどんな魔法も防げます。」 |
istint | 6/12 19:35:10 | 6056cfPe5uVYEslDw||456 | ||
ニナはムスティンの言葉に従い、身を隠す。 シェリフェルはルヴィンの側までゆっくり歩いていく。 魔法の発動までにはまだ時間がかかる。 だがシェルフェルは魔力の糸の動きには気付いてないようだった。 |
istint | 6/12 19:35:18 | 6056cfPe5uVYEslDw||552 | ||
「もうお仕舞いかい? そろそろ死ぬの?」 |
istint | 6/12 19:35:30 | 6056cfPe5uVYEslDw||348 | ||
シェリフェルはルヴィンの首をグイっと掴んで持ち上げた。 ルヴィンはシェリフェルを睨みつけると苦しそうに血を吐いた。 シェリフェルがついにルヴィンに止めを刺そうとして魔候の爪をスッとルヴィンの首にあてがった瞬間、ルヴィンの顎がガクガク震え、口の中が青白く輝いた。 |
istint | 6/12 19:36:7 | 6056cfPe5uVYEslDw||230 | ||
そしてシェリフェルの顔面目掛けて強烈な輝きを放つ波動を吐き出した。 怒れる青龍の究極の魔法、「アブソリュート・ゼロ」だ。 その名の通り、絶対零度に限りなく近い(使用者の魔力による。この場合は媒体となってるルヴィンの魔力)冷気が敵を襲い、完全に凍りつかせた後に激しく噴出す勢いでチリになるまで粉砕する大規模破壊魔法だ。 |
istint | 6/12 19:36:16 | 6056cfPe5uVYEslDw||213 | ||
(*青龍の魔法は、厳密には普段ニナやルヴィン達が使う魔法とは全くの別物。 破壊兵器として賢者に生み出された聖獣たちが精神体内に内蔵されているコアからエネルギーを生成し、それを全ての活動に使用している。ただし、強力な攻撃などにコアのエネルギーを使用するためには幾重もの安全弁を取り除かなくてはならない。その為にパスワード=呪文の詠唱が必要となっている。) |
istint | 6/12 19:36:25 | 6056cfPe5uVYEslDw||131 | ||
撃ち出された魔法の威力は凄まじく、シェリフェルは完全に見えなくなってしまった。 空気中の分子は破壊され、ルヴィンの前方には周囲の空気が竜巻のように流れ込む。 土砂や瓦礫も巻き上げられ、凍りつき、粉々に粉砕されていった。 ほんの数秒の出来事だったが辺りには氷山がそそり立ち、衝撃で城の壁が所々吹き飛んだ。 |
istint | 6/12 19:36:36 | 6056cfPe5uVYEslDw||235 | ||
「これが…青龍の力か…!」 ムスティンが呻く様に言葉を漏らす。 「ルヴィンは無事か!? あのクラスの魔法の反発力は半端じゃないからな。 ニナ様、もうだいじょうぶですよ。」 |
istint | 6/12 19:36:47 | 6056cfPe5uVYEslDw||518 | ||
ニナはムスティンの後ろでずっと目を閉じていたので、変わり果てた城の中庭の光景に驚いた。 徐々に白い霧が晴れ、ルヴィンの姿が見えてきた。 手を膝につき、肩で息をしている。 青龍のオーラは完全に消えていた。 完全に力を使いきってしまったのだろう。 しかし、彼は生き残った。 |
istint | 6/12 19:36:59 | 6056cfPe5uVYEslDw||894 | ||
ニナとムスティンが思わず彼の元に駆け寄ろうとする。 誰もが彼の勝利を喜び、疑わなかった。 しかし、突然ルヴィンの眼前に黒い霧が渦巻き、膨大な量の力場が出現する。 |
istint | 6/12 19:37:15 | 6056cfPe5uVYEslDw||59 | ||
「ニナ様、離れててください!」 ムスティンが反射的にニナを自分の後ろに下がらせる。 霧は見る見る内に大きくなり、その中から、真っ黒の禍々しいオーラに包まれたシェリフェルが姿を現した。 額から血を流し、多少ダメージは受けているようだったが口元には相変わらず掴み所の無い笑みを浮かべていた。 手に握った魔候の爪はビキビキ音をたてながら、より禍々しい姿に変化していく。 |
istint | 6/12 19:37:29 | 6056cfPe5uVYEslDw||171 | ||
「フフフ…残念でした。 僕がその程度でやれると思ったのかい? ほんの少し驚いたけど、青龍程度の力じゃ相手にならないよ。 がっかりさせないでくれよ。 僕は君の本当の力が見たいんだ。 大切な仲間を死なせたくないだろ? 君は僕を愉しませる為だけに存在しているんだから。 レンティーニ君はもうちょっと頑張ったよ? それでも僕にズタボロにされちゃったけどね。 ウフフ…アハハハハハ!」 |
istint | 6/12 19:37:44 | 6056cfPe5uVYEslDw||825 | ||
ルヴィンはレンティーニの事を言われて頭に血が昇った。 怒りに任せて剣を振るったが、思うように身体が動かない。 冷や汗が大量に全身から噴出して口の中がカラカラに乾いていく。 呼吸も荒くなって満身創痍だった。 原因はルヴィンにも分かっている。 賢者に貰った腕輪の力で青龍の力を限界以上にまで引き出してしまったからだ。 危うく青龍に魂を喰われるところだった。 実際、アブソリュート・ゼロを放った瞬間はルヴィンの意識は無かった。 |
istint | 6/12 19:37:56 | 6056cfPe5uVYEslDw||901 | ||
ルヴィンがフラフラしているとシェリフェルがもう目前まで迫ってきて、魔候の爪を振りかざしていた。 しかし、間一髪のところでムスティンが神脚(超高速移動術)を用いてルヴィンを抱え、その場から離れた。 「おや、動けるようになったのか。 君の出番はもう済んだんだよ。 それともそんなに死にたいのかな?」 |
istint | 6/12 19:38:4 | 6056cfPe5uVYEslDw||206 | ||
シェリフェルがムスティンに向けて軽く爪を振った。 それだけで黒い風が吹き荒れ、ムスティンは全身に切り傷を負ってしまう。 シェリフェルは笑いながら徐々に二人の方に迫ってきていた。 |
istint | 6/12 19:38:14 | 6056cfPe5uVYEslDw||334 | ||
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istint | 6/12 19:38:23 | 6056cfPe5uVYEslDw||871 | ||
スネイクは既に牢のある部屋の側まで来ていた。 ソロネとカーティスの戦いでの消耗が激しく、柄にもなく肩で息をしていた。 牢へ続く長い階段を下りようとしたその時、後ろで彼を呼び止める声がした。 |
istint | 6/12 19:38:34 | 6056cfPe5uVYEslDw||79 | ||
「どこへ行くと言うのだ? ねずみが!」 スネイクが振り返るとそこには五聖将軍の守護聖、ハルファスが立っていた。 ハルファスの事はよく知らなかったが、その鎧の色、鉄仮面を身につけていることからすぐに誰かの守護聖だということは理解できた。 |
istint | 6/12 19:39:1 | 6056cfPe5uVYEslDw||993 | ||
スネイクの額からはおびただしい量の汗が流れ落ちる。 王家の力の解放にもインヴァリッドの反作用にも身体が馴れていなかった為、今になって反動がきているのだ。 もう彼には成す術が残されていなかった。 作戦もカーティス、シェリフェル、ソロネのお陰で滅茶苦茶だ。 そして彼には時間も残されてはいなかった。 いつ聖蒼教団騎士団の元帥、セルレイスが出てきてもおかしくない。 セルレイスが出てくればもう終わりだ。 |
istint | 6/12 19:39:8 | 6056cfPe5uVYEslDw||788 | ||
スネイクが色々思考を巡らせていると、「待て!」と凛々しい声が聞こえた。 その声の主はグランデュール王家にのみ仕える最期の騎士、アリステアの声だった。 |
istint | 6/12 19:39:20 | 6056cfPe5uVYEslDw||510 | ||
「お久しゅうございます、バルマスディール様(スネイクの本名)。 こやつの相手は私がします故、あなた様は己の信ずるままに行動してください。」 |
istint | 6/12 19:39:30 | 6056cfPe5uVYEslDw||807 | ||
スネイクはアリステアの強さを良く判っていたが、それでも心配だった。 しかし、アリステアはその心を見透かす様に、言った。 「私の心配は要りませぬ。 陽炎を極めた私を倒せるのは、同じ剣法を極めた兄のみでございます。」 |
istint | 6/12 19:39:41 | 6056cfPe5uVYEslDw||124 | ||
その言葉にハルファスが反応した。 「ほう、貴様も俺と同じ陽炎を使うのか、面白い。 賊と一緒に刺身にしてやろう。」 |
istint | 6/12 19:39:47 | 6056cfPe5uVYEslDw||557 | ||
アリステアはハルファスが放った一撃を受け止めると、スネイクに怒鳴った。 「さあ!早く! 時間がありませぬ!」 |
istint | 6/12 19:39:56 | 6056cfPe5uVYEslDw||647 | ||
スネイクは頷くと、一度振り返り、牢に向かって駆け出した。 階段を一気に駆け下りると、牢のかび臭い匂いが鼻を突く。 牢番の姿は無かった。 恐らくこの騒動のお陰で外へ狩り出されているのだろう。 鍵もすぐ見つかった。 |
istint | 6/12 19:40:11 | 6056cfPe5uVYEslDw||712 | ||
運良く、側にレンティーニの剣も置いてあった。 スネイクはその剣を引っ掴むと再び駆け出した。 牢の通路を駆け抜けていく間、囚人達のうめき声が聞こえる。 この内の、一体何人が無実の罪で囚われただろう。 スネイクは知っていた。 聖蒼教団は表では神の教えを説く宗教団体だが、その教えに従わない者、反抗する者はその口を塞がれる |
istint | 6/12 19:40:25 | 6056cfPe5uVYEslDw||599 | ||
部下の情報によればレンティーニが捕らえられている牢は一番奥だ。 そこにたどり着くと、スネイクが大声でレンティーニの名前を呼んだ。 しかし、返事が無い。 彼は急いで牢の鍵を開けると中に飛び込んだ。 |
istint | 6/12 19:40:39 | 6056cfPe5uVYEslDw||586 | ||
その時、突然後ろに人の気配を感じた。 振り返ると白い仮面を被った軽装の人間が立っていた。 服には青い十字架が描かれていた。 聖蒼教団騎士団とは別に、教団そのものに属する暗殺部隊「ジュディケーター」の衣装だ。 その姿を見た者はいない。 いや、実際にはいた、と表現するべきだろう。 彼らが目の前に現れることはその者の「確実な死」が約束されるからだ。 |
istint | 6/12 19:41:18 | 6056cfPe5uVYEslDw||394 | ||
「ク…ここまで来て…!」 |
istint | 6/12 19:41:27 | 6056cfPe5uVYEslDw||2 | ||
暗殺者は無言で腕に備え付けられた懐剣を閃かせた。 暗闇が支配する冷たい牢獄の中でそれは鈍い光を放つ。 スネイクは突然放たれた最初の一撃を辛うじて持っていたレンティーニの剣で受け止めたが、そのまま吹き飛ばされてしまった。 弾き飛ばされたレンティーニの剣は宙を舞い、牢の奥の暗闇に吸い込まれ、キンっという乾いた音をたてて壁に突き刺さった。 |
istint | 6/12 19:41:40 | 6056cfPe5uVYEslDw||608 | ||
暗殺者はジリジリとスネイクに迫る。 スネイクは冷や汗を流しながら目を閉じた。 (ここまで来たが、もう終わりかよ。 すまねえ、みんな!!) その時スネイクの後方から大声が響いた。 |
istint | 6/12 19:41:50 | 6056cfPe5uVYEslDw||1000 | ||
「スネイク!さっさと伏せろ!」 反射的に顔を伏せたスネイクの頭上を鋭い衝撃波が駆け抜けた。 |
istint | 6/12 19:41:59 | 6056cfPe5uVYEslDw||708 | ||
そっと目を開くと、暗殺者の両腕と首が?げて、ゴロンと床に転がった。 スネイクが力なくへたり込むと、ポンと肩に力強い手が置かれた。 「よくやった。 さあ、行こう。」 |
istint | 6/12 19:42:7 | 6056cfPe5uVYEslDw||244 | ||
レンティーニは上半身は裸でまだ生々しい傷が付いていたが、がっしりした力強さは失われていなかった。 彼の話によると、飛んできた剣が丁度右腕の鎖を断ち切り、そのままその剣を振るったのだそうだ。 スネイクは夢中になっていて今まで気が付かなかったが、しばしばこの城全体が揺れているような感じがした。 恐らくは外で派手にやり合っているルヴィンとシェリフェルだろう。 レンティーニも今度ばかりは焦りを隠せない様子で、駆けていた。 |
istint | 6/12 19:42:42 | 6056cfPe5uVYEslDw||482 | ||
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istint | 6/12 19:42:46 | 6056cfPe5uVYEslDw||681 | ||
「シェリフェルが再び暴走しています。 このままでは我が兵も、この城も壊滅してしまうかも知れませぬ。 お許しくださるなら私の手で侵入者もろともあやつを斬りってごらんに入れましょう。 もう、これ以上待てば民に犠牲が出るとも限りませぬ。 どうか、ご命令を。」 |
istint | 6/12 19:42:54 | 6056cfPe5uVYEslDw||714 | ||
城の中央の塔の最上階に鎮座しているセルレイス元帥の下に、五聖将軍カーティスが被害の報告に来ていた。 カーティスは元々、この地の大貴族の生まれだったので、戦いで自分の領土の民が血を流す事が耐えられなかったのだ。 とは言え、今のシェリフェルと自分が戦えば、刺し違える事も出来ないかもしれない。 セルレイスはゆっくりテラスに向かって歩いていき、中庭の戦いを眺めた。 もう塔の最上階まで闘気が吹き上がってきており、強風が吹き荒れていた。 セルレイスは初めてシェリフェルに出会ったときの事を思い出していた。 それは約8年前の事… |
istint | 6/12 19:43:9 | 6056cfPe5uVYEslDw||635 | ||
当時の聖蒼教団にはまだ五聖将軍はおらず、セルレイス、ソロネ、カーティスの三人が教団騎士団を仕切っていた。 三人とも騎士団の中では飛びぬけた戦闘能力、行動力、そしてカリスマ性を備え、皆から一目置かれている存在だった。 セルレイスはその時既に元帥だったが、ソロネ、カーティスはセルレイス付きの将軍だった。 |
istint | 6/12 19:43:21 | 6056cfPe5uVYEslDw||274 | ||
その頃はグランデュールよりはるか南に位置するローネンという地で、聖蒼教団と闇の勢力の大規模な戦争が行われていた。 敵は闇ソーサラー「プロセルピナ」率いる闇の使徒だった。 大地は腐り、空気はよどみ、川の水は流れを止め、生あるものは悉く喰らい尽くされる。 今でこそ、前線には五聖将軍の誰かが軍を率いて任に当たっていたが、その頃は人員的余裕もなく、セルレイスも常に前線で指揮を執っていた。 |
istint | 6/12 19:43:37 | 6056cfPe5uVYEslDw||694 | ||
両者は一進一退の攻防を繰り返し、勝敗はいつ決するとも分からなかった。 そして、ある日の戦闘で、思わぬ伏兵に出会い、三人はバラバラになってしまう。 セルレイスは気が付くとどんどん敵陣の奥にまで入り込んでしまっていた。 それはプロセルピナの罠だと気付いたのはもう随分経ってからだった。 常人なら怖気づいてすぐに退却するだろう。 しかし、セルレイスはたった一人で世界最高の軍を指揮する元帥だ。 彼は逆に相手の懐に入り込めたのをチャンスだと思った。 |
istint | 6/12 19:43:46 | 6056cfPe5uVYEslDw||57 | ||
一対一なら例え闇ソーサラーが相手でも負ける気がしなかった。 セルレイスは恐らくは人類最強の騎士だった。 ジスティですらも彼の振るう大戦斧と、鎖鉄球の前には何の抵抗も無く潰されていく。 彼は森の茂みに身を潜めながらじりじりと敵の本陣に近付いて行っていた。 |
istint | 6/12 19:44:0 | 6056cfPe5uVYEslDw||580 | ||
そしてとうとう、数体の、物々しい鎧を身につけた改良型ジスティナイトに守られたプロセルピナを発見した。 気付かれないように、慎重に背の大弓に矢をつがえ、狙いを定める。 放たれた矢はまっすぐ正確にプロセルピナ目掛けて飛んでいった。 プロセルピナは額に矢を受け、倒れた。 |
istint | 6/12 19:44:12 | 6056cfPe5uVYEslDw||760 | ||
だが次の瞬間、セルレイスの身体が業火に包まれる。 プロセルピナは彼の後ろにいた。 彼は炎に包まれながらも身じろぎ一つせずに闇ソーサラーに斧を叩きつけ、鉄球を投げつける。 プロセルピナは斧も鉄球もしなやかに編みこんだ魔力の糸で受け止める。 |
istint | 6/12 19:44:26 | 6056cfPe5uVYEslDw||43 | ||
まさに魔王という感じだった。 激しく攻撃を加える彼に対して、闇ソーサラーはその場から動かずに、片腕を宙にかざしているだけだ。 プロセルピナがフッと息を吹きかけるだけで、セルレイスの巨体は凄まじい勢いで吹き飛び、大木に激突した。 また、闇ソーサラーが笑うと、地鳴りがし、たちどころに腐食性の液体が大地から染み出す。 |
istint | 6/12 19:44:34 | 6056cfPe5uVYEslDw||115 | ||
だが、セルレイスはそれでも動じていなかった。 伝説の闇ソーサラーだ、それくらいの事はしてくるであろうと予測していた。 「ククク…もうおしまい? 楽には死なせないわよ。」 |
istint | 6/12 19:44:50 | 6056cfPe5uVYEslDw||696 | ||
闇ソーサラーがもうそこまで迫ってきている。 しかし、セルレイスはまだまだ本気ではなかったのだ。 ついにセルレイスは斧に向かって呪文を唱え出す。 |
istint | 6/12 19:45:2 | 6056cfPe5uVYEslDw||812 | ||
「クード・エフ・フラジルジ・シャン我が声に従い開放せよ」 斧は光を放ち、その力を解放する。 その斧は古代文明が闇の勢力に対抗する為に開発した兵器、生体金属だったのだ。(ムスティンのバリアント・ダガーと同じ) さらに鉄球の方も光を放つ。 セルレイスは同時に二種類の開放を行ったのだった。 |
istint | 6/12 19:45:12 | 6056cfPe5uVYEslDw||391 | ||
「闇ソーサラーよ、俺もこんなところで死ぬわけにはいかんのでな。 聖蒼教団元帥として命ずる。 消えよ!」 |
istint | 6/12 19:45:24 | 6056cfPe5uVYEslDw||618 | ||
再びセルレイスの攻撃が始まる。 ただでさえ重爆撃のような攻撃が、開放状態の生体金属の両手もちで、さすがのプロセルピナも片手では防ぎきれない。 セルレイスが渾身の一撃を振り下ろそうとすると、ふと視界に子供の姿が飛び込んできた。 |
istint | 6/12 19:45:32 | 6056cfPe5uVYEslDw||320 | ||
(もう遅い!止められない!) |
istint | 6/12 19:46:10 | 6056cfPe5uVYEslDw||777 | ||
そう思った瞬間、その子供は一振りの爪を取り出し、獣のような雄たけびをあげた。 プロセルピナはセルレイスの攻撃に注意を向けていたので一瞬その出来事に反応できなかった。 子供の全身からは暴走したオーラが噴出して、グランデュール城がいくつも入りそうな広い森の木々も、ジスティ達も全て薙ぎ倒した。 |
istint | 6/12 19:46:29 | 6056cfPe5uVYEslDw||539 | ||
セルレイスの一撃がプロセルピナの防御結界に触れて火花を散らした瞬間、子供が後ろからその爪でプロセルピナを突き刺した。 防御結界の力は薄くなり、セルレイスの斧が、鉄球がプロセルピナの身体にめり込んでいった。 「ククク…これで終わったと思うなよ…。 闇の御…子…ざ……い……」 |
istint | 6/12 19:46:42 | 6056cfPe5uVYEslDw||320 | ||
プロセルピナの姿は消え、そこには城が一つ入るくらいの大穴が開いた。 子供は闘気を全て使い果たしたのか、その場に倒れこむ。 セルレイスは闇ソーサラーの引き際の一言が気になったが、その子供を連れ帰ることにした。 |
istint | 6/12 19:46:53 | 6056cfPe5uVYEslDw||6 | ||
その子の名前は、そう、シェリフェル・スティーンといった。 |
istint | 6/12 19:47:8 | 6056cfPe5uVYEslDw||186 | ||
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istint | 6/12 19:47:18 | 6056cfPe5uVYEslDw||994 | ||
セルレイスはゆっくり目を開いた。 あれからもう八年になる。 カーティス、ソロネはその事実を知らない。 二人はどこからかフラリとやって来た少年だと思っている。 シェリフェルの力は当時から危険だった。 監視下に置く必要があった。 だが、管理できれば教団の大きな力になるはず…だった。 |
istint | 6/12 19:47:27 | 6056cfPe5uVYEslDw||53 | ||
幾度と無くセルレイスはシェリフェルを管理しようとしたが、彼はあまりに感情に波がありすぎ、何を考えているのか判らなかった。 「俺は恐ろしい男を育て上げてしまった。」 セルレイスがポツリと漏らす。 |
istint | 6/12 19:47:35 | 6056cfPe5uVYEslDw||311 | ||
「カーティス将軍、ご苦労だった。 シェリフェルは責任を持って俺が止める。 将軍は侵入者どもを処分せい。 それから…あのシェリフェルと戦っている少年は殺さずに捕らえよ。」 セルレイスはルヴィンに対しても何かを感じ取っていた。 もうすぐ戦場に聖蒼教団最強の男が降り立つ。 |
istint | 6/12 19:49:16 | 6056cfPe5uVYEslDw||20 | ||
今回はここまでです。 ご心配おかけしましたが、大事には至らず、もうピンピンしております。 度々更新が遅れて申し訳ないです…。 シェイラさんもお体にはお気をつけて… |
シェイラ | 6/12 21:51:38 | 2182cfUSfkFqJjWRs||654 | ||
いえいえ、大丈夫です。少し、鼻風邪をひいていますが……。心配していただきありがとうございます(●^∀^●)レンティーニが復活(?)して嬉しいです!これからも、応援してます! |
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